IMC株式会社  池田医業経営研究所

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連携先の満足度向上

 医療機関の集患を考えた場合、患者さんの満足度を高めるのはもちろんのこと、患者さんを紹介してくださる関係機関の満足度も高める必要があります。2025年に向けて地域医療構想と地域包括ケアという考え方に基づき、地域における機能別の病院の役割分担及び医療機関と介護事業者の役割分担、病病連携、病診連携、医介連携は必須になってきました。地域における医療機関の関係先も随分と増えてきたのではないでしょうか。

 

地域における連携を、急性期の入院患者を主に診ている急性期病院の視点で考えると、外来患者や入院患者の確保につながる前方連携と、退院する患者の在宅医療・在宅看護への移行や、回復期病床や療養病床を有する医療機関や介護施設への転院・転所を図る後方連携とに分けることができます。また専門性の異なる医療機関間で紹介をする横の連携もあります。連携システムを構築するにあたっては患者さんの利益を第一に考慮しなければならないことはもちろんですが、同時に地域完結型の医療を展開するためには、前方連携と後方連携とを意識し、連携相手のメリット、連携先の満足度を高めることを意識し、「Win-Win」の関係をいかに構築していくかが大切になります。

 

連携促進のために医療機関同士が集まる会合は地域の基幹病院等が定期的に催していることが多いですが、ここ数年は介護事業者なども含めた多職種連携の会などが催されている地域が増えています。そして以前は「顔の見える関係」という言葉が使用されていましたが、最近では「腹の見える連携」という言葉を聞く機会が増えてきました。想像するに、顔が見える程度の関係の中で相互の内部事情、懐事情がわからないまま手探りで行う連携では不充分で、診療報酬や介護報酬の点数、施設基準の縛りがある中で、各々にとって、都合の良い連携でないとうまくいかないということなのだと思います。

地方都市では病院等の医療機関や介護事業所の数は限られていますので、互いの腹の中は自然とわかるのではないでしょうか。一方、都市部では関係者が多く、介護事業者などは新規の事業所開設や既存事業所の廃止などが頻繁にあったりするため、「腹の見える連携」をするための関係づくりは大変です。多くの関係者との幅広いお付き合いでは「腹の見える連携」をするのは難しいため、関係先をある程度絞り込むのはやむを得ないでしょう。

 

では、どのようにして絞り込むかですが、『パレートの法則』という言葉を聞かれたことはございますでしょうか? イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見した法則で、経済において、全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出しているという理論で、80:20の法則などとも呼ばれています。パレートの法則は、経済以外にも自然現象や社会現象など、さまざまな事例に当て嵌められることが多く、自然現象や社会現象は決して平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在し、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い、というごく当たり前の現象もパレートの法則と呼ばれています。例えば、「売上の8割は全顧客の2割が生み出している。売上を伸ばすには顧客全員を対象としたサービスを行うよりも、2割の顧客に的を絞ったサービスを行う方が効率的である。」とか「所得税の8割は、課税対象者の2割が払っている。」などです。

 

パレートの法則は図のようなイメージで、ABC分析とも呼ばれています。例えば、重点連携先を絞込む場合、紹介患者数の多い順に連携先を並べ、優先ランクをつけてグループ分けをします。地域連携室等の限られたメンバーで連携先に対応するために、全体の約8割の紹介患者を送ってきてくれるAランクの2割の連携先とは時間をかけて腹の見える関係を構築し、残りの8割のBCランクの連携先とは顔の見える連携に留めるなどの割り切りをすることも必要でしょう。多くの患者を紹介してくれるAランクの連携先との関係が悪化した場合、経営に対する影響が大きいので、地域連携室だけでなく事務長、院長なども挨拶周りなどされているのではないでしょうか。

 

図 パレートの法則、ABC分析の例(割愛)

 

Aランク先を増やすために、上位の連携先に何か共通する特徴がないかを探ることも大切です。例えば、上位のAランクに共通する特徴があった場合、BランクまたはCランクの中でその特徴を持つところを探し、みつかった場合はAランクへ移行できる可能性が高いかもしれません。このように現状が把握できるとともに、対策の優先順位が付けやすいのがABC分析のメリットです。例えば地域連携室の目標として、「Aランクを1年で3か所増やす。そのためにCランクの訪問回数を減らし、Bランクの訪問回数を2倍にする。」などのような具体的な行動計画をつくることができます。

一般の会社においては、顧客を「集団」としてとらえる「マス・マーケティング」から、顧客を「個」としてとらえ、「個」との長期的関係性を重視する「CRMCustomer Relationship Management)」という考え方が2000年頃から本格的に経営に取り入れられました。

CRMは、11の関係性で顧客の利便性向上、満足度・信頼度を高めて顧客価値(Life Time Value)の最大化を目指すという考え方で、例えば百貨店などでは、過去の顧客の注文履歴のデータベースを分析して優良顧客を抽出して狙いを付け、ディスカウントセールを行うためのDM送付やコンタクトしたり、 一定期間利用の無かった顧客を抽出し、購入を促すためにクーポン付きDM送付や電話をかけたりするなどしています。

医療機関においても、腹の見える関係をつくるために、地域の医療機関や介護事業者の個々の診療機能や介護サービス内容、窓口の部門や担当者名、過去の紹介・逆紹介の患者及び利用者の内容、受け入れ可能な患者及び利用者の必要医療行為、受入れ判定会議の時期等々、連携先の情報を蓄積し、その情報に基づいて個々の連携先のニーズに対応した連携をすることがお互いにとって望ましいでしょう。熊本市内の医療機関間の地域医療連携は以前から有名ですが、地域の急性期医療の一角を担う済生会熊本病院では、5年ほど前から「顔の見える連携」から一歩踏み込んで、実績とデータに基づく連携に取り組み、「アライアンス連携」と呼んでいます。より深く連携するための「仕組み」を導入し、目標とするゴールを数値で示しながら、「患者さんに適切な時期に適切な医療を提供する」「地域で質の高い継続医療を提供する」という連携の本来の目的を達成するために、転院患者の多い病院を絞り、重点的に関係を深めています。

 

地域連携の業務に避ける人員数は限られています。やみくもに連携活動を行うのではなく、ABC分析を行い選択と集中を考えて実施されるのが良いと思います。