IMC株式会社  池田医業経営研究所

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2020年

12月

20日

とことん地域住民に寄り添う医療機関

国内のほとんどの自治体が人口減少、少子高齢化、財政難の課題で苦しむ状況下で、兵庫県明石市は近年、子育て支援による子ども増・人口増・税収増で注目されています。

それは、なぜなのか? 明石市の施政方針は「こどもを核としたまちづくり」、「誰にもやさしいまちづくり」。どこの自治体も掲げているような聞こえのよいスローガンですが、他の自治体との大きな違いは「とことん人に寄り添う行政の姿勢」のようです。

明石市長によれば、政府をはじめとした日本の自治体の多くは、行政サービスの対象となる標準家族を「勤労する父親、心優しい専業主婦の母親、健康に育つ二人の子ども」と考えています。一方で明石市長が考える標準家族は、「父親のDVで母親は心を病み、パートを辞めさせられそうで、子どもはネグレクトぎみで不登校、奥には認知症の祖母がいて借金を抱えている貧困家庭」です。現代の家族が抱える問題は、子育て、介護、家計、就労など複数の問題を同時に抱えていることであり、困っている家族に安心してもらうには“包括的に”問題に向き合う必要があるとのことです。

ターゲット顧客を見定め、その顧客ニーズを徹底的に調査し、そのニーズに合わせた施策を講じるのはマーケティングの基本中の基本です。住民の方を向いておらず、国や都道府県の方を向いていて、いわゆる縦割りの施策しかできない自治体が、おそらくまだまだ多いのでしょう。

 

人口減少、高齢化が進む地域がほとんどの状況下で医療機関が生き残るためには、地域共生社会づくりに貢献する「とことん地域住民に寄り添う姿勢」が求められるのではないでしょうか。都道府県が設置する地域医療構想調整会議の議論を気にしている時間があったら、地域住民の医療・介護等のニーズ把握に時間を費やすほうが生産的でしょう。

佐賀県の有明海沿いの鹿島市に所在する社会医療法人祐愛会織田病院は、病床数が111床と小規模であるにもかかわらず、急性期から在宅医療まで担っており、とことん地域住民に寄り添ったサービスを提供しています。病院の設立理念は『悩める者への光明を』であり、『日本一の気配り病院』を目指しています。

多くの病院がひしめく大都市では、病院間の機能分担と連携は政策として当てはまりますが、鹿島市のように約3万人規模の地方都市においては、中小病院が医療から介護まですべての機能を担わなければなりません。以下、週刊医学界新聞の2020629日付けの第3377号に寄稿されている同院の織田良正総合診療科部長の説明や、織田正道理事長の講演資料を引用し、同院の“とことん”の取組を紹介します。

同院の診療圏は高齢化が進展し、85歳以上の救急搬送患者、新規入院患者が急増しており、入院患者における85歳以上の割合は年々増加、要介護、認知症の割合が高くなっています。病床を回転させるためには、退院前後におけるかかりつけ医や多職種との連携はもちろんのこと、各患者の必要に応じたケアを入院中だけでなく退院後も継続することが不可欠です。

そのため同院では、「治す医療」から「治し支える医療」に転換するために、①安心して自宅へお返しするための院内での仕組みづくり、②退院後もケアを継続できる仕組みづくり、③IoT(いろいろな「モノ」がインターネットを介してつながる仕組み)やAI(人工知能)を使った「在宅見守りシステム」の構築をしています。

 

具体的には、院内の多職種チームを組織化し在宅医療支援を実施しています。高齢者の独居世帯、老老介護の世帯では、退院した後に入院中のケアが途切れてしまうことで、退院後すぐ再入院となるケースが少なくありません。そこで同院では地域の医療機関と連携を図る院内の「連携センター」の中に、退院直後の在宅医療支援を行うチームを結成しました。同チームは、医師、訪問看護師、理学療法士、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、訪問介護士の多職種で構成しています。「病院を基地と見立て、基地である病院から地域へ訪問する」との意味を込めて「Medical Base Camp(以降、MBC)」と名付けています。患者が退院すると同時に多職種が在宅医療へ移行するための支援を行うことで、入院医療から一貫した治療とケアが実施できるようになりました。

MBCチームが属する連携センターに80インチの大型モニターを設置し、モニターに映し出された地図上に在宅患者宅をマッピングするとともに、訪問スタッフが使用するタブレット端末のGPSを利用し、スタッフの位置情報を画面上で把握できるようにしています。位置情報を「見える化」することで業務の効率化や、患者宅からの緊急連絡など、状況に応じた対応が可能となっています。

加えて民間企業のオプティムがもつAIIoT技術を用いて、図のようなスマートデバイスとバイタルセンサーなどのICT機器を用いた在宅見守りシステムの実証実験を本格的に開始しています。具体的には、自宅にAIしか見ることができない「AIカメラ」を設置し、取得した映像を解析することで、転倒動作や長時間不在などの異常を検知します。異常検知時には病院や家族へ通知し、家族の許可を得た上で初めて病院から映像を見ることができる仕組みとしています(特許出願中)。さらに必要に応じて病院から患者の自宅にあるタブレットを遠隔起動し様子をうかがう「お声がけ機能」や、患者が装着しているスマートウォッチ上のナースコールが押されると病院に通知し、患者の自宅のタブレットを強制的に起動させる「ナースコール機能」、患者の身体状態をより明確に把握できる「バイタルデータ収集機能」などをパッケージしています。患者は自宅に居ながら病院内で医師や看護師に見守ってもらっているような状態を実現しています。

またスマートフォンやタブレット端末を使用した在宅患者とのコミュニケーションでは、高齢者の使用が難しく音声も伝わりにくいなどの問題がありました。そこで高齢者が普段から慣れ親しんでいる自宅のテレビにビデオ通話システムを連携させました。複雑な操作を必要とすることなくテレビ画面上で医師の顔を見ながらビデオ通話が行えるようになり、在宅での見守りに役立てています。その他にも熱中症の早期発見、予防を目的に、高齢患者宅に温度センサーを設置し、室温管理にも取り組んでいます。患者宅の室温は連携センター内の大型モニター上でモニタリングされており、一定の温度を超えた際には在宅患者に対して迅速にビデオ通話で注意を呼び掛けています。またCOVID-19対策では、在宅での発熱患者はオンラインでより細やかにフォローを行っています。

 

織田病院の“とことん”の取組内容は、簡単に真似できるものではありません。ただ住民のニーズを積極的に把握することに努め、できることから対応するのはどの医療機関でも可能です。他の医療機関との違いを出すために、“とことん”の取組みをぜひご検討下さい。

 

図 IoTAIを活用した見守りサービス内容

 

出典:織田正道理事長ご講演資料

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2020年

11月

20日

お寺業界に学ぶマーケティング

5年ほど前に話題になったアマゾンの『お坊さん便』。皆さんはご存知でしょうか?

私事になりますが、私は福井県出身で30年以上首都圏に住んでいます。実家のある福井県に先祖代々の墓を供養している「菩提寺」があるのですが、亡くなった父のために、首都圏に居住している父方の親戚の居住地を考慮して千葉市の公営墓地に新たに墓をつくりました。福井県で法要を行う際には菩提寺に依頼し、千葉市で法要を行う際にはお坊さん便を利用しています。

 お坊さん便とは、葬儀供養など仏事の際にインターネット上で民間の僧侶を手配し、全国に一律定額で派遣できるサービスです。2009年創業の「みんれび」という会社が、2013年に特定の寺院との付き合いがない人でも定価で簡単に僧侶を呼ぶことのできる事業として立ち上げました。

 201512月にアマゾンマーケットプレイスに「法事法要手配チケット」を出品したことで仏教界からの抗議等で話題になり、お坊さん便の登録僧侶数は1300名以上になっています。全国どこへでも主要な宗派の僧侶を派遣できる体制を整え、利用者数は増加しているようです。

20186月に社名を「よりそう」に変更。アマゾンでの『お坊さん便』の取り扱いは201910月に終了し、その後は自社のホームページで取り扱っています。

 

なぜお坊さん便は普及し、利用者や登録している僧侶が増加しているのでしょうか。

まず利用者サイドの事情として、実家から離れて新たに所帯をもった人が、いざという時にどのお寺にお願いすればよいのかわからない、お布施の金額がよくわからない、特に信仰心があるわけではないので僧侶とはあまり深く付き合いたくないなどの葬儀や供養といった法事をめぐる変化にあるようです。私も最初は地縁の無い千葉市内の曹洞宗のお寺を自力で探しましたが、お布施の金額を質問しましたら嫌な顔をされたので、依頼したくなくなりました。お布施は“お気持ち”でというのがお寺側の常識かもしれませんが、これまでの人生で法事を主宰する機会のなかった私はそのような常識を持ち合わせておりません。おそらく同様の方はかなりいらっしゃるのではないでしょうか? ちなみにお坊さん便は、お布施や御膳料・お車代等の金額全部込みで、初回は定価35000円。サービス内容の範囲と金額が明確です。

次に僧侶サイドの事情として、人口が減少し空き家が増えているような地方では檀家は確実に減っています。また都会では旧来型の地縁社会はどんどん崩壊し、法事も親戚・家族だけでひっそり行う、法事の回数を減らすような風潮になってきていますので、収入を確保するために少しでも法事に関わる機会を増やしたいでしょう。

お坊さん便のサービスは、利用者、僧侶の双方に潜在的なニーズがあったのです。従来のお寺とお坊さん便をマーケティングの観点で比較すると、図のようになります。お寺にとって守るべき伝統はありますが、利用者層の変化とそのニーズの変化に対応し、自らの存在意義や利用者にとっての価値を積極的に発信していかなければ、今後の生き残りは難しいでしょう。

 

表 従来のお寺とお坊さん便のマーケティングの観点での比較

マーケティング要素

従来のお寺

お坊さん便

Customer Value
(
顧客にとっての価値)

利用者は事前にサービスの質の違いはわからない。期待していない。

質が悪い場合、変えるのは難しい。

 

同左

 

質が悪い僧侶は会社側で排除するため、一定水準は維持される。

Cost to

the Customer

(顧客の負担)

不明確(お気持ちでの支払い)。

 

お布施として現金支払い。

サービス内容と金額が明確。

支払金額は相対的に低い。

クレジットカード決済も可能。

Convenience
(
入手の容易性)

お盆など忙しい時、スケジュール調整は困難。

依頼者の法事の日程優先で、都合のつく僧侶が手配される。

Communication
(
コミュニケーション)

ホームページの開設率は低い。寺間の情報開示量の格差が大きい。

連絡手段は、主に電話。

ホームページでサービス内容等の詳細を説明。

連絡手段は、電話(フリーダイヤル)、メール、LINE

 

 座して死を待つようなお寺もあると思いますが、時代に対応した取組みを行っているお寺もあります。創建から400年にもなる東京の築地本願寺です。

ホームページを見ると「築地本願寺がめざすのは、かつて人の暮らしの拠り所であったお寺の役割を、今の時代に合ったカタチに再構築した現代のお寺の姿です。」というわかりやすいビジョンが掲げられています。そしてビジョン実現のために、様々なプロジェクトを動かしているようです。

まず人々の人生や暮らしに寄り添うサービスをワンストップで提供することを目的とした会員組織「築地本願寺倶楽部」の設立です。会費・入会金は無料で、仏教や法事に関する相談はもちろんのこと、新しいスタイルのお墓や人生サポートサービスなど、お寺の役割を住民と繋がるカタチに変えて届けようとしています。人生サポートは終活(人生の終わりのための活動)として、相続などの法律相談や遺品整理、遺言書や自分史の作成、資金計画相談などの支援をしています。また最近では婚活のサービスも行っています。

次に学びの場としての「KOKOROアカデミー」の開催や、人間関係や日頃の生活の不安や気になるあれこれを僧侶に個別相談できる「よろず僧談」などをしており、活動を更に拡げるために20165月に築地本願寺GINZAサロンをサテライトとしてオープンしています。その他に和をコンセプトにしたオリジナルメニューのカフェ、豊富築地本願寺を身近に感じられるオリジナルグッズを販売するショップ、仏教全般書などを取り揃えたブックセンターを併設したインフォメーションセンターを開設しています。

 またTERAMACHI(寺町)と称して、浄土真宗本願寺派の他のお寺の情報を発信することで、安心して相談できるお寺や住職との出会いを支援しています。

最近の新型コロナウィルス禍では、顧客の要望に則ってオンライン法要も実施しています。

 

医療機関においても、他山の石として参考にできることはあるのではないかと思います。

例えば、地縁・血縁のない地域に引っ越しをした場合、かかりつけ医をどのように探すか? インターネットで検索をして探す人が多いと想像しますが、かかりつけ医の意義や、かかりつけ医としてどのような疾病の患者にどのようなスタンスで取り組んでいるか、他の医療機関の違いをわかりやすくホームページに掲載しているような医療機関はあまり見たことはありません。また健診や予防接種を受けたいが、金額を事前に知りたいと考えて調べようとしても、金額や細かい検査内容までは掲載していない医療機関はまだまだあります。また医療機関の連絡手段のほとんどが電話です。

 

医療機関には、健康面で不安を抱える地域住民が集まってきます。公的保険内では解決できない悩みは多いと思います。他業界の取組を参考にするとともに、利用者の視点で既存サービスの改善や拡大を検討すれば、まだまだすべきこと、できることはたくさんあるのではないでしょうか?

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2020年

9月

20日

地域に不可欠な災害時のかかりつけ医機能

 

 日本の自然災害の発生件数と被害はこの数十年増加傾向です。昨年は8月に九州北部豪雨があり、9~10月にかけて連続して大型台風が上陸し、多大な被害をもたらしました。今年も気象庁が「令和2年7月豪雨」と命名した集中豪雨によって、熊本県を中心にした九州や中部地方、東北地方などで大きな被害がありました。豪雨の期間は7月3~31日の29日間であり、気象庁が命名した大雨災害としては過去最長とのことです。

 

 6年前になりますが、厚生労働省は全国の災害拠点病院(676病院)を対象に、ハザードマップ等による災害拠点病院の被災想定とその対策及び周辺道路冠水によるアクセス支障に関する調査を実施し、その結果を公表しました。

 調査結果の内容は非常に危機的で、あくまで想定ですが洪水・内水において「浸水あり」が全体の34.0%も占め、このうち「対策有」が全体の17.6%、「対策無」が全体の16.4%でした。対策としては、排水ポンプの設置、土嚢整備、止水版や防潮板の設置、盛土や嵩上げの実施などが挙げられていました。また対策を講じることができない主な理由としては、対策を講じるための自己資金確保が課題であることや地域全体において浸水被害が想定されており、病院単独での解決が困難であることなどが挙げられていました。

 また冠水時において救急車等の車両などの病院へのアクセスについて、「対策なし」と回答した病院が22%(154病院)もありました。厚生労働省は、災害拠点病院単独で解決できる課題ではないため、消防機関、市区町村の防災部署と連携しその対応策を検討するとしていましたが、現時点において抜本的な対策がどのくらい進捗しているかは不明です。

 

 災害拠点病院に限らず医療機関は、自院が被災するリスクを把握しておく必要があるでしょう。国土交通省はコンパクトシティー整備のための立地適正化計画を公表している275都市について、居住誘導区域と危険地域が重なっていないかを2019年12月時点で調査しました。河川が氾濫した場合に浸水する恐れがある「浸水想定区域」と居住誘導区域が重なる場所がある都市は242と全体の88%を占めています。

 以前にマーケティングの4Pについて説明しましたが、4PのひとつであるPlace、どの場所で事業を営むかは医療機関の集患にとって重要な要素です。一般的に診療圏人口が充分な地域を選んで、医療機関は開業するでしょうから、結果的に医療機関自体が災害リスクの高い地域に立地してしまっているようなケースは多いのではないでしょうか。この機会に地元自治体が公表しているハザードマップで、自院はもちろんのこと、自院の診療圏の被災の可能性を調べられることをお勧めします。

 

 国民の意識が高まれば、自然災害の危険度の高い地域に新規の住民が流入することは少なくなるでしょう。また既存の住民も何かきっかけがあれば、安全な地域に引っ越すことを考えるでしょう。そのため中長期的に考えれば、危険度の高い地域の人口は他地域と比較して速く減少することが予想されます。医療機関は将来の患者数予測をする際には、その前提で考えておく必要があります。

 また災害はいつ発生するか予想できません。そのための事前の備えの必要性は高まっています。例えば東京都では首都直下地震などの大規模地震災害が発生した際に、医療機関が医療提供機能を維持できるよう、医療機関の防災対応能力を向上させ、より効率的・機能的な体制整備の支援のために、大規模地震災害発生時における医療機関の事業継続計画(BCP)策定ガイドライン※を作成しています。BCPは新型コロナウィルス感染症でもその必要性が再認識されています。まだBCPを策定されていない医療機関は、まずはこのガイドラインを一度ご覧になられることをお勧めします。

※事業継続計画(Business Continuity Plan):大災害や事故などの被害を受けても重要業務が中断しないこと、もしくは中断したとしても可能な限り短い期間で再開することができるように、事業の継続に主眼をおいた計画

 

 災害が発生した際の対応や事前の備えについては、日本医師会の救急災害医療対策委員会が2018年2月にまとめた「地域の救急災害医療におけるかかりつけ医の役割―地域包括ケアシステムにおける災害医療を中心に」をテーマにとした報告書が参考になります。

 報告書では、災害対策基本法に基づく地域防災計画で災害時のかかりつけ医の役割が位置づけられていないことや、医師会が災害時のかかりつけ医機能推進策をとっていないことを問題視しています。

 災害時のかかりつけ医機能についてですが、まずかかりつけ医は、大規模災害の際に自地域の住民・患者に対する診療や健康管理とともに、地域包括ケアシステムの中心的な存在として、“各地域での医療の統括を担う自覚”が必要となります。平素からかかりつけ医として、地域の様々な実情を最もよく理解し、住民・患者や地域の医療・介護事業者から信頼を得ている必要があります。また被災地外からの日本医師会災害医療チーム等と情報共有して連携し、効率的な災害時の医療の提供と、地域医療の早期の機能回復を目指します。多くのかかりつけ医は、災害当初においては救護所や自院・近隣医療機関で、慢性期では避難所等で、介護関係者を含む多職種連携を統括していくことが期待されています。また災害時の行政や医師会との関係については報告書内にまとめられています(図表参照)。

 実際に大規模な災害に遭遇した際、移動手段もなく孤立した状況の中では、医療従事者個々人もいわゆる災害難民ですが、一旦医師、看護師、薬剤師等々の自己の能力を発揮できる救急医療現場へ赴き、率先参加して医療行為等の業務を行うことで、帰宅困難者からすみやかに救護者へ立場を転換することが期待されています。 

 

 その他に基本的なこととして、平素より多職種連携(医療、介護、福祉、在宅関連事業者)を円滑に行うために顔の見える関係を構築しておくこと、平時から災害時における多職種の役割分担を決めておくこと、災害医療に関心の高い医療従事者とトレーニングする機会をつくることなどができていれば理想的です。

またかかりつけ患者に対して、平時のうちから災害発生時の医療面での対処方法を伝えておくこともかかりつけ医として望ましいでしょう。また災害発生時の対処方法に関する汎用的な資料を作成し、かかりつけ以外の患者にも同様のアドバイスをすれば、一見の患者をかかりつけ患者に転換することも期待できます。

 災害に対しては、医療、介護、福祉、在宅関連事業者や行政機関、地域住民まで、共通の危機感をもっています。災害への備えをテーマにして積極的にコミュニケーションをはかり連携関係を構築していくことは災害の予防対策につながりますし、自院の特徴や院長の性格・考え方などを含めて関係者に伝えることのできる格好の機会になるのではないでしょうか。

 

図表 災害時のかかりつけ医機能

出典:日本医師会救急災害医療対策委員会作成の報告書(2018年2月)

 

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2020年

8月

20日

LINEヘルスケアの遠隔健康医療相談事業開始

無料で好きなだけ通話やメールが楽しめるコミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」を使用されている方は、331日に「新型コロナ対策のための全国調査」のメッセージが突然届き驚かれたのではないでしょうか。

330日に厚生労働省とLINE株式会社が協定を締結し、新型コロナウイルス感染状況の把握や感染拡大防止のための有効な対策検討に活用する目的で、5月上旬にかけて合計4回の調査が実施されました。

「どうしてLINE?」という疑問はありますが、日本国内において月に1回以上LINEを利用している人は8,400万人。そのうち11回以上利用している利用者の割合は、78%と非常に高いことがわかります(4月28日付けのLINEの公開資料より)。ある程度まとまった人数の国民を対象にした、短期間でかつ情報処理が容易なデジタルでの情報収集という点で、非常に優れた方法ではないかと思います。

また国民への情報提供を目的に厚生労働省は、「新型コロナウイルス感染症情報 厚生労働省」LINE公式アカウントを開設しており、東京都や大阪府など25都道府県も同様に開設しています。「新型コロナウイルス感染症情報 厚生労働省」では、実際に感染の疑いのある方などがすぐに医師に相談できるように「スマホでお医者さん相談」の項目を設け、「LINEヘルスケア」での24時間365日のオンライン相談626日まで無償提供しています。その他にエムスリー株式会社が運営する「AskDoctors」も選択でき、新型コロナウイルス・新型肺炎に関する医師への相談事例と医師相談を無料で利用できます。※ 相談は、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の遠隔健康医療相談(医師)の範囲で実施。

 

LINEヘルスケア」のサービスは、201914日にLINEとエムスリーがオンライン医療事業を目的として共同出資で設立した新会社であるLINEヘルスケア株式会社が提供しています。エムスリーについては、MR君などの医師向けサービスでご存知の方は多いのではないでしょうか。20187月現在、エムスリーグループの医師パネルは全世界で約400万人。また日本でエムスリーが展開する医療従事者向けサイト「m3.com」では、日本の臨床医の約9割にあたる27万人以上の医師会員、日本の薬剤師の半数超にあたる16万人以上の薬剤師の会員を有しています。

 201918日のエムスリーのプレスリリースによれば、「・・・日本最大級の医療総合メディア「QLife」や医師相談サービス「AskDoctors」などの一般生活者向けソリューションを展開するエムスリーグループの医療分野における知見やノウハウを活かし、「LINE」を活用した医療に関するQ&Aや遠隔健康医療相談、オンライン診療をはじめとするオンライン医療事業を展開してまいります。まずは、2019年中に、遠隔健康医療相談サービスの開始を予定しており、さらに、法整備の進展を見ながら「m3.com」の薬剤師会員基盤を活用した処方薬の宅配サービスなども検討していく予定です。」と記載されています。

LINEヘルスケア」には、5月中旬時点で新型コロナウイルスに関する相談に対応している医師が400名強います。医師ごとに顔写真(希望者のみ)、相談回数、年齢、経験年数、自己紹介、診療科、専門分野、経歴、専門医等の資格などのプロフィールが掲載されており、利用者は選択することができます。利用方法は、LINE上からチャット形式で医師に相談できる『いますぐ相談』と、テキストメッセージで詳しく医師に相談できる『あとから回答』の2種類のオンライン健康相談があります。

同社が325日~26日下旬に実施した日本全国の15歳~59歳の男女を対象にしたアンケート調査では、「オンラインで医師へ健康相談が出来るサービスを知っている/聞いたことはありますか?」という問いに対して34.2%が「はい」と回答、認知者は3割を超えています。その後、厚生労働省や自治体とのパイプ作りに成功したことで、同社の遠隔健康医療相談の認知度は更に大幅にアップしているのではないでしょうか。

これから長く続きそうな「Withコロナ時代」、何か不安に思ったら「まずはオンラインで医療者に相談し、必要に応じて医療機関を受診しよう」という文化が定着すれば、本来医療機関に来る必要のない患者がスクリーニングされますので、医療現場の負担が減ることに繋がります。ただ一方で外来患者数の減少によって、経営が厳しくなる医療機関が出てくるかもしれません。

 

新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐための時限的・特例的な対応として、厚生労働省は410日に電話やオンライン診療システムなどの情報通信機器を用いた初診を解禁しました。具体的には、①医療機関への受診歴がない患者に対して、初診を行うケース(初めての患者の初診)、②過去に受診歴はあるが、現在は定期受診していない患者に対して、初診を行うケース(受診歴がある患者の初診)、③定期通院中の患者に対して、新たに別の疾患・症状についての診断や処方を行うケース(再診患者の新たな症状への対応)の3パターンです。それ以前に再診についても時限的な措置として、④高血圧患者の血圧上昇など想定内の症状変化に対する薬の追加や変更(再診中の処方変更)、⑤定期的に受診している患者への処方の継続(再診中の処方継続)を、電話や情報通信機器を用いて行うことができるようにしました。

更にその普及のために、厚生労働省や自治体のホームページにおいて、電話や情報通信機器を用いて診療を実施する医療機関の一覧を開示しており、複数の民間事業者が開示情報に基づいた対象医療機関の検索サイトを作っています。医療機関の直接受診による感染を不安に感じる患者は、積極的にオンライン受診先を探すのではないでしょうか。

Withコロナ時代」が長期間に亘れば、オンライン診療という新たな選択肢が長期間利用され普及することで、時限的・特例的という制限は雲散霧消してしまい、特に再診患者については利用するのが当たり前になってしまう可能性はないとは言えません。

 

LINEヘルスケアのサービスは、現時点においてはLINE8,400万人という利用者向けの「遠隔健康医療相談」機能の提供で留まっていますが、今後は図表のように相談者の居住地近隣のエムスリーの医師会員等の医療機関の紹介及び「診療予約」、その後の通常診療や「オンライン診療」、薬剤師会員が運営する薬局等による「オンライン服薬指導」といったサービスが一気通貫で繋がる可能性が見えてきます。

これまで海外と比較して進んでいなかった日本のテレワーク、オンライン教育・学習・研修や、紙とハンコ文化などが一気に変化する兆しがあり、さまざまな分野・業種で想定していなかったパラダイムシフトが起こりそうです。医療の分野も例外ではないでしょう。医療機関の経営者は「Afterコロナ時代」を見据え、「Withコロナ時代」の間に準備をしておく必要に迫られているのではないでしょうか。

 

図表 LINEヘルスケアの事業内容のイメージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出典:LINEヘルスケア株式会社 Websiteより

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2020年

7月

20日

オンライン診療、始めるなら今でしょ!

 「この機に、オンライン診療をはじめ、社会のあらゆる分野で遠隔対応を一気に進めることで、未来を先取りするような新たな日常をつくりあげていきたい」。安倍首相は5月19日に開かれた国家戦略特別区域諮問会議でこう述べました。

診療報酬を議論する中央社会保険医療協議会において対面診療の重要性を永年に亘り訴えてきた日本医師会でしたが、5月27日に公表した「新しい生活様式」を支える「本人に適した生活習慣」の実践に向けた提言では、「外出自粛要請下等であっても、継続的な健康支援が可能となるよう、かかりつけ医等との連携によりICTを適切に活用し、健康状態を自ら把握、管理し、適宜、健康相談・指導等を受ける」ことを4本柱の一つに盛り込んでいます。

 

厚生労働省によれば、5月25日時点においてオンライン診療を実施する医療機関は、全国で 14,500施設超まで増加しています。全国で活動中の医療施設数は179,090(うち「一般診療所」は102,105施設、「歯科診療所」は68,613施設、201810月1日現在)ですので、医療機関の規模の大小の違いは抜きにして、平均して約8%の医療施設がオンライン診療を実施しているようです。3月上旬時点の実施率は2%未満でしたので、急速に増加したことがわかります。新型コロナウイルスへの感染を回避する目的で、患者が一時的に受診を控える動きが顕在化し、医療機関側の意識に変化が生じたことがうかがえます。

 

「現代はVUCA(ブーカ)の時代になった」と言われています。VUCAとは、Volatility(不安定性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの英単語の頭文字からなる略語です。あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が次々と発生するため、将来の予測が困難な状態を指す言葉です。

「変化が激しい」「先が見えない」とは、いつの時代でも言われることですが、現代は明らかにVUCAの度合いが加速しています。その理由の1つは、テクノロジーが進化するスピードが猛烈に上がっていることだと思います。医療の場合は、スマートフォンの普及や5Gの開始で、インターネット経由で医師と患者が簡単につながり、高精度の画像を遅滞なく送受信できる環境が整いました。その結果、医療相談や診療、画像診断、病理診断、健康管理、服薬指導などがオンラインで遠隔でできるようになり、物理的な距離の制約はほぼなくなりました。

 

2018年度診療報酬改定においてオンライン上の診察を保険診療として認める「オンライン診療料」などが初めて創設されました。ただ日本医師会の強力な交渉力によって対象患者の範囲はかなり限定的でしたので、現場の特にご年配の医師は「これまでと同様に対面診療を続ければ、今後もきっと大丈夫だろう」と考えられていたのではないでしょうか。

ただ新型コロナウイルスの発生で環境は大きく変わりました。進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われていますが、VUCAな世界で求められるのは「変わる早さ・速さ」です。環境や顧客ニーズの変化に合わせて医療機関も俊敏に変わる必要があります。

 

早く・速く変化に対応すると当然リスクはあります。ただ一方で大きなメリットがあります。

オンライン診療を他院に先駆けて実施していた医療機関は、あくまで推測ですがオンライン診療システムを販売する会社から、オンライン診療の操作方法や通信不良時の対応から集客の仕方、保険外費用の設定方法や料金の決済方法まで、手厚いアドバイスを受けていたのではないでしょうか。

たとえばドクターの皆さんが新規開業した際には、開業当初の患者には必要以上に丁寧に対応されたと思います。それと同じです。オンライン診療を始める医療機関がどんどん増えてくれば、システム提供会社が等しく丁寧な対応をするのは徐々に難しくなってくるでしょう。

オンライン診療を早く開始し、速く地域に認知をしてもらえれば、「もしオンライン診療を受けるなら、この地域では〇〇クリニック」という状況をつくれます。最初のうちはオンライン診療を実施している医療機関が少ないので、後から同じことを始めるよりもかなり有利に進められます。

もちろん先行して取組むことはリスクを伴います。オンライン診療は対面診療と比較して点数が低いため、既存患者がオンライン診療にシフトしたりしてオンライン診療の割合が高くなれば診療単価は下がってしまい、患者数に変化がなければ売上は減少してしまいます。

ただ図1のように同一診療圏内の他院のかかりつけ患者が、何らかの事情で通院が難しくなりオンライン診療を選択せざるを得なくなった場合は、当院の患者に変わるかもしれません。また診療圏外の患者も、近くにオンライン診療を実施している医療機関が無ければ、当院でオンライン診療を受け、その後に当院のかかりつけ患者になるかもしれません。

図表2のように新たな試みを早く速く実行すれば、先行者優位を築くことができます。医療の質を高める地道な取組み(Do Better)をしても、地域住民にはなかなか気づいてもらえません。一方で他院では実施していない取組み(Do Different)をすれば、一部の他院の患者は当院に対して関心をもつでしょう。

他業種の例として、セブン‐イレブンがあげられます。2001年に、既存の金融機関からは成功する確率は非常に低いと言われていた銀行業へ参入し、店内にセブン銀行ATMを設置しました。ATMを設置したことで、他のコンビニからの顧客獲得、既存顧客の来店回数増加、ついで買いによる売上増加などの効果がありました。その後もセルフでのコーヒー販売サービスの開始など、他社よりも早く速い取組みを続けることで、顧客数や客単価で他のコンビニを引き離しています。

 

オンライン診療を顧客目線でみると、事前に24時間インターネット予約が可能で、希望する日時に受診できる、通院時間や受付での待ち時間と交通費が必要ない、仕事や家事の合間に診察を受けられる、院内感染・二次感染のリスクがない、周りの目が気にならない(心療内科や精神科などの場合)、自宅に処方箋や薬が届く、支払いは簡単にクレジットカード決済などキャッシュレスでできるなど、多くのメリットがあります。

忙しい会社員、幼児や要介護者がいて気軽に外出しづらい主婦、けがをしていたり要介護状態であったりして外出が困難な方にとっては、対面診療と比較して医療の質が多少落ちたとしても、オンライン診療のメリットの方が大きいと感じるように思います。もちろんターゲットとする顧客層によりますが、医療機関としてこのような顧客ニーズを無視するのは難しそうです。早いうちに患者に対して対面診療だけではなくオンライン診療も選択肢として準備しておく必要はあるのではないでしょうか。

 

図表1 新たな試みを実施することで想定されるメリット

 

図表2 環境変化への対応による効果

 

 

 

出典:平井孝志(2017)「時間」が企業の勝負を支配する時代
 『Harvard Business ReviewWebsite

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2020年

6月

10日

オンライン診療を開始することの意義

「この機に、オンライン診療をはじめ、社会のあらゆる分野で遠隔対応を一気に進めることで、未来を先取りするような新たな日常をつくりあげていきたい」。安倍首相は5月19日に開かれた国家戦略特別区域諮問会議でこう述べました。

診療報酬を議論する中央社会保険医療協議会において対面診療の重要性を永年に亘り訴えてきた日本医師会でしたが、5月27日に公表した「新しい生活様式」を支える「本人に適した生活習慣」の実践に向けた提言では、「外出自粛要請下等であっても、継続的な健康支援が可能となるよう、かかりつけ医等との連携によりICTを適切に活用し、健康状態を自ら把握、管理し、適宜、健康相談・指導等を受ける」ことを4本柱の一つに盛り込んでいます。

 

厚生労働省によれば、5月25日時点においてオンライン診療を実施する医療機関は、全国で 14,500施設超まで増加しています。全国で活動中の医療施設数は179,090(うち「一般診療所」は102,105施設、「歯科診療所」は68,613施設、201810月1日現在)ですので、医療機関の規模の大小の違いは抜きにして、平均して約8%の医療施設がオンライン診療を実施しているようです。3月上旬時点の実施率は2%未満でしたので、急速に増加したことがわかります。新型コロナウイルスへの感染を回避する目的で、患者が一時的に受診を控える動きが顕在化し、医療機関側の意識に変化が生じたことがうかがえます。

 

「現代はVUCA(ブーカ)の時代になった」と言われています。VUCAとは、Volatility(不安定性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの英単語の頭文字からなる略語です。あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が次々と発生するため、将来の予測が困難な状態を指す言葉です。

「変化が激しい」「先が見えない」とは、いつの時代でも言われることですが、現代は明らかにVUCAの度合いが加速しています。その理由の1つは、テクノロジーが進化するスピードが猛烈に上がっていることだと思います。医療の場合は、スマートフォンの普及や5Gの開始で、インターネット経由で医師と患者が簡単につながり、高精度の画像を遅滞なく送受信できる環境が整いました。その結果、医療相談や診療、画像診断、病理診断、健康管理、服薬指導などがオンラインで遠隔でできるようになり、物理的な距離の制約はほぼなくなりました。

 

2018年度診療報酬改定においてオンライン上の診察を保険診療として認める「オンライン診療料」などが初めて創設されました。ただ日本医師会の強力な交渉力によって対象患者の範囲はかなり限定的でしたので、現場の特にご年配の医師は「これまでと同様に対面診療を続ければ、今後もきっと大丈夫だろう」と考えられていたのではないでしょうか。

ただ新型コロナウイルスの発生で環境は大きく変わりました。進化論を唱えたダーウィンは、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われていますが、VUCAな世界で求められるのは「変わる早さ・速さ」です。環境や顧客ニーズの変化に合わせて医療機関も俊敏に変わる必要があります。

 

早く・速く変化に対応すると当然リスクはあります。ただ一方で大きなメリットがあります。

オンライン診療を他院に先駆けて実施していた医療機関は、あくまで推測ですがオンライン診療システムを販売する会社から、オンライン診療の操作方法や通信不良時の対応から集客の仕方、保険外費用の設定方法や料金の決済方法まで、手厚いアドバイスを受けていたのではないでしょうか。

たとえばドクターの皆さんが新規開業した際には、開業当初の患者には必要以上に丁寧に対応されたと思います。それと同じです。オンライン診療を始める医療機関がどんどん増えてくれば、システム提供会社が等しく丁寧な対応をするのは徐々に難しくなってくるでしょう。

オンライン診療を早く開始し、速く地域に認知をしてもらえれば、「もしオンライン診療を受けるなら、この地域では〇〇クリニック」という状況をつくれます。最初のうちはオンライン診療を実施している医療機関が少ないので、後から同じことを始めるよりもかなり有利に進められます。

もちろん先行して取組むことはリスクを伴います。オンライン診療は対面診療と比較して点数が低いため、既存患者がオンライン診療にシフトしたりしてオンライン診療の割合が高くなれば診療単価は下がってしまい、患者数に変化がなければ売上は減少してしまいます。

ただ図1のように同一診療圏内の他院のかかりつけ患者が、何らかの事情で通院が難しくなりオンライン診療を選択せざるを得なくなった場合は、当院の患者に変わるかもしれません。また診療圏外の患者も、近くにオンライン診療を実施している医療機関が無ければ、当院でオンライン診療を受け、その後に当院のかかりつけ患者になるかもしれません。

 

図表1 新たな試みを実施することで想定されるメリット

図表2のように新たな試みを早く速く実行すれば、先行者優位を築くことができます。医療の質を高める地道な取組み(Do Better)をしても、地域住民にはなかなか気づいてもらえません。一方で他院では実施していない取組み(Do Different)をすれば、一部の他院の患者は当院に対して関心をもつでしょう。

 

図表2 環境変化への対応による効果

 

 出典:平井孝志(2017)「時間」が企業の勝負を支配する時代
 『Harvard Business ReviewWebsite

 

他業種の例として、セブン‐イレブンがあげられます。2001年に、既存の金融機関からは成功する確率は非常に低いと言われていた銀行業へ参入し、店内にセブン銀行ATMを設置しました。ATMを設置したことで、他のコンビニからの顧客獲得、既存顧客の来店回数増加、ついで買いによる売上増加などの効果がありました。その後もセルフでのコーヒー販売サービスの開始など、他社よりも早く速い取組みを続けることで、顧客数や客単価で他のコンビニを引き離しています。

 

オンライン診療を顧客目線でみると、事前に24時間インターネット予約が可能で、希望する日時に受診できる、通院時間や受付での待ち時間と交通費が必要ない、仕事や家事の合間に診察を受けられる、院内感染・二次感染のリスクがない、周りの目が気にならない(心療内科や精神科などの場合)、自宅に処方箋や薬が届く、支払いは簡単にクレジットカード決済などキャッシュレスでできるなど、多くのメリットがあります。

忙しい会社員、幼児や要介護者がいて気軽に外出しづらい主婦、けがをしていたり要介護状態であったりして外出が困難な方にとっては、対面診療と比較して医療の質が多少落ちたとしても、オンライン診療のメリットの方が大きいと感じるように思います。もちろんターゲットとする顧客層によりますが、医療機関としてこのような顧客ニーズを無視するのは難しそうです。早いうちに患者に対して対面診療だけではなくオンライン診療も選択肢として準備しておく必要はあるのではないでしょうか。

 

 

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2020年

5月

15日

新型コロナウィルス禍の患者数減少への対応

日経メディカル Online3月中旬に実施した緊急調査によりますと、新型コロナウィルス感染症の影響などによって、外来患者数が1年前の同じ時期と比べて減少していると回答した医師は全体の53.4%でした。

新型コロナウィルスを警戒して手洗いやマスクの徹底がされたことで他の感染症患者が減少したり、外出自粛によって外傷患者が減少したりするなどの要因は考えられますが、一方で医療機関に行くこと自体にリスクがあると考え、定期的な受診を控えていた慢性期の患者もいたでしょう。

不安を抱えているかかりつけの患者に対して積極的に安心を与えることは、患者の自院への固定客化を図るためにも大切なことだと思います。

 

安心を与えるためには、自院の状況をまず知らせる必要があります。47日に政府が7都府県に対して緊急事態宣言を出しました。数日後に対象地域の診療所のホームページを10か所程度調べた限りでは、ほとんどの医療機関は厚生労働省が発信している受診の目安や帰国者・接触者相談センターへの相談方法程度の情報発信であり、自院のかかりつけの患者への対応方針等の情報は非常に乏しい状況でした。

患者としては自らのかかりつけ医療機関が、感染予防のために密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、密集場所(多くの人が密集している)、密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)という感染を拡大させるリスクが高まる3つの条件に対してどのような対策を講じているのか、消毒などの衛生管理をどのようにしているのかを知りたいところです。

例えば、医療機関よりも影響度合いの大きい飲食業を倣って、「当院では、入口に消毒液を配置し、患者様に手指の消毒のお願いを徹底しております。」「午前と午後の診療開始前に、待合室の椅子や受付のカウンターなどを、職員が消毒しております。」「待ち時間に普段ご覧いただいている広報誌や冊子など、複数の方が触られるものは当面は待合室から除いています。」など患者が不安に感じそうな内容をホームページで発信することで、感染予防への取組を知らせることができます。また薬の処方等で定期的に通院しないといけない患者には、医療機関から電話やはがき等で積極的に知らせることも考えられます。

 

3つの「密」については、定期的な換気や空気清浄機の設置による密閉空間への対策は比較的簡単ですが、密集、密接の予防は難しいところです。密集、密接にしないためには、医療機関内の待ち人数を少なくする必要があります。その方法を図表に整理しました。

大きく分けますと、来院する患者数をいかに少なくするか、来院の時間帯をいかにして分散させるかという来院患者数を制御する考え方と、医療機関内の患者滞在時間をいかに短くするかという医療機関内での運用改善の考え方があります。

来院する患者数を少なくするのは経営の観点からは厳しい選択ですが、かかりつけの患者に安心を与えるための非常時の対応として、慢性期患者の一時的な長期処方への移行や、一部の慢性期患者をオンライン診療に移行するなど考えられます。また超高齢化社会への対応の観点から、通院が困難なかかりつけの患者からの要請に対応するために往診を開始することも検討の余地があるかもしれません。

患者の来院時間帯の分散については、予約診療による方法が歯科診療所では一般的ですが、医科の診療所ではまだまだ少ないように感じます。疾病の種類が多く患者ひとりひとりの診療時間を事前に読めないため難しいところです。ただほとんどの患者がスマートフォンなどを保有していて、常時インターネットに繋がる環境の場合は、診療予約システムを導入することで改善をはかれます。「待ち時間」と「院内待ち時間」を分離し、「院内待ち時間」を短くすることができれば、「実際は混んでいても、院内待ち時間は短い」という理想的な状態をつくれます。院外(駐車場、風除けやベンチの設置、近くで他の用事を済ませる等)にて待機してもらい、診察前に予約システムによって院内に入ってもらうように自動案内をすることで、院内の患者数を制御できます。

そのほかに自院のホームページに診察前の待ち患者数を遂次掲示したり、曜日時間帯別の混雑具合の統計グラフを知らせたりすることで、患者自身に判断材料を提供する方法もあります。また新型コロナウィルス対策として、一部のスーパーが高齢者や障害者を対象にした専用の買い物時間を設定していましたが、医療機関の場合は慢性期と急性期、感染症と非感染症の患者の診療時間帯を分離したり、かかりつけの高齢者の患者のための診療時間帯を設置(午前の早い時間等)したりすることも考えられます。

 

次に検討すべきは、医療機関内の患者の滞在時間を短くするための運用の改善です。

待ち時間で最も長くなるのは、受付後から診察開始までの時間です。医師の診察時間がどうしてもネックになりますが、医師の診察時間を短くするために、結果的に粗診粗療になりますと患者の満足度が下がります。そうならないようにタスクシフトを導入します。医師の診察前に、看護師・医療クラークによる問診やAIを活用した自動問診システムによって、医師の時間を使わずに患者の情報を収集します。医師は電子カルテに反映された患者情報に基づいて的確に追加の問診や検査等を行えば、医療の質を下げることなく時間の短縮をはかることは可能です。ただ看護師や医療クラークの教育や、問診結果の記載方法の標準化・効率化などの準備や機器の導入費用が必要なため、短期的に実施するのは難しいでしょう。

院外処方が進んだため院内でのお薬待ちはほとんどなくなりましたが、会計待ちは課題として残っています。最近では外来患者数が千人超の大病院中心ですが、医療費を後払いする仕組みを導入することで会計待ち患者を大幅に削減している医療機関も出てきています。

新型コロナウィルスの影響が完全になくなったとしても、待合室の密集、密接は、患者にとって決して好ましい環境ではありません。この機会にできることから検討されてはいかがでしょうか。

 

図表 待合室を密集、密接にしないための工夫例

来院患者数の制御

医療機関内での運用改善

ü  慢性期患者の一時的な長期処方への移行

ü  一部の慢性期患者のオンライン診療への移行

ü  通院できない患者からの要請による往診

ü  予約診療(システム)の導入

ü  待ち患者数の見える化(ホームページに掲載)

ü  慢性期と急性期、感染症と非感染症の患者の診療時間帯の分離

ü  かかりつけの高齢者の患者のための診療時間帯の設置(午前の早い時間等)

ü  院外での待機&診療予約システムによる院内への自動案内

ü  看護師・医療クラークによる問診、自動問診システムによる診療前の電子カルテへの患者情報の反映

ü  医療費後払いの導入による会計待ち患者の削減

 

 

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2020年

4月

10日

地域住民から選ばれるためのオウンドメディアによる継続的な発信

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」が2月3日に横浜港に入港して以降、テレビニュースやワイドショーでは連日にわたって新型コロナウイルスを取り上げ、インターネット上でも大量の情報が流れていました。

ただ残念なことに、感染者以外は必ずしも着ける必要性のないマスクを消費者が買い漁ったために医療機関がマスク不足に陥ったり、マスクをせっかく着けていても平気でマスクの外側を触り何のためにマスクを買って着けているのかわからないような人たちも見かけたりしました。

 

健康や医療に関する情報を入手、理解、評価、活用するための能力を「ヘルスリテラシー」といいますが、2014年に実施されたヨーロッパヘルスリテラシー調査質問紙による調査によれば、図表1のように日本人のヘルスリテラシーは他の国と比べて低いようです。ちなみに質問は、「医師から得た情報がどのように自分に当てはまるかを判断するのは難しいか?」、「治療法が複数ある時、それぞれの長所と短所を判断するのは難しいか?」「メディア(テレビ、インターネット、その他のメディア)から得た病気に関する情報が信頼できるかどうかを判断するのは難しいか?」などです。

 

図表1 国別のヘルスリテラシーの平均点

 

 

出典:中山和弘他「健康を決める力」Website

 

平成31年3月15日 に公表された厚生労働省の「平成29年受療行動調査(確定数)」によりますと、ふだん医療機関にかかる時に「情報を入手している」人の割合は、図表2のように外来時は 77.7%となっています。「情報を入手している」人について、情報の入手先別にみると、「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く70.5%。次いで「医療機関が発信するインターネットの情報」が 21.2%となっています。

「医療機関が発信するインターネットの情報」は、今回調査では21.2%ですが平成23年実施の同調査では13.1%であり、1.6倍になっていることがわかります。15~64歳についてみれば、30%超の人が「医療機関が発信するインターネットの情報」を情報入手先にしています。

また「SNS、電子掲示板、ブログの情報含む医療機関、行政機関以外が発信するインターネットの情報」を情報入手先にしている人は12.1%います。うち15~39歳は3割弱と高い割合を占めています。

70.5%と最も割合の高い「家族・知人・友人の口コミ」の大元の情報源にはインターネット情報も含まれている可能性もあるため、患者や地域住民にとって「医療機関が発信するインターネットの情報」はかなり重要なことがわかります。

 

    図表2 年齢階級別にみたふだん医療機関にかかる時の情報入手先(外来時) (複数回答、単位%

 

 

日本医師会では、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と位置づけています。

新型コロナウイルスについても、玉石混交の情報があふれる状況下で、かかりつけ医がインターネット等を活用し、患者や地域住民に正しい情報を積極的に伝える役割を担うことができていれば、状況はより良くなったのではないかと想像します。

225日に首相官邸が「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を公表し、地域で患者数が大幅に増えた状況では、「風邪症状が軽度である場合は、自宅での安静・療養を原則とし、状態が変化した場合に、相談センター又はかかりつけ医に相談した上で、受診する」としました。ただかかりつけ医に相談と言っても、日医総研が2017年に実施した「第6回日本の医療に関する意識調査」によれば、図表3のようにかかりつけ医を持つ人の割合は50歳代以上では半数を超えていますが、40歳代以下では半数未満です。

 

図表3 年代別のかかりつけ医の有無

 

 

「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」にかかりつけ医の役割が明示されたため、自分が新型コロナウイルスではないかと心配する地域住民は、かかりつけ医に相談しないといけなくなりました。かかりつけ医をもっていない地域住民は、どうするでしょうか? おそらくインターネットで自分の住んでいる地域の医療機関のホームページを調べるのではないでしょうか。私ならば、医療機関のホームページに新型コロナウイルスに関して、分かる範囲での正しい病気の情報や普段の生活をする上での注意事項など、患者や地域住民が求めている情報を提供している医療機関を選択します。

 

スマートフォンなどのデジタルメディアの普及によって、誰もが自分の好きなときに、好きな情報を、好きなだけ入手し、発信・交換まで可能になりました。総務省が毎年調査・公表している「情報通信白書」によると、2018年の調査でインターネット利用率は60代で76.6%、70代で51.0%と年々増加しています。

マーケティング活動を行う際には、誰もがいつでも手軽に情報を入手できるような場として、オウンドメディア(Owned Media:自ら運営する媒体の総称。パンフレットや広報誌、自社のWebsiteやブログなど)を保有し、顧客が求めている情報を用意しておくことが重要な時代になりました。コンテンツマーケティングと呼ばれていますが、顧客に提供する商品・サービスの情報や顧客にとって価値のある情報を、客観的な裏付けのある根拠に基づき、顧客にわかりやすい言葉、表現で、こまめに説明し、顧客を引き寄せ、顧客と良好な関係、信頼関係をつくることで、繰り返し購入してもらったり、他の顧客に薦めてもらったりできるようにすることです。

 

成果を出すためには地道に情報を収集・分析・発信する作業を、本来ならば長期間継続することが必要です。ただ今回の新型コロナウイルスについては、かかりつけ医がクローズアップされたため、病気に関する情報をわかりやすくタイムリーに提供することで、かかりつけ医をもたない地域住民を自院の新規患者にする大きなチャンスだったかもしれません。例えば、一般の人はほとんど見ることのない厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症に関するQA」の内容を抜粋し、自院のWebsiteに簡潔明瞭な表現にして掲載するなど、ひと手間かければできることです。

 

オウンドメディアによる継続的な発信は、地域に根差したサービスを永年に亘って提供する医療機関には適した手法です。多少の労力はかけないといけないですが、費用はそれほどかかりません。継続的に取り組んでいる医療機関はまだまだ少ないことから、地域住民からかかりつけ医療機関として選ばれるために取り組まれてはいかがでしょうか。

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2020年

3月

20日

医療分野における5Gの導入

4月から携帯電話大手が順次、第5世代(5G)の移動通信システムを本格導入します。「5G」は「5th Generation」の略で、「第5世代移動通信システム」と呼ばれる次世代通信規格です。その特徴は3つあります。

 

 第一に超高速。現在の移動通信システムよりも100倍速く、例えば2時間の映画を3秒でダウンロードすることが可能になります。更に大容量のデータを必要とする3D映像やストリーミング動画サービスなどのダウンロードも実用化できます。

 

第二に超低遅延(リアルタイム)。通信ネットワークにおける遅延、即ちタイムラグを極めて小さく抑えられます。例えば、自動運転のように高い安全性が求められるものにおいては、リアルタイムでの通信が必要です。またロボットの遠隔制御や遠隔医療といった分野においても超低遅延は不可欠でしょう。

 

第三に多数同時接続。基地局1台から同時に接続できる端末を従来に比べて飛躍的に増やせます。例えば、これまでは自宅でパソコンやスマートフォンなど数個程度の接続でしたが、5Gにより100個程度の機器やセンサーを同時にネットに接続することができるようになります。例えば、災害時に大勢の避難者にウェアラブル端末を着けて健康状態を遠隔で確認する、といった用途への活用が考えられます。

 

総務省は2017年度から5Gの実現による新たな市場の創出に向けて、NTTドコモが実施主体となり、エンターテインメント、スマートシティ/スマートエリア、オフィス/ワークプレイス、交通、医療の各分野で総合実証試験をしています。医療分野については、図表1のように2年間で3つの実証試験が行われています。

NTTドコモのプレスリリースによれば、2017年度と2018年度に和歌山県において、都市部と地方の医療格差の問題を解決する遠隔診療の高度化に関する実証試験が行われました。和歌山県立医科大学地域医療支援センターと国保川上診療所及び訪問診療の現場を、5G を含む高速通信ネットワークで接続。高精細4KTV会議システムの映像・音声を2拠点間で伝送し、医師間の意見交換や、医師と患者間のコミュニケーションに活用しました。実証試験は、和歌山県立医科大学が提供する遠隔外来サービスの患者に対し実施され、診療科に応じて、国保川上診療所から和歌山県立医科大学に向けて外傷診断用の4K接写カメラの映像や、内部疾患診断用の超音波診断装置の映像、診療所側で予め撮影したMRI画像の伝送を同時に実施しました。

 

5Gにより従来の100倍以上のデータレートを必要とする高精細映像を2拠点間で共有することで、遠隔診療に携わる医大の専門医にとって「明瞭な映像や医療機器の情報により症状の判断がしやすい」「臨場感があり間近で診ている感覚を持てる」など診療の負担を軽減できること、また、地方の診療所に勤める医師の育成や地域医療のレベルアップを図れることが確認できたとのことです。また

 

「遠隔教育」として、診療所の若手医師が操作する内視鏡(胃カメラ)の映像を、5Gを含むネットワークを介して和歌山県立医科大学の専門医のもとへ伝送し、専門医から若手医師に対し、スコープの回転や停止などの操作、病変の観察ポイントに関してスムースに指導を行うことができたとのことです。

 

2018年度には群馬県前橋市において、前橋市消防局、ICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構、前橋赤十字病院の協力のもと、日本で初めて5Gを活用した救急医療分野の実証試験が行われました。その狙いは、一刻を争う急患搬送の現場において、適切な処置を行うまでの時間を短縮するため、救急車、ドクターカーおよび救急指定病院の3者間を5Gで接続し、患者の容態の情報などを高精細映像で共有することです。試験は一連の救急搬送シナリオを再現する形で実施され、患者を収容した救急車からは、医師を乗せたドクターカーと合流するドッキングポイントに向かうまでの道中、ベッドサイドモニタや俯瞰・接写カメラ映像などをパッキングした4K映像を、5Gを介してドクターカーおよび受入予定の救急病院と共有しました。ドクターカー乗務の医師は出血状況などを確認して適切な初動措置を救急隊員に指示することができたほか、救急病院医師は前橋工科大学が提供したマイナンバーカードシステムを活用した救急搬送支援システムを使って患者の既往歴を首尾良く確認しました。次いで、ドッキングポイントで患者をドクターカーに乗せ替えた後、ドクターカーに搭載された超音波診断装置や12誘導心電計、俯瞰・接写カメラ等の映像をパッキングした4K映像を、5Gを介してドクターカー・救急病院間で共有し、両拠点の医師間で所見の確認を行い、受入診療科の決定を行いました。

 

参加した医師からは、「5Gで見る映像は鮮明かつ情報量が豊富」「音声コミュニケーションに頼った従来の救急搬送時の推測とは異なり、実際に医療機関で患者を手当するのと同じ状況を再現できている」「救急車の中の状況を克明に外部に発信できるようになることは意義が大きい」などの好評を得て、本ソリューションが救命率の向上に貢献し得ることを確認したとのことです。

 

 実証実験の結果から判断する限りでは5Gの技術面での期待は大きく、普及に向けては導入時とその後の運用費用の負担の問題、遠隔診療に関する診療報酬上の規制の壁の問題が立ちはだかります。せっかくの技術を充分に活かすのか、宝の持ち腐れにするのかは、政府の方針次第です。具体的には、働き方改革や医師の偏在等の課題、生活習慣病患者の増加などの課題を解決するために、「対面診療の原則」にこだわらずICTを活用した診療を積極的に取り入れる決断をするかどうかです。

いずれにしても各医療機関は、5Gの普及が進む2年後以降の診療報酬改定に備えるために、遠隔診療の技術動向や今後の実証実験の結果などについて、継続的に情報収集をすることは欠かせないでしょう。 

 

 

図表1 総務省の5G総合実証試験

実施年度

自治体

実証試験内容

2017年度

和歌山県

 

5Gを活用した遠隔診療の高度化に関する実証実験(総合病院と診療所の医師間及び医師・患者間のコミュニケーション)

2018年度

和歌山県

日高川町

5Gを活用した遠隔診療の高度化に関する実証実験(訪問診療時の専門医による支援/胃カメラ遠隔レクチャー)

群馬県

前橋市

5Gを活用した救急搬送高度化ソリューションに関する実証実験(救急車・ドクターカー・救急病院間の患者情報の即時共有)

 

出典:総務省Website、株式会社NTTドコモの5G総合実証試験に関わるプレスリリース

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2020年

2月

25日

医療機関のSDGsに対する取組

最近『SDGs』という言葉を耳にされた方は多いのではないでしょうか。

SDGsとはSustainable Development Goalsの略で、20159月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている2016年から2030年までの国際目標です。通称「グローバル・ゴールズ」は、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることを目指す普遍的な行動を呼びかけています。

具体的には、持続可能な世界を実現するための17のゴール(図表1参照)・169のターゲットから構成されています。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組む普遍的なものであり、日本では外務省を中心に積極的に取り組んでいます。

 

昨年923日にニューヨークで開かれた「温暖化対策サミット」において、スウェーデンの16歳の少女、グレタ・トゥーンベリさんが、気候変動が緊急事態にあると強烈にアピールしました。彼女は、大人たちに計画するだけではなく実効性を伴う本気の対策を要求し、若者たちを中心にして世界中に賛同の波が広がっています。

その背景にあるのは、昨年秋に関東地方や甲信地方、東北地方などに甚大な被害をもたらした台風でもわかるように、温暖化がこれまで考えられた以上に急速に進み、世界的に人々の生活の持続可能性が深刻な状態になってきているという事実です。

 

昨年の5月に実施された日本経済新聞社のSDGs経営調査によりますと、6割の企業が中長期経営計画にSDGsを織り込んでいると回答しており、環境や社会への配慮、企業統治の向上という概念の「ESG」とともに自社の事業や社会貢献活動に関連付け、経営指針として採用する企業が増えています。例えばビール業界大手のキリンホールディングスは、飲酒マナーの啓発を目指して「スロードリンク」というスローガンに掲げています。売上が減ったとしても、アルコールはゆっくりほどよい量を飲むのが社会全体にとってよいという考えです。

世界全体がSDGsの達成を目指す中、これを無視して事業活動を行うことは、企業の持続可能性を揺るがす「リスク」をもたらすような雰囲気になってきています。具体的には、企業の評判が下がる、規制が強化された際に規制に抵触してしまう、消費者が商品を購入してくれなくなる、といったものがあります。

 

医療機関でも既にSDGsに取り組まれているところはあると思います。なかでも取組みに積極的な群馬県高崎市内所在の産科婦人科舘出張(たてでばり)佐藤病院は、20181221日に第2回ジャパンSDGsアワード特別賞を受賞しました。ちなみにジャパンSDGsアワードは、持続可能な開発目標達成に向けた企業・団体等の取組を促し、オールジャパンの取組を推進するために2017年に外務省が創設したものです。

医療機関では初めての受賞であり、その選出理由は、全ての女性が健康である社会づくりに、女性の生涯にわたる専門病院として貢献しており、取組み内容は国内外のロールモデルになり得ることからとのことです(図表2参照)。同院のWebsiteには、自院の理念・基本方針のもと、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動に取り組み、次世代が健康に活躍できる社会の実現を目指すことが掲載されています。

 

同院は江戸時代から12代続いており、時代に合わせた安心・安全な医療と健康増進サービス等を提供しています。「生涯を通じた女性の健康支援」として女性アスリートへのサポートや、「女性の健康教育」としてプレコンセプションケア(妊娠前健康管理)の実践と啓発など、産婦人科を主軸に健康な次世代の創出とライフサイクル全般に通じた女性包括支援を実施しています。

より具体的には外務省の資料によりますと、障がいを持つ子どもへの支援基金との連携や障がい者雇用の実施、性犯罪支援者ワンストップ窓口の設置など、地域共生社会の実現に貢献しています。また地元企業や大学、NPO法人と連携して女性健康セミナーなどを実施するなど、外部機関との連携活動を通じて、社会、環境、経済に配慮した病院運営を行っています。その他にも患者を対象にアンケートをとり、毎月集計・評価し、結果のフィードバックを職員に実施することで、経営の透明性の維持と説明責任を果たしています。

 

もともと日本には、会社が世のため人のために存在するという考え方、近江商人の「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」の精神や渋沢栄一の道徳経済合一説*にもあるように、当たり前の考え方として脈々と受け継がれています。世界全体の会社のうち、200年以上持続している会社の約半分が日本にあるという事実が、これを証明しているのかもしれません。

医療サービスは、地域共生社会、地域包括ケアシステムに不可欠な地域のインフラストラクチャーであり、当然、持続可能性が高いことが期待されています。地域密着型の医療機関として、地域住民のため、持続ある社会システムのために、自院の経営にSDGsの考え方を積極的に取り入れ、外部にアピールすることを検討されてはいかがでしょうか。

*企業の目的が利潤の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要であり、国ないしは人類全体の繁栄に対して責任を持たなければならないという説(公益財団法人渋沢栄一記念財団Websiteより)

 

図表1 持続可能な開発目標(Sustainable Development GoalsSDGs) 

目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

目標2 飢餓をゼロに

目標3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

目標4 すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

目標6 すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する

目標7 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

目標8 すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する

目標9 レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る

目標10 国内および国家間の不平等を是正する

目標11 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする

目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する

目標13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

目標14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

目標15 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

目標16 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する

目標17 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する

出典:国際連合広報センター Websiteより

 

図表2 産科婦人科舘出張 佐藤病院のSDGsの取組内容

 

 

出典:産科婦人科舘出張 佐藤病院Websiteより

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2020年

1月

20日

医師による医療分野のイノベーション事例

医師や歯科医師の皆さんは、医師法及び歯科医師法の第一条に何が書かれているか覚えていらっしゃいますか。医師・歯科医師の役割について記載されており、その内容は「医師(歯科医師)は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする」です。

医学部を卒業し医師国家試験を合格し臨床研修を修了した後、数年後に起業をする医師が現れてきています。臨床現場の医師不足を考慮すると、起業をする医師が増えるのはいかがなものかと考える方もいらっしゃるかもしれません。ただ起業の目的が国民の健康な生活を確保することでしたら、医師としての役割を果たしていると言えるでしょう。

前々号で紹介したオンライン診療サービス分野のほかに、医師が代表を務め、医療分野のイノベーションに貢献している2つの事例を紹介します。

 

まずは『アプリで治療する未来を創造する』をビジョンとして掲げているキュア・アップという会社です。社長は、慶應義塾大学医学部卒、日本赤十字社医療センターなどで臨床業務に従事し、呼吸器内科医として診療に携わっていた佐竹晃太氏です。同社が開発しているニコチン依存症治療アプリ「CureApp禁煙」はすでに治験を完了し、2019年上期に承認申請し、年内に治療アプリの薬事承認第1号、保険適用第1号になる見通しのようです。

治療アプリのアプリとは、スマートフォンやパソコンなどに入れて使えるソフトウェアで、正式にはアプリケーションと呼ばれるものです。スマートフォンをお持ちの方はご存知でしょう。治療アプリは、クラウドとアプリによるITシステムが患者の自己管理を手助けし、医師をサポートして病気の治療を行います。「行動変容」という既存の医薬品や医療機器とはまったく異なったアプローチで治療をします。

具体的には、治療アプリは患者と医師の双方から得たデータをもとに独自の解析処理を行い、医学的な根拠(エビデンス)に基づいた治療ガイダンスを患者のスマホに送ります。患者にとっては、通院して医師から指導を受けてから数日経過すると、三日坊主で止めてしまいがちですが、個々の患者のスマートフォンに個別化されたタイミングで行動変容を促す治療介入が行われることで、自己管理を続ける意欲が維持され、結果的に治療の効果が上がります。一方で医師にとっては、治療アプリによって患者の日々の記録が蓄積されることで、来院時に医師はその情報をもとにしてより患者に的確な治療や指導ができます。患者は診察時に、自己管理をさぼっていた場合に必ずしも正直に話さないかもしれませんが、治療アプリの情報である程度の事実がわかります。また必要に応じて、患者の病気の状態に合わせて、生活実態や日々の体調を踏まえたリアルタイムの個別対応も可能になります。

 

日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、更に脳血管疾患や心疾患の危険因子となる動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされています。生活習慣病のほとんどは、患者が食事や運動・喫煙・飲酒・ストレスなどの生活習慣などを適切にすることによって病気の進行を抑えることができます。またアルコールや薬物などの依存症やうつ病のような精神疾患も、治療プロセスで行動変容が必要になります。

ちなみにアメリカでは2010年に糖尿病患者向けの治療補助アプリが医療機器として承認取得を得て、大手民間保険会社に保険償還の対象として承認されています。日本においても、かなり近い将来、“医師が臨床の現場でアプリ処方する”ことが普通になるかもしれません。治療アプリは、これまでの薬物療法、手術療法、放射線療法などとは全く異なる治療方法であり、大きなイノベーションと言えるでしょう。生活習慣病は今後の日本の医療費増大に与える影響は大きいため、早期の普及が期待されます。

 

次は、企業ではありませんが医療法人として社会インフラ、医療インフラづくりまで取り組んでいる北原病院グループです。北原病院グループは、カンボジアへの「病院まるごと輸出」で有名ですが、地元の東京都八王子市において、安心・安全・快適・健康な生活を送れるよう、医療の枠にとらわれず、地域の人々の生活をトータルで支えるシステム「トータルライフサポートシステム」と「デジタルリビングウィル」というサービスを提供しています。

医療法人社団 KNIWebsiteによれば、本サービスは会員登録制の個人の意志情報、医療情報・生活情報(本サービス内では「デジタルリビングウィル」と呼ぶ)をもとに包括的な生活サポートをしています。具体的には信頼できる救急病院と連携して自身の健康状態から想定される医療行為や突然の事故、病気の際の緊急処置など様々な状況に際して、自分にとって最も望ましい対応(検査や治療の承諾、延命治療の有無など)を事前に登録しておくことによって、いざという時に速やかな対応がなされます。また本サービスにかかる費用や協力医療機関での医療費の支払いをキャッシュレスで可能とするサービス「トータルライフサポート信託」が三井住友信託銀行株式会社の提供により利用可能になります。

本サービスでは基本健診パックなどの医療・介護サービスはもとより、会員のみが利用できるオプションサービスとして「成果保証型リハビリテーション(医療保険の枠を越えた利用者独自の目標を達成するためのリハビリテーション)」や「目標達成型ライフサポートサービス(介護保険の枠を越えた利用者独自の目標を達成するためのライフサポート)」などの提供を行うことで、病気になる前と病院を退院した後の生活全般を支えていくサービスになっています。

また会員はオプションとして北原病院グループのコールセンターに電話するだけで宅配、ペットケア、自宅のメンテナンス、家電の修理販売、最終的には自分のお葬式まで、必要とする全てのサービスを受けられるようになります。

本取組は、高齢化の進展、高齢者等の独居の増加、普及が進まないリビングウィル、公的医療保険財政が厳しい環境下で求められる保険外サービスなど、課題先進国の日本の解決策となるイノベーションと言えるでしょう。

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2019年

12月

20日

海外の遠隔診療の活用状況

20184月に新設されたいわゆる「オンライン診療料」の届出をしている施設は約15%、そのうちオンライン診療の実績があるのは約16%、つまり全体の約2.4%にしか普及していません。では海外のオンライン診療の状況はどのようになっているのでしょうか? 

 

海外の取組事例について、201828日開催の厚生労働省「情報通信機器を用いた診療に関するガイドライン作成検討会」に提出された資料に詳細が掲載されています。

まず米国については、国土が広大なため、医療施設や医師へのアクセスが限定される地域が一定数存在しているため、早い段階から遠隔診療の整備が行われてきました。1993年に創設されたアメリカ遠隔医療学会によれば、米国には遠隔医療を提供するネットワークが200ほどあり、3,500か所の施設を通して図表1のような遠隔診療サービスが提供されています。一方で遠隔医療の普及には様々な課題が存在しています。保健福祉省が2016年に議会に提出した報告書では、公的保険の支払いの改革や州間のライセンスの障壁、地方の病院への高速ブロードバンド環境の整備などが主要な課題に挙げられています。

  

次に欧州における遠隔医療は、糖尿病管理、プライマリヘルスケア、精神医学、遺伝学、放射線学、病理学、心臓学などを含む複数の分野で利用されており、2015年の世界の地域別市場規模の比較では、欧州は北米に次ぐ第2位となっています。欧州の遠隔医療市場は、2010年の31億ドルから2011年には48億ドルに拡大しており、2019年にはその3倍に近い126億ドルとなることが見込まれています。

 

資料には、遠隔医療を提供する企業の事例として2社が取り上げられています。1社目はイギリスを拠点とし、アイルランドでも活動する企業で、近く東アフリカでもサービスを提供する見通しです。提供しているサービスは、総合診療医とのチャット(スマートフォンなどを使用して総合診療医とチャットができ、具合が悪い時に何をすべきかについてアドバイスを求めることができる。チャットの予約は年中無休で24時間可能)、総合診療医とのビデオ通話(自身のスマートフォンなどから24時間年中無休で通話可能)、処方箋の配送(サービス処方箋を翌日、もしくは最短で同日に自宅や職場、地元の薬局に配送)です。

2社目もイギリスで遠隔医療のサービスを展開する企業で、アプリやウェブサイトを使って総合診療医と対面で話をし、医学的アドバイスや処方箋、紹介状、診断書が提供されます。肌の状態やメンタルヘルス、関節痛、アレルギー、脱毛など様々な分野での診断を行います。

 

一方でアジアの状況をみると、国立研究開発法人科学技術振興機構の研究開発戦略センターのウェブサイトによれば、中国福建省にて世界初となる5G(第5世代移動通信システム:超高速、超低遅延、多数同時接続)通信環境下における遠隔操作外科手術テスト(豚が対象)が成功したとのことです。福建省の大学病院長は、5G技術によってより多くの高品質医療資源が過疎地に迅速に普及し、患者は長距離移動しなくても省レベル、国レベル、さらには世界レベルの専門家の診療を受けられるようになるだろうと説明しています。

 

インドは医師の数が圧倒的に少なく、人口10万人あたりの医師数は約80人と日本の3分の1といわれています。医師不足という状況を解決するために、日本のエムファインというベンチャー企業が現地でスマートフォン診療のサービスを提供しています。日経新聞の記事によれば、利用者は体調や症状をアプリに入力し自らの状態を伝えると、症状に対応可能な医師の一覧が表示され、その場で診療を受けられます。医師とはビデオや写真、音声、テキストでやり取りし、診断後に必要に応じて処方箋が発行されます。診療後もアプリによるやりとりによる継続的なフォローアップもされ、利用者は自らの病歴の管理がやりやすくなります。同社ではAI(人工知能)をフル活用し、利用者の問診情報に基づいて病気を予測し、医師に病名候補を表示したり、追加の問診内容や適切な薬の候補を提示したりもします。AIの精度を高めるために世界のメディカルジャーナルや関連記事を数百万の単位で読み込み、機械学習をさせています。

 

日本のオンライン診療が亀の歩みで進む一方で、面積が広く人口密度の低い地域を抱える国や医療資源の乏しい国においては、AIや5Gを活用した医療分野のイノベーションが急速に進んでいくでしょう。

 

ディープラーニングの活用で翻訳ソフトの精度は目覚ましく向上しています。言語の壁がなくなれば、日本国内で海外の医療サービスを公的保険外で利用する時代がくるかもしれません。例えば、かかりつけ医機能はAIと海外の総合診療専門医に任せ、手術や入院の必要が生じた場合は、国際的医療施設評価機関であるJCIJoint Commission International)認証取得している日本国内の医療機関の紹介を受け、手術は5Gを利用して世界の名医にロボット手術を依頼するようなサービス・パッケージが提供されれば、利用する人も出てくるのではないでしょうか。

 

遠隔診療の米保健福祉省による分類

生中継動画

live video

視聴覚通信技術を用い、患者・介護者・プロバイダーのいずれかとプロバイダーとの間で行われる生中継で双方向のやり取り。ビデオ会議は、遠隔医療の一環として以前からプロバイダー同士の間で行われていたが、現在は多くの企業が、患者と医師が直接やり取りをするサービスを提供している。

ストア・アンド・フォワード

(Store-and-forward)

X線画像・写真などのデジタル画像や動画を、安全な電子通信システムを用いて伝送する。リアルタイムの診察と比べ、この方法を使えば既に収集されたデータを用いることができる。通常、診断情報は、患者のケアの場で収集され、別の場所にいる専門家の元に送られる。画像が送信されてから分析が行われるまでにタイムラグがある。

遠隔医療患者

モニタリング

(Remote patient monitoring

個人の健康・医療データがある場所で収集され、別の場所にいるプロバイダーの元に送られる。主に生活習慣病の管理を行うのに利用されており、ホルター心電計などの機器を使用し、血圧や血中酸素濃度といった情報を医師の元に送る。

モバイルヘルス

mHealth

 

健康を促進することを目的に作成されたスマートフォンのアプリ。

病気にかかる可能性が警告された場合に健康的な行動を取るよう促すメッセージを送るものや、患者が自身のケア計画に従えるようにリマインダーを送るものなどがある。スマートフォンのカメラやマイクロフォン、その他のセンサーを使ってバイタルサインをとらえ、アプリにインプットしたり、遠隔医療患者モニタリングへの橋渡しをしたりすることもできる。

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2019年

11月

28日

医療業界に求められるイノベーション

TBSテレビ『NEWS23』のメインキャスターである小川彩佳さんが、医師で起業家である豊田剛一郎さんと入籍していたというニュースをご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

豊田さんは、東京大学医学部を卒業後、国内の病院で臨床研修を受け、アメリカに留学し米国医師免許を取得。その後、コンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、ヘルスケア業界の企業へのコンサルティングに主に従事、20152月にベンチャー企業である株式会社メドレーに参加し代表取締役医師に就任しています。同社のWebsiteによるとオンライン診療システムの市場において医療機関導入数がNo.1となっています。

豊田さんのように勤務医になった後、医療業界の課題に対して現場の一臨床医として限界を感じ、医療業界の現状を打破するために、コンサル会社にいったん身を置き、時機を見計らって起業をする医師が次々と現れてきています。

                           

経営の神様とまで呼ばれているピーター・ドラッカーは、著作『現代の経営』の中で、「企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである」と述べています。

顧客の創造には、顕在的なニーズに対応するだけでなく、いままでとは違った価値を創造することで顧客を創り出していくことも不可欠になります。これがイノベーションです。

イノベーションと聞くと通常は「技術革新」を思い浮かべますが、①製品のイノベーション、②社会のイノベーション、③管理のイノベーションの大きく三つの領域があります。

製品のイノベーションはわかりやすいですが、消費者の行動や価値観を変える社会イノベーションはわかりづらいため、次のように説明しています。“たとえば、極北に暮らす人に対して冷蔵庫を販売するとしよう。これは一見非常識のように思える。しかし、食料が凍てつかぬようにするための道具として冷蔵庫を販売することに成功したとしても、冷蔵庫自体に技術革新はまったくない。しかし、顧客の新しい満足を創り出したという点で、これも立派なイノベーションのひとつになる。” 

なお管理のイノベーションとしては、例えばトヨタ生産方式の「カイゼン活動」や、セブンイレブンの商品を単品ごとに販売、仕入、在庫を管理する「単品管理」などがあげられます。

 

 医療業界は、相当以前から農業などと並び役所や業界団体などが改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない岩盤規制が存在する業界と認識されています。イノベーションが進みづらい業界と言えるでしょう。ただ世の中はデジタル技術などの進化により、図表1のように第四次産業革命まで進んでいます。

その核となる技術革新は、あらゆる事業・情報が、ネットワークを通じて自由にやりとりできる「IoT(モノのインターネット)」、集まった大量のデータを分析し新たな価値として利用可能になる「ビッグデータ」、機械が自ら学習し人間を超える高度な判断が可能になる「人工知能(AI)」、多様で複雑な作業についても自動化が可能になる「ロボット」などが挙げられます。

 

図表1 第四次産業革命の概要

 

 

 医療業界においては、未だに1970年代初頭からの第三次産業革命の「自動化」の途中段階です。医療機関内では手書きカルテが残っていたり、医療機関同士や薬局・介護事業者との情報交換は紹介状や処方箋を直接持参もしくはFAXによる送受信をしていたりします。医療機関のITシステム導入状況は、医療機関ごとの資金力やITリテラシー面での格差があるため、かなりばらつきがあります。また日本の医療は国民皆保険制度であり、保険請求や患者情報共有をするためのインフラは「落伍者を出さない」ことに主眼を置いた護送船団方式になっています。例えばレセプト請求について、当初は2010年度末までに原則としてオンライン請求に統一する方針でしたが、図表3のように未だに電子媒体や紙媒体でのレセプト請求が行われています。レセプトデータの電子化に対応していないレセプト作成用コンピュータを導入している医療機関のリースあるいは減価償却期間の更新時期までの猶予が、未だに続けられています。日本全体の課題である将来の生産年齢人口の減少、更なる人手不足への対策として生産性向上が必須と言われていますが、一部の医療機関経営者には受け止められていないようです。

 

 

図表2 点数表別レセプト請求状況(機関数(%))(令和元年6月処理(支払基金))

 

(出所)社会保険診療報酬支払基金 Website

 

政府の「未来投資会議」などでの方針を受けて、2018年度の診療報酬改定の目玉として、「オンライン診療料」が設定されました。起業する医師たちは、国内の他業界や海外から相当遅れている医療業界を変えようと考えているイノベーションの担い手であり、オンライン診療分野においては、メドレー以外にも医師が経営者となっているMRT、メドケア、インテグリティ・ヘルスケアなど複数社がサービス提供をしています。

ただ厚生労働省の2018年度改定検証調査によれば、新設された「オンライン診療料」の届出をしている施設は約15%、そのうちオンライン診療の実績があるのは約16%にとどまっています。主な要因は対象疾患を糖尿病や高血圧などに限定し、初診から6カ月以上の対面診療が必要というように算定要件を厳しくしたことにあります。

 

昨年615日に閣議決定された『未来投資戦略2018』や『規制改革実施計画』には、オンラインでの医療・多職種連携等の推進として、「患者の利便性の向上、医療職の働き方改革につながり、効率的・効果的な医療の提供に資するよう、服薬指導、モニタリング等を含めたオンラインでの医療全体の充実に向けて、次期以降の診療報酬改定、所要の制度的対応も含めて、ユーザー目線で、現状を更に前進させる取組を進める。」と記載されており、政府のイノベーションを進めようとする意気込みが感じられます。

ただ一方911日の(株)じほうの記事によれば、近畿医師会連合は98日の定時委員総会において、ICTについては効果的に利用すればより充実した医療に結び付けられると期待を示した一方、医療の根幹を揺るがすような制度の導入には断固反対すると打ち出しており、オンライン診療が喫緊の課題とし、離島・へき地以外では対面診療が原則であることを認識してICTを導入すべきだと提言しています。

 

医療業界にはイノベーションの機会が豊富にありそうですが、事業化のためのハードルはかなり高そうです。このままではオンライン診療分野に限らず医療の社会的なイノベーションについては、規制が少なく導入必要性の高い中国やインドなどが先行し、日本は取り残されていくのではないかと危惧します。

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2019年

10月

28日

カスタマー・サクセスの取組み事例

顧客満足から一歩進んだ考え方であるカスタマー・サクセスについて、前月のブログで説明しました。高級ホテル業界のようなサービスの質の競争が激しい業界では、顧客満足の達成はできていて当たり前になります。例えば多数の本や雑誌などで紹介されているリッツ・カールトン・ホテルの企業理念に記載されているサービスバリューズを読むと、通常の顧客満足を超えたサービスを提供するための心構えがわかります。

 

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リッツ・カールトンのサービスバリューズの一部

 

   出典:ザ・リッツ・カールトンのWebsiteより転載

²  私は、強い人間関係を築き、生涯のリッツ・カールトン・ゲストを獲得します。

²  私は、お客様の願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常におこたえします。

²  私には、ユニークな、思い出に残る、パーソナルな経験をお客様にもたらすため、エンパワーメントが与えられています。

²  私は、「成功への要因」を達成し、ザ・リッツ・カールトン・ミスティークを作るという自分の役割を理解します。

²  私は、お客様のザ・リッツ・カールトンでの経験にイノベーション(革新)をもたらし、よりよいものにする機会を常に求めます。

²  私は、お客様の問題を自分のものとして受け止め、直ちに解決します。

・・・・・以下、割愛

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サービスバリューズの4番目、“私は、「成功への要因」を達成し、ザ・リッツ・カールトン・ミスティークを作るという自分の役割を理解します。”のミスティークとは神秘性で、最高のサービスに位置づけられています。ちなみにサービスの第一段階はインフォメーションサービス、お客様にインフォメーションされて提供すること。第二段階がインテリジェンスサービス、お客様が欲しているのをインフォメーションされる前に提供すること。第三段階がリッツ・カールトン・ミスティークで、お客様自身が欲していることに気付いていない、提供されて初めてお客様自身も欲していることに気が付くサービスです。

2番目の“私は、お客様の願望やニーズには、言葉にされるものも、されないものも、常におこたえします。”を含め、「どうしたら顧客が望む夢を実現させてあげることができるのか?」もしくは「どうしたら顧客の課題を解決させてあげることができるのか?」などを考えて顧客を成功に導くという、カスタマー・サクセスを実現するための内容になっていることがわかります。

また1番目の“私は、強い人間関係を築き、生涯のリッツ・カールトン・ゲストを獲得します。”は、顧客にファンになってもらい顧客と長期に継続した関係を築くことで、結果として11人の顧客から受け取る売上金額合計から、その顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた「累積利益額」、LTVlifetime value:顧客生涯価値)の最大化を実現することにつながっています。

 

 では、医療機関の場合のカスタマー・サクセスは何なのでしょうか?

前月のブログにおいて歯科医療のカスタマー・サクセスの取組、お口の健康を維持させること、さらにその先にある身体の健康につなげること、さらにさらに先にある生活の質を向上するという目標を持って取り組んでいる例について紹介しました。医科の医療の場合も、顧客が健康を維持しQOLの高い生活を送ることができるように支援することが、カスタマー・サクセスの取組になるのでしょう。

20196月に岡山県倉敷市の倉敷中央病院(1,166床)が「予防医療プラザ」をオープンしました。その基本方針は以下のとおりです。 

²  倉敷中央病院の高度な臨床医学と最新の予防医学を統合した予防医療を実践します。

²  地域住民に、専門性を生かした身体活動・生活指導などの健康教育を行う疾病予防拠点をめざします。

²  健診および疾病予防に関して、AI等の先端技術活用を推進し、絶えず進歩し続けるよう努めます。

²  常に高い使命感と倫理観をもって質の高い健診を提供し、健康寿命延伸に寄与します。

 地域住民への健康教育から予防医療、そして先端技術活用によって健康寿命延伸に寄与することは、カスタマー・サクセスにつながります。同院は、診療データとの連携によって疾患予備群を確実に拾い上げ、悪化させないための適切な介入時期、実施すべき検査の組み合わせ、あるいは適切な予防方法を割り出し実践した疾病予防を真に効果的に行うことを目指しているとのことです。

 

 同院では予防医療プラザをオープンする約1年前に、処方箋調剤は全く行わず、OTC薬やサプリメント、健康食品を取り扱う薬店を、病院内にオープンしました。この店舗の運営は大手調剤薬局チェーンに委託しています。患者がサービスを望んでいて、かつ医療職がそのサービスを提供した方がいいという思いをもっているにも関わらず、保険上点数が付与されていないようなサービスを提供することが目的のようです。ちょっとした症状(例えば軽い便秘や筋肉痛など)に対するOTC薬の販売、フレイル予防のための骨密度・筋肉量の測定や必要なサプリメント、栄養食品や運動器具の販売、各種健康増進のためのイベント開催など、その活動範囲は多岐に渡っているようです。セルフメディケーションの推進は、保険診療の枠内でのサービス提供が染みついている病院に勤務する薬剤師や他の医療職にとっては、自ら価格を設定し有料で提供するサービスはなかなかできないようです。

 

また同店には、薬剤師と管理栄養士が1人ずつ“医療のコンシェルジュ”として常駐し、処方箋薬とOTC薬との飲み合わせや、食事やサプリメントに関する相談に乗っています。店内には、体重や体脂肪率、筋肉量などが分かる体組成計や、骨密度計を設置しており、有料で測定するサービスも提供しています。

 

 地域の基幹病院が保険診療の限界を認識し、住民の健康をより幅広く積極的にサポートするために、疾病予防拠点や健康サポート薬局と同等の薬局を運営しカスタマー・サクセスを支援する、時代を先取りした優れた取組みだと思います。

*健康サポート薬局:厚生労働大臣が定める一定基準(薬剤師の資質(一定以上の経験年数、研修受講など)、薬局内の設備、アクセスしやすい開店時間の設定など)を満たしている薬局として、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加えて、市販薬や健康食品に関することはもちろんのこと、介護や食事・栄養摂取に関することまで気軽に相談できる薬局。都道府県知事に届出を行った薬局だけが「健康サポート薬局」として表示することができる。

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2019年

9月

24日

カスタマーサクセスによる顧客生涯価値最大化

CSと言えば、これまでの号ではCustomer Satisfaction(カスタマー・サティスファクション)の略である顧客満足の意味で使用してきましたが、最近はCustomer Success(カスタマー・サクセス)やCustomer Support(顧客サポート)の略でも使われています。

 

カスタマーサクセスは、日本語に直訳すると「顧客の成功」です。「どうしたら顧客が望む夢を実現させてあげることができるのか?」、もしくは「どうしたら顧客の課題を解決させてあげることができるのか?」など顧客の成功の実現という点にフォーカスしています。  

 

顧客の成功とは、ただ単に顧客が期待通りの満足できるモノが手に入った、期待通りの満足できるサービスを受けられたということで実現できるようなものではありません。究極の顧客ニーズの充足と言い換えてもよいでしょう。その意味で「CSCustomer Satisfaction(顧客満足)」や「CSCustomer Support(顧客サポート)」といった概念を超えた概念と言えます。

 

一例をあげれば、「この車が欲しい」という顧客の声は、「車を所有することで、誰かを同乗させたい」、さらにその先にある「同乗者との恋愛を成就させたい」、さらにさらにその先にある「幸せな人生を送りたい」ということが、根本的なニーズなのかもしれません。売り手として顧客の究極のニーズを探り当て、その実現の支援までトコトンすれば顧客は喜び、お店のファンになってくれるということなのだと思います。図表1のようにカスタマーサクセスとカスタマーサポートと比較すると、目的や取組スタンスの違いが如実にわかります。

 

図表1 カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

 

カスタマーサクセス

カスタマーサポート

目的

顧客の成功体験の実現

クレーム処理・不満解決

取組スタンス

能動的

受動的

評価指標

売上・解約率

対応件数・満足度

 

顧客の成功体験の実現という目的を達成するためには、受け身ではなく能動的に考える必要があります。その場合、時には顧客の要望をそのまま受けることが正しくない場合も出てくるでしょう。

 

 例えば歯の予防医療で有名な山形県酒田市にある日吉歯科診療所は、全ての人に健康なお口で人生を過ごしてもらうことがカスタマーサクセスとの信念で、永年歯科医療に取り組んでいます。地域住民のほとんどが、虫歯などの病気が生じた結果の修復や処置が歯科医療であると思い込んでいる状況下で、歯科医療はお口の健康を維持させること、さらにその先にある身体の健康につなげること、さらにさらに先にある生活の質を向上するという目標を持って35年以上取り組んでいます。対処療法的な虫歯の治療をするだけでは、歯周病が進行してしまい、将来不都合が生じる患者も一定程度出てきます。しかし歯医者にはできるだけ行きたくないと考える人がほとんどですので、歯科医はたとえ本人のためであっても住民から嫌われないように、予防目的の必要以上の来院を求めないこともあるのではないでしょうか。

 

日吉歯科診療所の永年の取組みのアウトカムについて、ホームページに公表されていますので一部を転載します。“定期的に来院してメインテナンスケアを受けている子供たちにおいては、12歳時に永久歯に一本のむし歯のない人(カリエスフリー)の率90%以上を達成し、歯科先進国のスウェーデンと肩を並べるほどの結果を示しています。ちなみに、日本全体の12歳時のカリエスフリー率は30%程度です。また成人においては、長期にわたりメインテナンスを継続している方は治療後の抜歯率が大変低く、20年以上メインテンスを継続している方については、75歳での残存歯数が平均18本で、厚労省の歯科実態調査における75歳の平均残存歯数8本より、10本も多く残存しています。”

 

日吉歯科診療所が取り組んでいるメディカルトリートメントモデルは、初期のリスク評価から、個々の患者さんに合わせた予防プログラムの立案、最小侵襲治療などを行い、定期的なメインテナンスに至るまでの流れです。カスタマーサクセスを達成するためには、虫歯の痛みを無くすという課題を短期的に解決することでは不充分であり、お口の中を健康に保つことで生活の質を向上させるという中長期的な目標を地域住民(患者)と歯科医や歯科衛生士などが一緒に協力し合って目指す必要があります。

 

 メディカルトリートメントモデルはサブスクリプション方式の説明で紹介したように、一部の歯科診療所で提供されています。サブスクリプション方式はビジネスモデルの一種で、定額制のサービスです。1回ごとの売り切りによる商品やサービスの提供ではなく、顧客と長期に継続した関係を築くことで、顧客ニーズに対応したサービスを柔軟に提供しLTVlifetime value:顧客生涯価値)の最大化を目指す方法になります。LTVとは、11人の顧客がある商品や企業に対して付き合っている間に支払う金額合計から、その顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた「累積利益額」です。

 

カスタマーサクセスを実現すれば、顧客から強い信頼を獲得することができ、アップセルやクロスセルを実施することで顧客単価の引き上げにつなげやすくなります。アップセルとは「より高いものを顧客に購入してもらうこと」で、クロスセルとは「顧客に他のサービスなども併せて購入してもらうこと」を意味しています。顧客との関係を継続することができれば、LTVはますます増加します。一部の歯科診療所は、お口の中を健康に保つという目標を実現するために、拡大鏡や位相差顕微鏡を導入した緻密な検査、プラーク(細菌の集合体)の除去、患者の虫歯リスクに合わせた高濃度のフッ素塗布やフッ素洗口剤の指導等のセルフケア指導など、アップセルやクロスセルを実施しています。

 

 介護サービスでも呼び方は異なりますが、LTVの拡大方法があります。介護保険の給付対象サービスの質と量を高める「上乗せサービス」と、介護保険の給付対象外のサービスを提供する「横出しサービス」です。既に多くの特定施設入居者生活介護の指定を受けている有料老人ホームでは、介護保険の定め以上の手厚い介護サービスを提供しており、追加サービス部分については利用者が全額を負担しています。その他の介護保険サービスにおいても、利用者ニーズに基づいた「上乗せサービス」「横出しサービス」は考えられるでしょう。

 

公的な医療保険、介護保険の収支は年々悪化し、保険の給付範囲や基準が厳しくなっていく可能性は容易に想像できます。保険外サービス拡大を検討されている医療機関経営者の方にとって、カスタマーサクセスや顧客生涯価値最大化の考え方は参考になるように思います。

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2019年

8月

22日

日本サービス大賞の受賞機関から学ぶ

 日本の優れたサービスを評価する「日本サービス大賞」。日本経済の高度成長時代は、製造業が基幹産業として国内雇用や貿易黒字で支えてきましたが、今やGDPと雇用の7割超をサービス産業が占めています。サービス化の流れは業界を超えて進んでおり、多岐にわたる業種の多種多様なサービスを共通の尺度で評価し、優れたサービスを表彰する制度として、2016年から隔年で優れた企業や団体が表彰を受けています。
 公益財団法人日本生産性本部が事務局を務めるサービス産業生産性協議会が運営しており、表彰対象は「優れたサービスをつくりとどけるしくみ」、具体的には、優れたサービスを生み出し、日々、改善していく“しくみ” 、“きらり” と光るサービスをつくりとどけるしくみを創り上げている企業や団体です。

医療法人では、2016年の第1回の表彰において、石川県七尾市の社会医療法人財団 董仙会 恵寿総合病院が“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービスで総務大臣賞を、愛媛県松山市の医療法人ゆうの森が在宅医療により地域を再生するへき地医療サービスで地方創生大臣賞を、埼玉県川越市の医療法人財団献心会 川越胃腸病院が人間尊重の医療サービスで優秀賞を受賞しています。
 『医療はサービス業』という表現には、違和感を覚える方はいらっしゃるでしょう。医療法の考え方では医療はあくまで非営利であり、「サービス業」という呼び名は相応しくないと感じるからかもしれません。ただ日本の公的統計における産業分類を定めた日本標準産業分類によれば、医療業は医師又は歯科医師などが患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所であり、病院や診療所はここに分類されています。医療機関は「医療」という専門サービスをお客様に提供する一種のサービス業という見方です。表彰された医療機関の優れた取り組みは基より、他のサービス業の取り組みも部分的に取り入れると良いでしょう。

医療機関で実施されるサービス向上の取り組みは、ご意見箱の設置による患者や家族等からの情報収集や患者満足度調査など、どちらかと言えば顧客の不満やクレームを集めて、その解消を図ることに終始しまいがちです。もちろんクレームが頻発している状況を放置しておくわけにはいきませんので、問題を解決する努力は欠かせません。優れたサービスの第一歩は、問題を無くす努力から始まるといえますが、問題の少ないサービスというだけでは、 顧客に喜んでいただくことはできません。問題が少ないことは、顧客にとっては当たり前のことです。顧客に選ばれ続けるためには、顧客からの評価をさらに高める必要があります。その考え方について生産性出版発行の「日本の優れたサービス」に解説されていますので、ポイントを紹介します。

優れたサービスを提供する際には、図表1のように6つの壁が障害になります。
 第一に顧客不在の壁です。「サービスをすれば、必ずお客さんに喜んでもらえるはずだ。」と思い込んで、顧客にサービスを押し付けてしまうことはあるでしょう。良かれと思ってやったことが、余計なお世話、迷惑になってしまいます。この壁を乗り越える解決策は、顧客の事前期待を中心に据えることです。顧客満足とは、顧客がサービスを受ける前に抱いている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られます。たとえ良いサービスをしても、事前期待よりも実績評価が小さいとがっかりされて、ネガティブな口コミをされたりする可能性があるわけです。「ホスピタリティ」の高さで有名なホテルのザ・リッツ・カールトンのインターネットの評判をみると、事前期待が高いだけに宿泊者からは、かなり辛辣な意見が出されています。顧客の高い事前期待を常に上回るサービスを続けるのは至難の業ですが、その壁を何度も乗り越えることで顧客からの強い信頼、ブランド力につながっているのでしょう。
 逆に3時間待ちの3分診療と揶揄されている大学病院などでは、30分待ちで済めば患者は満足してくれるのかもしれません。医療機関のサービスに対する事前期待は概して高くはないため、患者満足を向上させるのはそれほど難しくないのかもしれませんが、それに甘えていては改善が進まず、いずれ患者から見放されてしまいます。
 第二に情熱の壁です。サービス業を営んでいると様々な顧客に出会います。中にはクレーマーなどの理不尽な客もいるでしょう。そのような客への対応も含めてサービスの質を高く維持し続けるためには、従業員個々人に情熱が必要ですが、全員が情熱を持ち続けるのはとても難しいのではないでしょうか。この壁を乗り越える解決策は、従業員が信念をもち、それを原動力にすることです。表彰を受けた3法人のそれぞれの信念は図表2のように、“医療と介護の境目をなくす”、“「最期まで住み続けられるまち」の実現”、“医療は究極のサービス業”です。強い使命感に満ちており、職員から共感を得られる内容だと思います。
 そのほかに建前の壁に対しては進むべき道を示すシナリオを描くこと、闇雲の壁に対してはサービスプロセスを組み立てること、実行の壁に対しては共創型人材を育てること、継続の壁に対しては価値ある成果を実感することが、壁を乗り越える解決策です。紙面の関係で詳細の説明は割愛しましたが、日本サービス大賞のホームページ(
https://service-award.jp/)に受賞した法人の事例の詳細が掲載されていますので、ご覧になることをお薦めします。


 

図表1 顧客に選ばれ続けるサービスを阻む6つの壁と乗り越えるための考え方

 下図参照


図表2 受賞医療法人の6つの壁を乗り越えるポイントの内容

 

社会医療法人財団董仙会

恵寿総合病院

医療法人ゆうの森

医療法人財団献心会

川越胃腸病院

事前期待

医療・介護にまたがる利用の負担を減らしたい

この地域、この家で最期まで暮らしたい

患者の立場にたった心温かな医療サービス

信念

医療と介護の境目をなくす

「最期まで住み続けられるまち」の実現

医療は究極のサービス業

サービスシナリオ

ワンストップ・ワンファクトの地域包括ヘルスケア

持続可能で誰も犠牲にならないへき地医療

ESCSSSの好循環スパイラル

サービスプロセス

統合電子カルテとサービスセンターの連携

診療所と在宅医療の融合

患者と病院の間に立ち、患者の声をサービスに活かす

人材育成

サービスセンターを司令塔に関係者をつなぐ

都市部の医師の当番制モデル

「全員経営」の職員の自律意識

成果実感

サービス利用率向上

本来の「医師のありかた」を再認識できる場

人に紹介したい病院

 

出典:『日本の優れたサービス』松井拓己・樋口陽平著(2017年 生産性出版)

 

 

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2019年

7月

17日

外国人患者を受け入れる医療機関情報

厚生労働省は2019年7月17日、観光庁と連携して作成した「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」を公表しました。今回公表したリストは、観光庁が公表していたリストなどを基に、都道府県が各医療機関の適格性を審査した上で作成されたものです。

リストの中から、拠点的な医療機関を明示。そのうち、入院を要する救急患者に対応可能な医療機関を「カテゴリー1」、診療所・歯科診療所も含む外国人患者を受け入れ可能な医療機関を「カテゴリー2」と記載しています。

今後も都道府県による適格性の審査の結果を踏まえて、リストは更新されます。

 

「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」について

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05774.html

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2019年

7月

01日

医療機関における働き方改革

 201941日から「働き方改革関連法」が順次施行されました。ポイントは、図表1のように3つあります。毎年5日間、時季を指定して有給休暇を与えるために、就業規則の見直しなどの対策を検討された医療機関もあるでしょう。

 

図表1 働き方改革関連法のポイント(医師以外)

時間外労働の上限規制の導入

【施行:201941日~】

(但し、中小企業は1年後)

時間外労働の上限について、45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度とする。

年次有給休暇の確実な取得

【施行:201941日~】

10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し毎年5日、時季を指定して有給休暇を与える。

正規・非正規雇用労働者間の不合理な待遇差の禁止

【施行:202041日~】(但し、中小企業は1年後)

同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)の間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差を禁止。

出典:厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』

 

ただ皆様ご案内のとおり、医師については5年後の202441日からの施行となっています。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」の2019年3月28日付けの報告書では、診療従事勤務医は年960時間/月100時間(例外あり)、地域医療の確保が困難な地域の医療機関の勤務医は、暫定特例水準として年1,860時間/月100時間(例外あり)、その他にも初期・後期研修医など短期間で技能向上を求められる医師については勤めている医療機関が指定されていれば年1,860時間/月100時間(例外あり)と、基準が一般の労働者よりも緩和された基準が設定されています。

 企業の働き方改革の取組みについて、「働かせ方改革」と報道などで揶揄されていますが、医師についても、個々の勤務医の健康を守ることよりも、地域医療や病院経営を守ることを優先した「働かせ方改革」になっているように感じます。

 

インターナル・マーケティングという言葉を聞かれたことはありますか?

あまり聞きなれない言葉だと思いますが、インターナル・マーケティングとは組織内に対するマーケティングのことで、20171月号で紹介しました。

図表2のように、長時間労働や人間関係など職員が仕事上で困っている内容に関して情報収集をし、働き方改革を本気で行うこと(職員向けサービスの向上)で、職員満足度が上がり、職場(医療機関)に対するロイヤルティは高まり、定着率や生産性が向上する可能性は高まります。その結果、患者向けのサービスの質が目に見えて上がってくれば、患者の満足度が向上し、患者は自院をかかりつけ医療機関にします。その上に知り合いにポジティブな口コミをしてくれるかもしれません。患者数が増加し、医業収益や利益が増加する可能性が高まるという好循環のモデルは、サービス・プロフィット・チェーンとよばれています。

 

 

患者満足と職員満足の関係は、いわゆる「鶏と卵」の関係のように見えますが、まずは職員満足度を高めることから始めるのがよいでしょう。もちろん「職員満足度を高めるためにはお金が必要。だからまずは患者を増やし利益を確保しよう。」という考え方もあります。ただここ数年の就職売り手(優位)市場の状況、また将来的な生産年齢人口の減少を考えれば、労働集約型ビジネスである医療機関にとって、インターナル・マーケティングによる職員満足度の向上は、経営戦略上、最重要なのではないでしょうか。医療機関の場合は、そもそも働き手である職員の確保ができなければ、診療報酬で定められている施設基準を満たせなくなることも出てくるでしょう。請求できる診療報酬点数が下がれば、損益分岐点を超える収入の確保が難しくなってくるでしょう。トップ・ダウンの「働かせ方改革」ではなく、職員が満足するボトム・アップの「働き方改革」の実施は必要不可欠です。

 

では職員満足度の向上のために何をすべきか、先進的な取り組みをしている企業として、1983年の開園以来、人気を保ち続けている東京ディズニーリゾートの運営をしている(株)オリエンタルランドの従業員とのかかわり方の方針は参考になります。

 

オリエンタルランドは成功要因のひとつとして、人財力をあげています。会社のホームページには、「人財に関する基本的な考え方」として、男女の分け隔てがない社風や、人の喜びを自分の喜びと感じるマインド、従業員同士で称えあう活動などの企業風土をより高めつつ、すべての従業員が働きがいを感じ、心の充足感を得ながら、安心して働くことができる、すなわち『ディーセントワーク』の実現が重要であると書かれています。

 

従業員は約24,000人。2割が、「社員」「嘱託社員」「出演者」で、8割を占めるのがテーマパークの最前線でゲストをお迎えする「キャスト」として働く「準社員」です。接客の質の高いキャストの存在は東京ディズニーリゾートにとって必要不可欠なサービスの要素ですが、その役割を「準社員」が担っている点は驚きです。

ディーセントワークについては、厚生労働省がその概念の普及に努め、実現のための労働政策を進めていくとしており、平成247月に閣議で決定された「日本再生戦略」でもこの実現が取り上げられています。日本におけるディーセント・ワークの捉え方として、平成23年度の厚生労働省の委託事業の報告書の中では4つに整理されています。

 

1)働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること、

2)労働三権などの働く上での権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認められること、

3)家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度などのセーフティネットが確保され、自己の鍛錬もできること、

4)公正な扱い、男女平等な扱いを受けること、です。

 

東京ディズニーリゾートが、準社員の力で高品質のサービスを提供し続けていられるのは、会社がディーセントワークの考え方を社員に徹底しているからだと推測します。医療機関では果たしてどうなのか? 発言がしやすい職場なのか、職員は家庭生活と職業生活の両立ができているのか、男性医師と女性医師の扱いは平等なのかなど、課題がいろいろとあるように思います。

 

 

*ディーセントワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」を指す言葉で、1999年の第87ILO総会において、ILOInternational Labour Organization)の21世紀の活動の主目標と位置づけられました。

 

 

【著者プロフィール】 東京大学経済学部卒業。NECにてITシステム担当、長銀総合研究所にて不動産系・ 医療系コンサルティング、ソニー生命にて医師・医療法人向けマーケティング、KPMGヘルスケアジャパンにて医療機関コンサルティング・研修事業に従事。東京大学医療人材育成講座等にて「医療を動かす」 ための政策作りに取り組む

2019年

6月

15日

コレクティブ・インパクト

企業の経営者層によく読まれているDIAMONDHarvard Business Review』(HBR)の2月号の特集は「コレクティブ・インパクト」でした。耳慣れない言葉ですが、Collective Impactを直訳すれば、“集まって組織的に動くことで社会に影響を及ぼす”ということでしょうか。具体的には、立場の異なる組織(市区町村等の行政機関や民間企業、公益法人、NPO法人、自治会などの住民組織等)が、組織の壁を越えて各々の強みを出し合って社会的課題の解決を目指すことを言います。2011年にアメリカで発表された論文によりますと、コレクティブ・インパクトは、以下の1~5のような要素を重視し活動に取り入れている点で、これまでの連携や協力とは異なるようです。

 

1.共通の目標の理解、共有:全ての参加者がビジョン、目標を共有していること。

2.評価の測定方法の共有:取り組み全体と主体個々の取り組みを評価するシステムを共有していること。

3.相互補強(1+1+1>3):参加者が各々の強みを生かし、活動を補完し合い、連動することで、個々で行うよりも成果をあげられること。

4.継続的なコミュニケーション:活動中に1や2などの点で参加者間のブレが生じないように常にコミュニケーションを行われていること。

5.活動を支える組織:活動全体をサポートする専任のチームがあること。

 

異なる複数の組織が課題の解決のために連携や協力をする場合、各組織は「どうやって解決するか」という「How」をまず考えてしまう傾向があります。迅速に問題解決しようとするあまり、目の前の問題の表層しか見ずに、各組織の経験則、手持ちの解決策で、対症療法的な解決を図ろうとしてしまいがちです。

日本の地域社会においては、高齢化の進展によって老々介護(老夫婦、老親子)、独居高齢者生活、高齢者の孤独死等々、対症療法的な方法では解決が難しい課題が多くあります。その課題に対応するために厚生労働省は、地域包括ケアシステムの構築を、市町村単位、日常生活圏域単位で進めています。ただ患者・家族を中心にして、医師や看護師、ケアマネージャー等の多職種の関係者が連携、協力してサポートするのが理想ですが、現場では各職種間の連携・協力が容易でないのが実情です。

 

コレクティブ・インパクトの重要な要素の1番目「共通の目標の理解、共有」に関してみると、患者や家族にとっての最善(幸せ)の実現という共通の総意はあっても、医療職・介護職の職種毎に背景知識、患者の捉え方が異なり、患者や家族のために大切にしたい思いのズレがどうしても生じてしまいます。病院などの医療関係者のサービスの中心は「医療モデル」と言われており、その目標は病気やけがの「治癒・回復」です。一方で介護系施設や福祉関係者のサービスの中心は「生活モデル」と言われ、その目標は様々な環境の中での利用者の「自立」=「その人らしい生活」のため、2番目の「評価の測定方法の共有」、具体的には最終的な成果やそこに至るプロセスの評価の仕方を共有するのは難しくなります。

3番目の「相互補強」については、そもそも他職種間で相手の専門性や能力がよくわからないまま連携、協力しているなど、補強の手前の段階の現場が多々あるようです。例えば、薬剤師が行う訪問薬剤管理指導の内容について理解をしている医師等の割合は、かなり低いそうです。また言語療法士や栄養士なども、オーダーをするかかりつけ医の理解が進んでいないと出番が少なくなってしまいます。

4番目の「継続的なコミュニケーション」については、互いに時間的余裕がないために充分なコンセンサスを得にくかったり、各職種間の守備範囲を意識するあまり思うように意見交換できなかったりするようです。

5番目の「活動を支える組織」は既存にはないため、厚生労働省が在宅医療・介護連携のための相談窓口を地域の郡市区医師会等に設置することを市区町村に対して推進しています。

地域包括ケアシステムを構築するための医療・介護の連携が進んでいる地域のひとつに千葉県柏市があります。「柏モデル」と呼ばれており、その成功のポイントは図表のように整理できます。

 

図表柏モデルの成功の主なポイント(コレクティブ・インパクトの要素で整理)

重要な要素

具体的な取組

共通の目標の理解、共有

行政として医師会との理念を共有したうえで協働できたことが⼤きい。

評価測定方法の共有

活動を互いに補強

・委員会及び下部部会の各座⻑は医師会医師に依頼し、事務局(⿊⼦)は⾏政が担当しスムーズに展開できた。

・会議招集⽂章は、柏市⻑名と医師会⻑名の連名で実施することも出席率向上に効果的であると思う。

継続的な

コミュニケーション

・各専⾨職の現場担当者を報酬無しの⼿弁当で集めて将来の議論をすることが⼤切。⾏政招集会議(出席報酬発⽣)では、どうしても形式的な会議になりがちで、現状や実態に即した提案や実⾏が伴わない。

活動を支える組織

・行政として完全な業務委託⽅式(医師会や地域包括⽀援センターへの丸投げ的な⼿法)ではなく、全ての協議体・会議に事務局として関与することで進捗状況・課題を把握できたこと

・組織体制としても「地域医療推進課」⼈員 12 名と充実(勤務時間の 8割は調整作業に費やす)

出典:厚生労働省「在宅医療連携モデル構築のための実態調査報告書」平成30年3月を筆者が一部加工

 

コレクティブ・インパクトを推進するために、特に重要なことを最後に説明します。まずは基本的なことですが、必要な関係者をすべて集めることです。多職種連携の会などでは医師の参加率が極端に低かったりします。医師以外の職種からは、医師は忙しいから仕方がないとのあきらめの声もありますが、多職種に対して必要な指示出しをする医師の連携や協力に対する理解度が低ければ、うまくいくはずはありません。この段階の地域はまだまだ多くあるのではないでしょうか。次に参加者間の「関係の質」を高め続けることです。互いに情報を持ち寄り、それぞれの進捗や学びを共有し、互いの背景や行動原理を知るというプロセスを繰り返すことで、関係の質が高まり結果的にサービスの質が高まります。このような地域にするためには何をどうすればよいのか、厚生労働省の「在宅医療連携モデル構築のための実態調査報告書」に柏モデルを含む14地域の事例が掲載されていますので、参考になさってはいかがでしょうか。

 

*アメリカのハーバード・ビジネス・スクールの教育理念に基づき、1922年に同校の機関誌として創刊された世界最古のマネジメント誌であるHBRの日本語版。HBRはアメリカ国内では29万人のエグゼクティブに購読され、日本、ドイツ、イタリア、フランス、BRICs諸国、南米主要国など世界14ヵ国、60万人のビジネスリーダーやプロフェッショナルに愛読されています。

 

 

2019年

5月

31日

ソーシャルメディアの活用

広告業界最大手の電通がまとめた2018年の「日本の広告費」によりますと、インターネット広告は17年比16.5%増の17589億円。自動で広告を配信する「運用型広告」やスマートフォン向けの動画広告が伸び、5年連続で2桁成長、2019年にはいよいよネット広告が地上波テレビ広告を初めて逆転する見通しのようです。

これまでインターネットを活用したマーケティング手段の進化について紹介してきましたが、インターネットやスマートフォンの普及により、自らホームページやブログ、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど、いわゆるソーシャルメディアを活用することで、情報発信が安価に簡単にできるようになりました。ただ一方でリスクも高まっています。

最近、非正規社員がスマートフォンを使用して営業妨害になるような内容の動画を拡散し、風評被害が生じているというニュースが頻繁に報じられています。テレビやインターネットのニュースにて取り上げられているのは氷山の一角であり、自分のところでも同様の問題が発生しないかと悩みを抱えている経営者の方は多いと想像します。

医療機関では、飲食業のようないわゆる“バイトテロ”のようなリスクが生じる可能性は低いですが、要配慮個人情報である患者情報などの漏えい、ブラック・パワハラ・セクハラ等の労務問題の内部告発や内部情報暴露など、インターネット上での不都合な情報拡散のリスクはあります。そのため医療機関経営者は、一般の企業と同様に情報に関わるリスクマネジメントの対策を講じておく必要性があるでしょう。

 

リスクマネジメントとは、一般的に経営に悪影響を与える様々なリスクを把握し、合理的に回避・極小化するための経営管理手法のことです。地震や津波といった自然災害などのリスクに対しては、事業継続計画(Business continuity planning, BCP)を立案し対策を講じている病院は増えてきています。一方で組織が情報セキュリティを保つための対策や、インターネット上の風評被害や炎上などのソーシャル時代のリスクへの対策は充分とは言えません。

ソーシャルメディアに悪意のある書き込みなどが発見されたときは、誹謗中傷の被害が拡大するのを防ぐために、できるだけ早めの処置をすることが必須となります。瞬く間に広範囲にわたって伝播し、さらには拡大解釈や曲解されたりして短期的・直接的な被害のみならず、医療機関のブランドイメージが低下することで被害が長期化する危険性もあります。ソーシャルメディアによる脅威を軽視せず、院内ルールの策定や職員への教育などの対策を講じる必要があります。

最初に取り組むべき対策は、院内の規程の整備や見直しです。在職中の職員は、信義則上、労働契約に基づく付随義務として、使用者の正当な利益を不当に侵害しない義務を負うものと考えられており、就業規則の規定や個別の秘密保持契約がなくても、従業員の秘密保持義務は発生します。

ただ保護すべき秘密の範囲などが曖昧になりがちですので、職員の自覚を促す効果も考慮して個人単位で秘密保持契約を締結することが考えられます。職員の退職後についても継続して秘密保持義務を履行させるために、就業規則であらかじめ規定しておく方法もありますが、退職時に秘密保持契約を締結しておけばさらに安心です。少なくとも職員の退職時には、秘密保持に関する誓約書を提出してもらうなどした方が良いでしょう。また職員が万が一、規程違反した場合の対応も定めておく必要があります。例えば、就業規則の懲戒事由として明記し、掲載内容削除の指示を業務命令としてできるようにすることなどです。

 

医療機関としてフェイスブックページを作成したり、ツイッターなどで積極的に発信したりしている一部の医療機関は、ソーシャルメディアガイドラインを定めホームページに開示しています。ガイドラインの内容は、目的やソーシャルメディアの定義、想定されるリスク、運用ルールなどです。職員がソーシャルメディアを利用する場合、一個人の立場と医療機関の職員の立場がありますので、各々の場合について定める必要があります。表1に、ソーシャルメディアガイドラインを作成する際の重要なポイントを整理していますので参考にしてください。留意すべきことは、ガイドラインが禁止事項の一覧になってしまい、職員がソーシャルメディアの活用を委縮してしまうことです。禁止表現よりも、どのようにすれば問題が生じないか、アドバイスを送るような表現の方が良いでしょう。また万が一、問題が発生したときに速やかに対処できるように、具体的な対処方法を定めておく必要があります。

自院ではソーシャルメディアを活用していないから関係ないと考えられている医療機関についても、ソーシャルメディアは表2のように多種多様になってきており、職員がいずれかのサービスを個人的に利用している可能性は高いのではないでしょうか。備えあれば憂いなしですので、職員に秘密保持の重要性やソーシャルメディア利用にあたっての注意点などの啓発をされることをお奨めします。

 

表1 「ソーシャルメディアガイドライン」を作成する際の重要なポイント

1. ガイドラインの策定目的および適用範囲をわかりやすくはっきりと表記

2. 法令、就業規則等の規程、モラル、マナー等の順守

3. 個人の尊重

4. 誹謗中傷や差別的発言の禁止

5. 正確な情報の発信を促す (ウソをついたりデマを流したりするような行為を制する)

6. 著作権や肖像権等の権利を守り、情報の適切な利活用を促す

7. 機密情報や特許で守られた情報の保護

8. 情報は、一度発言・発信したら完全に取り消す(削除する)ことができないことに留意

9. 発言や発信が、自分自身や他者の将来に重大な影響を及ぼす可能性があることに留意

10. 困ったり迷ったりした際は独断せず、助言を求める

 

出典:安心ネットづくり促進協議会ウェブサイトの内容を筆者が一部改変

 

表2 主なソーシャルメディアの種類

種類

代表的な例

機 能

ブログ
サイト

FC2Amebalivedoor、 Bloggerはてな

インターネット上の日記。日常の出来事や興味のあることなどの情報発信を行う。

SNS
サイト

mixiFacebookGREE、モバゲー 等

インターネット上で人と人が繋がり、コミュニケーションすることが目的のサービス。

動画系
サイト

YouTube、ニコニコ動画、USTREAM 等

動画を投稿、視聴できるサービス。

ミニブログ
サイト

TwitterInstagram 等

ブログサービスの一種で、文字数制限のあるメッセージ投稿サイト。つぶやきサイトと言われる。

電子掲示板

2ちゃんねる 等

インターネット上につくられた一種の掲示板。

メッセージング・アプリ

LINEMessengerFB)、

WhatsApp Messenger

リアルタイムでテキストの送受信を11またはグループで行える。一部は音声通話機能もあり。

 

 

2019年

4月

19日

外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル

厚生労働省は4月11日に「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を公表しました。ここ数年の外国人観光客の増加、来年の東京オリンピックを控え、医療機関を受診する外国人が増加しています。
言語の問題や未収金対策に悩まれている医療機関も増えているようです。当マニュアルを参考になさってはいかがでしょうか。

 

目次

第1章 外国人患者に関連する制度

1 医療機関における外国人患者受入れ体制整備の重要性

2 在留資格(ビザ)

3 日本の医療制度の紹介

4 海外旅行保険

5 外国人患者受入れ医療機関

6 医療通訳の標準カリキュラム基準・認証制度

7 応招義務

 

第2章 外国人患者の円滑な受入れのための体制整備

8 感染症対策

9 「外国人患者の受入れに関する体制整備方針」の決定

10 医療費の設定

11 医療費概算の事前提示

12 キャッシュレス対応

13 通訳体制の整備

14 院内文章の多言語化

15 マニュアルの整備

16 院内環境の整備

17 宗教・習慣上の対応

18 外部機関との連携・協力

19 研修

20 外国人患者受入れ医療コーディネーター/担当者・部署の設置

21 情報提供

22 医療紛争

 

第3章 場面別対応

23 受付の場面

23.1 外国人患者の対応可能な言語や来院目的の確認

23.2 診療申込書の記入依頼と必要情報の収集

23.3 海外旅行保険やその他の海外の民間保険を保有している場合の保険情報の確認方法

23.4 支払いに関する事前説明

23.5 概算医療費の算出および提示

23.6 支払い方法や患者の要望の確認およびデポジット(前払い)の請求

23.7 問診票の作成依頼・確認

24 検査・診察・治療の場面

25 入院・退院の場面

26 診断書の作成・交付

27 医療費の請求・支払い

28 処方箋の発行

2019年

4月

12日

医療機関における外国人患者の受入実態調査

2019年3月27日、厚生労働省は「医療機関における外国人患者の受け入れに係る実態調査」の結果を発表しました。

訪日外国人旅行者は年間約3,119万人(2018年)、在留外国人は約263万人(2018年6月)と、近年著しい増加傾向です。

外国人に対する医療提供体制の現状を把握する必要があることから、厚生労働省において全国の全ての病院と一部の都道府県の診療所を対象とし、医療機関の外国人患者受入能力向上のための基礎資料を得ることを目的として、実態調査を実施し、取りまとめられたものです。

外国人患者の受け入れ実態として、医療機関における多言語・通訳対策・未収金の現状など、参考になります。

 

2019年

3月

11日

医科の領域におけるサブスクリプションとCRM

ブスクリプションのビジネスモデルを導入する企業は増えていますが、一方で撤退例も出てきています。紳士服のAOKIホールディングスは201811月、サブスクリプション型のスーツレンタルサービスの終了を利用者に案内しました。最大の「想定外」は、事前に想定した利用者層と実際の利用者のズレでした。ターゲットはスーツ離れが進む若者に定めていましたが、実際の利用者はこれまで購入してくれていた40代が中心となったため、売上減少のリスクが高まりました。導入にあたっての重要なポイントは、利用者と深い関係を築き、それを活用して複数年に亘って収益をあげながら、追加的なサービスの提供や情報活用で付加価値を生み出すことかできるかどうかの見極めですが、既存利用者の購買行動の変化を予想することはそれ以上に大切です。

 

医科の領域においても、健康診断・人間ドックや会員制の健康サポートサービス、美容整形治療などの自由診療サービスは、利用者との深い関係を複数年に亘って行うため、サブスクリプション方式導入の余地はありそうです。また診療報酬で価格が決められている保険診療についても、定額のサービスで長期間に亘り顧客と継続的な関係を築く項目があります。代表例として、地域包括診療料(月1回、許可病床数が200床未満の病院又は診療所に限定)が挙げられます。

地域包括診療料は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病又は認知症のうち2以上の疾患を有する住民が外来患者として、かかりつけ医による疾病管理サービスを定額(1は15,600円、2は15,030円。1は外来診療から訪問診療への移行実績(直近1年間で10名以上等)を評価したもの)で受けるサービスと言えます。医療機関は疾病管理サービスとして最低限、以下のような指導、服薬管理などを提供します。

 

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・患者の同意を得て計画的な医学管理の下に療養上必要な指導及び診療を行う。

・患者が受診している医療機関を全て把握する。

・原則として院内処方を行う。他院で処方されている医薬品を全て管理する。

・医療機関内で検査(院外に委託した場合を含む。)を行う。

・健康診断や検診の受診勧奨を行い、健康状態を管理し健康相談を行う。

・必要に応じ要介護認定に係る主治医意見書を作成。介護保険の相談を行う。

・必要に応じ24 時間対応可能な夜間の連絡先を提供し、患者又は患者の家族等から連絡を受けた場合には、往診、外来受診の指示等、必要な対応を行う。

・抗菌薬の適正な使用の普及啓発に資する取組を行う。等

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医療機関は、1回目の患者からの情報収集には時間はかかりますが、2回目以降は患者と適切なタイミングでコミュニケーションをとり、必要な情報を収集して指導をすればよいので、ある程度は自院のペースで仕事ができるうえに安定的な収入を確保できます。一方で患者の自己負担は増加しますので、そのメリットについて納得のいく説明が必要になります。

 地域包括診療料は対象疾患が限定されているため、診療圏内の一部の住民しか対象になりません。ただ診療圏内の住民から選ばれるかかりつけ医になるために、短期的には不採算であっても中長期の観点で、対象疾患以外の患者についても疾病管理サービスを行うことは戦略として考えられます。

 

地域住民から選ばれるかかりつけ医になるためのヒントとして、日本医師会総合政策研究機構が定期的に市民向けに実施している調査が参考になります。

かかりつけ医がいない人がかかりつけ医機能として望むことと、かかりつけ医を持っている人がかかりつけ医から実際に受けているサービスには差があります。患者のニーズに応えるためには、その差を埋める努力が必要です。

緊急時の連携(差は36.2%)、在宅医療(30)、他の関係職種との連携(29.4)は、特に差が大きくなっています。他の医療機関や介護事業者と機能分担及び連携し、連携状況を地域住民に伝達し安心感を与えることが、かかりつけ医にとって大切なことがわかります。

なお本調査では回答を選択式にしていて限定されているため、住民がかかりつけ医機能に望むこととして他のニーズが必ずあると思います。患者さんの「要望」「不便に感じていること」「不満」を積極的に拾い上げ、改善に結びつける地道な活動を繰り返すことが他院との差別化に繋がるでしょう。

 

 

マーケティングの理論で、CRMという手法があります。Customer Relationship Managementの略であり、「顧客関係管理」と訳されます。その言葉通り、顧客との関係性を構築・管理する方法で、顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して、売上の拡大と収益性の向上を目指します。従来の不特定多数の人を対象とするマス・マーケティングから、顧客を特定し、それぞれの顧客の属性に合わせたマーケティングを行なっていく「One to Oneマーケティング」が主流の時代に移ったことにより提唱されました。

かかりつけの患者に対して1対1のきめ細かい対応、継続的な双方向のコミュニケーションをとるために、医療機関もCRMの具体的な手法やアプリケーションシステムは参考になります。具体的には、顧客データベースの管理機能、プロモーション機能、顧客サポート機能の3つに分類できます。顧客データベース機能には、住所や生年月日・性別、保険者名、臓器提供に関する意思表示など健康保険証から入手できる情報の他に、職業や趣味、メールアドレス、家族構成などの顧客の属性、電子カルテ情報(他院も含めた薬歴情報、問診内容や診療時のやり取り等含む)や健診結果の履歴の管理などが考えられます。

プロモーション機能としては、メールマガジンの運営・管理、メールの一斉配信、例えば冬期でしたらかかりつけの患者向けに診療圏におけるインフルエンザの発生状況や予防対策等を知らせることなどが考えられます。顧客サポート機能としては、アンケート機能を活用した患者満足度調査、セミナーやイベントへの参加状況の管理などに活用できます。

 

医療機関において顧客情報は、健康保険証の情報や一部負担金の請求・入金情報(クレジットカード番号等含む)など、他の業界では苦労して集める個人情報を簡単に収集できます。ただその情報の有効活用はまだまだ不充分です。患者や世帯を一人ひとりの顧客として捉え、かかりつけ医として顧客の潜在ニーズに対応するサービスを提供できる余地はかなりありそうです。顧客情報はまさに医療機関にとっての財産ですので、その活用にあたって企業のCRMの取組や個人情報のセキュリティ対策を参考にされてはいかがでしょうか?

2019年

2月

18日

サブスクリプション方式の診療での応用

最近「サブスクリプション」という耳慣れない言葉を聞く機会が増えています。「サブスクリプション」(英語: subscription)の意味は、雑誌の「予約購読」や「定期購読」、「会費」といった意味があり、そこから転じて「有限期間の使用許可」「定額制」の意味で使用されているようです。サブスクリプション方式はビジネスモデルの一種で、定額制サービスとしては、“2時間飲み放題〇千円”や月極めの新聞購読などがあります。また小学生の頃、学研グループの『○年の科学』、『○年の学習』を定期購読されていた方は多いのではないでしょうか? 

 

普段から自然に利用しているサービスですがビジネスモデルとして捉えると、1回ごとの売り切りによる商品やサービスの提供ではなく、顧客と長期に継続した関係を築くことで、顧客ニーズに対応したサービスを柔軟に提供しLTV(lifetime value:顧客生涯価値)の最大化を目指す方法になります。LTVとは、1人1人の顧客がある商品や企業に対して付き合っている間に支払う金額合計から、その顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた「累積利益額」です。個々の顧客が売り手と取引している間にどれだけの価値(利益)を売り手にもたらしてくれるかを測定する指標です。

 

当時の学研グループの場合ですと、小学1年生の次は2年生、・・・、小学生卒業後には中学生向けの販売、科学や学習以外に興味が拡がれば他の種類の雑誌の販売、弟・妹がいれば同様に販売と、追加の営業コストをほとんどかけずに売上・利益を累積することができていたのでしょう。

 

サブスクリプション方式は、利用する見込客にサービスを案内して動機づけをし、新規利用客を獲得します。顧客から見て充分に価値のあるサービスを提供し、併せて価格競争には陥らないようなプライシングにします。

顧客は一定期間利用することで、利用を止めるのが惜しくなり(絆が強まる)、一定割合で契約を継続します。サービスを気に入った一部の顧客は他人に推奨までしてくれます。また利用者が増加しサービス内容が世の中に広まることで、よくわからないがとりあえずサービスの申込をするというような冷やかし客は徐々に減っていきます。

 

 

サブスクリプション方式では、顧客の要望に合う内容・価格のプランが用意され、使用した分、使用した期間に応じて課金され商品・サービスが提供されます。代表的な例として、今や誰もが知っていると言っても過言ではないアマゾンがあります。昨年4月の株主宛て書簡にて、有料のプライム会員が世界で1億人を突破したと明らかにしました。会員は特定の映画・TV番組の見放題、100万曲以上の楽曲の聴き放題、無料のKindle本の読み放題、配送料無料で速達などが利用できます。多くの会員を占めるアメリカやヨーロッパでは年会費が約1万円ですので、会費収入だけで約1兆円を毎年確実に稼いでいます。

 

売り手がサブスクリプション方式を採用するメリットを3つ挙げます。

第一に、顧客を固定客化、ファンにすることによる安定収益の確保です。固定客数の増加、あるいは適正数の維持ができていれば、最低限の売上・利益の見込が立ちます。

第二に、新規顧客の開拓を比較的容易に行うことができます。月単位のお試しで利用すれば金銭的な負担が少なく、気に入らない場合は止めれば良いので試しやすくなります。例えば、電子版の販売に熱心に取り組んでいる新聞社は、申込月は無料扱いにしてお試しを推進しています。電子版の場合、紙代や印刷代、配達コストが不要のため、追加コストをかけずにお試しをしてもらうことができます。

第三に、契約後の顧客との関係を維持しやすいことです。利用中の顧客と適切なタイミングでコミュニケーションをとり、得られた情報を分析してサービスに反映して提供することが可能になります。個々の顧客の利用状況に合わせたプランの変更やキャンペーンの提案をすることで、お得感を定期的に打ち出し解約を予防したり、熱心な顧客にはグレードアッププランを提案したりすることで、LTVの維持・向上を図れます。また顧客満足度や紹介意向、新サービスの希望などを調査することも可能です。

 

医療機関が提供するサービスの大部分は保険診療のため診療報酬で価格が決められていますが、自由診療部分は個々の医療機関が価格設定をできます。健康診断・人間ドックや会員制の健康サポートサービス、分娩費用や不妊治療、美容整形治療などです。

 

歯科の分野では、予防中心の医療システムであるメディカルトリートメントモデルに積極的に取り組む診療所が徐々に増えてきているようです。メディカルトリートメントモデルとは、直訳すると「医科的治療計画」ですが、文字どおり医科領域と同様に診査・診断に基づきリスク評価を行い、治療法を提示し、治療結果のモニタリングを行い、その再発を予防、あるいは健康状態を維持するために個別のメインテナンス策を講ずるというものです。リスクアセスメントを多方面から行うことにより、患者個々の健康状態あるいは疾病状態(高血圧症、糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞、口腔がん)を客観的に理解して、それに応じた口腔衛生指導やメインテナンス管理を行います。このリスクアセスメントツール自体が患者教育、また動機付けのツールとして非常に有用で、患者の行動変容に直結するものとなっています。

 

ただこうした患者の健康を守るためのメインテナンス費用は保険適用ではないため、歯科医療機関は自由診療で実施しています。ある歯科診療所は、拡大鏡や位相差顕微鏡を導入した緻密な検査、プラーク(細菌の集合体)の除去、患者の虫歯リスクに合わせた高濃度のフッ素塗布やフッ素洗口剤の指導等のセルフケア指導などの定期的なメインテナンスを、サブスクリプション方式で行っています。更に熱心な歯科医療機関は、口腔がん検診、血圧測定、体脂肪測定、投薬情報の確認、食事指導、専門医療機関のご紹介(医科歯科医療連携)などサービス範囲の拡大を検討しています。

 

このように一部の歯科医療機関はコンビニエンスストアよりも多く競争が厳しいと言われている中で、保険診療に限定せずに一人ひとりの顧客の潜在ニーズに応える努力をしています。医師数増加、患者数減少が見込まれる医科医療機関についても、遠くない将来、他の医療機関との差別化を図るための取組を検討する必要性が出てくるのではないでしょうか。

 

2019年

1月

18日

長期・積立・分散投資、つみたてNISAの活用

金融庁の担当者が講師を務めるファイナンシャルプランナーの勉強会に参加しました。金融庁は、積立NISAの普及に相当熱心です。公的年金に頼るなということでしょうか。

私は組織に属していないので自助で、iDeCo、小規模企業共済に一般NISAと、税制メリットを得られるものはすべて活用しています。世界的に株価水準が下がってきていますし、始めるのなら今年でしょ(^^)
お堅い金融庁が、つみたてNISAキャラクターまでつくっています。ワニのキャラクターで「つみたてワニーサ」とのこと。。。。

 

2019年

1月

15日

集患のための口コミを起こす工夫

ふだん医療機関にかかる際に、ほとんどの人は事前に情報を入手しており、情報の入手先は、外来、入院ともに「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く、外来で 70.6%、入院で 71.9%にも上っています。(厚生労働省「平成29年受療行動調査(概数)の概況」)

集患のために口コミが大切であることは間違いなさそうですが、ではどうすれば口コミを起こし拡げることができるのでしょうか? 口コミは英語では、WOM(Word of Mouth)になります。アメリカには2004年に設立されたWOMマーケティング協会*などがあり、口コミの研究が日本よりも進んでいます。

WOMマーケティング協会201811日にANAAssociation of National Advertisers)に買収されました。日本においてはWOMJ (The Word of Mouth Japan Marketing Association)2009年に発足し活動中です。

 

WOMマーケティングとは何か? シンプルに言えば、それは話題にする理由を人に与えること、話題にしやすくすることです。最近はSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)ユーザーの広がりで、自ら話題を求める人たちが増えています。広報の担当者は、その期待にどのようにしたら応えられるかを常に意識する必要があります。人が話題にするときは、表のように3つの理由があります。具体的には、「売り手が提供する理由」、「個人的な理由」、「仲間意識から来る理由」の3つです。

 

表 人が話題にするときの3つの理由

売り手が提供する理由

個人的な理由

仲間意識から来る理由

サービス:受けたサービスのことを話したい

自分の気持ち:良い気分を味わいたい

仲間意識:誰かとつながっていたい

l好感・反感を抱いている

l話題になる何かが提供されている

l話題にしやすい環境が整っている

l賢いと言われたい

l自分は特別と思いたい

l誰かの役に立ちたい

l自分を表現したい

lコミュニティに属している

lファンクラブに属している

出典:『WOMマーケティング入門』海と月社 筆者が一部修正

 

まず「売り手が提供する理由」ですが、誰もが日常生活の中で商品を購入したり、サービスを受けたりする機会があります。わざわざ話題にするのは、受けたサービスに対して特別な好感・反感などを抱くようなケースです。私事ですが、親族が急性期の某公的病院に入院し手術を受け、無事退院をしました。退院後に加入していた生命保険会社に対して入院給付金・手術給付金を請求するために、病院に証明書の作成を依頼しました。病院からは、「最低2週間は必要なため2週間後に電話をして出来上がっているかどうか確認の上で取りに来て下さい。」と言われ、説明に従い電話をして取りに行ったのですが、その場で証明内容を確認すると手術の記載漏れが見つかりました。証明書の費用が1万円と高額であり、医事課が診療報酬請求書を確認すれば漏れは防げたはずですので、あまりのいい加減さに多少の反感を抱きましたが、時間の余裕がなかったことから我慢しました。ただ事務窓口の担当者から「最低2週間は必要なため2週間後に電話をして出来上がっているかどうか確認の上で取りに来て下さい。」と言われた時は、その対応の酷さにさすがに呆れました。「できるだけ早急に再作成し、出来上がったら自宅に郵送するように」と強く要求をしましたら、「前例がないので上司と相談します」との回答でした。結局、5分後に私の要求を了承してくれましたが、私の心に残ったものは「この病院はダメ、二度と利用しない」という強い反感でした。親族は急性期後の療養で民間病院に転院をしていたため、同様の手続きをしました。その病院は出来上がり次第に私に電話を入れてくれ、郵送対応までしてくれたため、好感度は高まりました。両院の対応のギャップがあまりに大きかったため、私はその話を身近な知り合いたちに積極的にしています。

「話題になる何かが提供されている」場合は、口コミが発生する可能性は高まります。例えば”「国内△番目の○○導入」「県内初の○○導入」「△△地域(構想区域等)で初の○○導入」などのニュースを目にします。ここ数年では○○が、手術支援ロボットのダビンチ、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)、CYBERDYNEのロボットスーツ、待合室にPepper等々の記事がありましたが、パブリシティやその後の口コミを強く意識して、あえてアーリーアダプター(早期採用者)になっている医療機関はあるでしょう。2017年のユーキャン新語・流行語の年間大賞に選ばれた「インスタ映え」という言葉を耳にされたことはあると思います。例えば病院でも、インスタ映えするように、産科の病院食らしくない料理、おいしそうな糖尿病食などを投稿しているところはあります。

また話題にしやすい環境を整えているかどうかも重要な要素です。最近の企業の展示会では、原則会場内は撮影禁止にする一方で、一部エリアや商品の撮影を推奨しているようなことがあります。美術展などでも、複数の作品に限定して撮影可にしていることがあります。講演会に参加すると講師から、投影するプレゼンテーション内容を「どんどん撮影してもらって結構。(そしてSNSで拡散して下さい)」と依頼されることもあります。撮影してSNSで投稿し拡散するのは著作権や肖像権等のコンプライアンス違反という参加者の常識を取り払うための環境づくりは、意識して行う必要はあるでしょう。

 

次に個人的な理由で人が話題にするのは、「他人から賢いと言われたい」、「自分は特別と思いたい」、「誰かの役に立ちたい」などのような場合です。例えばファミリーレストランや喫茶店にいると、病気や医療機関の受診体験の話をしている隣のテーブルの人たちから、「(同級生に○○大学病院の優秀な)良い先生を知っているので、何かあったら紹介してあげるよ。」というような話が聞こえてきたりします。

私は『Choosing Wisely Japan』という、医療者と患者が対話を通じて科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要でかつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)の 賢明な選択 をめざす国際的なキャンペーン活動をする日本の団体の会員になっています。例えば「風邪に抗菌薬は効かないので、処方するような医療機関にはかからないほうが良い」というような話は、「誰かの役に立ちたい」ので積極的にするようにしています。

最後に「仲間意識から来る理由」で人が話題にするのは、共通の関心をもっている誰かとつながっていたいという気持ちからです。医療関係者の間では、医師会や学会など多くのメーリングリストがあります。SNSの発達で新たな繋がりができやすくなり、グループのメンバー数が多いと拡散力も非常に大きくなります。

広報をルーティンワーク化している医療機関は、今後は受け手の側の視点で、話題にする理由を与えること、話題にしやすくすることを、意識して取り組まれると良いでしょう。

 

 

2018年

12月

29日

医療機関の口コミサイトの出現

 

 美容医療サービスの広告による消費者トラブルの増加に対応するために、医療に関する広告規制の見直しを含む医療法等改正法が平成 306 月1日に施行されました。自院には関係ないと思われるかもしれませんが、ホームページを開設されている医療機関の方は念のために改正内容を確認されることをお奨めします。その理由は、広告規制の対象範囲が単なる「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更になり、ウェブサイトによる情報提供も規制の対象になりました。

厚生労働省は8月に「医療広告ガイドラインに関するQ&A」を公表し、1024日には前回のQ&Aに追加する形で、インターネット上での体験談(口コミ)に対して、「特定の医療機関の体験談に誘引性が認められる場合は、治療等の内容又は効果に関する体験談を掲載することができない」との認識を示しました。誘因性とは例えば、医療機関が患者やその家族に(有償・無償を問わず)肯定的な体験談の投稿を依頼するなどして、意図的に口コミの内容をよく見せるような場合です。

また医療機関以外が作成しているウェブサイト、例えば医療機関の検索サイト、個人のブログ、フェイスブック、ツイッター等について、投稿された感想に体験談が掲載されているようなこともあります。この場合は医療機関からの影響を受けずに患者やその家族が行う推薦に留まる限りは、誘引性は生じません。ただし例えば、当該ウェブサイトの運営者が、体験談の内容を改編したり、否定的な体験談を削除したり(当該体験談が名誉毀損等の不法行為に当たる場合を除く)、または肯定的な体験談を優先的に上部に表示するなど体験談を医療機関の有利に編集している場合、それが医療機関からの依頼によって行われたものであるとき、また医療機関がそのように編集されたウェブサイトの運営費を負担する場合には、誘引性が生じるとしています。

 

厚生労働省がインターネット上での口コミを注視している理由は、その影響度が大きいからでしょう。同省調査の「平成29年受療行動調査(概数)の概況」にあるように、ふだん医療機関にかかる時にほとんどの人は事前に情報を入手し、その入手先は、外来、入院ともに「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く、外来で 70.6%、入院で 71.9%にも上っています。

 

また民間会社の(株)メディアコンテンツファクトリーが平成273月に実施した「医療機関受診に関する意識調査報告」によれば、医療機関を選ぶ際には、インターネットを活用して情報を収集することが一般的であり、医療機関を選ぶ際に収集する情報は、図表のように「家族や知人の口コミ」、「医療機関のホームページ(HP)に記載されている情報」、「医療機関の口コミサイト等の口コミ」の順となっています。一方、本や雑誌の情報、地域誌のような紙媒体は、情報収集にはほとんど活用されていないようです。また収集した情報の中で、もっとも信頼する情報としては、「家族や知人の口コミ」を選ぶ人が圧倒的に多く、医療機関が発信しているホームページ上の情報よりも、身近な人からの口コミの方が信頼性は高いという結果になっています。ただ家族や知人の口コミの情報源として、医療機関のHPに記載されている情報も含まれている可能性もありますから、医療機関のHPの充実が大切なことは言うまでもありません。

 

「医療機関の口コミサイト等の口コミ」の位置づけも高くなっています。自らを省みても、本を購入する際にはアマゾンの読者レビューを事前に確認しますし、ホテルや旅館を予約する際にはウェブサイトで評点や評判を確認します。パソコン等の家電を購入する際は「価格.com」、居酒屋やレストランを予約する際は「食べログ」等で同様に、口コミには目を通すようにしています。スマートフォンさえあれば、いつでもどこでも簡単に調べられるので、そのような行動形態をとる人は、増えてきているのではないでしょうか。

 

「医療機関の口コミサイトと言えば××」と言われるほどメジャーなウェブサイトはありませんが、利用者数もしくは登録医療機関数の多い*代表的な口コミサイトについて参考までに図表にまとめました。(*平成3010月末日時点における各社のウェブサイトの公表数値)

その他にもGoogleYahooで検索すると、医療機関によっては口コミが投稿されていたり、クリニック&病院及び歯科診療所の順番待ち・予約ができるEPARK(イーパーク)などでも口コミが投稿されていたりします。

万が一にでもネガティブな口コミが独り歩きしないように、事実と異なる書き込みがされていないかを確認し、また心当たりがある内容については自院内で改善を図ると同時に口コミへの返信ができるウェブサイトもありますので対応を取られされることをお奨めします。

 

図表 利用者数もしくは登録医療機関数の多い代表的な口コミサイト

ウェブサイトの名称

概 要

Caloo(カルー)

https://caloo.jp/

月間利用者数800万人、医療機関全国17万件。全国の病院、医科・歯科の診療所を、口コミ、評判、治療実績・手術件数から探せる。専門医・専門外来・女医などによる検索も可能。全口コミが目視確認後に公開されており、極端に低い評価の口コミは会員のみ条件付きで閲覧が可能。患者は口コミ登録によりポイントがもらえる仕組みとなっている。

QLife(キューライフ)

https://www.qlife.co.jp/

月間利用者600万人、医療機関全国17万件。医療機関の検索や薬の検索、医療ニュースの閲覧などができる、医療情報の総合サイト。会員は口コミ・アンケートの投稿で、ギフト券と交換できるポイントがもらえる特典がある。

病院の通信簿

https://www.tusinbo.com/

 

全国21.7万件の医療機関等の情報と9.2万件の口コミ情報を掲載。顧客満足度調査を実施する企業が運営。病院、歯科医院、治療院、産科小児科別に、患者に不満や要望・感謝の声を通信簿という形で付けてもらい、その結果を集計し公表している。

いい病院.ネット

https://iibyoin.net/

全国16万件の医療機関情報を掲載。診療時間や地図などの基本情報とともに口コミが見られるようになっている。「日本の名医 ゴッドハンド」というコンテンツがあり、心臓治療、外科、がん治療、脳治療、眼科、腰痛・関節痛、その他に分類して、医師のリストを掲載している。

ホスピタ

https://www.hospita.jp/

医療機関全国17万件。2006年から病院・クリニック・歯科医院の検索サイトとして運営、2017年からは「お医者さん(名医)検索」に力を入れており、医師が薦める口コミ名医・病院情報がある。患者が街の名医と出会えるプラットフォーム構築を目指し、医師の卒業医学部・歯学部、専門医、出身地、血液型、性別、趣味などの情報を掲載している。

出所:各社のWebsiteの内容を筆者が整理して記載。

2018年

12月

21日

NPSという顧客満足度に代わる新たな指標

106日、7日に東京で開催された全日本病院学会において、公益財団法人日本医療機能評価機構が病院の支援として「患者満足度・職員やりがい度活用支援」を2018年度から本格的に開始しているとの話を聴きました。患者満足度調査の実施は、図表1の調査項目をみてわかるように、かなり労力が必要ですが、患者さんとの双方向のコミュニケーションを図る機会、自院が気づいていない問題を発見し解決できる機会ですので、検討されてみてはいかがでしょうか。

 

図表1 日本医療機能評価機構の外来患者満足度調査項目

1. ○○○○(病院名)を親しい方にもすすめようと思いますか?(総合評価)※

2. 診察までの待ち時間    3. 診察時間   4. 医師による診療・治療内容

5. 医師との対話       6. 看護師    7. 事務職員

8. その他のスタッフの対応   9. 痛みや症状を和らげる対応   

10. 精神的なケア            11. プライバシー保護の対応  

12. 薬剤師   13 . 介護職員   14. 看護助手   15. 検査職員  16. リハビリ職員

17. 相談員   18. 栄養士・調理師   19. 清掃職員

20. 安全面への配慮      21. ニーズや価値観の配慮   22. 人格や尊厳への配慮

23. 要望や苦情への対応  24. 身の回りのお世話       25. 受付手続き

26. 会計手続き          27. 入院時の説明・手続き   28. 退院時の説明・手続き

29. 手術   30. 検査   31. リハビリテーションの成果   32. 職員間の連携

33. 他施設との連携   34. 料金負担   35. 職員の接遇  36. 行事やレクリエーション

37. 外出や散歩      38. 建物や設備  39. 備品類      40. 清掃の状況

41. トイレ   42. 入浴  43. 食堂  44. 売店  45. 案内表示や掲示物  46. 交通アクセス

47. 駐車場   48. 送迎サービス    49. 日常生活支援    50. 家族への情報提供

 

※:固定項目   太字:他院とのベンチマーク対象項目

出所:公益財団法人日本医療機能評価機構のWebsite

(注記)入院患者満足度調査及び職員満足度調査項目は、同機構Websiteをご覧ください

 

患者満足度の調査結果は、医療機関間で大きな差は出てきません。なぜならそもそも調査対象の患者は、当該医療機関を自らが複数の中から選択しているわけなので、程度の差はあれ大多数の患者は「提供されたサービスにそれなりに満足」しており、「医師やスタッフに感謝」しています。そのため他院との比較は自院の職員の改善意欲を高める動機付けに活用できるような場合を除けば、自院内で継続的に調査を実施して経過観察に用いるのが良いでしょう。1年もしくは半年ごとに同じ調査方法で実施して推移を見守ると、職員の入れ替わりや配置転換、運営方法の変更など、医療機関の施策が満足度の変化に反映しますので、組織面・運営面で参考にできます。

ただ注意しないといけないのは、患者満足度調査を実施すること自体が目的になってしまうことです。定期的に実施する調査の場合、どうしても各項目のスコアの前回実施時との比較に目が行くため、前回と比較して「上がった」「下がった」という事実に一喜一憂してしまい、調査を実施し集計を繰り返すという単なる定型的な作業に陥いりがちです。

 

一般企業において顧客満足度は、「××に対して、どの程度満足しているか?」を計測する指標であり、サービスの品質を数値化するものとして利用されていますが、この"満足"の包含する範囲はかなり"あいまい"です。アンケートで「満足」という評価を下した顧客であっても、必ずしもお得意様になって業績向上に貢献してくれるとは限りません。企業が顧客満足度の向上を実践しても、目に見える形で業績向上につなげるには相応の時間が必要とされます。そこで業績向上につながる指標として、NPS(「Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」の略)という顧客満足度に代わる新たな指標を導入する企業が増えているようです。NPSは「推奨者正味比率」とも呼ばれ、これまで計測することが難しかった顧客ロイヤルティ(顧客の長期的な忠誠心)を数値化する指標です。NPSは「すすめたいと思いますか?」という質問を通して、「他者にすすめる」という未来の具体的な行動を点数化するため、今後の収益の動向に連動しやすいと考えられています。

 

この指標は2003年にアメリカの大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏が、ハーバード・ビジネス・レビューで発表しました。著書『ネット・プロモーター経営』の中で、NPS開発に取り組み始めたきっかけとして、「(アメリカの自動車メーカー最大手の)ゼネラル・モーターズは2005年春に、顧客満足度調査最大手であるJDパワー・アンド・アソシエイツから数々の賞を受けたにもかかわらず、ビジネス面では市場シェアが低下し、社債格付けが投資不適格に引き下げられた」出来事をあげています。顧客満足度を高めても、必ずしも顧客から自社の製品が選ばれて売上増加に繋がるわけではなかったということです。

 

NPSを計測するためには、「あなたは○○を親しい友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と質問し、010点で評価してもらいます。○○には、企業や製品、サービス、ブランドなどが入ります。点数(推奨度)によって顧客を図表2のように「3つのグループ」に分類し、06点を付けた人を「批判者」、78点を付けた人を「中立者」、910点を付けた人を「推奨者」とします。

NPSは、「推奨者」の割合(仮に60%)から「批判者」の割合(仮に20%)を引いた数値(60%-20%=40%)になります。推奨者が増えるほど、批判者が減るほど数値が高くなるように設計されています。

 

図表2 評価した点数による分類

点数

分類

具体的内容

910

推奨者(Promoter)

熱心な顧客。自らが継続して購入(利用)するだけではなく、他者に対してサービスを勧める『推奨』の役割も担う。

78

中立者(Passive)

満足はしているが、それ程まで熱狂的ではなく、競合他社が良い条件を出せば簡単になびきやすい顧客。

06

批判者(Detractor)

何らかの不満を抱いている顧客。放置しておくと悪評を広められるリスクもある。

 

2018921日の日経産業新聞掲載の株式会社アイ・エム・ジェイの調査によれば、NPS導入で得られた主な効果として、「顧客の声を聴く文化ができた」、「複数部署をまたいだ共通指標ができた」「社内でPDCAを回す体制が整った」「売り上げが上がった」などが挙げられています。医療機関・薬局においても約10%がNPSを導入しているようですので、次号以降で詳細を紹介することで考えています。

2018年

12月

20日

医師・歯科医師を狙う詐欺的な投資勧誘に注意!

‐ご自身の金融リテラシーに自信はありますか?‐

医師・歯科医師の皆さんは、「未公開株」「新規公開株」や、いわゆる「ファンド」(集団投資スキーム)などの勧誘において、こんな勧誘を受けたことはありませんか?

◆「上場確実ですので、必ず儲かります! 元本も保証します!」

◆「△△社の株(社債など)を買ってくれたら、あとで高く買い取ります。」

◆「被害を回復してあげます。その代わり別の商品(□□社の株式・社債など)を買ってください。」

◆「金融庁(その他公的機関名)の者ですが・・・・」

これらは、詐欺的商法の可能性が高いため、取引を見合わせることをおすすめします。

 

 

2016年度の全国の消費生活センター等が受け付けた消費生活相談の中の「苦情相談」では、「金融・保険サービス」の相談が2番目に多くなっています。東洋経済やダイヤモンドなどの経済系の週刊誌などでも取り上げられているように医師・歯科医師の所得は高く、一般的に富裕層と見なされています。

皆さんは本業で忙しく、金融の知識を習得する時間を確保するのは難しいかもしれませんので、最低限の金融リテラシーについてお伝えします。

 

 まずは投資勧誘を受けた場合には、金融商品取引法に基づく登録業者であるかどうかも確認し、契約するつもりがなければきっぱりと断りましょう。金融商品取引業の登録を受けた業者については、「免許・許可・登録を受けている業者一覧」(金融庁)で確認できます。

不審な勧誘を受けた場合には、以下の金融庁金融サービス利用者相談室に情報提供、最寄りの警察署に相談してください。

【情報の提供窓口】

○金融庁金融サービス利用者相談室

電話(ナビダイヤル):0570-016811

※IP電話の場合は、03-5251-6811

FAX:03-3506-6699

 

ただ金融商品取引業の登録を受けた業者で、名の通った大手金融機関であったとしても、お客様第一の営業をしていない場合があります。具体的には、販売手数料等の高い投資信託を奨めたり、長期投資が望ましい金融商品であっても短期的に運用成績が悪い場合に買替えを奨めて新たな商品販売(回転売買)によって手数料を獲得したりするようなケースです。また金融機関によっては、商品ごとの販売目標を設定し、お客様にとって望ましい商品の販売よりもノルマ達成を優先して販売している場合もあるように聞きます。

 

 

「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、一般の人々の証券市場への積極的な参加を促進するため、様々な環境整備に取り組んでいる金融庁は、金融機関の営業姿勢を改めさせるために、平成29330日に金融事業者向けに「顧客本位の業務運営に関する原則」を定めました。

 

原則1.金融事業者は、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取組状況を定期的に公表すべきである。当該方針は、より良い業務運営を実現するため、定期的に見直されるべきである。

原則2.金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。

原則3.金融事業者は、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定すべきである。

原則4.金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。

 

原則5.金融事業者は、顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、上記原則4に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきである。

 

個人的には自社本位の社風が染みついた金融機関が、急に顧客本位を徹底できるとは思えません。自らの資産を守り増やすために、最低限の金融リテラシーは身に着けたいものです。

2018年

11月

22日

コンテンツマーケティング

 

94日に公表された厚生労働省の「平成29年受療行動調査(概数)の概況」によると、ふだん医療機関にかかる時に「情報を入手している」人の割合は、外来が 77.7%、入院が 82.6%となっています。「情報を入手している」人について、情報の入手先別にみると、外来、入院ともに「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く、外来で 70.6%、入院で 71.9%、次いで、外来では「医療機関が発信するインターネットの情報」が 21.1%、入院では「医療機関の相談窓口」が 23.9%となっています。

「医療機関が発信するインターネットの情報」は、今回調査では外来21.1%、入院15.8%ですが、平成23年実施の同調査では外来13.1%、入院9.8%であり、1.5倍超になっていることがわかります。また「SNS、電子掲示板、ブログの情報含む医療機関、行政機関以外が発信するインターネットの情報」を情報入手先にしている人は、外来12.0%、入院9.8%と1割前後います。最も割合の高い「家族・知人・友人の口コミ」の大元の情報源の一部にはインターネット情報も含まれている可能性もあるため、集患にあたりインターネットの活用は必要不可欠になってきています。

  

マーケティング4.0の時代になり、競争環境が厳しい地域の医療機関の場合、かかりつけの患者が増加し、良い評判の口コミが自然に拡がり、新たな患者が獲得できるような好循環になるまでは、ホームページ、ブログ、フェイスブックなどのオウンドメディア(自社が所有する(Owned)メディア)を地道に充実させることが、地域住民に選ばれるための重要な手段であることは間違いなさそうです。

 

インターネットを使用している人の大半は、探索する際にGoogleYahoo!などの検索エンジンを利用しています。マーケティング調査会社によると、20182月の日本における検索エンジンのシェアは、Googleが圧倒的に大きく、パソコンなどでは91.23%、スマートフォンなどのモバイルでは99.09%になっています。ちなみに日本で最も人気のあるポータルサイトの一つであるYahoo! JAPANは、検索エンジンとしてGoogleを使用しています。

 Google検索された際に上位に表示されるように、ホームページ運営者はSEO対策(=検索エンジン最適化(Search Engine Optimization))で凌ぎを削っています。競争が行き過ぎ、DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」が、検索結果の上位表示を実現するために不確かな医療情報を大量生産していて問題になったことは、まだ記憶に新しいと思います。大量の掲載記事には、「肩こりの原因、幽霊のことも?」というような劣悪なものもあり、マスコミに大きく取り上げられ、201611月にサイト閉鎖に追い込まれました。

WELQ」ほどではないにしても根拠のない医療情報を掲載しているホームページが数多く存在していたことから、Googleは対策を講じました。201712月に「医療や健康に関連する検索結果の改善について」というブログ記事で、日本語検索におけるページの評価方法を変更したことを公表しました。医療・健康に関連する検索のおよそ 60% に影響するような大きな変更で、医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなりました。ブログ記事の中で、過去の検索の分析結果として、一般人は医療の専門用語ではなく、日常会話で使うような平易な言葉で情報を探している場合が大半であること、日本のホームページには信頼できる医療・健康に関するコンテンツが多数存在しているにも関わらず、一般人向けの情報は比較的限られていることから、ホームページ運営者に平易な言葉での情報提供を求めています。

また医療・健康分野の情報・サービスの信頼性確保に取り組んでいる特定非営利活動法人日本インターネット医療協議会は、患者、家族、市民が、医療や健康に関する情報を、どのように利用すべきかのポイントを、「医療情報の利用の手引き」(表)というかたちでまとめています。ホームページ運営者サイドからみて、客観的な裏付けがある科学的な情報を提供する、常に新しい情報を提供するなど、ホームページ作りに参考にすべきことが書かれています。

 

 

 表 インターネット上の医療情報の利用の手引き(抜粋)

 

<どんな情報を利用するか・・・質の高い情報を利用する>

 1 情報提供の主体が明確なサイトの情報を利用する

 2 営利性のない情報を利用する

 3 客観的な裏付けがある科学的な情報を利用する

 4 公共の医療機関、公的研究機関により提供される医療情報を主に利用する

 5 常に新しい情報を利用する

 6 複数の情報源を比較検討する

<どう利用するか・・・情報利用は自己責任で>

 7 情報の利用は自己責任が原則

 8 疑問があれば、専門家のアドバイスを求める

<情報利用の結果は・・・自ら検証する気持ちで、よりよい情報共有を>

 9 情報利用の結果を冷静に評価する

 10 トラブルに遭った時は、専門家に相談する

 

 

 

 スマートフォンなどのデジタルメディアの普及によって、誰もが自分の好きなときに、好きな情報を、好きなだけ入手し、発信・交換まで可能になったため、マーケティング活動を行う際、消費者がいつでも手軽に情報を入手できるような場としてオウンドメディアやコンテンツを用意しておくことが望ましい時代になりました。「コンテンツマーケティングの生みの親」とされるジョー・ピュリッジの著作『エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書』によれば、コンテンツマーケティングとは、「有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、ターゲット・オーディエンスを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントをつくり出すためのマーケティングおよびビジネス手法を指す。その目的は、収益につながる顧客の行動の促進である」と定義しています。

言い換えれば、お客さんに売りたいもの(サービス)の情報やお客さんにとって価値のある情報を、客観的な裏付けのある根拠に基づき、お客さんにわかりやすい言葉、表現で、こまめに説明し、お客さんを引き寄せ、お客さんと良好な関係、信頼関係をつくることで、繰り返し購入してもらったり、他のお客さんに薦めてもらったりできるようになるということです。

コンテンツマーケティングは、地道にコンテンツを作り込む作業を長期間継続し、徐々に成果が出てくるものです。地域に根差したサービスを永年に亘って提供する医療機関には適した手法だと思いますし、継続的に取り組んでいる医療機関も少ないことから、他院との差別化につながるのではないでしょうか。

2018年

10月

26日

コトラーのマーケティング4.0 後編

 エアビーアンドビーやウーバーのサービスはご存知でしょうか。利用されたことはなくても、耳にされたことはあるのではないでしょうか。エアビーアンドビーは、ホスト(部屋の貸し手)と旅行者をマッチングさせる宿泊サービスを提供しています。ウーバーは、乗客と付近にいるドライバーをマッチングして簡単に目的地へ移動できる乗車サービスを提供しています。

どちらもインターネットを活用してサービスのプラットホームを作り、自らがホテルや自動車などの固定資産を保有せずに、シェアを拡大しています。ただ日本では規制が厳しいために普及は遅れています。懸念されるサービスの品質については、利用者及びサービス提供者による評価を蓄積して見える化することで担保しています。

 

インターネットやクラウド技術の発達と低コスト化、スマートフォンに代表される携帯機器の普及、コンピュータの処理能力の向上や記憶容量の拡大、無線通信の帯域が拡大しリアルタイムで大容量の双方向通信が可能になったことで、経済活動や社会システムの基盤が大きく変化しようとしています。

エアビーアンドビーやウーバーのように単に既存のビジネスモデルをデジタル技術で置き換えるのではなく、デジタル時代に最適化された全く新しいビジネスモデルが登場しつつあります。これがデジタル革命です。デジタル革命は既存の仕組みを一旦白紙に戻して、顧客満足度を高めるというゴール設定に基づいて全体最適を目指すものと言えます。

 

前号で紹介しましたマーケティング1.03.0の最新理論が、マーケティング4.0になります。コトラーは、デジタル革命のマーケティング・アプローチと言っています。IoTInternet of Things)に代表されるデジタル技術の特色は、リアルタイム性と双方向性でしょう。情報の重要性が高まると同時に、情報の送り手と受け手との情報の非対称性が限りなく小さくなり、受け手がたちどころに発信者となる可能性もあります。

医療分野におけるリアルタイム性と双方向性については、2018年度診療報酬改定で、オンライン診療料やオンライン医学管理料が新設され、『診療は対面で』という時代から『オンライン経由もあり得る』という時代の入り口に立ちました。「対面による診療の間隔は3カ月以内」「緊急時におおむね30分以内に当該医療機関が対面診療可能」といった厳しい算定条件が付いていますが、診断や治療への影響についてエビデンスが蓄積されることでおそらく緩和されていくでしょう。

 情報の送り手と受け手との情報の非対称性に関しては、医療分野では以前から言われていました。一般的には医療者側が多くの専門的情報をもっているのに対して、患者側はほとんど情報をもっていない。そのため患者にとって最適な医療が提供されない可能性があるという課題への対応として、インフォームド・コンセントが重視されるようになり、1997年に医療法が改正され「説明と同意」を行う義務が、初めて法律として明文化されました。ただその後のデジタル革命によって、スマートフォンを常に携帯できるようになり、インターネット検索がいつでもどこでもできる時代になりました。患者は症状から病名を、病名が分かっていれば診療ガイドラインなどを、すぐに検索して調べられるようになったため、情報の非対称性は以前よりも、かなり小さくなってきているのではないでしょうか。

 

コトラーは、デジタル時代における見込客がサービス購入に至るまでのプロセスについて、『5A』という段階を経るという理論を提唱しています。

Aとは、「Awareness」(気づき)、「Appeal」(魅了)、「Ask」(尋ね・求め)、「Act(行動=購買)、「Advocacy」(推奨表明)という5つの要素から構成されています。

医療機関もデジタル革命時代の顧客の購買決定プロセスを意識して、対応の準備をしておく必要があるでしょう。図の『5A』の要素について考えてみましょう。

「気づき」の段階においては、チラシによる広告や、駅等の看板設置などが考えられます。ただ広告スペースの大きさや表示内容に制約があるため、気づかれることはあっても「アピール」までには至りません。アピールするための手段として、自院のWebsiteを充実させる必要があります。診療科目や得意分野、スタッフや設備の紹介、アクセス等々は当たり前として、医療の質についての指標や混雑状況、予約など、またブログやフェイスブックなどで医療機関の近況を伝えれば印象はかなり違います。

医療機関を探す際には、ヤフーやグーグルなどのポータルサイトで、「診療科+エリア」等を入力し検索する場合が多いですが、検索結果の上位には医療機関検索サイトが表示されることがよくあります。ただほとんどの医療機関は、クリックしても最低限の情報しか掲載されていません。プラスアルファの情報があるだけでも印象が違いますので、コストがかかるわけではありませんし、積極的に検索サイトに情報を提供されたほうが良いのではないでしょうか。特に医療機関が密集している地域の住民は、医療機関選びに苦労します。検索サイトで調べた際に、情報が充実していて、その上に良い口コミが多く集まっている医療機関があれば、選択する可能性が高いように思われます。

また医師の顔写真や医療機関内の様子、駐車場の状況、バリアフリー対応など、患者が不安に感じる要素をホームページで伝えておくことで、最後の「行動」に移し易くなります。他業界では当たり前になっているお客様の評価の掲載については、ご意見箱などを置いている医療機関は、意見と回答をインターネット上に掲示することはすぐにでもできます。患者の厳しい指摘を含めた評価結果は重視されますが、医療機関サイドの誠意あるタイムリーな回答、改善への取り組み結果をありのままに記すことで地域住民からの信頼を獲得できるでしょう。

競争環境が厳しい地域の医療機関の場合、固定客が付いてポジティブな口コミが自然に拡がり、新たな患者が獲得できるようになるまでは、ホームページ、ブログ、フェイスブックなどのオウンドメディア(自社が所有する(Owned)メディア)を地道に充実させることが、地域住民に選ばれるための近道なのかもしれません。

なお「推奨表明」については、本誌201610月号において「口コミの起こし方」という内容で掲載していますので、是非ご参照ください。

 

図 デジタル時代の『5A』への対応

購買決定プロセス

顧客へのアプローチ

Awareness(気づき)

伝統的メディア(TV、雑誌、新聞等の広告、看板等)、オウンドメディア

Appeal(魅了)

Ask(尋ね・求め)

検索サイト、ソーシャルメディア

Act(行動=購買)

オウンドメディア

Advocacy(推奨表明)

ソーシャルメディア等

 

 

 

2018年

9月

25日

コトラーのマーケティング4.0 前編

電車の乗客の半数以上がスマートフォンを見ている光景が、いつ頃からか当たり前になりました。スマートフォンなどのモバイル端末によるインターネットへの常時接続の普及によって、オンラインを無視したマーケティングはもはや不可能に近いものになっています。

私も外食場所やホテル、本や映画を選ぶ際など、インターネットで他人が投稿した評価内容を事前に確認するのが習慣になっています。多くの方々が、売らんかなの広告や専門家の意見よりも、ソーシャル・メディア上の複数の見知らぬ人たちの意見、いわゆる“集合知”を参考にしているのではないでしょうか。

 

「マーケティングの神様」「近代マーケティングの父」と呼ばれるノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院教授のフィリップ・コトラー氏は、その著書『Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital』(邦訳『コトラーのマーケティング4.0 スマートフォン時代の究極法則』)において、マーケティング4.0というコンセプトを示しています。『「marketing」という言葉は、「market-ing」と表記すべきで、マーケティングとは変化し続ける市場を相手にするものであり、市場の変化をとらえないといけない。顧客が、常時インターネットに接続し、情報をタイムリーに獲得したり、自ら発信し他の顧客に影響を及ぼしたりできる環境は、マーケティングの歴史で重要な転換点だ』というようなことを述べています。政治の世界でも、アメリカのトランプ大統領がTwitterを活用し、既存メディアや行政機構を通さず、直接国民に頻繁にメッセージを伝えるという手法を用いることによって、結果的に成功しています。多くの人々がオンラインで常時繋がっている状態が当たり前になったために、様々な業界で大きな変化が起きています。

 

『マーケティング4.0の「4.0」とは何だろう?』と疑問に思われる方々のために、4.0に至るまでの変遷を表にまとめました。詳細について説明します。

 

表 マーケティング1.04.0への進化・深化

1.0:製品主義

良い物を作れば売れる時代

2.0:顧客主義

ニーズのある人に対して訴求すれば、売れる時代

3.0:価値主導

「顧客にとって価値は何なのか」を考え、訴求しないと売れない時代

4.0:自己実現

顧客がそのブランドを通して、自己実現できることが重視される時代

 

マーケティング1.0は、「製品主義」とも呼ばれ、作った製品を潜在的な購買層に売ることがマーケティングでした。マーケティング1.0の時代は、4Pと呼ばれる「プロダクト」「プライス」「プレイス」「プロモーション」を組み合わせるマーケティングミックスが重視されていました。医療機関の場合は、サービスの価格(Price)は診療報酬制度に基づく公定価格(診療報酬点数)により決められていて、個別の医療機関が独自の価格設定はできません。医療機関がお客様に他の医療機関との違いを打ち出す方法は、医療行為を含むサービスの内容やその質(Product)、自宅や最寄駅から近い・遅い時間まで開業している等のアクセスの容易性(Place)、そしてそれを顧客にどう伝えるか(Promotion)になります。ただ価格に加え、保険診療の範囲や医療法の広告規制などのために、医療機関のマーケティングにはかなり制約があります。

 

マーケティング2.0は、「顧客主義」や「消費者志向」と呼ばれています。1.0の時代を経て、多くの製品やサービスがコモディティ化(普及が進み、差別化が困難になった状態)したため、“顧客が望む”製品やサービスを開発し提供する段階です。

そのような変化の中で重視されるようになったのが「STP」です。Sはセグメンテーション (市場細分化)Tはターゲティング(ターゲット選定)Pはポジショニング(ターゲット顧客の頭のなかに、自社製品について独自のポジションを築き、差別化イメージを植えつける活動)です。

医療機関の場合は、年齢層や性別、罹患している疾病、軽症者から重症者まで、様々な患者がいます。そのすべての患者に満足のいくサービスを提供するのは難しく、経営資源(例えば医師の専門性や医療機器等)には限度があるため、市場あるいは顧客を絞り込み、集中的に経営資源を投入することによって効果を上げ、他の医療機関との違いをアピールすることが必要になっています。自院の得意分野に“機能分化”し、自院で対応できない機能は他の医療機関等と“連携”することで、顧客の希望をトータルで叶えることがマーケティング2.0と言えるのかもしれません。

 

マーケティング3.0は、2010年頃からコトラー教授が提唱を始めたもので「価値主導型」のマーケティングです。類似の商品やサービスが飽和状態の時代、購買意欲を引き出すために、顧客の内側にある「社会をより良くするという精神」に訴えかける手法がトレンドとなりました。企業が利益を生み出すことも、顧客が感情や精神を満足させることも、私たちが生きる地球を良くする価値につながるものが求められるようになり、CSR (Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の取組にスポットが当たるようになりました。マーケティング3.0の段階にある企業は、「3つのP」のために働かなければならないとされ、その3Pは、「利益」(Profit)、「人的サービスの質」(People)、「地球」(Planet)になります。

たとえばアメリカのコーヒーチェーン大手スターバックスが、79日に2020年までに世界中の店舗で使い捨てのプラスチック製ストローを廃止すると発表しました。ストローなどの小さいプラスチック製品はリサイクルが進まず、海洋汚染の原因となっていると指摘されていることを受けての措置のようです。この新しい取り組みに対して、インターネット上では「応援したい」などと賛成の声が多数あがっているようです。アメリカのMcDonald'sも、イギリスとアイルランドで9月よりプラスチック製ストローから紙製ストローに順次切り替えると発表しています。このような企業の取り組み姿勢(価値観)に顧客が共感し、顧客が固定客化すれば、顧客が企業にもたらす価値は増大していきます。

20172月号で紹介しました北海道の札幌市を主な拠点とする渓仁会グループは、2006年からCSRCorporate Social Responsibility)活動に取り組み毎年レポートを出しています。医療・介護の事業者としては先駆的で、「植樹活動」、「地中熱」を利用した冷暖房システムや自然エネルギーを利用した「雪冷房システム」の導入など、地域の特性を活かした独自のエコ活動を展開しています。地域に根付いた環境保護活動を継続しつづけることと、広めること、そして未来につないでいくことを目指すと宣言しています。

マーケティング3.0に取り組んでいる医療機関はまだまだ少数派だと推察します。次号ではその1歩先を行くマーケティング4.0について詳しく説明します。

 

 

2018年

9月

06日

最低賃金の改定

最低賃金が改定されます。 
都道府県の平成30年度地域別最低賃金額及び発効年月日は、表のとおりです。

3%前後の上昇で、最高は東京都の985円、最低は鹿児島県の761円。

東北地方、四国地方、九州地方が相対的に低い傾向にあります。

 

2018年

9月

05日

ホームページのセキュリティ対応

Google製WEBブラウザ Chromeがアップデートされました。
https接続(SSL通信 セキュリティー証明書を求めるものです)が標準となり、従来の接続方式だと上記のような警告画面が表示されることとなっています。
自院のWEBサーバーが対応済みかどうかを、早めに確認されたほうがよいかと思い
ます。よくわからない場合は、保守対応している会社に相談してください。
こちらをご参照ください。
ご自身がお使いのWebブラウザは、マイクロソフトかもしれませんが、シェアの1位は  IE ではなくてグーグルの Chromeですので、未対応の場合は速やかに対応されるのが宜しいかと思います。

2018年

8月

31日

医療広告ガイドラインに関するQ&A(厚生労働省 平成30年8月作成)の抜粋

 美容医療サービスの広告による消費者トラブルが増加していること等を踏まえ、医療に関する広告規制の見直しを含む医療法等改正法が平成 306 月1日に施行されました。

広告規制の対象範囲が、単なる「広告」から「広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示」へと変更され、ウェブサイトによる情報提供も規制の対象となりました。ただし、医療を受けるものによる適切な医療の選択が阻害されるおそれが少ない場合には、広告可能事項の限定を解除できることとしています。

厚生労働省がQ&Aを開示していますが、主なものをいくつか紹介いたします。詳細につきましては、厚生労働省のウェブサイト内の「医療法における病院等の広告規制について」をご確認ください。

 

Q 「最新の治療法」や「最新の医療機器」などの表現は、広告可能でしょうか。

A 「最新の治療法」や「最新の医療機器」であることが、医学的、社会的な常識の範囲で、事実と認められるものであれば、必ずしも禁止される表現ではありません。ただし、求められれば内容に係る裏付けとなる根拠を示し、客観的に実証できる必要があります。登場してから何年までを最新と認めるか等の基準を示すことは困難ですが、より新しい治療法や医療機器が定着したと認められる時点においても、「最新」との表現を使用することは、虚偽広告や誇大広告に該当するおそれがあります。

 

Q 「糖尿病外来」、「認知症外来」等の専門外来を設置している旨は、広告可能でしょうか。

A 「○○外来」との表記については、広告が可能な診療科名と誤認を与える事項であり、広告できません。ただし、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトについては、広告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除可能です。

 

Q 医療機関の広告をする際に、新聞や雑誌の記事の引用として、例えば、雑誌に掲載されていた「日本が誇る50病院の一覧」を、そのまま他の医療機関名も含めて掲載することは可能でしょうか。

A 医療機関の広告に新聞や雑誌の記事等を引用又は掲載した場合、当該記事等の引用部分の記述は、医療法及び医療広告ガイドラインの適用を受けます。なお例示の雑誌に掲載されていた「日本が誇る50病院の一覧」等については、他の医療機関名も含めてそのまま掲載したとしても、雑誌社等が評価した結果は、掲載されていない医療機関よりも優れた旨を示す比較優良広告になることから、原則、広告できません。

 

Q 「最新がん〇〇療法」、「〇〇治療最前線」といった書籍や冊子等は、広告規制の対象でしょうか。

A  治療法等を紹介する書籍や冊子等の形態をとっていても、書籍等の内容が、特定の医療機関への誘引性が認められる場合(特定の医療機関のみ可能な治療法や、治療法を行う一部の医療機関のみが紹介されている場合等)には、広告に該当するため、医療法及び医療広告ガイドラインを遵守する必要があります。

 

Q 手術前のみ又は手術後のみの写真を用いて広告することは、可能でしょうか。

A 手術の前後の写真と同様、手術前のみ又は手術後のみの写真についても、患者等を誤認させるおそれがある治療効果に関する表現に該当するため、広告できません。

 

Q 医療機関主催の患者や地域住民向け講演会についての広告は、広告規制の対象でしょうか。

A 講演会等についての広告であり患者の受診を誘引すること等を意図していない広告は、規制対象外です

 

Q 医療機関のウェブサイト上の口コミ情報は、広告規制の対象でしょうか。

A 患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談は、今回新たに規定された広告禁止事項です。特に、当該医療機関にとって便益を与えるような感想等を取捨選択し掲載するなどして強調することは、虚偽・誇大に当たるため、広告できません。

 

Q 患者の希望により配布するメールマガジンやパンフレットは、広告規制の対象でしょうか。

A 患者の希望であってもメールマガジンやパンフレットは広告として取り扱われるため、広告規制の対象です。ただし、患者等が自ら求めて入手する情報を表示する媒体になりますので、広告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除可能です。

 

Q 歯科診療における「審美治療」は、広告可能でしょうか。

A「審美治療」という表現で行われる医療行為については、様々な治療の方法が含まれ、そのいずれの治療を提供するのかという点が明確ではなく、誤認を与える可能性があると考えられ、広告できません。なお、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトなどについては、広告可能事項の限定解除要件を満たした場合には、広告可能事項の限定を解除可能です。また、個々の治療の方法については、例えば、「ホワイトニング」について、医薬品医療機器等法上の承認を得ている医薬品を使用し、自由診療である旨及び標準的な費用を記載する場合には、広告可能です。

 

Q 治療内容について「歯を削らない痛くない治療(99%以上の満足度)」との表現は広告可能でしょうか。

A 「歯を削らない治療」といった表現は、広告可能です。「痛くない治療」のような科学的根拠がなく虚偽広告や誇大広告のおそれがある表現は、広告できません。また、「99%の満足度」については、求められれば内容に係る裏付けとなる合理的な根拠を示し、客観的に実証できる必要があります。

 

Q 改正医療法により、医療機関のウェブサイトも広告規制の対象となりましたが、医療広告違反を見つけた場合や医療広告に関する疑問がある場合には、どこに相談すれば良いのでしょうか。

A 各医療機関を所管する地方自治体や保健所にご相談ください。

問い合わせ窓口一覧を厚生労働省 HP に掲載しているため、参考にしてください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html

また、ネットパトロールに通報していただくことも可能です。(http://iryoukoukoku-patroll.com/

 

 

◆ 広告可能事項の限定解除の具体的な要件

広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④のいずれも満たした場合とします。ただし③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限ります。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手

する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、

問い合わせ先を記載すること、その他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項

について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項に

ついて情報を提供すること

2018年

7月

31日

“地域対話型”の診療所経営

自院のサービスが患者や地域住民の期待に応え続けられるように、共創(顧客の声を自社のサービス開発や販売促進活動に活かす取組)の必要性や、企業や病院の取組事例を紹介してきました。ただ現実問題として、大きな組織でなくては本格的に取り組むのはなかなか難しい、自院ではとても無理と感じられたかもしれません。人材に限りのある診療所の場合は、最初の一歩として患者や地域住民との積極的な対話を意識されることをお奨めします。対話とは、お互いを理解するために、本音と本音の話し合いをすること、信頼関係を築くためのコミュニケーションです。ちなみに会話とは、日常で話す取り留めのない話、信頼関係がなくても取れるコミュニケーションです。

 

どのように対話を進めればよいのか? TKC全国会(10,000名超の会員を擁する日本最大級の職業会計人の集団)が出版している『地域から支持・信頼される“地域対話型”の診療所経営という本の中で、顧問先の診療所の取組事例を紹介していますので参考にできます。

地域住民や患者の声に耳を傾けるというのが「地域対話型」の診療所の基本です。「患者の声は日々の診療で自然と聞いているはずだから大大丈」と考えられる方が多いのではないかと想像します。日々の診療のなかで医師本人のもとに届く声は非常に限定的です。医師と比べて話かけやすそうな看護師や受付なども、患者が勇気を出して要望を伝えてくれれば耳を傾けますが、自らが積極的に患者の要望を聞き出すようなことまでは、おそらく普段していないのではないでしょうか。患者の声を集めることすら不充分なわけですから、ましてや潜在的な患者である地域住民の声を集めることはできているとは言えないでしょう。

最初に紹介する事例は、静岡県浜松市にて地域のかかりつけ医機能を果たしている「桜町クリニック」(医療法人社団エスケーアール)です。経営理念として「患者さまを第一に考え、親身の医療を行います」「患者さまの要望、地域の要望にお応えします」「地域社会に貢献してまいります」という三つを掲げています。ホームページには、“ここに掲げる理念は、桜町クリニックを根本から支える行動の指針です。これらは、けっして壁に掲げた理想ではなく、ここに働く全職員の心そのものです。”との記載があり、院長の強い決意を感じ取れます。具体的な活動としては、地域のニーズを探るために、開業前には近隣の住宅を戸別訪問しアンケート調査を実施、開業後は会員モニター制度、月に2回のメールマガジンの発行(2002826日創刊)やアンケート調査を実施するなどしています。アンケート結果で、患者がカルテ、レセプトについては約7割、領収書内容に至っては9割の方が情報公開を求めていたことから、情報開示や開示内容の理解が難しい場合のサポートを積極的に実施しているようです。また病気の急性期・回復期、もしくは他児への感染の可能性のために保育園・幼稚園に登園できない児を預かる病児保育室を運営しています。12名の児に1人の職員が対応する手厚い保育を行い、保育士、看護師、医師という専門職が対応することにより、利用者に安心を与える環境を整えています。利用定員は16人で、年間延べ1,200人を受け入れ、地域住民にとって不可欠なサービスになっているようです。

次に広島市の「二宮内科」の取組事例です。5つの医療機関と9つの介護事業所で構成する医療法人社団恵正会と、特別養護老人ホーム、グループホーム、訪問系サービスを中心としながら、フードバンク事業や地域支援事業を手掛ける社会福祉法人正仁会の2つの法人で構成しています。グループの経営理念として「地域社会に安心を提供し続ける」、基本方針として「地域とのパートナーシップを大切にする」、「その人らしい生活を支援していく」を最重要の価値観として位置づけています。

フードバンクは、「もったいない」の精神で限りある資源を有効活用し地球環境を守ることと、心豊かなまちづくりの創造に貢献することを組織のミッション(使命)とし、4つの事業に取り組んでいます。具体的には、フードバンク事業:食べ物のいのちを大切にするための活動(基幹事業)、世代間交流事業:さまざまな世代の交流により地域を活性化する活動、ふれあいサロン事業:「食べる」ことを考える啓発・実践活動、リサイクル事業:廃棄物の削減を目的に3R(リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle))を推進する実践活動です。地域の食品関連企業やスーパー、商店などの協賛を受けて、商品としては扱えないが問題なく食べられる食材を集めて、児童養護施設や障害者共同生活ホーム、生活困窮者支援団などへ無償提供しています。

 

地域対話型”の診療所を実践している2か所の事例を紹介しましたが、経営の特徴として、地域や患者のニーズを捉えていること、加えて地域や患者のための何らかの活動・事業を行っていることなどの他に、表のように経営理念・方針を明文化し院内の職員や患者や地域に発信していること、地域住民でもある職員にとって働きやすい環境になっていること、医療の質を担保するために常に新しい知識や技術の習得に努めていること、プライベートが充実していることと、本では整理されています。合計21か所の診療所の取組事例が紹介されていますので、ご一読され、自院に類似した機能や規模、立地の診療所のホームページをご覧になられることをお奨めします。

地域住民にとって健康面で困った時に当たり前に受診できる環境を提供するために、医療機関が健全な経営を心掛け存在し続けることが地域への貢献にもちろんなってはいますが、一歩踏み込んで地域と積極的に対話をする取り組みも検討されてはいかがでしょうか。

 

表 “地域対話型”の診療所経営の特徴

経営理念・方針の明文化と情報発信

何のために開業したのか、何をやりたいかが明確になっており、常にクリニックの情報発信に努めていること

患者ニーズの把握とその実践

地域や患者のニーズを捉えていること。加えて、できれば地域や患者のための何らかの活動・事業を行っていること

職員の労働環境の整備·改善

スタッフが働きやすい環境づくりに努めていること

健全な医業経営と経営成績の把握

過去数年間にわたり、適正な利益を計上していること

新しい知識・技術の習得

常に新しい知識·技術の習得に努めていること

夫婦や親子関係が良好・プライベートの充実

家庭が円満であること

 

出所:TKC全国会(2015)地域から支持・信頼される“地域対話型”の診療所経営

2018年

7月

01日

200床以上199床以下による診療報酬の主な違い

診療報酬上では200床未満(199床以下)の病院はかかりつけ医療を行う病院ということで、外来医療や在宅医療の分野の点数が手厚くなっています。主な違いを整理してみました。

 

県庁所在地や中核都市以外の地方の市町村においては、人口当たりの診療所数が不充分で、診療科によっては地域に標榜する診療所が存在しない場合があり、病院の医師がかかりつけ医としての機能を実質的に果たしているケースをこれまで見てきました。

診療所の医師の高齢化が進み、かつ新規開業がない地域においては、病院と診療所の機能分担・連携の促進は不可能です。

 

個人的には、200床という数字で区切るよりは、実質的に地域で果たしている機能で区分するほうが望ましいように感じます。病床機能報告の中身をじっくり見れば病院の機能はわかるはずですから、全国一律の診療報酬制度で定めるのではなく、別の方法で決めるほうが良いのではないでしょうか。

 

2018年

5月

28日

地域共生社会創りに貢献する医療機関の共創マーケティング

『地域共生社会』という言葉をお聞きになられたことはありますか?

20167月に厚生労働省が新しい地域福祉の概念として公表し、大臣直轄でその実現に向けて検討をスタートしました。地域共生社会は、地域住民、地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域を共に創っていく社会です。その背景として、地域・家庭・職場という人々の生活領域における支え合いの基盤が弱まりつつある社会構造や人々の暮らしの変化があります。

地域に根差したサービスを提供する医療機関は、地域社会の一員として「地域共生社会」の重要な担い手としての役割が期待されているのではないでしょうか。

医療法の第一条において、「医療は、国民自らの健康の保持増進のための努力を基礎として、医療を受ける者の意向を十分に尊重し、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)、医療を受ける者の居宅等において、医療提供施設の機能に応じ効率的に、かつ、福祉サービスその他の関連するサービスとの有機的な連携を図りつつ提供されなければならない。」と定められています。

「地域住民の健康の保持増進」する社会を共に創るという目標に向かって、自院に協力してくれる医療機関や介護事業者、住民や患者と一緒に地域で活動することは医療機関としての社会的責任(CSRCorporate Social Responsibility)を果たすという点で、意義深いように考えます。

 

地域の関係者と共に暮らしやすい社会を創っていくために、前号までで紹介していた「共創マーケティング」の手法を活用できます。参考までに その取組事例として味の素AGF株式会社(以下、AGF)を取り上げます。AGFは、2020年中期計画ビジョンとして「日本一愛される嗜好飲料メーカーを目指す」との経営目標を設定しています。「AGFファン創り」を強化するために、インターネット上に201541日に新たなコミュニケーションサイト 「AGF Lounge(ラウンジ)」をオープンしました。

「AGF Lounge」は、ブランドや商品の情報発信に加え、お客さま参加型のコンテンツを通じて、AGFの活動に共感するお客様と情報交換を図るコミュニケーションサイトであり、サイト運営を通じてお客様と共に新たな価値を生み出していくことを目的としているようです。

「AGF Lounge」のホームページの構成を見ると、「商品サイト」、「AGFⓇのこだわり」、「キャンペーン」、「遊ぼう」、「応援しよう」、「おいしい飲み方」、「楽しいレシピ」、「CM&動画ギャラリー」のようになっています。

「商品サイト」には、コーヒー等の商品の紹介がされています。仮に医療機関でコミュニティサイトを創る場合は、保険診療や健康診断などの内容をわかりやすく、親しみやすく紹介をすることなどが考えられます。

AGFⓇのこだわり」には、コーヒー豆の焙煎方法等のこだわりが紹介されています。医療機関の場合は、経営理念や自院の強み、例えば、医療の質、医療機器の性能、職員のおもてなし等など他院との差別化要素が考えられます。

「遊ぼう」には、お客さんからの声やAGF社員からのメッセージが掲載されています。医療機関の場合は、ご意見箱の投書内容や普段患者と会話をする機会の少ない職種の方が、自部門の仕事内容や専門家ならではの豆知識などを紹介することが考えられます。

「応援しよう」には、AGFが継続的に取り組んでいる東日本大震災の被災地への復興応援活動が紹介されています。医療機関の場合は、市民健康講座の開催や他施設との多職種連携活動など、地域住民の健康保持・増進に貢献する活動の紹介などが考えられます。

「おいしい飲み方」、「楽しいレシピ」に医療機関の場合対応するのは、医師自身が取り組んでいる健康管理の方法や、管理栄養士によるレシピなどが、「CM&動画ギャラリー」には院内のイベント活動などの紹介が考えられます。

 

共創コミュニティサイトを運営するにあたっては、サイト内での双方向性、コミュニケーション機能が非常に大切になってきます。AGFのサイトでは、ポイント制を採用することで参加率を高めています。コメント投稿や投稿に「いいね」をすると1ポイント、ログインやテーマの投稿、コメント返信をすると3ポイント、商品に対する人気投票やクイズに回答すると10ポイントが与えられます。ポイント数に応じて「AGFLounge」内での限定キャンペーンや特別企画などに参加できるようにしています。商品の人気投票からリアルイベントへの参加まで、一貫して顧客間、顧客と会社・社員間の「交流」を意識したサイト設計がなされています。医療機関の場合でも、ポイント数に応じて自由診療の健診等の一部検査や、管理栄養士による糖尿病料理教室、理学療法士による医学的背景に基づいた健康体操教室などの無料化、優先参加・割引などは考えられます。

既にホームページやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを活用し、患者や地域住民とのコミュニケーションを意識している医療機関も見受けられますが、特に地域で医療、介護等のサービスを複合的に提供している医療法人などは、地域共生社会、地域包括ケアを意識した地域共創コミュニティサイトを検討されてはいかがでしょうか。参考までに、コミュニケーションサイトを開設する場合の主な検討事項を挙げておきます。

 

表 インターネットを活用した共創コミュニティ開設時の主な検討項目

 

機能

具体的内容

コミュニケーション機能

ディスカッション

特定のテーマに対する問いかけや質問に対して、掲示板のように他会員の意見やコメントが共有され、かつ会員同士の対話をサポートする機能

投稿へのいいね!やコメント

会員の投稿に対して気軽にレスポンスを行うことでコミュニティの活性化を促す効果が期待できる

イベント招致

リアルイベントの告知、会員への連絡を行う機能

ブログ

コミュニティ内で実施した取組の進捗や効果を取りまとめて報告することで、コミュニティに参加したことへの実感や達成感を伝えることができる

インセンティブ付与

貢献度に応じたインセンティブの付与やランキング機能表示は、金銭的対価に代わる会員への動機づけが期待できる

コミュニティ・リサーチ機能

定量・定性調査(アンケート)

アンケートの作成・対象者選定・集計・分析が一気通貫で実施できる

調査結果の出力

各種リサーチの結果を集計・分析可能な状態で出力する機能

出所:池田紀行、山崎晴生(2014)『次世代共創マーケティング』 SB Creative を筆者が一部改変

 

 

2018年

4月

28日

共創マーケティング -麻生飯塚病院の取組-

 

企業の顧客の声を聞く姿勢や仕組みについて紹介してきましたが、顧客や他のステークホルダーと一緒にマーケティングを行い、顧客の声を自社のサービス開発や販売促進活動に活かす取組を「共創マーケティング」といいます。

一般的なマーケティングでは、サービスを開発するときには、自社や調査会社の市場データなどをもとにターゲットを分析し、仮説を立てることが一般的です。しかしその場合、データの調査時期や調査方法によっては実際に企業の顧客となるターゲットと乖離が生じてしまうこともあります。

共創マーケティングは、サービスの開発やリニューアルの初期段階から顧客と直接交流することでニーズを汲み取り、一緒にサービスを創り上げていくところに特徴があります。またサービス提供後も顧客から継続的に意見をもらうことで質を高めていくことが可能です。顧客の声に答えて柔軟にサービスを改善することで、 顧客のサービスに対する「愛着心」や「思い入れ」を高めることもできます。

 

小林製薬のお客様相談室の「一生懸命応対」や営業や製造部門などの従業員に向けての『お客様の声を聴く会』の開催(1月号掲載)、マクドナルドの社長による顧客とのタウンミーティングや、顧客による店舗の抜き打ち検査や製造工場見学、スートフォンアプリによるアンケート収集(3月号掲載)、良品計画の「声ナビ」「顧客視点シート」「オブザベーション」などの独自の仕組みで顧客の声を社内に取り入れ、商品・サービスに反映する取組み(5月号掲載)などは、共創マーケティングと言えるでしょう。各社のマーケティング活動では、ソーシャルテクノロジー(インターネットを通じて利用される、不特定多数のユーザーが他のユーザーと繋がりを持ち、情報の発信・共有などのコミュニケーションを行うこと)を積極的に活用しています。この大きな変化の流れは「グランズウェル」と呼ばれており、企業のグランズウェルへの取組は、大きく挙げると5つあります(表1)。

 

表1 グランズウェル5つの戦略

 

具体的な行動

リサーチ

耳を傾ける

顧客の会話を分析する

マーケティング

話をする

顧客の会話に参加する

販売促進

活気づける

熱心な顧客を応援して他の顧客の購買を促す

サポート

支援する

顧客同士が助け合うようにする

開発

統合する

顧客のアイデアをビジネスに組み込む

出所:池田紀行、山崎晴生(2014)「次世代共創マーケティング」SB Creativeを一部改変

 

共創マーケティングの手法は医療機関においても、取り入れられています。

福岡県所在の麻生飯塚病院は、 1918年開院の由緒ある病院です。地域の住民の厚い信頼のもとに発展し、421,048床、医師303名、看護師1,097名を含む2,439名(201781日現在)の職員が、“Patient First”を旗印に、“We Deliver The Best”~まごころ医療、まごころサービス、それが私達の目標です~を理念として最適医療を実践しています。同院のWebsiteの掲載内容に基づいて紹介します。

 

同院では、患者会が患者さんのこころの支えとなり、患者さん・ご家族・同院職員のつながりがより深まる場となることを願い、『患者会支援制度』を創っています。「会則の作成」や「事務局の設置」など、院内所定の要件を満たす患者会が、同院に登録・申請すれば「登録患者会」として、次のような支援をしています。

・活動支援金として年間3万円の補助金支給

・当院職員が患者会活動で日帰り旅行などをした場合は出張扱い

・病院内の会議室など、活動場所の提供

・当院職員や患者さんへの患者会の広報活動支援

 「患者会を作りたいけれども、何から始めればよいかわからない」という患者さんや同院職員に対しては、独自の患者会設立マニュアルを提供しており、まさに至れり尽せりです。

例えば患者会のひとつ“菜の花会”は、ストーマ外来に事務局を置き手術を受けられた方々(同院以外で手術を受けられた方も可)とその家族と、外科及び泌尿器科の医師とストーマケアを専門とする看護師等で構成し、術後の人生を明るく前向きに過ごすことをめざして活動しています。術後の肉体的苦痛や精神的な悩みは、同憂者でなければ理解は難しいでしょうから、医療スタッフは患者等から直接話を聞くことで、治療方針の選択や術後ケアの提供などの点で参考にできるでしょう。

患者やその家族、職員を「支援する」ことで、関係者同士が助け合えるような場を作り、その場で患者や家族のニーズに「耳を傾けたり」、「話をしたり」します。話し合った際に出たアイデアを「統合し」、治療や看護のオペレーションに組み込んでいます。

 

また20103月に『地域医療サポーター制度』を創設し、継続しています。同制度は、住み慣れた地域が安心して医療を受けられる地域であり続けるために、自分の健康は自分で守る(病気の予防)、医療機関と上手に付き合うという2つの視点で自ら行動し、周囲の方々にもその知識を伝えてくださる方を『地域医療サポーター』として同院独自に認定する制度です。

 『地域医療サポーター』にはレギュラー/ゴールド/プラチナの3種類があり、認定種類をレベルアップさせていけるような制度になっています。認定要件の詳細は、表2の通りです。地域医療のことを真剣に考えてくださる、幅広い年齢層の方々に参加いただくことで、2018118日現在でレギュラー:917名、ゴールド:224名、プラチナ:15名の『地域医療サポーター』が誕生しています。講師は、医師をはじめ、保健師、ソーシャルワーカーなどの同院スタッフのほかに、地域の開業医の先生方や消防本部の救急救命士の方にも協力いただいているようです。

熱心な住民を応援して「活気づける」ことで、地域全体の意識の底上げをする非常に優れた方法です。

 

表2 麻生飯塚病院の『地域医療サポーター』認定要件

レギュラー

l  年に5回開催している「地域医療サポーター養成講座」(以下、養成講座)を計3回受講された方

ゴールド

l  レギュラーの認定を受けている方

l  レギュラーの認定を受けた後、養成講座を計3回受講された方

l  年に5回開催している「サポーターズミーティング」に計2回参加された方

プラチナ

l  ゴールドの認定を受けている方

l  サポーター認定の有無に関わらず、講演※の企画・実施を計2回行った方

    講演とは

[1]飯塚病院から講師を派遣し開催する講演会の企画・実施

[2]自ら講師を務めて開催する5名以上の勉強会の企画・実施

出所:麻生飯塚病院Website

 

 

医療は地域密着型のサービスであり、医療機関で働いている皆さんも多くは地域の住民でもあります。住み慣れた地域をより良くするためにも、患者や住民を巻き込んだ「共創マーケティング」に取り組まれるのはいかがでしょうか。労は多いかもしれませんが、巡り巡って自院の経営にもプラスに働くと思います。

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2018年

4月

01日

地域包括ケアの深化・地域共生社会の実現に向けた市町村への期待

◎地域包括ケアシステムの地域への浸透状況

 平成18年4月の介護保険法改正以降、市町村は高齢者向け行政サービスを提供する住民向け窓口として地域包括支援センターを設置しています。私が住む地域においても最寄りのショッピングセンターに設置され、行政サービス拠点として身近な存在になりつつあります。

ただ千葉県が2月に実施したインターネットによるアンケート調査結果では、「地域包括ケアシステムについて知っていますか?」という質問に対して、『言葉も内容も知っている』が29.7%の一方で『言葉も内容も知らない』が28.7%と、まだまだ住民の認知度は高くないことがわかります。自由記入の回答には「・・・支援する側(国、市町村等)の言葉であって、受ける側の言葉ではない。当事業に関わっている方の思いが伝わらないのが残念です。」との意見などがあり、私も含め同様の考えの住民は多いように思います。

では地域包括ケアシステムの重要な担い手である医療関係者には認知されているのでしょうか? 高度急性期・急性期病院の職員からは、「地域包括ケアという言葉は耳にするが、どのように関われば良いのかよくわからない。」という話をよく聞きます。厚生労働省が平成20年6月に提示した「安心と希望の医療確保ビジョン」には、「治す医療」から「治し支える医療」に向かっていくと謳っていますが、「支える」のイメージは患者さんをかかりつけ医として外来や在宅医療でサポートするように浮かぶため、平均在院日数短縮が求められる急性期病院で働いていても「支える」が実感できないからではないでしょうか。在宅医療に関するシンポジウムを聴講すると、訪問看護事業所や介護事業所の方々から、病院の医師や看護師には「患者にとって入院している方が安全・安心でより良い環境であるとの先入観があり、在宅療養の良さが理解されない。」との嘆きをよく聞きます。ただ最近では病院でも退院支援部門の看護師等職員の理解度は高まってきており、退院支援部門の職員が院内の病棟部門等を巻き込んだり、訪問看護ステーションなどが退院後の在宅での患者さんの生活状況を知らせたりすることで、院内に在宅療養の実態について浸透させる努力をしているようです。

またここ数年、地域包括ケアシステムを地域に普及させる取組みにおいて、専門職による多職種連携の交流の場を作る動きが増えています。例えば一般社団法人医介は、「医介塾」という名称で地域の医療や介護に携わる方々の交流会、自由な飲みニケーションの会を全国33か所(2017年10月現在)で実施しています。医療と介護の考え方の違いや、医療機関での入院と介護施設や在宅での生活のそれぞれのメリット・デメリットなど、まずは専門職同士が互いに知り合いになる、顔の見える関係になろうとする動きは確実に増加しています。行政や医師会、大学病院等が主体となって税金や補助金を活用して実施する交流会よりも、参加者が自腹で気軽に飲みニケーションをするほうが継続性やその後の拡がりなどもあり、顔の見える関係から胆の見える関係になるまでに結果的に近道になるような気がします。

 

◎地域包括ケアシステムは地域が抱える問題の一部

地域包括ケアシステムの定義は、平成25年12月に成立した社会保障改革プログラム法の第4条第4項において「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と規定されています。

地域包括ケアシステムは2025年の超高齢化社会に向けたマクロの観点からの国の政策ですが、一方でミクロの日常生活圏域においては、認知症等の要介護の高齢者の困りごと以外にも、子育て、障害者、生活保護などの生活困窮者など、自助だけでは解決できない多様な困りごとが存在しています。その対策として厚生労働省は、子ども・子育て家庭を対象とした相談機関として「子育て世代20包括支援センター」「地域子育て支援拠点」、障害者を対象とした相談機関として「基幹相談支援センター」の自治体への設置など、まさにトップダウンで対処療法的に縦割に対応してきました。住民からすれば、地域包括ケアセンター、基幹相談支援センターの名称を聞いても全くイメージできません。

厚労省の各担当部門は、個々の課題解決のための法律を制定し、都道府県や市町村に計画策定を指示します。個別最適の対応策を押し付け、「計画策定にあたっては他計画との整合性の確保を図らなければならない。」という一言を通知に記載することで、後は市町村が考えろというスタンスです。人材が少ない市町村の現場では計画策定自体が目標になってしまい、住民視点の欠如した行政窓口が個々に非効率に設置されているように思われます。

一方で地域においては、介護と育児に同時に直面する(ダブルケア)世帯、障害のある子どもの親が高齢化して介護を要する世帯、高齢の親(80代)と働いていない独身の子(50代)が同居している世帯(8050世帯)、ニュースに取り上げられることもあるごみ屋敷の問題(ごみを単に処分する環境問題ではなく、本人が社会的孤立や認知症などの問題を抱えているようなケース)のような複数の制度に関わる問題や制度の狭間の問題など、縦割りの窓口では対処できない問題が起きています。

厚生労働省は縦割りの弊害にやっと気づいたのか、7月に厚生労働大臣を本部長、全局長を本部員とする「我が事・丸ごと」地域共生社会実現本部を発足し、対象者ごとの福祉サービスを「タテワリ」から「まるごと」へと本格的に転換する姿勢を見せています。

 

◎地方自治体の役割の再認識

地方自治法の第1条の2は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」とあります。住民に最も近い市町村が地域共生社会を推進する、それはまさに本来の役割、存在意義そのものであり、厚生労働省から言われて実施することではないでしょう。理想を言えば市町村は、住民の声・ニーズを直接的、議員を通じて間接的に収集し、既存の行政サービスの内容を改善したり新たな課題を発見したりして、必要に応じて条例にすること、都道府県や国に対して制度や補助金の使い勝手等について伝達し改善策を提言したりすることでしょう。

市町村によっては住民自治を推し進めるために地域担当職員制度を導入し、地域単位で住民との協働による公共サービスの提供や地域課題の解決を図っているところがあります。形態としては①現業職員を除く全職員が所属する課の業務とは別に小学校区を中心としたコミュニティに地域担当として配属されるもの、②課長クラスが中学校区単位のまちづくり委員会に委員として出席するもの、③地域担当職員を自治会に出席させ、発見した地域課題を、本庁に設置した地域担当会議で協議し全庁を挙げて解決に取り組むものなどのようです。一般財団法人地方自治研究機構の調査によれば、約30%の地方自治体が制度導入しています。

地域コミュニティを活性化し地域自治を実現するために地域担当職員を配置し、地域自治推進条例を定めている大阪府豊中市や、区長制度の見直しや地域組織の見直しを進め公の領域を支える「新しい公」の仕組みづくりなど市民参画のしくみを作ることで地域担当職員制度を廃止した三重県名張市など、住民主体の地方自治のあり方を真摯に作り上げようとしている市町村もあります。残念ながら、国や都道府県が求める計画、地域の実情に合わない計画を策定し、補助金を無駄に活用し成果を上げることのできていない自治体もあるのではないでしょうか。首長や議員の能力を含めた住民力、自治力の差と言えます。

 

◎住民の我が事化と市町村の役割

高齢者に限らず大半の住民は、何らかの縁で現在地に住み、濃淡は様々ですが地域コミュニティとの関係をもっているため、できれば住み慣れた地域に住み続けたいと考える方がおそらく多数派でしょう。今後、人口減少が進み、最悪の場合には、商店などは撤退し、空き家が増え、税収が減少し、行政サービス水準が低下、地域は縮小均衡し住みづらくなってしまう可能性はあります。住み続けたいと考えるのならば、地域住民が自分事としてとらえ、自分や家族、仲の良い知り合いが将来に亘って住みやすい地域にしていくことに関心をもつ必要があるのだと思います。

私事になりますが、出身地の福井県小浜市の中名田という小学校区は約300世帯しかありませんが、6地区の区長会、青壮年会、婦人会、老人クラブ、保育会、子ども会、PTA、消防団、遺族会等があり、何らかの組織に所属し、家族単位で顔を知っているのが当たり前になっています。若い頃は正直なところ、田舎特有のしがらみの多さにネガティブな感覚をもっていました。大学入学以降は首都圏に暮らしていますが、自治会において必要最小限のお付き合いをするくらいです。そのような方々はおそらく多数派なのではないでしょうか。最近は自治会に加入しない世帯もあり、災害等、何か生じた時に互助が機能するのかどうかという懸念が大いにあります。「人間は社会的動物である」との言葉がありますが、人間が個人として存在していても、絶えず他者との関係において存在しています。自治会の加入は自由であったとしても、防犯灯やゴミ集積所の管理、共有地の草刈りなど自治会が果たしている役割を考えると、全く関与しない、他人事で済ますようなことはあり得ないように思います。いざという時に互助を機能させるために、普段の仕事が忙しく、会社以外の人間関係を持たない人は、まずは近所や地域の人たちと挨拶をする習慣をつけること、自治会活動に関心を持ち参加すること、地元の行政機関等の広報誌に眼を通したりコミュニティ・センター等の掲示物を見たりして地域について知ること、そして「働き方改革」で生み出された時間で早めに地域デビューを果たすことなどが考えられます。

ただ地域デビューと言っても、大都会や平成の大合併で大規模化した自治体では一部の例外を除きコミュニティがそもそも無いもしくは劣化しているため、参加する場を見つけるのが難しいのではないでしょうか。ソーシャル・キャピタル(人々の協調行動を活発にすることによって、社会の効率性を高めることのできる「信頼」「規範」「ネットワーク」といった社会組織の特徴)のある地域は健康水準が高い、などの研究結果があります。都市部の自治体は、地域共生社会を実現するために、ソーシャル・キャピタルを見つけ出したり、作り出したりする必要があるように思います。具体的には、コミュニティの場づくりに積極的に関与し住民に発信する役割、そのような場で地域ニーズを拾い汎用性のある困りごとの解決策を政策にする役割、コーディネーターとして地域の各種団体など地域資源を結び付けて新たなサービスを生む役割、様々な地域のコミュニティや団体等の取組事例を共有させる役割などを果たしていけば効果が期待できます。

ただ限られた行政職員で行うには限界はあるでしょう。私が住む千葉市では、分野は異なりますが市民の協力を得る仕組みがあります。「ちばレポ」(ちば市民協働レポート)と言って、「公園のベンチが壊れている」、「ごみが不法投棄されている」といった地域インフラの不具合についての情報を、発見した市民が自分のスマートフォンで現場の写真や動画を撮り、専用アプリを使って市の専用サイトに投稿することで、市の担当者や他の市民と共有します。地域の問題を我が事化する仕組みです。これは課題の共有ですが、例えば各地域での草の根の取り組みや活動に関わる悩みを共有したり、集まる場所の確保が難しい場合の支援として行政施設や住民の協力を得て空き家の活用を進めたり、地域デビュー等の新たな参加者を募集したりするなどの目的でオンライン・コミュニティスペースを新たに作ることなどが考えられます。

これからの市町村に望まれる公務員像は、国や都道府県が求める計画を策定するために、住民調査を委託業者に任せ、庁内や一部関係者の意向を取り纏め予定調和な計画をつくるのが得意な人ではなくなるでしょう。ただ未だに役所内で事務仕事をするのが本来業務であり、住民ニーズを把握したり各種のコーディネートをしたりする目的で役所外に出るのは疎まれることがあるようです。期待される役割に変化があれば組織内の評価方法や採用選考方法を変えていく必要性があるのではないでしょうか。

 

最後に各自治体の取組、苦労話や成功例などを互いに分かち合うことに意義があることに疑いはないでしょう。厚生労働省は成功事例を紹介しますが、それだけでは不充分です。ただ誰がその音頭をとるかです。私も一部協力をしていますが、福井大学医学部地域プライマリケア講座において、地域の医療・介護の問題点を、市民、行政関係者、医療・介護関係者で気軽に対話して解決策まで導く『コラボ☆ラボ』(全国21か所で実施)という行政に対する場づくりの支援と、全国各地の自治体が取り組んでいる健康増進活動やまちづくり活動などの内容についてソーシャルネットワークなどを活用して緩く継続して共有する『健康のまちづくり友好都市連盟』(全国の20の市町が加盟)の運営をしています。地域共生社会の取組にお悩みの自治体の方は、参考になされてはいかがでしょうか。

 

2018年

3月

31日

お客様との継続的なコミュニケーション-良品計画の取組-

 

「わけあって、安い」をキャッチフレーズにしている株式会社良品計画。2007年度には第7回ポーター賞を受賞しており、『無印良品は仕組みが9 仕事はシンプルにやりなさい』という本でも紹介されているように、仕組みをトコトン作り込み地道に実行している会社です。ノーブランドと言う名のブランド「MUJI(無印良品)」が永年に亘って実現している「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」の取組みは、「質が高く効率的な」サービスを期待されている医療や介護の分野にも通じるところがありそうです。今回は、良品計画の商品やサービスの開発等のマーケティングの仕組みについて紹介します。

 

良品計画は前号までで紹介した小林製薬やマクドナルドなどと同様に、顧客とのコミュニケーションに力を入れています。具体的には、「声ナビ」「顧客視点シート」「オブザベーション」など独自の仕組みを作り、店舗、電話やメール、ネット上での顧客の声を社内に取り入れ、商品・サービスに反映しています。

まず「声ナビ」という仕組みです。商品づくりにお客様のニーズを直接反映させるために、「くらしの良品研究所 IDEA PARK」というホームページをつくり、お客様の要望を募集しています。要望には販売中の商品のちょっとした改良や、売場から消えてしまった商品の復活、新商品開発などがあります。お客様はホームページにアクセスすれば、自らの要望に対する良品計画の対応方針やその後の対応状況が「見える化」され、お客様と会社を「つなぐ化」されているため、タイムリーに知ることができます。お客様の参加意欲は高まるでしょう。例えば新商品開発の場合、あるお客様が欲しい商品を提案し、他のお客様がその提案されたアイデアに投票します。投票が一定数を超えると無印良品によってデザイン案が複数創られ、お客様に投票して選んでもらいます。一定期間中にデザインやコストなどの要件が全て解決されると商品化され、お客様はインターネットで購入予約をすることができます。お客様は商品企画、その後の商品開発に参加しているので、商品に対する愛着も湧き、購入後におそらく口コミ等で商品を広めてくれる可能性が高まるのではないでしょうか。

次に店頭で寄せられるお客様の意見を各店舗から本部宛に定例報告する「顧客視点シート」という仕組みです。社内ネットワークを通じて日々、お客様から直接指摘された問題点や、お客様の立場から見た課題を店頭から吸い上げ、一個一個をつぶしていくことが、よりよい店や商品づくりのためのルーティンワークとして継承されています。

お客様の声を吸い上げる以上、それに対する素早い返信も重視されており、特にお客様からの質問については48時間以内の返信をルール化しているようです。またスピーディな対応とともに、悪い情報を早く明らかにしようという企業体質も定着しており、リコール情報などの重要な情報はより素早く開示し、長く継続して掲載しています。

類似した取組みを保健・医療・介護分野で探してみると、例えば石川県七尾市所在の社会医療法人財団 董仙会の恵寿総合病院を中核とする董仙会・けいじゅヘルスケアシステムが開設した医療機関としては全国初となるコールセンターがあります。当法人は、医療・介護・福祉など幅広いサービスを地域住民に提供しており、コールセンターにおいて相談、苦情、問合せ、予約、申込み、様々な情報照会など総合的な対応を行っています。コールセンターという形式を採用していなくても、電話やインターネット、直接の医療相談、医療機関内においた投書箱で、患者さんや来院の方からの意見を収集している医療機関は多くあります。ただ私がこれまで訪問した病院のホール等に掲示されている投書箱の意見に対する医療機関サイドの回答をみると、月に1回の回答がほとんどで、多くても月に2回程度の間隔でまとめて検討し回答しているようなところが多かったです。平均在院日数の短い急性期病院などでは投書した患者等の関係者が、自分が投書した意見への回答を見ないまま退院してしまっているようなケースが多いのではないでしょうか。

介護事業まで展開している医療機関では、行政の「地域包括支援センター」の受託をしているところもありますが、介護、福祉、医療に関することなど、地域の高齢者のお困りごとについて情報収集することができます。委託費が不充分との声を聞くことが多いですが、地域の潜在的なお客様の声を吸い上げる手段としては有効でしょう。

 

 最後に「オブザベーション」という方法です。お客様自身が気付いていない潜在ニーズを捉える、声ナビには出ていないニーズを発掘する仕組みです。具体的には、一般消費者の自宅を訪問し、生活の様子を全て写真に撮らせていただく。社内に持ち帰って写真を参考にして、生活の基本となる本当に必要なものを本当に必要なかたちでつくる、シンプルで美しい商品をつくるという無印良品のコンセプトに基づいて新商品を開発します。

保健・医療・介護分野に当てはめると、例えば保健師の地区活動が類似しています。何らかの要請があった個人に対して援助対応するだけでなく、受け持ち地区に住む全ての人々の家庭を訪問し、健康診査や健康相談などを通して援助を求める手段を持たない人や、援助の必要性に気づいていない人を見つけ出し、ヘルスケアサービスに結び付けています。地域住民のニーズを探り、既存サービスの改善や新しいサービスの開発を図るという点で、保健師の持っている情報はかなり貴重だと思います。

 図は、経済産業省、農林水産省、厚生労働省が平成28年3月に作成した「地域包括ケアシステム構築に向けた公的介護保険外サービスの参考事例集-保険外サービス活用ガイドブック―」に掲載されていたものの簡略版です。2025年に向けて、医療保険財政、介護保険財政が更に厳しくなるため、保険サービス部分の収入の伸びは期待しづらくなります。中長期的に保険外サービスに活路を見出すとした場合、患者及び利用者並びに家族・介護者のニーズを把握するための仕組みづくりについて、他産業の取り組みなどを参考にして検討されることをお勧めします。

 

*ポーター賞は、製品、プロセス、経営手腕においてイノベーションを起こし、これを土台として独自性がある戦略を実行し、その結果として業界において高い収益性を達成・維持している企業を表彰するため20017月に創設。名前は、ハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授に由来。

 

図 公的保険外のサービス切り口 割愛

 

 

2018年

3月

18日

医療に必要なマーケティング CSとES

顧客の声を聞き逃さないことの大切さ、聞いた内容を実行に移す難しさを、前号で説明しました。地道に実施することで、成功している事例を紹介しましょう。

ファーストフードのマクドナルドは皆さん御存じだと思いますが、運営する日本マクドナルドホールディングスの業績は激しい浮き沈みがありました。特に2014年に商品を製造していた中国工場の使用期限切れ鶏肉の使用が発覚、翌15年には商品への異物混入事件が発生し、客離れが加速することで業績は急降下。売上が1年間で15%減少し、約350億円の損失を計上しました。大きな危機でしたが、マーケティング戦略を見直し地道に実行に移すことで、2017年は純利益215億円(会社四季報予想)になり、達成すれば上場以来の最高益を更新するまで復活しました。

復活への道のりは、まず商品の品質に敏感な「母親たちからの信頼回復」から始めました。社長自らが全ての都道府県を訪れ、母親たちから意見を直接聞いて回るタウンミーティングを積極的に実施しました。また母親たちに、マクドナルド社が外部の専門検査会社に委託して実施している店舗の抜き打ち検査に同行してもらったり、国内の製造工場見学やアメリカのポテト農場と工場の視察を実施したり、顧客自身の眼で確認し、レポートしてもらうことで信頼の回復に努めました。

2015年4月から多くの顧客の声を個々の店舗運営に活かすために、スマートフォンアプリ「KODO」(「鼓動」、読み方:コド)を導入し、アンケートを簡易にタイムリーに収集できるようにしました。2015年4月21日の会社のニュースリリースによれば、アンケート内容は図1のように、個人の属性のほか、満足度や重要度・期待の評価、推奨度の評価、フリーコメント覧の5つのパートに分かれており、回答するための所要時間は約2分を想定しているようです。

図1 スマートフォンアプリを使用したアンケート項目 略 

 

医療機関でもありがちな「待ち時間が長い」や「受付の愛想が悪い」「ゴミが落ちていた」といった顧客の率直なネガティブフィードバックを、各店舗の店長が店員たちと共有し、スピーディな改善や店員の意識向上に役立てているようです。このシステムを導入する以前は覆面調査等による店舗サービスの定点観測でしたが、図2のように『お客様基準』で店舗を評価する、お客様の本音に耳を傾けて「1人1人のお客様」と「店舗」がつながることで、苦情を言わずに黙って去っていく顧客を減らすことができます。

改善を店舗主体で行うことで、各店舗に来店するお客様に合った店舗体験やQSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)等の改善から、お客様の店舗体験向上を図っています。このサイクルを繰り返すことで店舗QSCが上がり、さらに店舗体験を上げ、店舗の成長、そして継続したビジネスの拡大という流れを生み出すことを図っています。

このようなシステムを導入すると、顧客からの「苦情」が増えるのではないかと危惧しますが、フリーコメントで顧客からのお褒めや応援の言葉などのポジティブフィードバックをもらうことで、店員、店舗の士気が上がり、従業員満足度は高まります。

改善案を従業員だけで考えても限界があります。顧客の意見はおそらく玉石混交だと推察しますが、中には「○○では□□のようなサービスをしてくれています。マクドナルドでも導入していただけないでしょうか」というような競合店の取組や他のサービス業・飲食業の取組等々、参考となるアイデアなどもあるかもしれません。

図2 顧客の声を活用した顧客満足度・従業員満足度の向上 略

出所:日本マクドナルドホールディングス2015年4月21日付けニュースリリース

 

日本でも認定が増加しているJCI(Joint Commission International:1994年に米国の病院評価機構から発展して設立された医療の質と患者の安全性を国際的に審査する機関。8つのプログラム(病院、大学医療センター、外来診療、臨床検査、在宅ケア、長期ケア、医療搬送機関、プライマリーケアセンター)があり、日本国内において2017年11月24日時点で24の医療機関を認定)については御存じでしょうか。評価基準の全14章のうち8つの章を「患者中心の基準」としており、患者や一般職員、委託業者に対するインタビュー等による確認評価もあるようです。基準を満たしているかどうかの評価は、提供者側の一方的な思い込みではなく、サービスを受ける顧客等の受け取り方についても重視しているからでしょう。受審した医療機関の院長の話を聞いたのですが、「目から鱗が落ちた」と話されていました。

 

もともと医療の現場においては、“患者の最善の利益の決定の権利と責任は医師側にあり、医師は自己の専門的判断を行なうべきで、患者はすべて医師に委ねればよい” というような医師と患者間の支配関係、『医療パターナリズム』がありました。現在では医師と患者を対等な関係とみなすのが一般的ですが、昔ながらの病院や診療所の医師や権利意識の希薄な患者の間などでは、いまだにパターナリズムが残っている所もあるでしょう。

厚生労働省が設置している「医療従事者の需給に関する検討会」の第4回医師需給分科会の医師の需給推計によれば、医師需給は中位推計においては2024年頃に均衡すると推計されています。需給が均衡した後は、継続的な人口減少により医療に対する需要は減少すると考えらます。需給には当然に地域差があり、既に供給過多で患者が医療機関を選ぶ買い手市場になっている地域も増えてきています。

 

では、患者から選ばれる医療機関になるためにどうすべきか? ご意見箱を置いているような医療機関でも、患者の意見≒クレームと考え、意見は少ないほうが良いと考えているところは多いのではないかと推察します。

アイデアを出す際に活用する『ブレインストーミング法』、企業や教育現場や等で一般的に活用されていますが、その留意点として「アイデアの質よりも量を重視」、「くだらない・奇抜なアイデアなどを歓迎する」などがあるのは、おそらく皆さんも御存じでしょう。

患者や見舞客、連携先、取引業者、住民等から意見を聞く機会を積極的に作る。これまでの発想を変え、いかに多くの患者及び様々なタイプの関係者からの意見を集めるか、その「量」を目標にして取り組まれるのも宜しいのではないでしょうか。

 

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2018年

3月

10日

医療に必要なマーケティング 現状維持バイアス 

 

前号で、顧客の声を聞くことの大切さを説明しましたが、聞いた内容をビジネス・チャンスや業務の改善等に結び付けなければ意味はありません。

「現状維持バイアス」という言葉があります。「何かを変えなくてはいけない」という強い動機や危機感がない場合に、「まあ、今のままでいいか。」と考えてしまう傾向です。現状維持バイアスが起きる背景にはさまざまな人間の心理があります。そのひとつとして、人は不確実な未来のものより確実な手元のものを好んだり、得をすることを求めるよりも損をすることを避けようとしたりする傾向、損失回避の傾向があります。

投資の世界でよく出される事例ですが、「①100万円を無条件で手に入れるのと、②50%の確率で200万円を手に入れるのと、どちらかを選んでください。」という質問に対して、期待値は①②ともに100万円ですが、多くの人は①100万円を無条件で手に入れる方を選びます。②を選ぶと50%の確立で200万円が手に入りますが、50%の確立で何も手に入らない、無条件で手に入るはずの100万円を失うリスクを回避する傾向にあるからです。

特に人事評価を減点主義で行っているような組織では、現状を変えることで不確実な状況に陥ることよりも、現状が余程ひどくなければ確実な現状を選ぶ組織風土が染みついてしまいます。そうすると顧客の声を聞いても、表のような「当たり前だ」、「我慢すべきだ」、「仕方ない」、「それは無理だ」、「通念になっている」などという考えが立ちはだかり、顧客の声が活用されずに埋もれてしまいます。

 

■.顧客の声を遮断する5つの考えと対応

当たり前だ 医療機関内で職員が当然のこととして思い込んでいる ⇒ 否定する

我慢すべきだ

表面化している課題であっても患者は受け入れてきた ⇒ 解き放つ

仕方ない 患者や職員に諦めとして染み込んでいる ⇒ 諦めない

それは無理だ 患者や職員で暗黙の壁として存在している ⇒ 挑戦する

通念になっている ルーティン化したものとして信奉してきた ⇒ 批判する

出所:恩藏直人(2017)『マーケティングに強くなる』筑波書房 を筆者が一部改変。

 

私の体験を踏まえ、顧客の声を遮断する5つの考えと対応について具体的に説明します。

『当たり前だ』:医療機関の内装は清潔感のある白を基調にしていているところが多く、それが当然のこととして疑問を持つ人はほとんどいないと思います。ただ中には無機質で冷たいとの印象を受けている人もいるでしょう。

鳥取大学医学部附属病院では、 一部の手術室を「日本海」「大山」「鳥取砂丘」をイメージした治療空間にし、手術室に入室するまでの廊下には、木目調の内装や中海が一望できる窓を備え付けているようです。また患者の入室時、術中、退出後の作業を考慮して調色ができるLED照明を採用し、内視鏡手術時は照明環境を深い青色にしてモニターの視認性を確保し、術後の片付け時は作業効率をあげるために高い色温度の照明環境、患者の入退室時には緊張を緩和する穏やかな色温度を用意しているようです。(出所:(株)セントラルユニのWebsite)

『我慢すべきだ』:待ち時間が長い。よくある患者からの苦情です。医療機関としても、常態化しており、それでも患者が来院しているわけですから、我慢すべきだとまでは思わないにしても、多少は我慢して欲しいと考えるのは理解できます。

診察後の会計待ちについては、口座振替や通信大手ソフトバンクのサービス「スマート病院会計」で携帯電話料金と一緒に支払う医療費の後払い制度を導入し、解決を図っている医療機関も出てきています。患者は追加で手数料を支払う必要はありますが、待たなくても良いという選択肢を医療機関として提供するのは一歩前進でしょう。

『仕方ない』、『それは無理だ』:ほとんどの医療機関は保険診療を前提に治療しています。リハビリテーション治療は2006年の診療報酬改定によって、医療費効率化の観点から日数制限をつけられました。例えば脳梗塞患者は、脳血管障害では150日、 高次脳機能障害を伴った重篤な脳血管障害では180日までしか保険が適用されません。リハビリが十分でなくとも退院をせざるを得ないケースも発生していますが、医療機関のスタッフ、患者ともに仕方ないと考えています。

ただそのような状況下でも諦めない患者さんをターゲットにして、片麻痺など脳梗塞・脳出血の後遺症を「徹底的に改善」することを目指す保険外のリハビリテーションサービスを提供するリハビリ施設があります。首都圏を中心に9か所で展開しており拡大中です。

『通念になっている』:ある病院に家族が入院した際に、付き添いとして病院職員から説明を受ける機会がありました。入院時は、事務、主治医、看護師、薬剤師から説明を受け、手術時には、主治医、麻酔医から説明を受けました。各人とも複数の患者を受け持っているため忙しく、説明を受ける時間帯の調整が大変でした。患者中心の医療やチーム医療について説明するイラストなどでは、患者を中心にして各専門職と患者が線で結ばれています。患者としては各専門家から個々に説明を受けるよりは、一人からまとまった説明を受けるほうが、時間調整もしやすいですし、じっくり話を聴けるため理解もしやすく相談もしやすいように思います。例えとして良いかわかりませんが、ホテルのコンシェルジュのような機能です。説明する側はチーム医療の望ましい姿と思い込んでいるのかもしれませんが、看護師長等の代表者が全般について患者にわかる次元の説明をし、患者の希望があれば各専門家が追加説明をするような形でも良いように思います。

 

パナソニック株式会社(旧社名:松下電器産業(株))創業者の松下幸之助さんの言葉に、「過去の常識にとらわれず、いま一度見直してみよう。そこから、新しい発見が生まれ、新しい活動も展開される。」とあります。自らの常識にとらわれないようにするために、顧客の「不」を永続的に効率的に発見できる仕組みをつくることが大切です。顧客がふと感じる「不安」「不満」「不便」など、数えきれないほどの「不」が存在します。医師自身の闘病記などを読むと、自らが患者になって初めて気づく様々な「不」について記載されています。「不」を解消するようにサービスを考えたり、改善を行ったりすることが、顧客満足度を高め、場合によっては新たな収入源をもたらします。現場の職員が顧客の声を遮断しないようにする仕組み、積極的に「不」を集める仕組み、院長や企画部門等や他業界や新しい技術による解決を図る取組について情報収集する習慣などが大切になってきます。

 

2018年

3月

09日

医療に必要なマーケティング プル戦略

『売ることは聞くこと』、とあるサービス業界向け雑誌の今月号の特集です。その骨子は、売りつけようと話すのではなく顧客の役に立つために聞く。聞くことによって顧客の深層心理にあるニーズを突き留め、的確な解決策を示してこそ、質の高い売り上げが生まれ、お客の心に満足を超えた感動が生まれる。その結果、お客はリピーターになり、口コミの発信源になってくれる、ということです。

モノやサービスを販売する戦略には、「プッシュ戦略」と「プル戦略」の二種類があります。プッシュ戦略とは、顧客に積極的に商品やサービスをアピールし、自社の商品を顧客側へ「押し出す」ことによって購入を促すという方法、反対にプル戦略とは、潜在顧客に自然と商品やサービスを欲しいと思わせるように“引き込む”方法です。身近な例で言えば、新聞や化粧品等の訪問販売や、電話による営業、お店での呼び込みなどが「プッシュ戦略」、インターネットや折込チラシなどに記載されている価格や性能について顧客が自ら調べて購入するのが「プル戦略」です。

医療機関の場合は、紹介患者の獲得のために他の医療機関や介護施設等を訪問したり、健診の受診者獲得のために健康保険組合等を営業訪問したりするのはプッシュ戦略になりますが、対患者という点では基本的には広告や口コミ、ホームページ等を介したプル戦略が中心になります。

 

プル戦略の場合、患者、住民の医療サービスに関するニーズを理解したうえでなければ、新規患者の獲得や既存患者の固定客化等の有効な施策を講じるのは難しいでしょう。では医療機関の普段の業務において、顧客ニーズを収集すること、『聞くこと』はどれだけできているでしょうか?

株式会社QLifeが実施した診療所における「患者満足度調査」実施状況のインターネット調査結果(2015年実施、調査対象:診療所の理事長・院長・勤務医等、有効回収数:250人)によると、「満足度調査」を実施しているところは1割強にとどまり、「必要と考えつつも実施していない」診療所が半数程度のようです。病院については公益財団法人日本医療機能評価機構が実施している病院機能評価の認定を受けている場合は、その評価項目に「意見や苦情を聞くための手段があり、適切に機能している」、「患者の満足度調査が定期的に行われている」があるため、実施比率は高いと考えられます。

また患者の声を集める方法としては、大掛かりな患者満足度調査以外にも、ご意見箱を置いて要望や苦情を集め、その回答を外来スペースに掲示している病院はありますが、診療所ではほとんどみかけません。病院の場合は、患者数が多いことから自然と匿名性が保たれるため、本音の意見を集めやすいでしょう。一方で診療所の場合は、患者数が病院と比べて少ないために誰が記入したのか判明する可能性が拭えず、患者は本音の意見は書きづらいかもしれません。QLifeの調査結果でも、満足度調査の「回答が実際に役立つとは思えない」が10%、「本音が出てくるとは思えない」が7%あり、一方で「手間がかかる」が43%となっています。ただ患者の意見を聞く機会がないと、患者は不満を抱えたまま、医療機関から離れて行ってしまう可能性もありますし、最悪の場合はネガティブな口コミを周辺に拡げてしまうリスクもあります。

 

一方で、患者満足度調査を実施していたり、ご意見箱を置いたり、医療相談室等を設置したりしてする医療機関は、患者のニーズを分析し、活用できているのでしょうか?

私が関わってきた病院の患者の声の収集内容をみていると、大抵の場合は図の“あるべき姿”と“現状の姿”のギャップである苦情、不満が大多数です。「××は(普通に考えればできていても当然なのに)、なぜそんなこともできていないの?」というような患者からの指摘を、日々解決することはもちろん大切です。ただ解決できたとしてもあたり前のサービス水準になるだけで、他の医療機関と比較して優れているというレベルには至りません。

 

図 顧客の声の種類 省略

 

ではマーケティング力で定評のある企業は、どのようにして顧客の声を集めているのでしょうか?

「あったらいいな」をカタチ(製品・サービス)にすることを“ブランドスローガン”にして、「熱さまシート」「サワデー」「ブルーレット」など数々のヒット商品を世に送り出している小林製薬の取組みを調べてみました。まず「お客さまの声はまさに経営資源そのもの」という考え方をベースにして、お客様相談室を中心にして全社が動いています。苦情や要望、問い合わせに通り一遍に対応するのではなく、顧客との対話や声の分析を通して、不満を満足に変えること、“ファンになっていただくこと”を目指しています。そのためにお客様相談室では、お客様、一人ひとりに「電話をかけてよかった」と思っていただけるように、表の内容を毎日唱和し「一生懸命応対」を徹底しています。

 

小林製薬のお客様相談室の取組 お客様の思い「小林製薬でよかった」

1. ひとりの人間として、大切にされたい

2. 私の言っていることは本当であるとわかってほしい

3. 声をしっかり聞いて、会社に伝えてほしい

4. 専門的なアドバイスをわかりやすく言ってほしい

5. 電話をかけてよかったと思いたい

出所:小林製薬News Letter(2014年7月)

 

また小林製薬では、営業や製造部門などの従業員に向けて『お客様の声を聴く会』を開催し、お客さまの「思い」や「感覚」を実感してもらうことで、当事者意識を持って応対や改善活動に取り組めるように工夫しています。

 

医療機関に当てはめれば、まずは患者からの意見を受け身ではなく、積極的に集める姿勢を見せること、そして意見を集めて分析・対応をする組織体制を作ることが望まれます。患者はご意見箱に入れる前に、受付の事務や看護師等に何らかの要望や意見を伝えていることが多いのではないでしょうか? そのような声を集めて対応しないと、問題が埋もれたままになっている可能性があります。職員数の少ない診療所の場合は、職員が日々、患者からの意見や要望などを集めタイムリーに対応を検討することが必要です。ファンになってもらうように対処するのは理想ですが、知らないうちに患者が離れていかないように積極的に問題解決を図りましょう。

今後、医療保険財政、介護保険財政が更に厳しくなるため、保険サービス部分の収入の伸びは期待しづらくなります。中長期的に保険外サービスに活路を見出すとした場合、患者、利用者の願望やボヤキの中にヒントは隠されています。新製品やサービスを次々と生み出す小林製薬の取組を参考にされてはいかがでしょうか。

 

2018年

3月

08日

医療に必要なマーケティング 攻めの接客

本を購入する際にアマゾンを利用されている方は多いのではないでしょうか。人口減少や活字離れ、アマゾンなどネット書店の影響で、本屋さんの閉鎖が増加し、全国の書店数は2000年の21,654店から2017年5月時点には12,526店と4割強も減り、書店がない自治体も増えてきています。

医療機関の経営は厳しくなってきたと言われていますが、本屋さん、ガソリンスタンドなどの小売業やサービス業の競争環境と比べれば、まだまだ大変ではないことはご理解いただけるでしょう。成功している小売業やサービス業の経営者は、厳しい経営環境の中で日々切磋琢磨しています。マーケティング活動に関して医療機関経営にとっても参考になりますので、具体的な事例を紹介していきます。

 

今回は、あるスポーツ店の取組です。そのスポーツ店は、毎朝の開店前、店の周辺の掃き掃除から始めます。お世話になっている地域に少しでも貢献するという目的のためです。従業員は「なぜそんなことまでやらないといけないの?」と最初は考えと思います。ただやっているうちに、地域の住民から感謝の言葉がかけられることが増え、やりがいを感じるようになります。

医療機関においては、医師は感謝の言葉をいただく機会は比較的多いかもしれませんが、他の職員はそのような機会は相対的に少なく、どちらかと言えばクレーム等を受けるケースの方が多いのかもしれません。顧客満足度向上というと堅苦しいですが、どうすれば患者さんから感謝されるのかを、全職員で考えてみることも大切なのかもしれません。

 

開店後の店頭では、初めて来店した顧客には、なぜ当店を選んできてくれたのかを必ず確認するようにしています。中には、自らが認識していなかった理由で当店を選んでもらえている可能性があります。新たな強みを発見できれば、その強みをPRすることで新たな客層を獲得できる可能性が拡がります。

医療機関においても、患者さんに加えて、紹介先の医療機関や介護事業者に確認してみると、想定していなかった発見があるかもしれません。

 

接客においては「お客さんの欲しい」商品ではなく、専門家として「お客さんのためになる」商品をお奨めしています。最近は、お客さんは価格やサイズ、直接見た印象などを確かめる目的で来店し、実際の購入はネット通販の場合が増えているようです。お客さんの商品知識は、店舗の職員よりはおそらく劣りますし、ネット詐欺にひっかかるような方も一定割合いらっしゃることを考えると、お客さん自身の選択はベターかもしれませんが、必ずしもベストではない場合もかなりあるのではないでしょうか。お客さんが店員に相談することで得られる価値を納得すれば、お得意さんになり口コミを拡げてくれます。

医療の場合でも科学的に根拠のない治療法や健康情報を積極的に選択している患者さんもいることから、医師がかかりつけ医として、普段から週刊誌等で話題になっている治療法について職員を使って情報収集し、診療時及び広報誌などで「タイムリー」に積極的に正しい情報を発信すれば、患者さんからの信頼は高まるのではないでしょうか。

 

「お客さんのためになる」商品を自信をもってお奨めするためには、お客さんのことをよく知らなければできません。このスポーツ店では、お客さんの情報をカルテの様に書き込んでいます。例えば陸上選手の場合は、購入商品だけではなく、練習場、参加大会、タイムなどまで把握し、お客さんに必要な商品を総合的に提案し、お客さんとの信頼関係を深めています。医療機関の場合は、健康保険証の情報から患者の住所、年齢、勤務先(業種)等が簡単に把握できます。その上、かかりつけ医であれば、家族の状況や通院のための交通手段、他に通院している医療機関や利用している薬局、健診の結果などまで把握することができます。他の業種では通常は知り得ない顧客情報を得ることができるのです。ご覧になられた方もいらっしゃるかもしれませんが、2014年10月27日放映のNHKの番組「プロフェッショナル仕事の流儀」において、口の中の写真やレントゲンを各患者にそれぞれ10枚以上撮影、唾液の検査を行うなど、ありとあらゆる手を使って個々人の口の中の状態を知らせ、本人に意識してもらうような予防医療を徹底している歯科医師が紹介されていました。日本医師会では、かかりつけ医を「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と位置づけています。かなりハードルは高いですが、患者さん個々人の背景や要望を把握し、それぞれに適合したサービスを「待ちではなく」、予防段階から提案し住民の健康を守ろうとする姿勢を徹底して見せれば、かかりつけ医として他の医療機関との差別化は成功するのではないでしょうか。

 

一度、お客さんになった方には、再来店を促す努力をします。例えば、購入した際に次回の買い替えのタイミングを必ず案内します。また何か困ったことがあったら、「無料相談にのる」旨を伝えておきます。スポーツ店の場合は、気に入らないことがあれば競合店やネット販売にチェンジされるリスクが常にあります。お客さんは不満を抱えたとしても多くの場合は、何も言わず店舗から離れていきます。どうすれば防止できるのか? 医療機関についても同様の課題はあるはずです。例えば、かかりつけの患者さんの予防接種や健診などの受診状況は把握されていらっしゃるでしょうか? 未受診の場合に、確認の連絡などされてますでしょうか? 私がこれまで受診した医療機関で、そこまで行っているところはありませんし、間接的に聞いたこともありません。そこまで努力しなくても、医療機関の経営は何とかなっているわけですから、まだまだかなり恵まれているのではないでしょうか。

 

最後に、順序は逆になりましたが、なぜスポーツ店でそこまで徹底してできているのか? それは会社が「商品を購買いただくことはお客様の体の一部に関わらせていただくこと。最後までサポートして、関わることに喜びを感じられること。」という理念を掲げ、従業員のモチベーションを高めているからでしょう。イソップ寓話の「3人のレンガ職人」の話をご存知の方は多いと思いますが、理念を示すことで仮に単純な作業でも仕事の意義が理解でき、「やらされ仕事」ではなく「自分の仕事」に変えることに成功していること、店長自らが率先垂範で取り組んでいることからです。

 

今回の事例の内容は皆さんにとっては当たり前のことかもしれませんが、わかっていることと、できていることの差は限りなく大きく、仮に自分はわかってできていても、職員ができるまで徹底させることの難しさは痛感されていらっしゃるのではないでしょうか。職員が納得できる理念を掲げたうえで、「神は細部に宿る」という言葉があるように目の前の些細なことからひとつひとつ経営者自らが実践していくことが大切です。

なお今回の事例は、雑誌「商業界」2017年4月号を参考に取り上げさせていただきました。

 

2018年

3月

07日

医療に必要なマーケティング マーケティング・プロセス

 

10回に亘りマーケティングの考え方の基本を解説してきました。ほとんどの医療機関は、何らかの形でマーケティングを実践されているでしょう。マネジメントの大家と言われているピーター・ドラッカーは著書の『マネジメント』のなかで、「マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ」と述べています。

医療市場は、供給が需要を創り出すと言われてきました。昭和60年に創設された医療計画制度は、各都道府県が二次医療圏単位で試算した需要を超えている場合に、病院の開設や増床を認めない仕組み(いわゆる病床規制)でした。当時は人口が増加している上に、病院間の競争は制限されていましたので、各医療機関は積極的に集患活動をしなくても、開業すればある程度の患者は自然に集まりました。しかし2011年頃から日本の人口減少が始まり、患者数についても都市部を除き地域によっては減少が始まっていることから、医療機関も集客、集患について真剣に考えないと生き残れなく時代になってきています。また介護事業を実施されている医療機関は、民間事業者とも競争しないといけません。医療機関についても、他業界と同様にマーケティング戦略を立案し実行する必要が生じてきています。

 

マーケティング戦略を立案するために、マーケティングのプロセス(図参照)を理解する必要があります。本号にてプロセスの概略を、次号以降でプロセスの内容について詳細を説明します。

 

図 マーケティング・プロセス 割愛

 

● 調査

マーケティング戦略を練るために、まず調査から始めます。調査は自院の内部と外部の状況を把握します。まず自院の内部ですが、「灯台下暗し」という言葉がある通り、院内について案外わかっていないことがあるのではないでしょうか。経営用語では内部環境分析と言いますが、自院の財務状況や、顧客の状況、例えば診療圏や年齢層、入院に至るまでのルートなど、把握できていないケースがよくあります。特に現場とのコミュニケーションを充分にとっていない院長の場合は、自らの視座・視野・視点の範囲で「わかったつもりになっている」と認識しておいた方が良いでしょう。

外部環境分析では、医療制度、特に国が定める診療報酬制度については2年に一度の改定に向けて情報収集されると思いますが、そのほかに医療介護総合確保促進法に基づく都道府県の計画、地域医療介護総合確保基金なども知っていれば各種補助金を獲得できる可能性があります。次に技術動向、新しい治療法について、自分の専門領域についてはある程度はご存知でしょう。ただ専門外の領域については、雇用している勤務医の関心度合によって、自院への導入タイミングは左右され、他院よりも遅れてしまうことはあるでしょう。他院の動向を把握しておくことは言うまでもなく大切です。

 

● STP(セグメンテーション→ターゲッティング→ポジショニング)

事業を行う場合、通常すべての顧客を対象とすることは現実的ではありません。医療機関の場合は、年齢層や性別、罹患している疾病、軽症者から重症者まで、様々な患者がいます。そのすべてにサービスを提供するのは難しいでしょう。経営資源には限度があるため、意識的に市場、あるいは顧客を絞り込み、集中的に経営資源を投入することによって効果を上げ、他の医療機関との違いをアピールすることが必要です。

市場をいくつかの顧客グループごとに細分化することを市場の細分化(セグメンテーション)といい、細分化された市場あるいは顧客グループをセグメントといいます。次に細分化したセグメントを評価し、どのセグメントをターゲットとすべきかどうかを決定します。例えば産婦人科で産科は止めて婦人科の疾病に限定したり、整形外科で一般整形は対応せず特定部位に特化したりするなどです。

 

● ポジショニング

ポジショニングとはターゲットとするセグメントにおいて、他医療機関との違いを明らかにするために、想定する顧客からみた自院や提供しているサービスの位置づけを明確化することをいいます。

わかりやすい例をあげれば、高齢者をターゲットとするセグメントにおいて、認知症の領域に関して専門特化している医療機関と、専門性は高くはなくてもある程度は総合的に診ることができて医療から介護まで含めてサービス提供している医療機関は、患者から見て違いが明確で医療機関同士で競合はしないでしょう。重要なのは顧客から見て違いがわかるかどうかであり、患者から見ての場合や、紹介元の医療機関や介護事業者から見ての場合など、顧客ごとに意識をする必要があります。

 

● マーケティング・ミックスの策定

ターゲット市場を選択しポジショニングにより想定された顧客層に対して、さまざまなマーケティング活動を組み合わせ展開するのがマーケティング・ミックスです。4Pや4Cの考え方を以前の号で紹介していますが、復習のために簡単に説明しますと、4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)です。4Cとは4Pを「より顧客の視点」で定義しなおした考え方で対応する順に、顧客にとっての価値(Customer Value)、顧客にとっての負担(Cost)、顧客の利便性(Convenience)、顧客とのコミュニケーション(Communication)になります。

ターゲット層の患者が自院に求めている価値は何なのか、例えば高齢者をターゲット象にした場合に提供するサービスは「まあまあ医療」なのか「とことん医療」なのか、「まあまあ医療」を提供する場合は医療保険のサービスよりも介護保険サービスを充実させたほうがよいのではないか、利便性をよくするために徹底的にバリアフリーにしたり顧客情報は医療・介護サービスで共有化したり、コミュニケーションをとるために地域の老人会や社会福祉協議会、高齢者住宅施設に働きかけたりするなど、マーケティング活動内容は「とことん医療」とは全く異なることがわかります。

 

● マーケティング施策の実行・管理

最後に策定したマーケティング戦略の実行です。マーケティング活動は、組織全体が理解し各部門が協力して実施する必要があります。医療機関の場合は職種ごとに縦割りになりがちであるため、実行の体制を整えておくことが大切です。戦略を立案しておしまいにならないようにPDCAサイクルを意識し、評価指標を設定し、指標を定期的にチェック、必要に応じて計画の見直しをするなど、検証とフィードバックの仕組みを初めから組み込んでおくことが肝要です。

2018年

3月

06日

医療に必要なマーケティング ブランドの意義

 

前号で、自院のもつ強み、弱みを把握し、診療圏の患者や連携先の医療機関や介護事業者などの顧客の視点に基づいて、自院のポジショニングを見直されることをお奨めしました。大切なのは、「〇〇〇の時にはあの医療機関にかかろう」、「△△△の時には患者さんにあの医療機関を紹介しよう。」というように自院が名指しされるように地域における役割、位置づけを明確にしておくことです。地域における自院の役割、ポジショニングをより確固たるものにし、患者数減少が見込まれる将来に亘って生き残っていくためには、ブランド戦略の考え方が参考になります。

例えば、日本には外国と比べ自動車メーカーが多く存在します。自動車大国のアメリカでは国内の大手メーカーはGMとフォードの2社しかありません。最近20年で自動車の国内需要が3割ほど減少しているにもかかわらず生き残っている一番の要因は、「安心と信頼のトヨタ」、「技術の日産」、「エンジンのホンダ」、「走りのマツダ」、「軽のスズキ」などのように、少なくともこれまで各社がブランドを確立することで、棲み分けができていたからでしょう。

 

「brand(ブランド)」の語源は、焼印を押す意味の「Burned」で、自分の家畜と他人の家畜を間違えないよう、焼き印を押して区別していたことからで、「銘柄」「商標」を「brand」と言うようになったようです。

ブランドを確立することができれば、図のように様々なメリットがあります。

顧客のロイヤリティが高まることで、固定客、ファンにすることができます。その固定客が口コミをしてくれるので、顧客層は徐々にですが自然と拡がっていくでしょう。結果的に地域におけるシェアは中長期的に高まります。中規模以上の急性期病院や専門病院などでしたら、患者を紹介してくれる診療圏の開業医さんをいかに固定客化するかです。

次に働いている職員やその家族は、誇りをもてます。たとえ給料が他の医療機関と比べて高くなくても、就職し辞めずに長く働いてくれます。最近では親が就職に口を挟むことが増えているようですが、ブランドがあることで反対されることは少なくなるでしょう。

取引先との交渉も有利に働きます。取引先にとって、地域で商売を拡げるうえで、ブランド力のある医療機関と取引実績があることは大きなメリットになるでしょうから、取引条件が多少厳しくても応じてくれる可能性があります。全国的にブランドのある医療機関などでは、共同開発と称してかなり安価にITシステム等を購入しているような話も聞きます。

また特定の診療分野でブランドを確立すれば、他の分野にも波及するというメリットもあります。例えば、特定の臓器や部位の治療分野で全国的に有名でしたら、他の分野の治療もおそらく診療レベルが高いのではないかと患者は類推しますので、病院全体で患者を増やすことができるのではないでしょうか。

 

図 ブランド力のある医療機関に対する関係者の意識

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではどのようにして、ブランド力を高めていけばよいのでしょうか?

まず自院のポジショニングを決めます。ブランドとして強く認識してもらうためには、「競合と比べて細かい点でここが優れている」と訴えていても、専門家やよほど詳しく調べる消費者ではない一般の人たちには伝わりにくいでしょう。競合と比較して【better】(より良い)を目指すよりは【only】(自院ならでは)を目指すことが近道です。例えば、スマートフォンを選ぶ際のポイントとして、画面サイズやメモリ容量、カメラの性能等々の機能面の比較項目を検討するでしょう。しかしなぜか日本では、多くのメーカーが製造していて選択肢も多く機能が優れているAndroid機種よりもiPhoneが選ばれており、シェアが7割弱にもなっています。値段は高く機能はBestではないですが、『iPhone』だから選ばれているということでしょうか。

 

次に自院のポジショニング、ブランド価値を顧客に伝える必要がありますが、その手段としてブランド・ステートメントという方法があります。

ブランド・ステートメントとは、自院の理念やポジショニングなどを含め、顧客に自院をどのように捉えて欲しいかについて明文化したものです。ブランドに関する拠り所となります。ステートメントの内容は、当たり障りのない文言ではなく、そのブランドの存在意義やあるべき姿をしっかりと示すことが肝要です。またステートメントの内容を実現するためには、理事長、院長などの経営者を始めとした経営幹部はもちろんのこと、正規職員のほかにも委託業者や派遣社員など自院が提供するサービスに関わっている関係者全員がブランドの価値観に共感し、即した行動をとらなければいけません。内部の職員が共感できない価値観に、顧客や取引業者等の関係者が共感することはまずないでしょう。

 

ブランド・ステートメントを表明している医療機関はほとんどないのですが、福岡県の株式会社麻生が開設している麻生病院は自院のブランド・ステートメントとして、「innovate and evolve」=「革新し、そして進化する」と表明しています。具体的には、TQM(Total Quality Management)やISO(International Organization for Standardization)、リーンマネジメントなどによる改善活動や、医工学連携、さらには国内外の医療機関との提携などにより、様々なイノベーションを生み出し、人、組織、地域医療、そして医療界の進化に貢献していく、という思いや姿勢を意味しているようです。

またVI(Visual Identity)、シンボルマークも定めており、飯塚病院はこれまでも、これからも医療界において様々な革新的な取組みを行い、成長し、進化し続けていくフロンティア病院である、というブランドイメージを視覚化しています。「医療サービス」「教育」「グローバル化」の3つの柱を決め、具体的には最高度の医療の質を追求する、その質の向上に不可欠な教育を実施する、それらの発展のために海外も含め様々なネットワークを作り活用していく、そしてこれらの相乗効果により革新・進化を生み出していくということのようです。

 

比較的小さな組織や設立間もない組織では、わざわざブランドの価値観を明文化しなくても、経営者が率先垂範することで普段の業務の中で体現できるかもしれません。ただ組織が大きくなり、ブランドの歴史を共有していない世代が増えてくると難しくなってきますので、ブランド・ステートメントの策定を検討されるのも宜しいのではないでしょうか。

 

2018年

3月

05日

医療に必要なマーケティング 顧客体験

 

医師が病気にかかり患者として過ごした経験を、闘病記として本やインターネット上で発表している例をみかけます。どんなに優れた医師であっても、疾患そのものに自らがかかり苦労してみて、初めて気づくことがあるようです。また疾患のことに限らず、病院内のオペレーションや看護師の対応など、患者の目線でみると普段患者さんにとって良かれと考えて行っているようなことでも改善すべき点が見つかるようです。医師個人の闘病体験が、その後の自分の医療現場で活かされれば、患者にとっては大変良いことですし、院内に伝達し共有してもらえれば病院の運営にとってもプラスになります。

医学部や看護学部では、教育の過程で患者体験を取り入れており、患者の立場を理解したうえで実際の業務に就くように考えられているようです。例えばある大学医学部の学生の入院体験の感想をみると、「医師からの説明がわかりにくいと感じたが、看護師がフォローしてくれたので患者さんも理解できた様子だった。」「看護師を呼んだけどすぐに対応してくれなかった。10分でも長く感じました。せめて、一言どのくらいで対応してもらえるのか伝えることで不安感が違ったのではないでしょうか。」など実際に患者さんの立場にならないと職員には理解しづらいことは多々ありそうです。

また最近では、高齢者擬似体験スーツ・ゴーグル・耳栓・手袋をつけて歩行してみて、高齢者の視界が狭く、音も聞こえにくい、関節も曲げにくいなどの事情を体感するようにしている医療機関や介護施設も増えてきているようです。頭で考えるのと、実際に体験するのは大違いであり、患者体験は意義ある試みだと思います。

 

アメリカでは企業の新たな差異化戦略として、CX(Customer Experience)が注目されています。「カスタマー・エクスペリエンス」とは、商品やサービスの購入前後のプロセスや利用時に顧客が体験する「心地よさ」「驚き」「感動」などの付加価値のことです。単に「買った、サービスを受けた」だけではなく、「選んで良かった、とても満足した」とポジティブな感情を顧客が意識する状態にまでできれば、リピーターになってもらえ、ファンになってもらえることで口コミ等によって良い評判が自然と拡がっていくでしょう。「顧客経験価値」と日本語訳されることが多いのですが、「おもてなし」などという日本語訳が適切だという主張もあるようです。顧客体験は「顧客から高いロイヤリティの獲得を可能にする、記憶に残る情緒的で特別な体験」であり、常に顧客視点に立つという企業理念や社員の行動指針を創って組織に定着させ、サービスとして提供し続けることができるかがポイントです。例えばコーヒーショップのスターバックスは、ミッションとして『「人々の心を豊かで活力あるものにするために-ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」を大切にし、お客様に「驚き(サプライズ)」と「楽しみ(ディライト)」を提供するために、常に新しい商品やスタイルを提案してまいります。』と謳っています。コーヒーを提供するだけではなく、驚きと楽しみという顧客体験を提供し続けるために、新しい試みを日夜考えているのでしょう。

 

では医療機関における印象に残る顧客体験としては、どのようなことが考えられるでしょう。例えば、病院の玄関のタクシー乗降場所でサポートをしてくれるホテルのドアマンのような人を配置したり、総合受付においてホテルのコンシェルジュのような応対をする人を配置したりしている病院があります。そこまでしなくても診察室に入ると医師がいつも笑顔で迎え入れ、患者さんの名前を憶えていて、前回までの診療録内容をしっかりと頭に入れているだけでも、患者さんに驚きを与えられるのかもしれません。

患者さんの経験価値を高めるために、図のように患者さんの目線で、受付から診察、検査、会計、処方に至るまでの、待ち時間や職員の応対などのプロセスを定期的に点検したり、患者さんの声を集めるためにご意見箱を外来の待合室や病棟などに置いておき、投函された意見を参考にしたり、外来患者や入院患者に満足度調査をしたりすることで、患者さんの体験を調査することができます。また医事部門や会計部門などの窓口におけるクレームなどへの対応が優れていれば、逆にそれが患者さんにとって良い印象として残る体験になります。いずれにしても、患者体験の情報を定期的に幅広く収集し、院内において改善のサイクルを継続的に回すことが大切です。

 

図 患者経験価値の情報収集と改善サイクル

 

患者さんの経験価値を知るためには、例えば日本医師会が実施している「心に残る医療」体験記コンクールの作品や、患者さんが書いた闘病記なども参考になるでしょう。最近では病気を患った本人やその家族などが病気と闘った記録や心情などをまとめた闘病記を多数集め、「闘病記ライブラリー」としてまとめて配架しているような図書館もあります。

 

個人によるインターネット経由の情報の発信・拡散、共有が当たり前の時代において、他業界では顧客体験価値への対応は生き残りのため必要不可欠になっています。ホテルや飲食店などの場合は、検索のポータル・サイトがあり顧客の実際の利用体験に基づく評価が記載されています。中には辛辣な内容もありますが、指摘事項によっては新たなサービス開発につながるようなこともあり、貴重な情報源とも言えます。また飲食店・小売店・美容室・銀行などの業界では、覆面調査(ミステリーショッパー)を利用しているところも増えているようです。顧客に扮した調査員が、あらかじめ定められた調査項目に沿って対象店舗を利用し報告書を作成します。調査対象店舗は報告書に基づいて自店の強みや弱みを発見し、店舗運営の改善につなげています。医療機関の場合は、公的医療保険ですので調査員による受診は難しいですが、人間ドック等の健診サービスなどでは活用できないことはないように思われます。

医療機関は他業種と比較してまだまだ競争は激しくないため、患者経験価値をそれほど意識する必要はなかったかもしれません。ただ今後は医療財政が厳しく診療報酬が抑制され、人口減少が進み患者も減少していきます。医療機関が生き残っていくためには、地域の患者さんや住民について競合する医療機関よりも、より深く知っておくことは必要になってくるでしょう。

 

2018年

2月

18日

口コミによる集患

 

前回の都知事選、固定票をもつ与党、野党の推薦候補者が大差で敗れました。小池百合子さんが政党の推薦無しでも当選した勝因として、支援の輪を広げるのに活用したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が挙げられています。短い選挙期間内で、都内を隈なく回るのは不可能ですので、SNSを活用することで効率的に都民の「認知」を広げて、選挙活動中の自らの言動によって「選択」され、最終的に投票という「行動」までに至らせたわけです。

 

医療の場合の「行動」、受療行動について厚生労働省が3年毎に調査をしています。平成26年度の調査では病院を選んだ理由として、「医師による紹介」が最も多くなっています。病診連携や病病連携を厚生労働省が推奨していることから、病院を選ぶ際には「医師による紹介」が多いのは納得がいきます。

一方で「家族・友人・知人からのすすめ」が5人に1人前後もいます。診療所の調査はないのですが、病院の受診前にかかっている可能性の高い診療所も含めますと、かなりの人が「家族・友人・知人からのすすめ」などの口コミに依拠していることが予想されます。

 

 

 実際に、午後のゆったりとした時間帯に喫茶店やファミリーレストランに行って耳を澄ますと、女性同士で自分自身や親の病気、医療機関の噂話などをしているのがよく聴こえてきます。

では、口コミはどうすれば起こすことができるのでしょう? 誰もが口コミをする人になり得ますが、皆さんの周囲でも積極的に話をする人と、聞かれれば話をする人がいるでしょう。口コミを促すために、他業界では「紹介キャンペーン」を実施して、紹介者にも何かメリットを与えています。

医療業界では、紹介キャンペーンは周辺の医療機関の手前なかなか難しいですが、健診や人間ドックで行うことは可能かもしれません。保険診療でも、初めての患者さんに対して、当院を選んだ理由をそれとなく確認するようにすれば、紹介者や紹介ルートを把握することができるでしょう。紹介してくれた人がわかれば、手紙等でお礼をしたり、診療内容の特長等の話題を改めて伝えたりすることで、口コミを積極的にしてくれるかもしれません。

その他に地域に影響力のある人、信用力のある人、例えば自治会や老人会のまとめ役の人などを対象にして発信していくなど考えられます。同じ労力をかけるのなら、口コミ力のありそうな影響力のある少人数に注力するほうが効果はあげやすいでしょう。

 

口コミを拡げるためには、誰もが他人に伝えたくなる話題をつくる必要性があります。昨年の12月に、岐阜県の社会医療法人の松波総合病院のある取組が新聞記事に出ていました。「受付の担当にソフトバンク社の人型ロボット『Pepper(ペッパー)』一台が“就任”する。同院によると、県内の医療機関でペッパーの導入は初めて。人間ドック・検診センターの受付業務を担当。ペッパーの“雇用条件”は三年間のリース契約で、同院はソフトバンクに月々約六万五千円を支払う。」という内容です。地元の岐阜新聞、中日新聞の他にも、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞でも写真入りの記事が掲載されており、年あたり80万円弱の費用で広域に広告宣伝できたわけですから、費用対効果は相当なものでしょう。同院は手術支援ロボット「ダ・ヴィンチSI」や320CT装置、3.0テスラMRIPET-CT装置などを導入しており、診療圏を拡大し集患をする必要性が高いことから、広域に病院を認知してもらう方法として大成功だと思われます。おそらく同院で健診を受けた人が口コミで拡げたり、ペッパーを写真にとってSNSで拡げたりすることはあったでしょう。ただ広域への拡散という点では、マスコミの効果は多大です。ペッパーの受付は誰もが思いつきますが、他よりも逸早く実施するというスピードが、いかに大切なことかがわかります。

 

一方で、医師の特殊技能等、専門家ではない患者さんが第三者に説明をすること自体が難しいサービスについては、口コミしてもらうことはなかなか難しいでしょう。例えば外科分野の治療について、内視鏡治療や放射線治療などの低侵襲性の治療に徐々に移行してきていますが、「当院は低侵襲治療が得意です」というよりも、例えば「切らないので3日間で退院できます!」という表現のほうが、おそらく患者さんは知り合いに伝えやすいでしょう。

 

まずは自院ができることとして、「職員が全員笑顔でとても感じがよかった」とか「患者さんの顔や名前を憶えている」とか、お金をかけなくても努力すればできることから始めてみるのがよいでしょう。期待と現実のギャップが、人の気持ちを動かします。「医療機関の受付は事務的、医師は愛想が決して良くない」というように医療機関の接遇に対する期待はおそらく低いでしょう。そのおかげで、ちょっとしたことでもお客は感激します。患者さんが最も期待していないのはどの部分かを考えて、そこで劇的な瞬間を体験させることができれば、口コミのネタができます。

 

口コミのネタを継続的に利用者に伝える方法として、広報誌があります。院内に置く広報誌は、インターネットのホームページと同様に医療法上の広告に該当しないため、かなり自由に記載することができます。カラーで印刷した差しさわりのない内容のもの、具体的には病医院名を隠せば発行元がわからないような内容では、他でも入手可能と考えられて手に取られない可能性があります。当院独自の内容、親近感が湧くような内容にしたほうがよいでしょう。例えば、医師や職員のパーソナルな情報を載せれば、相手も自然と身近に感じ、話題になりやすくなるかもしれません。私自身、フェイスブックをしていますが、パーソナルな近況をまめに掲載している知り合いの医師などは、久しぶりに会った時にとても身近に感じられますし、共通の知り合いに会った時に、そこにいないのに話題に上ったりします。

 

はじめは「できるかな? 途中でネタ切れにならないか?」などと心配しますが、これは産みの苦しみで、そのうち患者さんなどから「楽しみにしている」と言われると、やりがいを感じます。また何かネタがないかと観察していると、これまで気が付かなったことなどが発見できたりする副次効果もあります。広報誌の内容をホームページに掲載したり、記事の内容を個別にブログやフェイスブック等のSNSに掲載したりしている医療機関もあります。患者さんが選ぶのが難しいほどたくさん医療機関がある都市の場合は、無機質なホームページだけではなく、一歩進んだ取り組みを検討されてみるのはいかがでしょうか。

 

病院を選んだ理由 

 

出所:平成26年受療行動調査(確定数)の概況 厚生労働省

2018年

2月

11日

連携先の満足度向上

 医療機関の集患を考えた場合、患者さんの満足度を高めるのはもちろんのこと、患者さんを紹介してくださる関係機関の満足度も高める必要があります。2025年に向けて地域医療構想と地域包括ケアという考え方に基づき、地域における機能別の病院の役割分担及び医療機関と介護事業者の役割分担、病病連携、病診連携、医介連携は必須になってきました。地域における医療機関の関係先も随分と増えてきたのではないでしょうか。

 

地域における連携を、急性期の入院患者を主に診ている急性期病院の視点で考えると、外来患者や入院患者の確保につながる前方連携と、退院する患者の在宅医療・在宅看護への移行や、回復期病床や療養病床を有する医療機関や介護施設への転院・転所を図る後方連携とに分けることができます。また専門性の異なる医療機関間で紹介をする横の連携もあります。連携システムを構築するにあたっては患者さんの利益を第一に考慮しなければならないことはもちろんですが、同時に地域完結型の医療を展開するためには、前方連携と後方連携とを意識し、連携相手のメリット、連携先の満足度を高めることを意識し、「Win-Win」の関係をいかに構築していくかが大切になります。

 

連携促進のために医療機関同士が集まる会合は地域の基幹病院等が定期的に催していることが多いですが、ここ数年は介護事業者なども含めた多職種連携の会などが催されている地域が増えています。そして以前は「顔の見える関係」という言葉が使用されていましたが、最近では「腹の見える連携」という言葉を聞く機会が増えてきました。想像するに、顔が見える程度の関係の中で相互の内部事情、懐事情がわからないまま手探りで行う連携では不充分で、診療報酬や介護報酬の点数、施設基準の縛りがある中で、各々にとって、都合の良い連携でないとうまくいかないということなのだと思います。

地方都市では病院等の医療機関や介護事業所の数は限られていますので、互いの腹の中は自然とわかるのではないでしょうか。一方、都市部では関係者が多く、介護事業者などは新規の事業所開設や既存事業所の廃止などが頻繁にあったりするため、「腹の見える連携」をするための関係づくりは大変です。多くの関係者との幅広いお付き合いでは「腹の見える連携」をするのは難しいため、関係先をある程度絞り込むのはやむを得ないでしょう。

 

では、どのようにして絞り込むかですが、『パレートの法則』という言葉を聞かれたことはございますでしょうか? イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則で、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論で、80:20の法則などとも呼ばれています。パレートの法則は、経済以外にも自然現象や社会現象など、さまざまな事例に当て嵌められることが多く、自然現象や社会現象は決して平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在し、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い、というごく当たり前の現象もパレートの法則と呼ばれています。例えば、「売上の8割は全顧客の2割が生み出している。売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である。」とか「所得税の8割は、課税対象者の2割が払っている。」などです。

 

パレートの法則は図のようなイメージで、ABC分析とも呼ばれています。例えば、重点連携先を絞込む場合、紹介患者数の多い順に連携先を並べ、優先ランクをつけてグループ分けをします。地域連携室等の限られたメンバーで連携先に対応するために、全体の約8割の紹介患者を送ってきてくれるAランクの2割の連携先とは時間をかけて腹の見える関係を構築し、残りの8割のBCランクの連携先とは顔の見える連携に留めるなどの割り切りをすることも必要でしょう。多くの患者を紹介してくれるAランクの連携先との関係が悪化した場合、経営に対する影響が大きいので、地域連携室だけでなく事務長、院長なども挨拶周りなどされているのではないでしょうか。

 

図 パレートの法則、ABC分析の例(割愛)

 

Aランク先を増やすために、上位の連携先に何か共通する特徴がないかを探ることも大切です。例えば、上位のAランクに共通する特徴があった場合、BランクまたはCランクの中でその特徴を持つところを探し、みつかった場合はAランクへ移行できる可能性が高いかもしれません。このように現状が把握できるとともに、対策の優先順位が付けやすいのがABC分析のメリットです。例えば地域連携室の目標として、「Aランクを1年で3か所増やす。そのためにCランクの訪問回数を減らし、Bランクの訪問回数を2倍にする。」などのような具体的な行動計画をつくることができます。

一般の会社においては、顧客を「集団」としてとらえる「マス・マーケティング」から、顧客を「個」としてとらえ、「個」との長期的関係性を重視する「CRMCustomer Relationship Management)」という考え方が2000年頃から本格的に経営に取り入れられました。

CRMは、11の関係性で顧客の利便性向上、満足度・信頼度を高めて顧客価値(Life Time Value)の最大化を目指すという考え方で、例えば百貨店などでは、過去の顧客の注文履歴のデータベースを分析して優良顧客を抽出して狙いを付け、ディスカウントセールを行うためのDM送付やコンタクトしたり、 一定期間利用の無かった顧客を抽出し、購入を促すためにクーポン付きDM送付や電話をかけたりするなどしています。

医療機関においても、腹の見える関係をつくるために、地域の医療機関や介護事業者の個々の診療機能や介護サービス内容、窓口の部門や担当者名、過去の紹介・逆紹介の患者及び利用者の内容、受け入れ可能な患者及び利用者の必要医療行為、受入れ判定会議の時期等々、連携先の情報を蓄積し、その情報に基づいて個々の連携先のニーズに対応した連携をすることがお互いにとって望ましいでしょう。熊本市内の医療機関間の地域医療連携は以前から有名ですが、地域の急性期医療の一角を担う済生会熊本病院では、5年ほど前から「顔の見える連携」から一歩踏み込んで、実績とデータに基づく連携に取り組み、「アライアンス連携」と呼んでいます。より深く連携するための「仕組み」を導入し、目標とするゴールを数値で示しながら、「患者さんに適切な時期に適切な医療を提供する」「地域で質の高い継続医療を提供する」という連携の本来の目的を達成するために、転院患者の多い病院を絞り、重点的に関係を深めています。

 

地域連携の業務に避ける人員数は限られています。やみくもに連携活動を行うのではなく、ABC分析を行い選択と集中を考えて実施されるのが良いと思います。

 

 

 

 

2018年

2月

10日

患者満足度調査

 人口減少社会という言葉は定着してきましたが、総務省統計局によれば2008年が日本の人口が継続して減少する社会の始まりの年~人口減少社会「元年」になります。医療機関にとってのお客様である患者数は、受療率の高い高齢者、特に後期高齢者は減少しないため、しばらくは増加を続けていますが、地域によっては患者数すらも減少し始めています。新規の患者を増やすことは大切ですが、患者減少社会に備え既存の患者さんをいかに自院に繋ぎ止めるかも同様に大切になってきます。

 

「患者さんたちは自院の診療のことをどう思っているのか」は、院長ならば誰もが気にされるところでしょう。例えば厚生労働省の受療行動調査によれば、図表1のように外来患者の満足度は、「満足」との回答は待ち時間や診察時間を除けば50%台、「不満」は待ち時間を除けば10%未満です。約3分の1程度が「ふつう」と回答しています。

 

図表1 外来患者の項目別の満足度(割愛)

 

出所:厚生労働省「平成26年受療行動調査(概数)の概況」

 

この結果はあくまで全国の調査対象の医療機関の平均値ですが、仮に自院の調査結果とみなした場合に、「「満足」が50%を超えているから良かった」と考えて思考を停止させてはいけません。なぜなら「ふつう」と回答している患者さんは、「満足」な水準のサービスを提供している医療機関の存在を知れば、簡単に切り替えてしまう可能性があるからです。

 

 医療機関によっては患者満足度調査を実施したり、ご意見箱を置いたりして、その結果をホームページや、院内に掲示しています。調査結果もさることながら、患者から受けた指摘への対応、解決に向けた真摯な姿勢などが、患者や住民にとって医療機関選びの参考になります。「不満」をもつ患者さんの不満解消はもちろんのこと、「ふつう」と考えている患者さんも「何か不満なことがあっても、この医療機関は訴えれば真摯に対応してくれる。」というように信頼を置いてくれるのではないでしょうか。

 

以前お伺いしたある病院では、認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)の「新・医者にかかる10箇条」が外来の待合室のあちこちに目立つように貼ってありました。患者さんが診察前に事前準備をしっかりしていれば、医師との対話で診察後に不満を抱かずにすむような予防策になっていると思います。

 

新・医者にかかる10か条(コムル)

 ①伝えたいことはメモして準備

 ②対話の始まりはあいさつから

 ③よりよい関係づくりはあなたにも責任が

 ④自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報

 ⑤これからの見通しを聞きましょう

 ⑥その後の変化も伝える努力を

 ⑦大事なことはメモをとって確認を

 ⑧納得できなときは何度も質問を

 ⑨医療にも不確実なことや限界がある

 ⑩治療方法を決めるのはあなたです

 

 

一方で10か条は院内の医師に対して暗黙のプレッシャーを与えますので、医師は患者さんに対して丁寧な説明をするようになるでしょう。医療機関の不満でよく話題にされるのは待ち時間の長さですが、翻って考えれば患者さんは待ち時間が長くてもその医療機関もしくは医師にかかりたいわけです。

図表2は少し古い資料ですが、「よい医者のイメージ」です。分かりきっていることかもしれませんが、改めて自院の医師ができているかどうか確認されると良いでしょう。ご覧になっておわかりのように、医師のコミュニケーション力に関わる事項が上位を占めています。コミュニケーションは言葉によるものと、言葉以外のものとに分けられます。言葉以外のものとしては、①患者との位置関係や姿勢、②医師の表情や身振りなど、③話し方の調子や声の大きさなどがあり、効果的に使うことで、言葉によるコミュニケーションの信頼性を高めることができます。ただそれらのスキルは簡単に身につくものではありませんので、内部のスタッフに率直な意見を言ってもらったり、第三者の意見をもらうために外部の研修を受けるなどされたりしても良いかもしれません。

 

 

図表2 「よい医者のイメージ」(割愛)

 

 

患者満足度の調査結果は、よほどのことが無ければ医療機関間での格差はほとんどありません。なぜならそもそもその医療機関を患者として選択しているわけなので、程度の差はあれ大多数の患者は「治療結果に満足」し、「医師やスタッフに感謝」しています。そのため患者満足度調査は、他院と比較するよりも、自院内で継続的に実施して経過観察に用いるのが良いでしょう。1年もしくは半年ごとに同じ調査方法で実施して推移を見守ると、職員の入れ替わりや配置転換、運営方法の変更など、医療機関の施策と満足度の変化が一致するケースも多く、組織運営面で参考にできます。

 

患者満足度調査を実施する際には、とても重要な2つの設問があります。

・再利用意向 ・・・ Q.あなたは、当院をまた利用したいと思いますか?

・知人推奨意向 ・・・ Q.あなたは、ご家族やご友人に当院をすすめますか?

まだまだこのようなシビアな質問を調査項目に入れる医療機関は少ないですが、この2つの設問は重要です。皆さんも回答する側になった場合、一瞬立ち止まって考えるのではないでしょうか。お感じのように再利用意向と知人推奨意向との間には、大きな違いがあります。

例えば、「自分は少し不満を感じているけれども、これまでずっとかかってきているし、今さら他の医療機関に変えるのも面倒なので、我慢してこれからも通院しよう。でも他の人に薦めるのはちょっと。。。」というように考えている患者さんも中にはいるでしょう。マーケティング用語の「ブランドスイッチ(別のブランドやサービスに乗り換えること)」のハードルがある状態だと言えます。ハードルが低い患者さん、具体的にはまだ1回しかかかっていない患者さんや、診療間隔が数年も空いているような患者さんは、既に他院にスイッチしている可能性もないとは言えません。再利用意向と知人推奨意向のそれぞれの絶対値の高さも重要ですが、2つの値の差が大きな場合も注意が必要になってきます。また知人推奨意向の割合が高ければ、当然クチコミが増え、新規の患者さんの増加につながっている可能性があります。

患者満足度調査の実施はかなり労力のかかることではありますが、患者さんとの双方向のコミュニケーションを図る機会、自院が気づいていない問題を解決できる機会、既存の患者さんの固定客化の重要な方策と考えて、実施されることをお勧めします。

2018年

2月

02日

医療に必要なマーケティングの考え方2 4C

 マーケティングの本をお読みになった方は、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という言葉をご覧になられたことはあるのではないでしょうか。「プロダクトアウト」とは技術力や製造能力といった売り手側の発想で商品開発・生産・販売といった活動を行うこと、「マーケットイン」とは買い手の立場や意向を考えて同様の活動を行うことを指します。

 例えば日本のガラケーことガラパゴス携帯電話は、最先端の独自技術を多く採用し、その性能や機能は世界最高水準でした。機能があり過ぎて、ほとんどの方は充分に使いこなせていなかったのではないでしょうか。携帯しやすくて電話さえできれば良いと考える海外の人には、不要な機能が付いた値段が高い日本の携帯電話はほとんど売れませんでした。プロダクトアウト志向が強過ぎ、マーケットに受け入れられなかったのでしょう。

 

前号では、マーケティングには4つの要素があり、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字を取って4Pと呼ばれていることについて説明しましたが、「より顧客の視点」で考える必要性があることから、表のように4Pというマーケティングのフレームワークを4Cに再定義する流れが出てきました。

 

表 4Pと4C

P

 

C

製品(Product

顧客にとっての価値(Customer Value

価格(Price

顧客にとっての負担(Cost

流通(Place

顧客の利便性(Convenience

販促(Promotion

顧客とのコミュニケーション(Communication

 

顧客にとっての価値(Customer Value):顧客は商品価格に基づいてお金を払っているのですが、実際にはその価値に対してお金を払っています。携帯電話には、「外出先でも電話で連絡ができる」という基本価値があり、「メールができる」「写真撮影ができる」「インターネットができる」などの付加価値がありますが、顧客毎にその評価、払ってもよいと考える金額が異なります。

顧客にとっての負担(Cost):商品・サービスを購入するにはお金が必要ですが、購入にかかる時間・手間なども顧客にとっては「コスト」と考えられます。ヨドバシカメラなどのインターネット通販は、顧客が買いにいくための時間・重い荷物を持ち帰る手間というコストを自社で負担することで、売上を伸ばしています。

顧客の利便性(Convenience):「どれだけ手軽に購入できるか?」も顧客にとって大切です。買いたい時に買えないと、購買そのものをあきらめてしまう場合もあり、機会損失にも繋がります。インターネット通販では限られたスペースしかない個別の実際の店舗よりも在庫を多くもてますし、送料無料や返品可能のサービス付きの場合、顧客は手軽に購入することができます。

顧客とのコミュニケーション(Communication):自社の商品やサービスを、顧客にどうやって知ってもらうか、伝えることがコミュニケーションです。広告のような形で一方的に伝える方法もあれば、説明会、対話会などで双方向の形式をとる方法もあります。

 

サービス業の場合は、4Pよりも4Cで考えたほうがわかりやすいように感じます。

北海道の旭川市が運営する旭山動物園について、耳にされたことはないでしょうか? 20051115日のNHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜・旭山動物園〜ペンギン翔ぶ〜」で取り上げられました。1996年に約26万人まで入園者数は落ち込んだのですが、存続の危機を打開すべく1997年より動物の自然な生態が見られる行動展示を実現する施設づくりに着手しました。入園者は増加し、年間入園者数はピークの2007年度には307万人を記録、その後はブームの沈静化に伴い減少に転じましたが、2011年度頃からは160万人台の入園者数となっており、地方都市でありながら、大都市圏の恩賜上野動物園、名古屋市東山動植物園に次ぐ日本第3位の入園者数を誇っています。

なぜ復活できたのか? マーケティングの4Cで整理してみます。

まず顧客にとっての価値(Customer Value)ですが、行動展示という形態で動物本来の凄さを身近に見れるようにしたことで、来園者の感動を生み出しました。またジャイアントパンダやコアラなどの集客力のあるスター動物はいないため、一頭一頭を大切にして展示に工夫を凝らすことで各々の動物のファンをつくり、ファン層を拡げました。

次に顧客にとっての負担(Cost)では、1997年に動物園としては日本で2番目に年間パスポートを発行しました。当時の価格設定は、当日入場券420円のところ年間パスポートが500円ですから、売上を増加させるというよりは、動物園離れをしていた市民を呼び戻す、リピーターになってもらうことに務めたのだと想像します。

第三に顧客の利便性(Convenience)ですが、動物園は旭川市郊外に立地しており、市民にとってあまり便利な場所にはありませんでした。ただ発想を変え、北海道外からみると旭川空港からは近く、富良野等の全国的に有名な観光資源が周辺にあることから、動物園自体がある程度有名になることで観光ルートに含まれるようになり、道外の観光客を取り込むことができるようになりました。

最後に顧客とのコミュニケーション(Communication)、お金が無くて始めた「手書きパネル」や「ワンポイントガイド」などが、親しみがありわかりやすいため、子供連れなどの市民のリピーターが増加しました。市民による自主的な会員組織(旭山動物園くらぶ)ができ、地元のコアなファンたちによる口コミ、そこに全国的にはTVの発信が加わり、どんどん拡がっていきました。

最初からマーケティング戦略があったわけではなく、4Cの基本をできることから行ったことが好循環のきっかけになり、最終的に大成功につながったのだと想像します。

医療機関で身近なお悩みとして、診療圏人口の減少、患者さんの高齢化などがあるのではないでしょうか。高齢の患者さんに来院してもらうためにどうすれば良いか、4Cで考えてみられることをお勧めします。

 

表 高齢の患者さんのニーズ例

C

ニーズの例

顧客にとっての価値

Customer Value

診察が流れ作業ではなく、一人一人に気を配ってくれる。医師の説明が一方的ではなくて、ゆっくりでわかりやすい。QOLを重視してくれる。等

顧客にとっての負担

Cost

支払金額が事前にある程度わかる。支払方法が選べる。通院回数が少なくて済む。等

顧客の利便性

Convenience

待ち時間が短い。交通の便が良い(他の用事も済ませられる)、バリアフリーである。機械の操作がわからないときにすぐに手助けしてくれる。等

顧客とのコミュニケーション

Communication

院内掲示や広報誌が、文字が細か過ぎず見やすい。院内案内は手書き文字などもあって、親しみがわく。地域の老人会などで講演会をしてくれる。等

 

 

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2018年

2月

01日

医療に必要なマーケティングの考え方

『医療はサービス業』という表現には、まだまだ違和感を覚える方もいらっしゃるでしょう。医療法の考え方では医療はあくまで非営利であり、「サービス業」という呼び名は相応しくないと感じるからかもしれません。ただ日本の公的統計における産業分類を定めた日本標準産業分類によれば、医療業は医師又は歯科医師などが患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所であり、病院や診療所はここに分類されています。医療機関は「医療」という専門サービスをお客様に提供する一種のサービス業という見方です。

 

医療機関の経営者の方々ならば『マーケティング』という言葉はおそらくご存知でしょう。マーケティングには4つの要素があり、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字を取って4Pと呼ばれています。4つのPをお客のニーズに合うように上手に組み合わせることができるかどうかが、お客様に選ばれるために重要になります。前号まで医療サービスの価格についてみてきました。医療機関の収入のほとんどは保険診療であり、サービスの価格は診療報酬制度に基づく公定価格(診療報酬点数)により決められていて、個別の医療機関が独自の価格設定はできません。そのため医療機関がお客様に他の医療機関との違いを打ち出す方法は、医療行為を含むサービスの内容やその質(Product)、自宅や最寄駅から近い・遅い時間まで開業している等のアクセスの容易性(Place)、PRの仕方(Promotion)などになります。今号からは、サービス業である医療機関のマーケティングについて考えてみます。

 

まず医療機関におけるマーケティングの組み立てについては、医療の特性のほかに、物財(例えば、テレビやパソコン、自動車等のいわゆる物)とは異なるサービスの特性、具体的には無形性、同時性、異質性、消滅性の4つが代表的な特性を理解しておく必要があるでしょう。

無形性:商品としての物財とサービスを比較した場合の最大の違いは、物財が原則として有形の物であるのに対して、サービスは無形のモノとして提供されるという点です。そのためサービスの提供において品質を管理するには、物財における品質基準とは異なる基準が必要になります。品質には、以下のような3つの要素があります。

◆探索的品質

お客様がある商品を購入しようとする場合は通常、その品物の機能やデザイン、価格などについて、他の商品と比較しながらその商品の品質を判断します。このように購入前に評価できる品質のことを探索的品質といいます。

◆経験的品質

実際に購入した商品を使用して、はじめて得られる品質のことです。たとえば新発売のビールが、自分が期待する品質を満足しているかどうかを知るためには、それを実際に飲用してみるしかありません。

◆信用的品質

健康食品のようなものは、実際に効果があるのかどうか評価することは難しいです。商品の購入後あるいは消費後においても正しく評価できるとは限らないのが信用的品質です。

 

これら3つの品質のなかで、経験的品質と信用的品質はその評価について、より個人差が大きくなります。サービスの場合、無形性という特性から、お客様にとってはこの2つの品質が重要になります。一方、有形の商品を選択する場合にはまず探索的品質、次に経験的品質が影響します。医療サービスの場合は、信用的品質が最も大きく影響し、これに経験的品質が加わると解されています。

 

同時性:生産と消費が同時になされることをいいます。物財の場合は、生産される場所や時間と、消費される場所や時間が異なるのが普通です。テレビは工場で生産され、電気屋さんで販売されます。一方でサービスの場合、たとえば理髪店ではお客様と理容師とが同時間に同じ場所にいてサービスが提供され消費されます。医師の診察なども、同時に複数の患者にはできません。TVに出演している有名な医師をスカウトしても、同時にたくさん診ることはできないので、患者増にも限界があるということです。

 

異質性:さまざまな条件によって、サービスの品質に差異が生まれることです。お客様のニーズはそれぞれ異なっていますし、サービスを提供する従業員の技量も人それぞれです。マニュアル化されたマクドナルドの店員の対応も、細かく見ればひとりひとりに違いはあります。またサービスが提供される場所やタイミングによっても品質に差異が生まれます。たとえばピーク時とオフ時とでは、提供されるサービスの品質が異なってしまう可能性はあるでしょう。野外アトラクションなどのように、天候によって大きくサービス品質が異なるケースもあります。以上のようにサービスの異質性が生まれる要因としては、①サービス提供者、②お客様、③環境の3つを考えることが必要になります。すべてのお客様に対してサービスの品質を一定にするためには、この異質性をできる限り少なくすることが求められますが、サービスが提供されるプロセスが複雑な場合は極めて困難です。医療サービスの場合は、サービス提供者である主に医師の技量と、お客様である患者の身体的・精神的状態や診療への協力度合いが、異質性を生むとされています。クリニカルパスはこの異質性を少しでも均質化しようとの考えに基づいています。

 

消滅性:物財と違ってサービスは在庫ができません。テレビは大量に生産し倉庫にしまっておいて順次販売できますが、たとえば飛行機の空席は、飛行機が飛び立ってしまえばその価値は消滅します。消滅性の高いサービスの提供をコントロールするには、①供給能力のコントロールと②需要のコントロールという2つの最適な組み合わせを考える必要があります。

医療サービスの場合、夜間の救急患者が一時的に集中するなど過剰な需要が発生した場合に、医師や看護師等などをタイムリーに増やすことは難しいため、応需はできず他の医療機関に対応してもらうしかなくなるようなケースはよく聞きます。一方で病棟の病床には空きがあった場合には、その供給能力は無駄になり消滅してしまいます。

 

こうした医療サービスの特性の難しさや、患者等の利用者保護の観点から医療法その他の規定により医療機関に関する広告について制限されてきたことから、医療機関におけるマーケティング活動は一部の美容整形の医療機関を除いてあまりなされてこなかったのではないでしょうか。ただこれからの人口減少による医療需要の減少、インターネット等による医学や医療サービスに関する情報量の増加、平成1941日より施行された改正医療法における広告可能な内容の拡大、医学部の定員増加や新設医学部設置による医師の増加という競争環境が厳しくなる時代に備えるために、マーケティングの知識は間違いなく役立つでしょう。

次号から、サービス業を営む医療機関のマーケティングの価格(Price)を除く3Pを今後実践できるように、製品=サービス(Product)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)について順次解説いたします。

 

 

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2018年

1月

31日

地域医療構想時代における住民目線の公立病院改革

*本内容は、2016年8月に社会保険旬報に掲載した内容の一部です。

 

1.はじめに

(1)公募委員に応募した背景

私は201521日から千葉市の病院運営委員会公募委員を務めている。これまで仕事として、20年以上、全国の病院の経営改善や中期計画立案などのコンサルティングに携わり、ここ10年は東京大学医療人材育成講座等にて「医療を動かす」ための政策作りの活動にも取り組んでいた。

灯台下暗しではないが、地元の公立病院の経営実態については、あまり関心をもっていなかった。ただ千葉市の財政は平成2110月に「脱・財政危機宣言」を発するほど危機的状況であり、その後の行財政改革によって回復はしているものの、病院事業においては平成26年度の千葉市立2病院の赤字見込合計額は約21.8億円と、一般会計から34.6億円弱が繰入されているにも関わらず、前年度と比較して大幅に悪化している。毎年積っていく赤字に加え、1病院は老朽化対策が必要であり、万が一にでも現行の診療機能・病床規模を前提にして建替えが進められた場合に、長期間に亘って更に赤字が膨らむリスクがあり、一市民として見過ごせないと考え、委員に応募した。

 

(2)都市部における公立病院の必要性への疑問

千葉市には千葉大学医学部附属病院、県立病院、公的病院、民間医療法人等が多く立地しており、一市民としてそもそも赤字体質の市立病院が必要不可欠なのかとの考えをもっている。ちなみに隣接する市原市は、千葉市と同様に単独の市で二次保健医療圏を構成しているが、市立病院を運営していない。

公立病院を運営している自治体は医療行政に熱心であるという印象を一般には受けがちであるが、へき地等の不採算地域でなければ医療サービスの提供は、他の開設主体に任せることは不可能ではない。自治体による公営企業の運営能力の低さや一般会計からの公立病院への多額の繰入によって他の行政サービスが犠牲になっていることを考えれば、住民として公立病院の在り方をゼロベースで考えてもよいのではないだろうか。

 

2.公立病院の存在意義とは?

(1)自治体の財政面からみた公立病院と民間病院の比較

図表1は、厚生労働省が2年に1度実施している医療経済実態調査の病院の開設主体別の1施設当たりの損益及び税金である。最も税金を納めているのは医療法人であり、法人税・住民税の他、固定資産税・都市計画税、事業税を国及び地方自治体に納税している。一方で、公立病院は非課税である。

 

図表1 病院の開設主体別の1施設当たりの損益及び税金 

   単位(千円)

総損益差額

税金

平均病床数

医療法人

38,733

15,995

135

国立

-2,962

0

362

公立

-605,947

268

262

公的病院

-133,028

9,856

348

社会保険関係法人

15,830

0

269

法人・その他

-5,247

3,717

247

出所:第20回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告 

-平成27年実施- 中央社会保険医療協議会 平成27年11月

(注)・医業・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の医療機関等の集計

・「公的」とは、日赤、済生会、北海道社会事業協会、厚生連、国民健康保険団体連合会などである。

・「社会保険関係法人」とは、独立行政法人地域医療機能推進機構、健康保険組合及びその連合会、共済組合及びその連合会、国民健康保険組合などである。

・「その他」とは、公益法人、社会福祉法人、医療生協、社会医療法人、その他の法人などである。

・公立病院には指定管理者制度(公設民営)により運営されている病院の税金(法人税、住民税)が計上されている。

 

机上の話にはなるが、公立病院の役割を民間病院がそのまま果たすことができれば、一般会計からの繰出金(一部は国からの交付金、詳細は後述)がなくなり、医療法人が黒字の場合に納税される法人県民税が増加することで、自治体の財政は潤う。予算を少子化対策や地域包括ケアなど他の行政サービスに振り向ければ、住みよい町づくりができるのである。住民は地方公共団体の主権者であり、医療サービスなどの役務の提供を受ける権利をもつ一方で、住民税や国民健康保険料等でその負担をする義務を課されている。主権者の立場で、自らが住んでいる自治体、私の場合は千葉市や千葉県の医療提供体制のあり方、公立病院の存在意義について考えてみたい。

 

(2)公立病院が果たしている役割

医療法の第一条の三には、「国及び地方公共団体は、前条に規定する理念に基づき、国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制が確保されるよう努めなければならない。」とある。住民の健康の保持に寄与するため、都道府県や市町村は直接、間接に関わらず、医療提供体制の構築に関わらなければならない。

図表2は公立病院が果たしている役割を示す総務省の統計である。「公立病院業界」としてみれば、地域において必要不可欠な役割を担っている病院の割合が高いこと、存在意義をアピールするのは理解できる。しかし一方で、957病院(平成25101日時点、地方公営企業法非適用病院を含む)を個々の病院単位で見れば、必ずしも役割を果たせていない病院も存在する可能性がある。公立病院であるから政策医療を担っており、赤字のためにある程度の税金を投入するのはやむを得ないという先入観を住民としてもつべきではない。特に県庁所在地の市に立地する市立病院の場合は、公的病院等と診療機能が重複し、単に市の一部地域を分担しているに過ぎない場合もある。

 

図表2 自治体病院の占める割合

病院の機能

病院数

内、自治体立

自治体立全病院に占める割合

調査時点

割合

へき地医療拠点病院

296

183

61.8

19.1%

平成2611

救命救急センター

271

98

36.2

10.2%

平成2671

基幹災害医療センター

60

31

51.7

3.2%

平成2641

地域災害医療センター

616

253

41.1

26.4%

平成2641

臨床研修病院

2,759

615

22.3

64.3%

平成27年度

地域がん診療連携拠点病院

356

135

37.9

14.1%

平成2686

出所:自治体病院経営ハンドブック 第22次改訂版(平成27年)

 

(3)公立病院に繰出されている税金

公立病院を運営しているほとんどすべての自治体は、一般会計・特別会計から繰出金を公立病院に投入している。地方公営企業法では、受益者負担になじまない経費については、地方公共団体の一般会計又は他の特別会計が負担するものとし、これらの経費以外の経費については経営に伴う収入をもって賄うべきであるとする、いわゆる独立採算の原則が適用されている。繰出金の基準は総務省が定めているが、実態としては赤字補填になっている場合が多いのではないだろうか。議会に繰出金の根拠を説明するために、税金を使って監査法人等の厳しい第三者の目で精査させ、資料を作らせている例もあるように聞く。

へき地医療の確保、不採算地区病院の運営、結核医療、感染症医療にあてる経費は、患者数の安定的確保が困難であることから、ある程度は理解ができる。一方で病院の建設改良や、通常の診療報酬による収入で賄っているリハビリテーション医療や救急医療、周産期医療、小児医療などが一般会計から繰出されているのは、医療崩壊以降の診療報酬改定での不採算医療へのプラス評価などから考えても理解が難しい。またここ数年、陽子線治療装置やda Vinci(ダ・ヴィンチ)こと手術用ロボットを、民間病院が自力で資金調達をして高度医療を提供している状況を鑑みると、高度医療についても一般会計からの繰出金が必要なのかとの疑問も生じる。

 

(4)国からの交付税による支援

病院事業に対する一般会計からの繰出金については、その所要額の一部について普通交付税及び特別交付税により財政措置が講じられている。指定管理者制度や地方独立行政法人を設立した場合でも同様である。普通交付税として、平成26年度においては、自治体病院は病床1床あたり707千円、病院事業債の元利償還金の2分の1などが交付されている。また特別交付税として図表3のような基準で交付されている。地方交付税は、所得税や法人税、酒税、消費税が原資になっており、言うまでもなく国民の税金である。

 

図表3 特別交付税の交付基準

 

出所:自治体病院経営ハンドブック 第22次改訂版(平成27年)

 

(5)全国自治体病院協議会の考え

900超の自治体病院を会員とする全国自治体病院協議会による自治体病院と他の病院との相違の説明は図表4のとおりである。

 

図表4 「全国自治体病院協議会の目指す方向」

自治体病院は、地域住民の健康に責任を持つ自治体の長が議会の議決によって開設されたもので、個人、医療法人、公的・国立等の開設による病院と根本的に相違している。最近、民間病院の経営も急速に悪化してきたことに関連し、公立病院も国立病院と同等、政策医療を中心に行うべきであるとする意見も聞かれる。しかし、自治体病院はその開設の経緯、立地条件、規模等いずれも千差万別である。各々その役割、使命も一様ではなく、当該地域住民の意向により開設されたものであり、その住民の意向に沿って運営が行われるべきもので、一律に政策医療のみを行う等医療の範囲を限定することは適当ではない。なお、高度・特殊・先駆的医療その他政策医療は、一般医療が整っていてこそ成り立つものであり、地域住民のほとんどが一般医療の実施を強く望んでいるものである。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

出所:全国自治体病院協議会定時総会、平成 12 5 月開催

 

公立病院を運営している立場からすれば、もっともなことではある。自治体として住民に医療を提供する義務があるとすれば、最後の砦として自治体が自ら運営する公立病院でなければその役割を担うことができない可能性も出てくる。またその際には政策医療に限定するのは、スケール・デメリットを考慮すれば現実的ではない。ただ一方で、県庁所在地等の国立・公立・公的病院がひしめいている自治体の場合は、公立病院以外の病院が、一般医療に加えて、定額の補助金を自治体から得て政策医療を併せて行うという選択肢もある。ちなみに平成2041日以降に都道府県の認定が始まった社会医療法人は、医療提供体制に関して都道府県や市町村、公的病院の機能を代替するものとして、公的医療機関と並ぶ5事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療を含む))を担う主体として位置づけられており、平成27101日現在、256法人が正式認可を受けている。

そのような点も考慮したうえで、公立病院の存在意義について、公立病院改革プランの実行状況を通じてみてみる。

 

3.公立病院改革プランの実施状況

(1)公立病院改革ガイドラインの内容

平成19 622 日に地方公共団体の財政健全化に関する法律が公布され、自治体本体の財政健全化が求められた。公立病院などの公営企業や第三セクターの会計も対象とする新たな指標を導入するなど、地方公共団体の財政の全体像を明らかにする制度である。

同年12月に総務省は、公立病院改革ガイドライン(以下、「ガイドライン」という。)を示し、公立病院を設置している地方公共団体において平成20年度内に平成21年度から5年間を標準とする「公立病院改革プラン」を策定し、病院事業経営の改革に取り組むことを要請した。

ガイドラインでは、公立病院の果たすべき役割の明確化を求めている。住民として認識しておくべき重要な内容なので抜粋する。「公立病院をはじめとする公的医療機関の果たすべき役割は、端的に言えば、地域において提供されることが必要な医療のうち、採算性等の面から民間医療機関による提供が困難な医療を提供することにある。公立病院に期待される主な機能を具体的に例示すれば、

    山間へき地・離島など民間医療機関の立地が困難な過疎地等における一般医療の提供、

    救急・小児・周産期・災害・精神などの不採算・特殊部門に関わる医療の提供、

    県立がんセンター、県立循環器病センター等地域の民間医療機関では限界のある高度・先進医療の提供、

    研修の実施等を含む広域的な医師派遣の拠点としての機能

などが挙げられる。各公立病院は、今次の改革を通じ、自らが果たすべき役割を見直し、改めて明確化すると同時に、これを踏まえ、一般会計等との間での経費の負担区分について明確な基準を設定し、健全経営と医療の質の確保に取り組む必要がある。」

ガイドラインでは更に踏み込み、「特に民間医療機関が多く存在する都市部における公立病院については、果たすべき役割に照らして現実に果たしている機能を厳しく精査した上で、必要性が乏しくなっているものについては廃止・統合を検討していくべきである。また、同一地域に複数の公立病院や国立病院、公的病院、社会保険病院等が並存し、役割が競合している場合においても、その役割を改めて見直し、医療資源の効率的な配置に向けて設置主体間で十分協議が行われることが望ましい。」との記載があることから、県庁所在地にある市立・県立病院は、その存在意義や役割を見直す必要があるだろう。

 

(2)5年間の改革プラン実施状況

ガイドラインでは、3つの視点に立って、公立病院改革の推進をしている。第一に経営の効率化、具体的には経営指標の数値目標を自治体が独自に設定し、経費削減や収入確保へ努力することである。第二に再編・ネットワーク化、具体的には病院の統合や基幹病院と日常的な医療を行う病院とに再編する等の取組みをすることである。第三に経営形態の見直し、具体的には自治体による経営を止め、責任者を変えるなどして民間的経営手法等を導入することである。

*文章が多いので、図にしていただくことでも結構です。

改革の3つの視点

経営の効率化

経営指標の数値目標を自治体が独自に設定し、経費削減や収入確保へ努力する

経営形態の見直し

自治体による経営を止め、責任者を変えるなどして民間的経営手法等を導入する

再編・ネットワーク化

病院の統合や基幹病院と日常的な医療を行う病院とに再編する等の取組みをする

 

 

 

総務省によれば、平成263月末現在の公立病院(892病院(640団体)、内訳は図表×)における5年間の実施状況等の概要は以下のとおりである。

 

図表× 設置主体別・経営形態別の公立病院数

 

出所:総務省「公立病院改革プラン実施状況等の調査結果」(平成26331日)

 

    経営の効率化

平成25年度の経常収支が黒字である公立病院の割合や公立病院全体の経常収支比率は、プラン策定前と比較して大幅に改善しているが、前年度からは若干低下している。

経常収支黒字病院の割合 25年度46.4%20年度29.7%24年度50.4%

経常収支比率*      同上  99.8%(同上  95.7%、同上 100.8%

*経常収支率 (医業収益+医業外収益)×100   100%を超えていれば黒字

           医業費用+医業外費用

 

経常収支が黒字の病院の割合は増えており改善の傾向にはあるが、依然として半分以上の公立病院が一般会計からの繰入金を含めても赤字経営になっている。大まかに見ると、地方の中小病院は医師不足で厳しい状況が続いており、都市部の大きな病院、県立病院クラスは改善傾向にある。後者については、充分な設備や人員などの経営資源をもちながらも、経営意識が低かった病院が、今回の改革プランで多少目覚めたということだろうか。

 経営効率化の取組みは、経費の節減合理化や病床利用率向上等による収入の確保などコツコツ行うだけのことではあるが、公立病院の場合は、診療報酬の上げ下げと無関係に年齢とともに賃金が上昇していく公務員の給与や、診療報酬の施設基準の変更に柔軟に対応できない職員定数及び予算、医療や病院経営に必ずしも詳しくない事務職員が定期的に異動して担当する事務部門の能力の低さ、病院運営に必ずしも詳しくない首長が形式的な責任者になっていることなど、根本的な問題を解決しなければ黒字化は難しい。

 

    再編・ネットワーク化

平成25年度までに策定された再編・ネットワーク化に係る計画に基づき、病院の統合・再編に取り組んでいる事例は65ケース、162の病院(公立病院以外の病院等を含めると189が参画)である。

再編・ネットワーク化を取り組んでいる事例は、医師の確保等が難しい地方病院がほとんどで、県庁所在地等の公立、公的病院等の急性期病院の統合事例は一部を除き少ない。ただその中で兵庫県は特に積極的に取り組んでおり、図表に整理県立の尼崎病院(500)と塚口病院(400)を統合し平成277月から県立尼崎総合医療センター(730)に、県立姫路循環器センター(350)と社会医療法人製鉄記念広畑病院(392)が統合再編を検討中、県立柏原病院(303)と柏原赤十字病院(99)が統合再編を検討中、小野市民病院(220)と三木市民病院(323)が統合し一部事務組合の北播磨総合医療センター(450)に、加古川市民病院(411)と神鋼加古川病院(198)が統合し地方独立行政法人の加古川中央市民病院(600)に、公立朝来梁瀬医療センター(50床)と朝来和田山医療センター(139床)が統合し朝来医療センターになるなど統合再編を次々と進めている。医療の高度専門化が進み、ある程度の規模がないと医師、看護師が集まらないことや、都市部以外の地域においては複数病院に医師を大学医局が派遣するのは難しくなってきていることから、病院建替えを機にして地域医療再生基金などの飴を使いながら平常時では困難な統合を進めていることが推察される。

 

    経営形態の見直し

平成21年度から平成25年度までに経営形態の見直しを実施した病院は227病院(平成26年度以降に見直しを予定している40病院を含めると267病院)、内訳は次の通りである。

地方独立行政法人化53病院(見直し予定16病院を含めると69病院)

指定管理者制度導入16病院(見直し予定5病院を含めると21病院)

民間譲渡14病院(見直し予定2病院を含めると16病院)

診療所化30病院(見直し予定4病院を含めると34病院)

 

経営形態の見直しについては、地方独立行政法人化の割合が高い。ただ法人を設立した母体の自治体は、地方独立行政法人が経営悪化した際には資金面の支援をせざるを得ないため、財務面でのリスクは残っている。自治体が自ら運営することを止めた指定管理者や民間譲渡の病院はわずか30しかない。その中で横浜市立みなと赤十字病院や、兵庫県災害医療センターは、救命救急センターの機能を指定管理者として日本赤十字社に任せている。救命救急という政策医療において指定管理者という形態が採用できているわけであるから、経営形態の移行にあたって既存の病院職員の身分の取り扱いという大きな課題はあるが、住民に対する医療の質を担保した上での効率的な医療提供という観点で、指定管理者という形態はもっと採用されても良いように考える。

 

    形だけの全部適用への移行による時間の浪費

経営形態見直しの中には、地方公営企業法の財務適用から全部適用への移行も含まれており、114病院が移行している。ただ医業収支比率が改善した割合は58.9%、悪化した割合は41.1%である。全部適用については、比較的取り組みやすい反面、経営の自由度拡大の範囲は、地方独立行政法人化に比べて限定的であり、また制度運用上、事業管理者の実質的な権限と責任の明確化を図らなければ、民間的経営手法の導入が不徹底に終わる可能性がある。経営責任が明確になっても、そもそも責任をとって途中で退職するような事例や、独自の給与体系を導入している事例もほとんど聞かない。ガイドラインには、「全部適用によって所期の効果が達成されない場合には、地方独立行政法人化など、更なる経営形態の見直しに向け直ちに取り組むことが適当である。」との記載がある。経営効率化のために、病院職員が努力せず、汗もかかず、場合によっては必要な身を切ることもせずに、単に組織形態だけを変更しても単なる問題の先延ばしに過ぎず、時間と税金の浪費にしか過ぎない。

 

(3)経営改革の先進事例

「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27630日閣議決定)において「国公立病院の経営改善等について、優良事例の横展開を行う」ために、総務省自治財政局準公営企業室が「公立病院経営改革事例集」をまとめ平成283月に公表している。図表5は事例で選定されている20病院であり、公立病院を運営する自治体の議員や職員等の関係者には参考にしてもらいたい。ただし「自分のところとは環境が違う。自分のところではできそうもない。参考にならない。」というような結論を出すための現地視察は、税金の無駄遣いにしかならない。対象病院について事前にできる範囲で調査し、併せて自院の課題を把握した上で解決策の仮説を検討してから実施してほしい。

 

図表5 顕著な成果を上げている公立病院の事例

経営の効率化

再編・ネットワーク化

経営形態の見直し

岩手県立宮古病院(岩手県)

さいたま市立病院(さいたま市)

伊那中央病院(長野県)

市立福知山市民病院(京都府)

唐津市民病院きたはた(佐賀県)

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(沖縄県)

つがる総合病院(青森県)

日本海総合病院*(山形県)

北播磨総合医療センター(兵庫県)

公立世羅中央病院(広島県)

三浦市立病院(神奈川県)

富山市民病院(富山県)

堺市立総合医療センター*(堺市)

八尾市立病院(大阪府)

神石高原町立病院(広島県)

北九州市立門司病院*(北九州市)

福岡市民病院*(福岡市)

筑後市立病院*(福岡県)

くらて病院*(福岡県)

町立太良病院(佐賀県)  

出所:総務省 Website

(注)*は、地方独立行政法人が経営する病院

 

(4)自治体からの他会計繰入金の改善状況

公立病院改革の成果については、元を質せば自治体本体の財政健全化という点での評価が最も重要であろう。自治体の他会計からの繰入金は、全体で見れば図表6のように、平成26年度は8,260億円と増加し続けていることがわかる。そもそも繰入金の基準について、民間病院等とのイコール・フッティングの観点からすると、より厳しくする必要がある。ガイドラインに記載されている「一般会計等からの繰出は、独立採算原則に立って最大限効率的な運営を行ってもなお不足する、真にやむを得ない部分を対象として行われるものであって、現実の公立病院経営の結果発生した赤字をそのまま追認し補てんする性格のものでないことは言うまでもない。」という点が、どこまで各自治体で徹底されているのか非常に疑問が残る。

例えば、千葉県の場合は、「病院事業会計への繰入金は、総務省通知「地方公営企業繰出金について」に準拠しつつ、本県の特性(県行政の政策的経費等)を考慮し、財政当局と協議のうえ、基準を設けて一般会計から繰り入れを受けている。」と説明されている。県行政の政策立案は健康福祉部が担っており、県立病院の機能は、救急、小児、精神、がん、循環器病など、決して他県と比較して特殊とは言えない。100億円超にも上る多額の繰入をしているが、平成49月以降の千葉県議会会議録を検索した限りでは繰入の基準についての議論は全くなされていないため、果たして真にやむを得ない部分を対象として行われているのかどうかは不明である。
 公立病院改革ガイドラインでは、「当該病院の果たすべき役割及び一般会計負担の考え方を明記」することが強調されていたが、市町村を先導すべき県が率先垂範できているとは言えず、ふがいなさを感じる。(次回では、千葉市立病院及び千葉県立病院の改革プランの実施状況の詳細について・・・)

 

 

図表6 他会計繰入金の年次推移 (単位:億円)

 

出所:総務省「公立病院経営改革事例集」平成283

注記:地方独立行政法人向けの繰入金も含んでいる。

 

 

4.千葉市立病院及び千葉県立病院の改革プランの実施状況

(1)千葉市立病院の状況

千葉市は青葉病院(314)、海浜病院(287) の2つの急性期病院を運営している。千葉市においては「千葉市立病院改革プラン(第1期)」を平成221月に策定し、Websiteで公表している。

千葉市は財政健全化に向け、図表7のように一般会計からの繰入金を平成21年度から25年度まで削減している。一方で病院の純利益は、平成25年度は赤字に転じており、平成26年度は35億円弱の繰入金をしているにも関わらず、18億円強の赤字を計上している。

参考までに「公立病院経営改革事例集」に取り上げられている、さいたま市立病院(567)は、病床規模が千葉市立の2病院合計と同等規模であるが、平成25年度の損益は7億円弱の黒字、繰入金は12億円弱である。青葉病院が平成15年に建替えられ、減価償却費及び企業債利息の負担が大きいという事情はあるが、両市の病院運営能力の差は歴然である。

 

図表7 千葉市立病院の業績推移                 (単位:百万円)

 

 

千葉市立病院は平成23年度に一部適用から全部適用に変更し、病院局を新設した。全部適用後に一旦業績の悪化を留めることはできたが、平成24年度決算で比較すると100床あたりの繰入金は、政令指定都市の中で 2 番目に高い水準であり、改善の余地はまだまだ多くある。平成264月からは元千葉大学医学部附属病院の院長が管理者を務めており、管理者の存在によって千葉大学医学部附属病院からの医師派遣の円滑化という点で期待できる。ただ平成26年度の決算見込の数字はかなり悪化していることから、経営改善という点で大学病院の院長経験が活かされているのどうかはわからない。

 

千葉市は単独で千葉保健医療圏を構成し、2か所の市立病院の他に4か所の県立病院、2か所の国立病院機構の病院、その他の公的病院、大学病院さらには民間病院が併存している。千葉県保健医療計画(平成23年度~平成29年度)では、千葉保健医療圏における5事業のうちへき地医療を除く4事業を担っている病院をみると、市立病院は周産期及び小児及び災害に事業において重要な役割を果たしているが、他の事業分野と同様に他の病院に役割を依頼することも可能であろう。

 

図表 千葉保健医療圏において4事業を担っている病院膨らんでしまうため、上記のコメントだけでも十分だと思います。

 

指定

病院名

救急

全県対応型救急医療連携拠点病院

千葉大学医学部附属病院

3次救急医療機関(救命救急センター)

千葉県救急医療センター

救急基幹センター(3次の補完)

千葉メディカルセンター

2次救急医療機関

2市立病院含む27病院

災害

災害拠点病院

千葉大学医学部附属病院

千葉県救急医療センター

千葉市立海浜病院

災害拠点病院(DMAT指定医療機関)

千葉大学医学部附属病院

千葉県救急医療センター

災害医療協力病院

2市立病院含む20病院

周産期

全県対応型周産期医療連携拠点病院

千葉大学医学部附属病院

地域周産期母子医療センター及び母体搬送ネットワーク連携病院(H24.4.1現在)

千葉市立海浜病院

分娩を取り扱う一般病院

1市立病院含む5病院

小児

千葉県小児救命集中治療ネットワーク連携病院

千葉大学医学部附属病院

千葉県こども病院

千葉県救急医療センター

地域小児科センター

千葉市立海浜病院

小児科を標榜する病院

2市立病院含む6病院

出所;千葉県保健医療計画(平成23年度~平成29年度)

 

病床機能報告では高度急性期、急性期病床は過剰になっている。千葉市立病院を始めとして急性期病院の規模は、図表8のように200300床台の病院が多く、各病院が機能分担をするよりは立地を考慮した上で統合・再編したほうが、1病院あたりの診療科ごとの医師数が増加し症例が集約化することで、医師の労働環境は改善する上に医療の質も向上する可能性は高い。千葉市立病院の過去5年間の改革実績をみると、ガイドラインに則り、他の開設主体の病院を指定管理者にして病院運営を任せたり、統合したりするなど抜本的な対策が検討されていてもおかしくないが、公表されている平成273月策定の千葉市立病院改革プランをみる限りでは、検討されている形跡はない。

 

図表8 千葉市の100床以上の病院

 

出所:千葉県Website 病床機能報告201571日時点

 注:急性期病床が100床以上の病院、リハビリテーションセンター除く

 

(2)千葉県立病院の状況

千葉県には県立病院が6あり、その構成は、高度・特殊な専門医療を取り扱う4病院(がんセンター・救急医療センター・精神科医療センター・こども病院:千葉市)、循環器に関する高度・特殊な専門医療と地域における中核医療を行う病院(循環器病センター:市原市)、地域の中核医療を行う1病院(佐原病院:香取市)である。私自身、千葉保健医療圏に住み県民税を納付している立場として、県立病院の役割についても知っておく必要がある。

千葉県立病院の経営状況をみると、図表9のように平成22年度以降は純利益はプラスに転じている。その一方で一般会計繰入金は増加しており、平成21年度と平成25年度を比較すると、一般会計繰入金を除いた場合の損失額はほとんど改善されていない。

 

図表9 千葉県立病院の経営状況の推移

 

出所:千葉県病院局Website(「H26」は「千葉県公営企業会計決算」より推計、なおH26の「収益」には長期前受金戻入1,154 百万円を含む)

 

平成26年度に関して病院局のWebsite上で公表している文言は「収益合計は4461千万円、費用合計は4681千万円で、当期の純利益は前年度より238千万円減少しマイナス22億円となり、5年ぶりに赤字決算となりました。」となっており、一般会計繰入金については一切触れていない。そこを含めた経営状況を県民に示すべきだろう。

 

   経営形態の課題

千葉県の病院事業については、「戦略的・弾力的経営を可能とし、人事権等を拡充するとともに、病院事業管理者、施設長等の権限と責任を明確化、強化するために、地方公営企業法を全部適用する。」という平成15年の将来構想中間報告を受けて、平成164月から地方公営企業法の全部適用に移行している。千葉市と比較すると全部適用の時期が随分と早いが、これは三重県が北川知事時代に行政評価で一般会計繰入金の多さが問題となり全部適用に変更したことを契機に他県でも移行が一気に進み、千葉県も倣ったのだと推察する。当時、経営状況が都道府県病院でワースト1位であった埼玉県は、病院事業管理者に公立病院の経営改善で実績のあった武弘道氏(当時鹿児島市立病院事業管理者、故人)を招き繰入金の縮減に務め、一定の成功をおさめたのは有名である。一方で、千葉県の場合は財務状況の充分な改善は見られず、平成2011月の千葉県立病院将来構想検討会報告書には「・・・千葉県の病院事業においては、全体的に見て法律上予定されている全部適用のメリットを十分発揮しているとは言えないと判断しています。」と記載されている。

千葉県病院事業管理者の前任は厚労省で労働基準局安全衛生部長の任にあった方、平成2641日からは前健康局長の方が務めている。官僚の中には経済産業省の古賀茂明氏のような改革派官僚もいるが例外であり、組織内部にいて局長まで登り詰めることは困難である。厚生労働省で幹部にまでなった方は、既存組織の維持には長けているかもしれないが、リーダーシップを発揮して改革を先導することは難しいのではないだろうか。その人選は県民として疑問に感じる。何も個人攻撃をしているわけではない。病院の経営は非常に難しく、その病院を束ねる立場の病院事業管理者は、おそらくプロの経営者でもなかなか務まらない。赤字病院の建て直しの実績や病院の院長経験のない方を、なぜ病院事業管理者に相応しいのかの説明もなく任命し、あたかも天下り人事のポストのように見せてしまっている千葉県の説明不足にも問題がある。

地方公営企業法の全部適用は制度設計上の幅が広いため、移行に際しては形式だけに留まらず、事業管理者の下に「経営に関する権限と責任が明確に一体化する体制」を構築しないといけないが、公立病院の運営経験のない方に体制構築を依拠するのはある意味無責任である。同報告書には、「非公務員型の地方独立行政法人については、今までの地方公営企業法全部適用と異なる形態として、経営の各場面でその効果が発揮できる効率的経営形態の側面が多いので、移行を積極的に検討すべきです。」との記載があるが、その後検討された形跡はない。

 

   千葉県がんセンターの問題

腹腔鏡下手術に係る医療事故については、平成27715日の千葉県がんセンター腹腔鏡下手術に係る第三者検証委員会報告書に詳細が掲載されているが、一言で言えば組織としての規律がなかったことが一番と感じる。合わせて院内の内部告発に対し、病院のトップであるセンター長も、同センターを管轄する県病院局の局長も充分な対応をせず、問題を放置し結果的に問題を更に拡大させた罪は大きい。

平成2741日から「がん診療連携拠点病院」の指定の効力を失い、腹腔鏡下手術の不正又は不当な請求を行ったことを理由として、厚生労働省関東信越厚生局から保険診療に係る行政措置を受けた。関東信越厚生局からは、全部適用で管理者をおきながら、「ガバナンス(管理運営)が十分に確立されておらず、質の高いがん医療の提供ができていない」との指摘を受けている。約19億円にも上る保険者等への自主返還は、税金から賄われるのだろうが、この件で病院を管理する立場の人が責任をとったり、給与の返上をしたりするような話は聞かない。県民の立場からすれば、ふざけた話である。

「千葉県病院局中期経営計画(第3次)(平成24年度~28年度)」では、県立病院としてチーム医療の推進、医療情報の共有化や医療事故防止対策の充実等による「良質な医療サービスの安定的提供」、診療報酬改定への対応と請求の適正化等による「経営基盤の確立」が重点項目として記載されているが、単なるお役所の作文でしかないことが今更ながらわかる。千葉県立病院の事業運営のあり方について、外部有識者から幅広く必要な助言等を受けることを目的とした千葉県立病院運営懇談会が設置されているが、平成2611月以降は開催されておらず、医療事故については議論されていない。問題が生じた時こそ懇談会を緊急に開催し委員からも意見を聴取すべきと考えるが、そのような発想は病院局には残念ながらないようである。

 

   地域医療支援病院としての県立病院

公立病院改革ガイドラインの考え方によれば、県立病院は、がんや循環器などの高度専門医療の最後の砦としての役割を担うとともに、高度専門的見地から地域の医療機関への支援や、今後の医療のモデルとなるべき先進的な取組み等の役割を担うことである。

佐原病院(241床)については、地域医療支援病院ではあるが、香取市及び周辺自治体の地域医療を担っているに過ぎない。同市内の国保小見川総合病院(170床)との統合、香取市及び周辺自治体も含めた一部事務組合もしくは東金九十九里地域医療センターのような地方独立行政法人、その他に指定管理者による運営などの選択肢が考えられる。岩手県のように県立病院が県全域に亘って医療の提供責任を担うのならば県民として理解しやすいが、香取市周辺の県民に限定して医療を提供している佐原病院は、本来ならばサービスの便益を受ける香取市民が財政負担をして運営すべきである。

平成213月の千葉県立病院改革プラン()では、「県立佐原病院と国保小見川総合病院の再編ネットワーク化については、今後協議する予定となっている」との記載がされていた。「千葉県病院局中期経営計画(第3次)(平成24年度~28年度)」にはその点は触れられておらず、国保小見川総合病院は平成273月の基本構想基本計画によれば100床にて建替え予定である。ガイドラインには、「二次医療圏内の公立病院間の連携を強化し、ネットワーク化の実を上げるためには、公立病院の経営主体を統合し、統一的な経営判断の下、医療資源の適正配分を図ることが望ましい。」との記載があるが、残された老朽化した県立佐原病院を果たしてどうするのか、県の考えは全く不明である。

 

   待てない医療を提供する県立病院の立地

千葉県救急医療センターについては、計画では全国的にも数少ない独立型の救命救急センターであり、全県下(複数圏域)を対象とした医療を提供する役割を担っていると中期経営計画には記載されている。平成22年度における患者は、千葉保健医療圏からの割合が62%、東葛南部地域からが17%である。山武・長生・夷隅地域からは8%の患者が来ていたが、「救急医療、急性期医療に軸足を置いた地域中核病院」を掲げている東千葉メディカルセンターが平成264月に開設されたため、救急搬送患者は減少している可能性が高い。中期経営計画においては、独立型のメリット・デメリット、千葉保健医療圏の二次救急医療を担う病院に併設する選択肢の検討、県立病院としてサービスを継続する必要性まで含めて検討してもおかしくはない。千葉県のドクターヘリ基地施設は、国保直営総合病院君津中央病院と日本医科大学千葉北総病院の2か所であり、千葉市民と一部の東葛南部の住民のために県立病院がその機能を担う必要があるのかどうか、救急は時間との戦いであり千葉県のドクターヘリ基地施設ではない同院のために、便益を受けていない県民まで含めて一般会計からの繰出金という形で結果的に等しく負担している現状は不公平に感じる。「千葉県の救急医療の最後の砦として、また中心的役割を担うセンター」との文言があるが、最後の砦というのはどういう意味なのか、ドクターヘリ基地施設ではなくてもよいのか、県民が納得できるように抽象的な表現ではなく診療機能面での存在意義を説明してほしい。

がんセンターやこども病院のように「待てる医療」ならば、人口が県内で最も集積し県内の交通の要所(総武本線・外房線・内房線のターミナル駅、東関東自動車道・京葉道路・千葉東金道路の高速道路のジャンクション有)である千葉市に県立病院を配置するのは選択肢として納得感があるが、救命救急のような「待てない医療」を、県立病院として県内に1か所設置するのはそもそも議論の余地があるのではないだろうか。その点では県立の循環器病センターについても同様である。先頃の新聞報道では、「精神病センターと統合して建て替えの方向、2病院が統合することで効率化が図れる」との記事があった。病院局は61日に「千葉県救急医療センター・精神科医療センターの一体的整備に係る基本計画等策定業務委託」の委託業者の選定結果をWebsiteに掲載しているが、両病院の一体的整備以外の選択肢に関する検討が充分になされた上での方針なのかどうか、情報開示がされていないため全く不明である。兵庫県の取組などと比較すると、千葉県は公立病院改革ガイドラインにおざなりに取組んでいるようにしか見えない。

 

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5.公立病院改革プランを実行する上での根本的な問題

(1)経営効率化に不可欠なマネジメント体制の充実

「再編・ネットワーク化」「経営形態の見直し」は改革の有力な手段ではあるが、形態を変えたとしてもマネジメント体制が整っていなければ成果を出すことが難しいのは自明であろう。

平成264月にオープンした地方独立行政法人東金九十九里地域医療センターは、「平成27年度には債務超過は免れない、28 年度には約 10 億円の資金不足が見込まれる」との新聞報道がされている。情報公開されている地方独立行政法人の評価委員会の議事録に基づく報道である。様々な事情を勘案しても、開院後2年目にして資金ショートするのは経営陣や経営体制を作った東金市及び九十九里町の行政及び議会の責任は大きい。地方独立行政法人という形態にすればうまくいくわけではないということである。同病院の経営難の原因はうかがい知ることは難しいが、事務部門中心に策定した根拠の薄弱な、実行可能性を充分に考慮していない計画、再生する覚悟や経験に乏しい経営トップなど、一般的な企業人からみると最初から経営がうまくいくはずはないと思われるような事例は結構存在するのではないだろうか。

 

病院経営はトップの経営チームで決まる

バブル崩壊後、企業再生ビジネスが脚光を浴びたが、「会社は経営者で決まる」と言われる通り、企業再生の成否は経営トップに依拠する部分が大きい。仮に再生計画が立派であっても実行が伴わなければ絵に描いた餅に過ぎない。再生の場合、経営者はスピード感覚があり、従業員の士気を上げ組織を活気づける、強い意志をもってしがらみを断つ、総論賛成各論反対の各論を論破することなどができる人が求められる。公立病院の場合は、それに加え首長や議会、医師派遣元の大学医局などとのコミュニケーション能力も必要である。

病院経営は一般的な企業経営よりもよほど難しく、独立行政法人などに経営形態を変えるということは経営の自由度で言えば、普通の企業経営の条件とやっと同等になるようなもので、その先が本当の勝負である。新ガイドラインでは、「経営感覚に富む人材の登用及び事務職員の人材開発の強化」を掲げているが、例えば病院経営者については、千葉県内ならば公立病院の院長は医師派遣の関係等もあって千葉大学医学部出身者が多いが、改革にあたっては大学系列を超えてでも経営能力のある院長を探したり、院長に加えて看護師のトップや事務部門のトップなどで構成するマネジメント・チームを構成して送り込んだりするなど、相応の体制で臨む必要があろう。病院の場合は、特に職員数に占める専門職である看護師の割合は高く、看護部門は様々な診療部門、診療支援部門との継ぎ目の役割を担っていることから、病院の組織風土を変えるために、そのトップの役割は重要である。また診療部門等に対して、説得力のある医業、財務の指標をタイムリーに示すなど院長の右腕として機能する事務部門のトップの役割も同じく重要である。

数十億円という赤字幅や一般会計繰入金を鑑みれば、高額の報酬を払ってでも優れた経営者、経営チームを送り込んだ方が、住民にとってプラスになるのではないだろうか。

 

(2)再編・ネットワーク化の実行に絡むステークホルダーの存在

ガイドラインには、「再編・ネットワーク化に係る計画においては、病院間での機能の重複・競合を避け、相互に適切な機能分担が図られるよう、診療科目等の再編成に取り組むこととするとともに、再編後における基幹病院とそれ以外の病院・診療所との間の連携体制の構築について特に配慮することが適当である」と記載されているが、関係者は既存の便益維持に囚われがちになるためなかなか難しいのが現実である。関係者の思惑について、多少ネガティブな見方で、図表10のように整理したみた。関係者の意見を集約するのは並大抵なことではないことがわかる。

 

図表10 公立病院の関係者の各々の思惑(ネガティブな見方)

住民

公立病院周辺に住む人

病院が無くなると困る。自宅から遠くなると困る。

何らかの形で残してほしい。

医療制度に詳しい人

公立病院の赤字は何とか少なくしてほしい。アクセスは不便になっても、病院が再編して医師や症例が集積し、医療の質が上がれば良い。

その他

病院の経営状況はよく知らない。何となくだが公立病院はあってもよいのでは?

医療提供者

自治体病院

事務職員は定期的に入れ替わるし、改革プランと言われても作るのが大変。年功序列の賃金体系だから人数の多い看護師の平均年齢が上がると人件費は膨らむが、急性期の看護基準を維持する必要もあるし給与などの条件は変えられない。

競合する

民間病院

赤字なのに、医師確保とか言って高額医療機器を購入するのは何とかならないのか? 民業を圧迫している。

医師会

公立病院が経営に熱心になると患者が奪われる。民間の医療法人などに移譲されたり指定管理者になったりしたら競争になって大変。このままで良いのでは。

大学医局

病院が統合すると、派遣先の院長ポストが減るので好ましくない。

勤務医

自治体病院は給料が安いが、医局のローテーションだから仕方ない。

ナース等

給与は年功序列だし、長く勤めよう。

市町村

首長

医療のことはよくわからない。専門家に任せよう。

病院を無くすというのは選挙にマイナスに働くのでは?

議員

 

医療以外にも地域の課題はあるので、時間をさけない。

病院を無くすというのは選挙にマイナスに働くのでは?

公立病院だと議員の顔が利かせられやすいので何かと便利。

職員

公立病院改革プランの策定と言われても、異動してきて間もない自分が作るのは無理。外部委託をしよう。

都道府県

首長

国の各省からたくさんの計画策定を求められる。担当部署に任せている。保険者が都道府県にされるのも困ったものだ。

議員

 

県立病院はあるが、政策医療をやっているから赤字は仕方がない。県民もあまり要望してこないし、自分の選挙区に関係なければ関心がない。

職員

厚生労働省から医療計画策定を指示されるが、異動してきて間もないからよくわからない。前に作成された計画を修正して良しとしよう。

総務省

医療は大切だが、自治体が財政危機になったら本末転倒。

厚生労働省

地域医療構想を作るのは地域事情を理解している都道府県の仕事。

経済産業省

機能が重複する一般医療について民間医療機関との競争条件が不公平。

 

前述の「公立病院経営改革事例集」には、より障壁が高い複数の自治体の公立病院の統合例が記載されている。例えば、青森県の6市町を構成員とするつがる西北五広域連合においては、5つの公立病院を一体的に運営する体制を構築するとともに、公立病院の機能を再編成し、中核病院1施設、サテライト病院2施設、サテライト診療所2施設に再編した。この取り組みなどは大いに参考にできる。

 

公共事業としての病院建築

公立病院の経営悪化の要因として、建築計画の杜撰さが挙げられるケースが多いのではないだろうか。前述の東金九十九里医療センターもおそらく当てはまる。公立病院は建築費に対して交付金が入るため、医療法人等と比較して建築費が高くなっても計画上は返済が可能になりやすい。建設会社は、建築費の坪単価を高めに設定している可能性が高く、建築面積も大きくなり総投資額は膨らむ。地元の議員によっては、病院建設は地域にとって数少ない公共事業であり、建設の他にも、設備、医療機器、什器備品、各種消耗品等々の購入について業者を紹介したりするなど、最終的に事業費が膨らんでしまうことに対して頓着しなかったりするようなケースもあるようである。

民間の医療法人が建築する場合は、資金の貸し手の金融機関等は貸し倒れにならないように建築計画を精査するが、公立病院の場合は最終的には自治体が税金を原資にして返済するという安心感からか、それほどのチェックはされていないように推察する。また自治体内に病院の建築計画を策定した経験のある職員などは通常はいないため、コンサル会社等に事業計画の策定を依頼する場合がある。ただコンサル会社は依頼主の意向に逆らうことは難しいため、実現可能性はなくはないが実行可能性は低い「つじつま合わせの計画」を策定するケースもある。計画をチェックする立場の議会は、病院事業のことがわからない上に、中には公共事業を食い物にしている議員も実際に存在しているため、充分なチェックはなされない。

 

(3)新公立病院改革ガイドラインと地域医療構想

総務省は、平成27331日に地方公共団体に対して「公立病院改革の推進について」の通知を出し、新たな公立病院改革プランの策定を要請した。新改革プランは、都道府県が策定する地域医療構想の策定状況を踏まえつつ、平成 27 年度または平成 28 年度中に策定するものとしており、地域医療構想と整合的であることが求められている。これまでの「経営効率化」、「再編・ネットワーク化」、「経営形態の見直し」に、「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」を加えた4つの視点に立って改革を進めることが必要とされている。

公立病院の「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」や「再編・ネットワーク化」は、医師確保が難しく地域医療を守ることに汲々としているような地域、県が大学病院と連携して構想を創り戦略的に再編を仕掛けている地域などでなければ、進展は難しいであろう。特に市町村立の基礎自治体の公立病院は、地元の有権者の顔が見えるために、構想区域という都道府県が定めた机上の圏域内での医療提供体制を最適化するために、機能分担を前提にして自院の診療機能を自ら進んで見直すことは難しいのではないだろうか。

また2025年問題と言われているが、将来の発現していないリスクに対して現状維持志向の強い自治体等の行政機関や公立病院、公的病院等が、思い切った再編案を提示するのはおそらく期待できない。例えば千葉県の場合、千葉県救急医療センター・精神科医療センターの一体的整備が検討されているが、このような中途半端な方策によって新病院が建築された場合は、後戻りが難しくなってしまう。将来の県民、市民の税金負担をできるだけ少なくするために、机上ではあるが大胆な私案を提示したい。

 

千葉構想区域の公立、公的病院の再編アイデア

当構想区域には急性期機能を担う中規模の公立、公的病院が集中して立地しているところから、ガイドラインの考え方に則って再編を検討した。

病床機能報告による病床機能ごとの病床数と2025 年の必要病床数を比較すると、高度急性期346床及び急性期975床が過剰、回復期1,763床及び慢性期267床が不足すると見込まれている。高度急性期及び急性期の機能を主に担っているのは公立、公的病院であること、老朽化で建替え含む大規模修繕の必要性が高い病院が多いことから、建替えの際の交付金や基金からの補助等による方策を講じて統合再編を積極的に進め、高度急性期及び急性期病床の大幅削減が進められるのではないかと考える。

第一に高度急性期医療を担う病院が高額医療機器や人材の二重投資をしなくても済むように、千葉大学病院と県立がんセンター・こども病院(周産期医療の充実の必要性)を一体化する。名称を仮に千葉大学メディカルセンターとする。岡山大学のメディカルセンター構想よりも、構成する病院の機能に違いがあるため、機能分担がしやすいように思われる。

第二に、急性期・回復期の機能分化を円滑に図れるように、千葉市立青葉病院と地域医療機能推進機構千葉病院も一体で運営する。後者が市立病院の指定管理者となり、急性期以上の機能は設備等が新しい青葉病院が担い、地域医療機能推進機構千葉病院は回復期の機能に特化し機能分担をする。

第三に美浜区エリアについては、千葉市海浜病院と千葉県救急医療センター、千葉県精神科医療センターを一体で建替えし、救急及び周産期の急性期機能を担う病院とする。併せて精神科を標榜し、総合入院体制加算を算定できるいわゆる総合病院にする。運営は県と市が設置者となる地方独立行政法人が行う。

対象としている病院は、すべて千葉大学の関連病院なので、千葉市及び千葉県、千葉大学との緊密な関係が構築できれば、医師の引き上げリスクは低いように推察する。

なお、構想区域内で大幅に不足している回復期及び慢性期の機能については、民間の医療法人等に任せるのが望ましい。大都市圏を除けば患者が減少している地域が全国的に広がっており、既にいくつかの地方の有力医療法人が生き残りのために大都市圏に積極的に進出している。千葉市内の既存医療法人による回復期機能の増床が困難な場合でも、担い手は現れるであろう。医師、看護師等の人材が不足している千葉県にとっては、地方の人材の流入は望むところでもある。

 

図表11 千葉構想区域の公立、公的病院との立地と再編案 

11

12

10

40km

 

 

出所:千葉県Website「千葉圏域(千葉市)における医療機能ごとの病床の状況」

病床数は、201571日時点の数値。

 

 

 

 

6.最後に 自治体の医療行政の在り方

(1)都道府県の役割・責任の増大

平成266月に地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律が成立し、地域医療に関する都道府県の権限・責任はこれまで以上に強化されている。

都道府県内の各構想区域の地域医療構想の策定にあたっては、関係者間で協議する場(地域医療構想調整会議)を運営する役割、地域医療介護総合確保基金から財政支援措置を講じる役割、医療機関に対して要請・指示・命令などの権限を行使していく役割が期待されており、地域医療構想を適切に実現していくためには公立病院の位置づけの見直しは必須である。そのためにも都道府県は管内市町村の公立病院の新改革プランの策定に適切に助言することに加え、特に再編・ネットワーク化については、自ら調整に乗り出すなど積極的に参画すべきである。特に建替えは、当該病院の役割を改めて検証する重要な機会である。安易に現状追認で建替えを行えば、その後の医療需要や経営環境の変化に対応できないリスクが高まる。新ガイドラインでは施設の新設・建替えなどにあたっての都道府県のチェック機能を強化することが記載されており、都道府県は地域医療構想との整合性などを検討のうえで地方交付税措置を行う。そのため各都道府県内では、市町村担当部局、県立病院担当部局、地域医療構想担当部局が、連携して取り組む必要がある。地域医療構想の策定、実行にあたっては、まさに都道府県の実力が問われる。

 

千葉県庁の課題

地域医療構想の策定にあたっては、まずは新公立病院改革ガイドラインに沿って県立病院の役割の明確化をすることが必要であろう。千葉県においては、『「新公立病院改革プラン」の素案策定及び改革プランに基づき具体的かつ実効性のある病院経営改善を実行するための企画』について3月にコンサルティング会社に外部委託を決めている。全部適用にしてから10年以上経過し、病院局経営管理課経営企画戦略室という部署がありながら、内部で計画立案ができないのは理解に苦しむ。市町村と異なり、健康福祉部に医療福祉政策課や医療整備課のように医療政策や医療資源の整備に関わる専門の部局もあり、複数の病院を運営しており共同購買等のスケールメリットも追求できる。保健所を通して県立病院が立地する構想区域の医療提供状況等の情報もとりやすいはずである。

千葉県の場合は、千葉県がんセンターの事件を含めて、ガバナンスのレベルの問題があることから、現在の組織体制そのものを見直すことは必須である。

 

(2)保健医療介護福祉の提供体制と負担をトータルで考えられる地方公共団体に

地方公共団体は、保健・医療・介護・福祉などの行政サービスを住民に提供しているが、厚生労働省が縦割りで政策を作り、自治体は同様に縦割りの組織を作って対応している。おそらくそのほうが国と自治体間の意思疎通がしやすく、政策に紐ついた予算の申請等がやりやすいからだ。

特に病院事業については、地方公営企業会計を一部適用し、基本的には独立採算であるためか、縦割、独立の意識が強いように感じる。公立病院の収支報告を聞いていると、「患者数が増加したことで、医業収益が増加した。」とのコメントが普通にされているが、患者数の増加は自治体として果たして良いことなのかどうかと疑問に感じる。他病院と比較して質の高い医療を提供していることで公立病院である自院のシェアが上昇したのか、それとも住民の健康状態が悪化し総患者数が増加したのかによって異なるが、後者の場合は地域住民の健康を守る自治体としては明らかにマイナスであろう。また国民健康保険の患者数が増加することで、国保財政がマイナスになれば一般会計から繰出しをしないといけなくなる場合も出てくる。公立病院が立地する自治体では、国民健康保険の医療費地域差指数が低いというデータも存在する。公立病院を核にして、保健師が熱心に保健活動を行ったり地域包括ケアの活動が波及したりすることで結果的に公立病院の患者が減少し経営が悪化することは果たして悪いことなのか等々、自治体としてトータルで考える必要があるのではないだろうか。

小さい自治体ではあるが福井県の旧名田庄村(現おおい町)の中村伸一医師は、診療所長と保健福祉課長を兼任することで保健医療福祉の統合し、赴任してから町村合併するまでの15年間(平成317年度)における名田庄村の在宅死亡率を約42%に、国保医療費地域差指数や老人医療費、第1号介護保険料を福井県内で最も低いランクに抑えた。人口が多い自治体で同様のことを実行するのは難しいのかもしれないが、縦割部門であっても情報共有し、住民の健康や必要なコストを横串でみるのは基礎自治体のあるべき姿だと思う。

 

(3)住民の政策立案への積極的な参画

    行政や医療提供者主導の政策立案

これまで医療提供体制については、主に医療提供者や学者等の研究者、保険者の代表が厚労省のたたき台に基づき審議会で決めてきており、住民の声が反映されてきていたとは言えない。自治体によっては、医療計画などの政策立案過程や、公立病院の建築等にあたってパブリックコメントの機会を設ける場合もある。ただ実態として役所はパブリックコメントを実施したという事実が大切なようで、本気で意見を取り上げるつもりがない場合が多い。パブリックコメントを求める時期は計画がある程度固まった段階であり、そもそも計画の変更をするつもりがないのだ。私も数回出したことがあるが、端から取り上げるつもりがないような回答しか返ってこず、パブリックコメントは意味がない場合が多いと感じている。

住民としては、議員や首長に働きかけるか、私が現在実行しているように病院運営に関わる委員会のメンバーとなって意見を述べていくしかない。ただ千葉市のように住民からの公募委員を選んでいる自治体ならまだ可能性はあるが、医師会や看護協会等の医療関係者で委員を固めている場合もあり、医療提供者の論理、公立病院の院長が同窓の医学部の先輩の場合は先輩には逆らわない、など住民の知らない世界で物事が決まっている場合が多いのではないかと推察する。

 

    住民の声を届ける必要性

平成26年の医療法の改正にて、医療法第6条に「国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない。」という項が入れられた。

世界に誇るべき国民皆保険と言われているが、保険者はファイナンス面(保険料の集金と給付)以外の機能を充分に果たしているとは言えず、被保険者である一般住民は黙って保険料を納めているだけである。将来的に消費税や保険料のアップなど負の分配がなされる状況は明らかであり、住民として行政や医療提供者にお任せではなく、積極的に意見を具申しなければいけないと考えている。私たちは医療サービスを受ける単なる客ではなくて、国民皆保険の資金を提供している当事者である。

平成30年度の地域医療構想を含む医療計画は、将来の日本の医療政策にとって非常に重要な位置づけになるため、計画に少しでも住民の声を反映できないかと、社会人有志からなる地域医療政策実践コミュニティーにおいて、「地域医療ビジョン/地域医療計画策定ガイドライン」(RH-PACガイドライン)を作成した。多様なステークホルダー、具体的には患者・住民、医療保険者、市町村関係者、医療提供者などに役立てるためのもので、私もその作成に加わった。一人でも多くの住民が、納税者でありかつ健康保険料を支払っている被保険者として、医療システムを自分事として捉え、自らが居住している自治体の医療政策に何らかの形で関与するようにしなければ、公立病院の改革は進まないのではないかと危惧している。

 

*地域医療計画実践コミュニティー

・患者支援者、政策立案者、医療提供者、メディアの4つのステークホルダーからなる約100人の有志によって、あるべき地域医療計画の姿を検討し、社会に発信しようとするプロジェクト。20144月から活動し、「地域医療ビジョン・地域医療計画ガイドライン」の策定に取り組んできた。東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット(Health Policy Unit=HPU)が運営する人材養成講座「医療政策実践コミュニティー(Health Policy Action Community=H-PAC)」の参加者、H-PACの前身である東京大学医療政策人材養成講座(HSP)参加者、都道府県医療計画担当者などで構成している。

 

【参考文献】

伊関友伸(2007)『まちの病院がなくなる!?』時事通信社

伊関友伸(2014)『自治体病院の歴史 住民医療の歩みとこれから』三輪書店

伊関友伸(2014)「公立病院改革ガイドラインは自治体病院に何をもたらすか」『病院』Vol.74 No.9

猪野積(2015)『地方自治法講義〔第3版〕』第一法規

印南一路(2011)『生命と自由を守る医療政策』東洋経済新報社

大沢博(2014)「新しい公立病院改革ガイドラインの概要について 各自治体病院の改革プランの成果と課題を踏まえて」『病院』Vol.74 No.9

金川佳弘(2008)『地域医療をまもる自治体病院経営分析』自治体研究社

産業再生機構(2006)『事業再生の実践 第Ⅲ巻』商事法務  

自治体病院経営研究会編 (2015)『自治体病院経営ハンドブック 22次改訂版』

世古口務(2014)「[事例]自治体病院の経営改革 意識改革とチーム医療による病院経営改善」

 崖っぷち自治体病院の復活」『病院』Vol.74 No.9

東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット(HPU)医療政策実践コミュニティー(H-PAC)『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 実践編~第2部 千葉県編~』

東日本税理士法人編,日経メディカル開発編 (2015)『病院再編・統合ハンドブック 破綻回避と機能拡充の処方箋』日経メディカル開発

松田晋哉(2015)『地域医療構想をどう策定するか』医学書院

武藤 正樹(2015)2025年へのカウントダウン―地域医療構想・地域包括ケアはこうなる! 』医学通信社

 

参考にしたWebsite

総務省、経済産業省、厚生労働省、公益社団法人 自治体病院協議会、一般社団法人 日本医療法人協会、日本医師会総合政策研究機構、

千葉県、千葉市、市原市、兵庫県等

 

 

2017年

9月

21日

地域の社会学

地域共生社会の実現に向けて地域力強化検討会の最終とりまとめが出されました。主に介護が必要とされる地域包括ケアだけではなく、地域の困った住民を総合的に支援する行政サービス、社会の必要性が謳われています。

 

ただ『地域の社会学』という本に、以下のようなことが書かれていました。
”1970~80年代、大都市で進行する住民自治の空洞化と行政サービスへの過度の依存の拡がりの対策として、コミュニティセンターが作られた。縦割り行政こそ問われなければならなかったが、コミュニティ行政を推進すると称して、あちこちの市町村でコミュニティ課が新たに作られた。財政難を打破するために、ただで住民を動員することと都合よく解釈しなおす自治体も相当数存在した。コミュニティ行政は、地域によっては公民館活動等の社会教育活動がもたらしてきた成果をつぶしてしまう結果をもたらした。 ・・・”


地域包括ケアセンターや地域共生社会を実現するための行政の出先機関についても、「いつか来た道」にならなければ宜しいのですが。温故知新にしないといけないですね。

2017年

9月

18日

日本医療・病院管理学会

週末の2日間、日本医療・病院管理学会に参加しました。初日の基調講演者が最期に、現状は「病気があって医学が生まれ、病人のために医療があり」(川喜田愛郎「医学概論」(1982年)になっていないと嘆いていらっしゃいました。

「医療のために病人がいて、医学が病気を作っている」ということでしょうか? 
群馬大学や千葉県がんセンターの医療事故や、多剤投与の問題などは公知になりましたが、私達が知らない闇がおそらくまだまだあるのでしょうね。医師に全面的にお任せするのはリスクがあることを、認識しておく必要があるのだと思います。

群馬大学にしても千葉県がんセンターにしても病院機能評価機構の認定を受けていましたから、病院機能評価もどこまで信頼していいのかわかりません。
介護事業者は第三者評価はありますが、診療所の場合は医療の質を評価するような情報もないので選び方はとても難しいのが現状です。

2017年

8月

11日

『医療機関との融資取引に強くなる本』

金融機関や再生ファンド、税理士法人出身者と共著で、8月11日に近代セールス社から「医療機関との融資取引に強くなる本」を出版しました。

著者たちは、過去に医療機関向けの問題のある融資をたくさん見てきており、その経験に基づいた内容になっています。

金融機関の融資担当者の方がバイブル的に活用していただけるように、実践的な内容とすべく心がけて執筆させていただいており、お勧めの本です。

金融機関の方でなくとも、医療機関との何らかの取引などを検討されるうえでは、有益な情報を一通り整理してまとまっており、便利な一冊です。ぜひ、お手に取ってみて、よろしければご購入いただければ幸いです。

2017年

6月

16日

診療報酬&介護報酬 同時改定スケジュール

本当ならば、改定内容をサービス提供者、保険者、患者・利用者が理解した上で開始すべきことなのですが、いつもドタバタに決まります。その上、改定内容によっては、半年や1年の猶予期間が定められています。

一層のこと1年間は周知期間にして、翌年度から改定でも良いような気がします。

 

◆診療報酬改定◆

・改定率決定               :平成29年12月下旬

・諮問、現時点の骨子(議論の整理)    :平成30年1月中旬

・個別改定項目案の公表(点数なし)    :平成30年1月下旬

・個別改定項目案の決定(答申:点数あり) :平成30年2月上旬

・点数算定の要件など公表(官報告示)   :平成30年3月上旬

・厚労省疑義解釈及び各団体Q&A     :平成30年3月下旬

 

◆介護報酬改定◆

・改定率決定(政治主導)         :平成29年12月下旬

・諮問~答申               :平成30年1~2月

・単位や要件など公表(官報告示)     :平成30年3月上旬

・厚労省改定Q&A            :平成30年3月下旬

2017年

5月

30日

医療情報システムの安全管理に関するガイドラインの改定

サイバー攻撃の手法の多様化・巧妙化、地域医療連携や医療介護連携等の推進、「IoT(モノのインターネット)」と称される新技術 やサービス等の普及等、医療情報システムを取り巻く環境の変化に対応するため、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインが改定されました。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版(平成29年5月)

2017年

3月

25日

医療施設調査H29年1月末概数

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院の施設数は前月に比べ1施設の減少、病床数は100床の減少。

一般診療所の施設数は66施設の減少、病床数は305床の減少。

歯科診療所の施設数は63施設の減少、病床数は3床の減少。

 

病院の療養病床は444床の減少。一方で一般病床は527床の増加。

100床の減少は、精神病床161床、結核病床26床の減少の影響。

 

 

 

 

 

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2017年

1月

17日

イノベーションとダイバーシティ

2016年11月の有効求人倍率は1.41倍。1991年7月以来、25年と4か月ぶりの高水準とのことです。

人手の確保や生産性の向上をしなければ、企業の成長はもちろんのこと、生き残りも難しくなってくるでしょう。

 

これまでダイバーシティは無いよりはある方が良いくらいでしか考えていなかったのですが、イノベーションにつなげるためのダイバーシティの考え方や、先進企業の取組など聞いていると、その辺を理解して取り組んでいる会社とそうでない会社では、後々大きな差が出てしまうと思います。

ただ現実は、他社に遅れをとるまいとダイバーシティ推進部門を創りはしたが、さて具体的に何をやったらよいのかわからないと相談してくる会社が結構あるそうです。本質の理解が大切ですね。

2016年

12月

20日

採用学

「採用学」という言葉は耳慣れないですが、学問として研究されている方がいらっしゃいます。

採用の本と言えばHow to 系がほとんどですが、様々な企業の採用に関わる蓄積された情報を分析すると見えてくるものがあるようです。

社員の採用時の優劣と、入社後5年後、10年後の優劣は異なっていて、その要因は採用時の問題なのか、その後の育成の問題なのか、配属された部署や上司の問題なのかなど、振り返って調べて改善することで、社員の質の底上げができます。人財と言いながら、そこまでやっている日本企業はおそらく少ないのではないでしょうか?

人事関係の方はもちろんのこと、経営者もお読みになられることをお薦めします。

採用学 (新潮選書)

https://www.amazon.co.jp/%E6%8E%A1%E7%94%A8%E5%AD%A6-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E9%81%B8%E6%9B%B8-%E6%9C%8D%E9%83%A8-%E6%B3%B0%E5%AE%8F/dp/4106037882

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2016年

10月

06日

新規技術導入の広告効果

Google検索で医療・病院関連のニュースを横断的にみていると、ここ数か月「○○病院でHALを導入。××地域で初めて!」というような地方新聞の記事によく出くわします。
ロボットスーツHAL®は、サイバーダイン株式会社が開発したものですが、医療介護用では患者さんのリハビリテーションのサポートで活用され始められています。
新聞やニュースなどで報じられる広告効果は、導入費用をはるかに超えるのではないでしょうか? 導入実績をみるとまだゼロの県もあるようですから、検討中でしたら早めに開始して地元のマスコミにニュースを流すのが良さそうですね。
レンタル料等:http://www.cyberdyne.jp/products/LowerLimb_nonmedical.html

導入実績:http://www.daiwahouse.co.jp/robot/hal/map.html

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2016年

10月

01日

患者のための専門医制度

一年開始が延期になった新専門医制度。

シンポジウムと懇親会に出て、現役の医師の皆さんにとって何が問題なのかは理解ができましたが、国民としては医療の質を担保する専門医制度の早期開始を願うだけです。

 

全面的な導入が今後ずるずると遅れる可能性もありますので、マスコミに現状の学会毎の専門医の審査基準などを整理してもらって、信頼できる専門医を生み出している学会ランキングでも作ってもらいたいものです。


患者の立場からみれば、専門医の乱立や診療科の自由標榜制、レセプトにつけられている盛りだくさんの病名など、医療の世界は普通に考えればおかしなことだらけです。医師のプロッフェッショナルオートノミーに期待して待っていても無理そうなので、一般人ももっと声をあげていかないといけないですね。

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2016年

9月

02日

千葉県立病院と千葉市立病院の課題

第2回は「千葉市立病院及び千葉県立病院の改革プランの実施状況」です。

平成26年度の千葉市立病院は35億円弱の一般会計から穴埋め(一部は不採算の政策医療)をしているにも関わらず18億円強の赤字。千葉県立病院は100億円の穴埋めをしているにも関わらず22億円の赤字。
地元の千葉日報は県立病院について「14年度決算で5年ぶりの赤字となっており、厳しい運営が続く。」と報じていたのですが、過去4年間の黒字は100億円超の一般会計からの穴埋めを含めてのこと。

マスコミは立法・行政・司法の三権を監視する役割を担っているとしたら、県の発表をそのまま報道するのではなくて中身のチェックもしっかりしてもらいたいのですが。。。

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2016年

9月

01日

東京都の地域医療構想

東京都の地域医療構想について、東京都地域医療構想策定部会長の聞いてきたのですが、千葉県とは雲泥の差ですね。私が傍聴している限りの感想ですが、国から言われたので仕方なくやっている作業と、気持ちが入った仕事の違いでしょうか。
ただ東京都は2025年に52,000人を新たに在宅医療で診たとしても約8200床不足。大体、福井県全体の病床数と同じくらいの不足です。平均在院日数を削減した上で病床稼働を引き上げても不充分なため増床をしないといけなさそうですが、医師看護師等の働き手の確保も今後更に難しくなってくるわけですから、高齢者は地方に移住するか、患者が減少する地方の医療機関が東京に進出するのを積極的に受け入れるかなども含め、他の道府県と違った発想で検討しないといけないのでしょうね。

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2016年

9月

01日

年金保険料の値上げ

9月から年金保険料が上がりました。給与明細をじっくり見ている人しか気づきませんが、厚生年金の保険料は平成16年の年金制度改正から平成29年まで毎年0.354%引きあげられています。率は低いですが、給与の額面にかけられるので結構な金額になります。
年金資産の運用は最近の新聞記事にあったように、残念ながら当初の想定通りにはいっていないでしょう。平成16年に「年金100年安心プラン」と呼ばれていたことを、国民は忘れないようにしないとですね。

当然のことながら事業主の負担も毎年増加しています。売上が増加しなければ、人件費率は年々上昇してしまいます。

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2016年

8月

21日

地域医療構想時代における住民目線の公立病院改革

仕事とは関係なく、千葉市の一住民の立場で書いたものを、社会保険旬報に掲載していただきました。

8/21 第1回 

公立病院の存在意義と改革プラン

9/1   第2回  

千葉市立病院及び千葉県立病院の改革プランの実施状況

 

9/11 第3回

住民の参画による改革の推進

 

 

2016年

7月

28日

サービス付き高齢者住宅と地域包括ケア

高齢者住宅は仕事で関わっていることと、将来の自分事でもあるので情報収集してます。
サービス付き高齢者住宅は、補助金の影響もあってか急増し全国で20万戸を超えたようです。国策で進めていますが、地域によって高齢者の所得層に違いがあるため、部屋の面積等について全国一律の基準を定めて補助金を飴にして整備を進めるのは、考え直した方が良いような気がします。
土地代の高い23区内では必然的に賃料が高くなるため、住み慣れた土地から離れて隣県や北関東に移り住まないといけない人が今後とも増えるのではないでしょうか。たとえ部屋が狭くても、住み慣れた地域に住める選択肢もあった方が良いのでは? それが地域包括ケアの考え方のはずなのに。。。
財源が限られているのだから、新しく建てるよりは空き家活用に誘導した方が社会資源の有効活用になるような気がします。成長戦略という名の税金の無駄遣いが、改憲の目処がつくまで続くのでしょうか。

2016年

7月

28日

人材採用に関わる常識の変化

介護事業の人材採用方法の話を聞いていると、自分が就職したり転職したりしていた時代の感覚が全く通用しないばかりか、逆に邪魔になってしまうリスクがあるように感じます。

 

企業が学生にいかに選んで貰うか、内定を出すまでのスピードも問われます。1日内定などもあるんですね。現場に採用権限をもたせるしかなさそうですが、昔ながらの大企業には難しいでしょう。


M&Aで異業種から参入してきた企業は、他の事業と同じ感覚で採用活動をすると失敗するでしょうね。ワタミの介護事業とメッセージを買収して一気に高齢者住宅の大手に躍り出た損保ジャパン日本興亜HD。賭けるなら、うまくいかないほうですね。

2016年

7月

22日

診療報酬改定で置いてきぼりの国民

診療報酬=患者にとっての支払い価格は、医療機関の工夫の仕方で高くなるというお話を聞いて来ました。合法的なやり方であっても、患者目線ではちょっとどうかなと感じることもあります。
診療報酬はサービス提供者側を誘導し、患者はそれに異議を唱えず従うという前提で決められているんですよね。例えば、病院から7対1の病棟から地域包括ケア病棟に転棟をお願いされた場合に「7対1のほうが看護配置も多いのに、看護師配置が少ない病棟に移って料金が高くなるのなら転棟したくない」とか、在宅復帰率アップになる病院への転院を薦められた場合に「(在宅復帰に力を入れていないけど)家の近くの病院への転院の方がいい」等々、患者が希望した場合はどうするのでしょうね? 
患者からみて???ことがたくさんあります。

2016年

7月

21日

医療情報の開示推進と医療の質

千葉市立病院の運営委員会委員をしているので、公立病院改革の先行事例を聴いてきました。
県立病院と市立病院の経営統合及び機能分担等による収支改善のほか、電子カルテの医療機関や薬局に対する開示による医療の質の向上なども参考になります。
群馬大学や千葉県がんセンターの手術後の患者の死亡問題も、連携先の医療機関にカルテ情報を常に開示していたら、防げたかもしれません。問題を起こした病院に対してはマネジメントやガバナンスの改善があるべき論なのですが、情報開示の仕組みを取り入れ、複数の外部の眼に常にさらす方が手っ取り早いような気がしました。

2016年

7月

20日

地域医療構想と医療計画

地域医療構想は、地域の現在と将来の医療需要と、各病院の人員や設備、患者さんに実施している診療行為などを明らかにした状態で、各々の病院が自らの役割を相談して決め、共存共栄を図っていくという点で、談合の考え方に近いのですが、談合にもノウハウが必要なので、いざやろうとしてともなかなか難しいのでしょう。
地域医療構想の実現に向けて、まずは皆でゲーム理論の勉強会などしていただくのが良いような気がします。

https://kotobank.jp/word/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E7%90%86%E8%AB%96-178970

2016年

7月

04日

組織の潤滑油的役割の人を評価する

ハーバードビジネスレビューの7月号の特集は「組織の本音 きれいごとで人は動かない」

 

言いにくいことを言える職場:上に立つ人が、積極的に言ってきていいよと言ってもなかなか難しい。声を上げやすい文化をどう創るか。

 

コラボレーション疲れが人を潰す:部門を超えた連携やチームワークが重視されているが、貢献している人をしっかり評価したり業務配分を考えていないと、その人がつぶれてしまう。

 

労働集約型で多職種・縦割の組織内部の連携と、組織外部との連携が必要不可欠な医療・介護等の組織では、参考にすべきことですが、理屈通りにはなかなかいかない。上に立つ人には人間力が必要ですね。

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2016年

6月

12日

就職売り手市場時代の採用

選ばない面接術。
中小企業の社長をターゲットにした日経トップリーダーの6月号の特集です。就職の売り手市場で中小企業が優秀な人材を採るためには、面接では自社の魅力を伝える、面接には優秀な人材に対応させる、内定後もマメにフォローする。

介護事業者によっては、遠方でも就職する学生の卒業式に参加してお祝いしたり、親にも会って採用理由や選考過程でのエピソードを伝えたりするなど、内定者一人一人に労力を惜しまずにフォローしているという話を聞いたことがあります。その活動が学生を送り出す学校や親に信頼を与え、定着率が高くなったり、翌年以降の優秀な人材の採用に繋がったりするので、中長期的にみれば採用コストを下げているのだと思います。

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2016年

6月

09日

経管栄養についての国民の理解

病院の退院支援部門の話では、最近は「胃ろう」の退院患者さんがほとんどいなくて、鼻から胃へ管を通す「経鼻」の割合が増えているとのこと。診療報酬の誘導による病院サイドの変化もあるのだと思いますが、マスコミによる胃ろうに対するネガティブ報道で患者や家族が望まなくなってきているようです。
厚労省は、口から食べられるようにする努力をせずに、安易に人工的に栄養をとる手段のひとつとして「胃ろう」をしないようにとの意図だったのだと思いますが。。。退院支援部門の方々は、「チューブ栄養を受けるのなら「経鼻」よりも「胃ろう」のほうが良い場合が多いのに」と言っています。私が支援している会社の施設も「胃ろう」なら受入可なのですが「経鼻」だと×。
「経管栄養の種類はいくつかあるけど、胃ろうはやらないほうが良い」という誤った認識が、かなり定着してしまっているようで困ったものですね。

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2016年

6月

08日

競争によるサービスの質の向上

毎週水曜日朝7時からの千葉駅ミスタードーナツでの医療介護制度の読書会というか放談会に参加し始めてから4年以上になります。
甘党の私の好みは、わらびもちサンドあずき抹茶ドーナツ。セブンイレブンのドーナツ販売参入から、ミスドのドーナツも種類が増え美味しくなりました。
競争のおかげで質が上がったのですが、病院業界はガチガチの医療計画で社会主義のような感じですね。
医療の質を高める仕組みをもっと取り入れてもらいたいのですが、健康保険組合等の保険者にもっと医療提供者側に働きかけてもらわないといけないです。

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2016年

6月

07日

病院のホスピタリティ

高齢者住宅を運営している企業の支援で、月に数回の頻度で病院の退院支援部門を訪ねています。千葉県のある急性期病院は、外来を分離し入院機能中心ということもあって、玄関を入るとホテルのロビーのように感じます。患者さんのご意見への回答の掲示も、病院らしくなくお洒落。受付の若手の女性が、車から降りた車椅子の患者さんの入院受付まで移動をサポートしたり、受付で問合せに対応したり、ホテルのコンシェルジェ以上に頑張ってます。
年に何回か車椅子の母親と一緒に地元の公立、公的病院に行きますが、そんな気が利いた対応をされてことはないです。
Websiteは英語、中国語、韓国語対応しており、メディカルツーリズムを意識している感じで、サービスレベルが随分と違いますね。

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2016年

1月

15日

全国地域別・病床機能情報等データベース

 

東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット(HPU)において、病床機能報告制度で開示されたデータなど多岐にわたる情報源のデータを使い易いように整理・統合したデータベースを広く一般に公表・提供しています。
病院の外部環境の分析に役立てられますので、活用いただくとよいと思います。
高度急性期、急性期、回復期、慢性期の4区分が注目されていましたが、実際に病院が有する資源、患者に提供している医療行為の内容で判断される可能性が高いので、構想区域内の他院と病棟単位で比較したうえで、自院の構想区域内での役割を検討すべきでしょう。

http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/HPU/seminar/2016-03-13/dbcomp.html

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2016年

1月

09日

診療報酬改定施行までのスケジュール

1月13日 塩崎恭久厚労相は2016年度診療報酬改定について、中央社会保険医療
       協議会に諮問。
中医協総会では、これまでの議論を整理した資料が取りまとめ
       られ、約1週間パブリックコメントを求める。

1月22日 埼玉県浦和市で公聴会

1月後半  2月上旬にかけてこの議論の整理を叩き台に、2016年度改定の内容を具体化
2月中旬  中央社会保険医療協議会は、厚生労働大臣に対し診療報酬点数の改定案
       を答申

3月初旬  診療報酬改定に係る告示・通知の発出
3月中旬  診療報酬改定説明会
3月後半  診療報酬改定に係るQ&Aの発出   
4月1日   診療報酬改定施行

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2015年

12月

16日

診療満足度調査

先週の東京国際フォーラムでの”医療法人社団悠翔会×在宅医療カレッジ 特別企画”「地域包括ケア時代に求められる医療と介護の役割」の際に、悠翔会さんの診療満足度調査の資料をいただきました。
医師に関わ
る調査項目が、診察の態度(身だしなみ、患者様やご家族への対応・態度、お話をお伺いする姿勢・態度)、診察の内容(診療にかける時間、診察の丁寧さ)、説明と指導(病状や治療内容の説明、治療以外の在宅介護、健康管理上のアドバイス)、診療以外の対応等ときめ細かく分けられていて、患者様・ご家族、施設系事業者、居宅系事業者別に集計されています。
大きな病院でも、患者様・ご家族、連携先の医療機関・介護施設、救急隊などの満足度調査結果を、まとめて開示しているようなものはこれまで見たことはありません。病院の経営者も参考にしていただき、質の向上に役立てられたり、医師の指導の参考にされたりすると宜しいのではないでしょうか。
悠翔会:1都3県に9か所に機能強化型在宅療養支援診療所を展開している医療法人社団(http://yushoukai.jp/

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2015年

12月

10日

意思決定のスピード

岐阜県の松波総合病院が、健診の受付担当にソフトバンク社の人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を一台配置したそうです。同院によると、県内の医療機関でペッパーを導入するのは初めて。業務の効率化に実際にどれだけつながるかは?ですが、宣伝効果は高そうです。

詳細は以下の通りです。全国紙を含めた複数の新聞社に取り上げられており、知名度アップ効果を広告費用に換算すると果たしていくらになるでしょう?
こういうことって、早くやったもの勝ち。組織が重い公立、公的病院が同じようなことをするのは難しいでしょうね。

*********

肩書は「人工知能開発室主任」。来院した利用者らに、人工の音声と胸の表示パネルで、フロアの説明をしたり医療の情報を提供したりする。ペッパーに案内などを任せ、職員は利用者の個別の相談などに専念しやすくなるよう期待している。ペッパーの“雇用条件”は三年間のリース契約で、同院はソフトバンクに月々約六万五千円を支払う。


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2015年

12月

09日

保険者への期待

医療制度をより良くするために、健康保険組合などの保険者に私は期待しているので、関連するセミナーや勉強会にはできるだけ出ています。今日はJPタワーで日本総研主催のシンポジウム「国民主体の医療制度構築に向けて」~医療保険制度のガバナンスを考える~。
日本の医療制度の特長のひとつであるフリーアクセスについて、フリーと言っても利用者は彷徨っているのかもしれない、というコメントがあったのですが、確かに選択眼のある人にとってフリーは良いのでしょうが、ほとんどの人は選択基準もわからず、充分な情報も無い中で選ぶのは大変です。フリーアクセスなので、良かれと思って時間をかけて大学病院にわざわざ行き、3時間待ちで後期研修医の外来診療を受け、初診時保険外併用療養費を数千円払い、大学病院で診てもらったから安心する、というような例もあるでしょうし、本当にフリーアクセスがよいのかどうかは???です。
ただ信頼できるかかりつけ医を探すのも、それはそれで簡単ではありません。保険者がレセプト審査結果や、患者(被保険者)に受診先の医療機関に関するアンケート結果に基づいて、受診をお勧めしない保険医療機関をリスト化するなど、水先案内人になるべくやろうと思えばできることは多々あると思うのですが、以前に私が保険料を払っている健保に提案しましたが、そのようなことは全く念頭にないようでした。
保険者を選べるようにする競争原理の考え方もありますが、どうすれば保険者は被保険者のために働いてくれるのでしょうね ┐(´~`;)┌

2015年

12月

04日

特別養護老人ホームの役割とは?

母は特別養護老人ホームに入所していますが、9月に支払う8月分利用分から基準が変更になり、なんと請求が2倍以上になりました。利用料の負担軽減の基準が、従来の所得基準だけから資産要件も加わったからなのですが、覚悟していたとは言え7万円強から16万円弱に跳ね上がりびっくりです。施設にいてもいわゆる家賃分等を本人が相応に負担するという趣旨なのですが、とは言えサービス付き高齢者住宅と比べれば負担は少ないです。
政府は最近「特養増設・待機解消」という人気取り施策を打ち出しているようですが、社会福祉法人等が運営する特養は所得も資産も少ない人に限定するなどのように基準を変えれば、財政難の状況下で特養を増やすようなこともしなくて済むのでは?
高齢者向け施設がいろいろありますが、法人税等が非課税の社会福祉法人等にしか開設・運営できない特養は、一体何が違うのか?って思いますよね。

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2015年

11月

29日

場を創る

NIKKEI DESIGNの12月号は、人が集まる「場」の極意が特集。

人が人を呼ぶ場の作り方のポイントは、今までにないコミュニケーションを誘発する、今までにない安心感を与える、今までにない驚きにつなげるとのこと。

ハードとソフトの両輪がかみ合うことで、人々の生活を変えるほどの空間が生まれ、集まった人によるSNSで伝播する。先週お伺いしたサービス付き高齢者住宅の銀木犀さんなどはその典型ですね。

いくつかの事例が掲載されていますが、熊本を代表する老舗の鶴屋百貨店の鶴屋ラララ大学は、従業員が講師となって顧客と交流することで固定ファンが増えますし、従業員にとってもやりがいが湧くような気がします。http://tsuruya-university.jp/member/

病院では直接患者さんと接する機会が少ない職種の方もいますが、自らの専門分野で患者さんや住民に伝えて意味のあることはたくさんあります。そういう場を意識して作るのも面白いと思います。


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2015年

11月

19日

人事制度を定期的に見直していますか?

日本の人事部という名のセミナー、毎年春秋の2回あり、人事に熱心に取り組んでいる企業の事例や学者の理論の説明を聴くことができます。

既存の人事制度を守ることに汲々としている企業や団体が一般的だと思いますが、社員のモチベーションを引き上げるための方策を常に検討する部門を設置し、制度を必要に応じてトライアンドエラーで柔軟に変えている企業もあるんですね。社員の職場満足度の差はどんどん拡がり、将来の人材確保でも差がつくのではないでしょうか。

病院などは医療職の仕事に対する使命感に甘え、人事制度はおざなりになっているところが多いような。。。例えば、医師などは将来経営に参画する人材と、その分野のスペシャリストとして貢献する人材を明確に分けて遇した方がよいような。スポーツと同じで、名選手が必ずしも名コーチ、名監督になるわけではありませんから。大学病院などは論文が得意な人がマネジメントのトップになることもあるようですが、人事制度をもっと真面目に考えたほうがよさそうですよね。

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2015年

11月

19日

サービス付き高齢者住宅の形

サービス付き高齢者向け住宅協会の理事で銀木犀のオーナーの下河原さんに業界発展のためと無理をお願いして、私がサポートしている競合会社の視察を快諾していただきました。図々しくも7名でお邪魔し、おいおいという感じですね(^-^; 施設の詳細は、この記事を読んでいただくとして、http://m.huffpost.com/jp/entry/8607818
建物や設備等のハード面、入居者や地域を巻き込んで作り上げられているソフト面とも、競合する他社の施設と明確に差別化されていることを改めて認識しました。社長の価値観や運営方針を、職員が納得し、自発的に入居者のためになることをする仕組みと組織風土は、一朝一夕に作り上げるのは難しいでしょうね。マーケティングの考え方もしっかりされていて、伺って本当にいい勉強をさせていただきました。

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2015年

10月

13日

信頼できるかかりつけ医を探すことの難しさ

母の内視鏡手術のため、午後はずっと病院で待機していました。
手術室の控室で、夫が大腸がんの手術を受ける70歳前半の女性と話をしたのですが、夫は最初に近所の高齢の開業医さんにかかった時に、ただの便秘と言われたそうです。その後しばらくして腸閉塞で救急車で運ばれ、破裂寸前で危機一髪で助かったらしいのですが、大腸がんが見つかり手術になったとのこと。「開業医さんがちゃんと見てくれていたら・・・」と悔やんでいらっしゃいました。
行政機関や健康保険組合等の保険者からは、「まずは近所の「かかりつけ医」を受診するようにしましょう。 」と言われていますが、この御婦人はおそらくいろんなところで「いい病院にかからないとダメ」というような話をしていると思います。質の高い信頼できるかかりつけ医の探し方のアドバイスをしない限り、大病院志向を変えることは難しいのではないかと思います。
専門医制度が定着し、かかりつけ医ならば総合診療医であることが当たり前になってくれば解決できるのかもしれませんが、かなり先のことですね。

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2015年

10月

10日

医療者の倫理

日経ビジネス最新号の記事、ぐるぐる病院とは、生活保護受給者が頻繁に転院を繰り返すこと。経営の苦しい病院にとって、医療費のとりっぱぐれのない生活保護の患者は優良顧客で、病院同士で定期的にトレードしあっているという事実。生活保護に占める医療扶助費は1.7兆円あり、その一部は病院の収入確保のために使われていることは、相当以前から報道されていますが、なぜか改善は進んでいないようです。
トヨタグループのように「乾いた雑巾を絞る」ような1円単位での原価低減活動をしている企業の取組と比べると、医療の世界には残薬問題含め様々なところに非効率な部分があります。健康保険料や所得税を源泉徴収されている日経ビジネス読者の企業人が、医療関係者や官僚に任せるだけではなく、必要な意見を言っていかないと、医療の世界はなかなか変わらないのではないでしょうか。

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2015年

10月

04日

地域に開かれた高齢者住宅に

厚労省が地域包括ケアを推進していますが、国土交通省は地域に開かれた高齢者住宅、介護サービス等を始め地域にサービス提供をする拠点としての高齢者住宅を目指しているようです。最も印象的なのは、コミュニティネットさんの取組みです。地域ニーズに基づくサービス提供、介護保険に頼らない経営。報酬改定に左右される介護型のサービスと比べて、自立している高齢者向けの施設の利益率は約2~3倍のようです。
公的医療保険・介護保険サービスを提供している機関・施設は、顧客満足度調査はしていても、顧客の顕在・潜在ニーズを収集して新たなサービスを考えているようなことはしていません。高齢化で顧客はまだまだ増加するわけですからに、診療報酬・介護報酬を充てにしないで、新たなサービスを開発することにも頭を使ってもらいたいですね。ていうか、その支援は私の仕事でもあります。

2015年

9月

10日

地域医療計画ガイドラインの提案

東京大学公共政策大学院医療政策教育・研究ユニット(HPU)の医療政策実践コミュニティー(H-PAC)が企画した「地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン 実践編」のガイドライン作りに参画しました。
厚生労働省が3月に発表した地域医療構想策定ガイドラインを補完し、地域で多様な立場の方々が参画して実効性の高い地域医療構想と地域医療計画を策定するために活用されることを、想定しています

2015年

8月

28日

製薬メーカーの理念はどこに

今日のNHKニュースによると、ファイザーは去年までの6年間におよそ200人分の副作用の報告をしておらず、中には死亡したケースもあったということです。
食品メーカーなどは問題があればすぐに公表し、場合によっては市場に出回っている商品まで回収しますが、製薬メーカーの場合は国から業務改善命令が出るまで何も情報開示しないのでしょうか?
このニュースでもファイザーはノーコメントのようですし、会社のWebsiteを見ても本件に関して何も掲載されていません。国民が支払っている健康保険料や税金などで成り立っている公的医療保険から収入の大部分を得ているのにも関わらず、企業倫理に問題のある製薬メーカーが次々出てくるのは規制の仕方に問題があるのでしょうね。厚生労働省に任せていても解決はできないような気がします。

2015年

8月

11日

医療制度改革に向けた保険者への期待 

普段の医療機関向けのコンサルティング活動で感じることは、医療の業界は医師(サービス提供者)主導で政策や運営が進められており、その状況をこのまま継続していくのが果たして良いのかということです。


医師のなかには一国民の視点で医療や介護のあり方について考えている方々も多くいるのは知っていますが、一方でそれが国の医療政策に影響を及ぼす医師会等の団体の統一見解になると、どうしても医療提供者寄りになっているように感じます。ただ医師会をいわゆるひとつの業界団体と考えれば、嘆いても仕方のないことです。


もちろん日本医師会が言うところの各医師会や医師のプロフェッショナルオートノミーに期待したいところですが、最近のニュースをみているとそれは非現実的にも思えます。臨床研究の利益相反問題や千葉県がんセンターや群馬大学附属病院の腹腔鏡手術の事件はあくまで氷山の一角であり、当事者に問題解決を委ねても根本的な解決には残念ながら至らず、何年か後にまた同様のことが発生しても業界関係者の誰も驚かないのではないでしょうか。

また大きな事件でなくても身近なところで、診療報酬明細書等の審査をしている医師と話をすると、診療ガイドラインから大きく外れた診療や投薬を平気でしているような危険な医師がいるような話も聞きます。ただそのような場合、請求が削られるだけで、それ以上のことがなされるわけではありません。質の低い医師が、ちまたに放置されているという怖ろしい状況です。


そこで私は、医療提供者寄りになりがちな医療介護の政策や公的保険制度の運営を国民にとってより良いものにするために、患者であり被保険者である国民の声を代弁すべき保険者の役割にもっと期待したいと考えています。

保険者は、医療機関や歯科医療機関からの診療報酬明細書、薬局からの調剤報酬明細書を審査する立場にあり、医療機関が提供する診療の内容や場合によっては質、被保険者の医療機関へのかかり方まで把握することができます。特に協会けんぽなどは日本全国を面で把握することができるのではないでしょうか。


厚生労働省がデータヘルス計画を進めていますが、残念ながら被保険者に対する保健事業が中心になっているようにみています。また現行の高齢者医療への負担金のあり方など健康保険組合にとって経営努力をするインセンティブが働きにくい制度の問題などもあります。そのような制度の問題も踏まえて、私自身保険料を支払っている一披保険者として、各保険者が医療機関や医師団体等のカウンターパートとして果たすべき、果たすことのできる役割について今後の活動において何らかの形で提案できればと考えています。

2015年

8月

08日

1回のみ使用の医療材料の値段に驚愕!

8月8日のAKIBA Cancer Forumでは医療機器の展示をしていて、実際に操作させてもらいました。腹腔鏡下手術の電気メスや鉗子など、器用で慣れていないと難しいですよね。当たり前ですが(^^;
ドクターXなどのドラマを視ていても気づかなかったのですが、今って縫ってくっつけるのではなくてホッチキスのような器具で吻合することが多いのですね。驚いたのはほとんどの器具が1回使い切りで、それぞれが何万円もすること。
製造業者は外資系の2社しかないらしく、価格もなかなか下がらないのでしょう。材料費増加で業績が悪化している病院も増えていますし、このままでは医療費もどんどん増加してしまいます。医療技術の向上による医療費の増加は避けられないことですが、入院期間の短縮がはかられるなど費用対効果が出ているかどうかの検証も必要です。

2015年

8月

05日

患者減少時代の病院の統合と機能分担

千葉大学医学部附属病院の新外来棟の玄関から目と鼻の先にある千葉市立青葉病院。大学病院の外来患者数は平均2000人強ですが、大学病院でなければ治療が困難な患者は果たしてどれだけいるのでしょう?
千葉大学が主催した「千葉県地域連携の会」では千葉市内の病院長が、地域医療構想の策定に向けて集まって話すパートがありました。公立・公的の病院は、当たり前のことですが病院長の病院ではないわけですから、自院にとって何が良いのかだけではなく、地域にとってどのような医療提供体制が望ましいのかという観点で、議論していただきたいものです。
と言っても中々難しいでしょうから、住民の立場で大局的な意見を言える場があればありがたいのですが。例えば大学病院と市立病院が一体運営し、一般的な疾病の患者や救急は市立病院で、高度医療や希少な疾病の患者は大学病院として棲み分けすれば、市立病院の病床稼働率は高まり、大学病院が病棟を建替える際には規模を縮小でき、公金の投資効率(ROA (Return On Assets)) はかなり高まるのではないでしょうか。

2015年

8月

01日

「医療の質」どう評価する?

一般の商品やサービスを選ぶ際には「安かろう悪かろう」という経験則がありますが、医療機関が提供する公的医療保険のサービス価格は一律で、技術やサービスの質が良くても悪くても同じ価格です。

価格が同じなら誰もが質の高い医師に診てもらいたい、いわゆる藪医者には診てもらいたくないですよね。江戸時代の書物には、医師一人一人の診療成績が記載されていたようです。
今も内容の是非は別として、良い医師や医療機関のランキング本は売られています。ただ我が国の公的保険制度の質を維持することを考えると、どちらかと言えば質が格段に低い医師の排除(医師免許は更新制ではないので、中にはペーパー医師もいるかもしれない)をするための医療の評価、結果の情報開示の方が意味があるように思います。

2015年

7月

09日

社会保障審議会医療保険部会20150709

社会保障審議会医療保険部会を傍聴してきました。来年4月に診療報酬改定がありますが、過去と同じようなスケジュール。告示後の通知の改定含めて、現場を混乱させる余裕のないスケジュールを改善する努力って全くする気はないんですね。とても不思議です。

資料がたくさん配布されましたが、「経済財政運営と改革の基本方針2015」、「『日本再興戦略』改訂2015」、「規制改革実施計画」、「保健医療2035提言書」などなど。カルロス・ゴーンは日産の再建の際に「素晴らしい計画は不要だ。計画は5%、実行が95%だ」と言ったそうですが、実行するつもりがどれだけあるのか怪しい計画を有識者集めてたくさん作っても仕方無いですよね。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000090945.html

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2015年

7月

07日

政策目標を達成するための指標の重要性

経済学部出身ということもあって、たまには日経新聞の経済教室をじっくり読みます。昨日の内容はインフレ率。

日本政府は2%のインフレ率を目指すとしていますが、消費者物価指数に占める家賃の影響割合が大きいこと、家賃は賃貸契約が一般的に長期なので景気が良くなっても急には上昇しないこと、築年数経過で一般的には家賃は低下すること、あと相続税の関係で貸家だと軽減されるため空室でもそのままにしがちで市場に低下圧力をかけてしまうことなどから、日本では「短期的」に2%アップを目指すのはかなり困難とのことです。グラフの帰属家賃の動きが、アメリカと日本ではかなり違います。

指標の性格を理解したうえで政策目標にしなさいということなのですが、医療分野でも例えば「医薬分業率」は約70%まで増加しましたが、医療機関の外部、調剤薬局での処方にする≒薬局が患者さん個人単位の薬歴管理・服薬指導をすることで無駄な処方が無くなる、副作用等が防げるなどが期待されたのだと思いますが、最近のニュースで残薬の問題やそもそも一部の薬局では薬歴管理をしていない問題が明らかになりました。ただ裏の事情である医療機関が薬価差益で儲けるために医薬品を出し過ぎるのは防止できたのかもしれませんが。。。

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2015年

7月

07日

政策目標の指標設定の重要性

経済学部出身ということもあって、たまには日経新聞の経済教室をじっくり読みます。昨日の内容はインフレ率。

日本政府は2%のインフレ率を目指すとしていますが、消費者物価指数に占める家賃の影響割合が大きいこと、家賃は賃貸契約が一般的に長期なので景気が良くなっても急には上昇しないこと、築年数経過で一般的には家賃は低下すること、あと相続税の関係で貸家だと軽減されるため空室でもそのままにしがちで市場に低下圧力をかけてしまうことなどから、日本では「短期的」に2%アップを目指すのはかなり困難とのことです。グラフの帰属家賃の動きが、アメリカと日本ではかなり違います。

指標の性格を理解したうえで政策目標にしなさいということなのですが、医療分野でも例えば「医薬分業率」は約70%まで増加しましたが、医療機関の外部、調剤薬局での処方にする≒薬局が患者さん個人単位の薬歴管理・服薬指導をすることで無駄な処方が無くなる、副作用等が防げるなどが期待されたのだと思いますが、最近のニュースで残薬の問題やそもそも一部の薬局では薬歴管理をしていない問題が明らかになりました。ただ裏の事情である医療機関が薬価差益で儲けるために医薬品を出し過ぎるのは防止できたのかもしれませんが。

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2015年

6月

08日

薬局への期待と医療制度における国民の責務

2014年の医療法改正によって、医療法第6条の2の3項に『国民の責務』が盛り込まれました。これは説明を聞く機会があり知っていました。
「国民は、良質かつ適切な医療の効率的な提供に資するよう、医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携の重要性についての理解を深め、医療提供施設の機能に応じ、医療に関する選択を適切に行い、医療を適切に受けるよう努めなければならない」
改正薬事法が同じく2014年に施行されました。第1条の6に『国民の役割』として「国民は、医薬品等を適正に使用するとともに、これらの有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努めなければならない。」が盛り込まれているようです。昨日の日本薬剤師会会長の薬局・薬剤師の今後の役割の話を聞いて初めて知りました。
理解していない私が悪いのか、伝える側に問題があるのか、知らない間に法律で国民の義務が定められているとしたら空恐ろしいことです。少なくとも子供には義務教育で教えるとか、大人には何らかの方法であまねく伝えるようにするとか、伝える努力をもっとして欲しいですよね。さすがに知らない間に徴兵義務ということは無いにしても、ニュース性の低い法律は知らない間に決まっていきます。立法府の国会議員を、国民は真剣に選ばないと怖いことになりますね。

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