IMC株式会社  池田医業経営研究所

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医療に必要なマーケティング マーケティング・プロセス

 

10回に亘りマーケティングの考え方の基本を解説してきました。ほとんどの医療機関は、何らかの形でマーケティングを実践されているでしょう。マネジメントの大家と言われているピーター・ドラッカーは著書の『マネジメント』のなかで、「マーケティングの目的は、販売を不必要にすることだ。マーケティングの目的は、顧客について十分に理解し、顧客に合った製品やサービスが自然に売れるようにすることなのだ」と述べています。

医療市場は、供給が需要を創り出すと言われてきました。昭和60年に創設された医療計画制度は、各都道府県が二次医療圏単位で試算した需要を超えている場合に、病院の開設や増床を認めない仕組み(いわゆる病床規制)でした。当時は人口が増加している上に、病院間の競争は制限されていましたので、各医療機関は積極的に集患活動をしなくても、開業すればある程度の患者は自然に集まりました。しかし2011年頃から日本の人口減少が始まり、患者数についても都市部を除き地域によっては減少が始まっていることから、医療機関も集客、集患について真剣に考えないと生き残れなく時代になってきています。また介護事業を実施されている医療機関は、民間事業者とも競争しないといけません。医療機関についても、他業界と同様にマーケティング戦略を立案し実行する必要が生じてきています。

 

マーケティング戦略を立案するために、マーケティングのプロセス(図参照)を理解する必要があります。本号にてプロセスの概略を、次号以降でプロセスの内容について詳細を説明します。

 

図 マーケティング・プロセス 割愛

 

● 調査

マーケティング戦略を練るために、まず調査から始めます。調査は自院の内部と外部の状況を把握します。まず自院の内部ですが、「灯台下暗し」という言葉がある通り、院内について案外わかっていないことがあるのではないでしょうか。経営用語では内部環境分析と言いますが、自院の財務状況や、顧客の状況、例えば診療圏や年齢層、入院に至るまでのルートなど、把握できていないケースがよくあります。特に現場とのコミュニケーションを充分にとっていない院長の場合は、自らの視座・視野・視点の範囲で「わかったつもりになっている」と認識しておいた方が良いでしょう。

外部環境分析では、医療制度、特に国が定める診療報酬制度については2年に一度の改定に向けて情報収集されると思いますが、そのほかに医療介護総合確保促進法に基づく都道府県の計画、地域医療介護総合確保基金なども知っていれば各種補助金を獲得できる可能性があります。次に技術動向、新しい治療法について、自分の専門領域についてはある程度はご存知でしょう。ただ専門外の領域については、雇用している勤務医の関心度合によって、自院への導入タイミングは左右され、他院よりも遅れてしまうことはあるでしょう。他院の動向を把握しておくことは言うまでもなく大切です。

 

● STP(セグメンテーション→ターゲッティング→ポジショニング)

事業を行う場合、通常すべての顧客を対象とすることは現実的ではありません。医療機関の場合は、年齢層や性別、罹患している疾病、軽症者から重症者まで、様々な患者がいます。そのすべてにサービスを提供するのは難しいでしょう。経営資源には限度があるため、意識的に市場、あるいは顧客を絞り込み、集中的に経営資源を投入することによって効果を上げ、他の医療機関との違いをアピールすることが必要です。

市場をいくつかの顧客グループごとに細分化することを市場の細分化(セグメンテーション)といい、細分化された市場あるいは顧客グループをセグメントといいます。次に細分化したセグメントを評価し、どのセグメントをターゲットとすべきかどうかを決定します。例えば産婦人科で産科は止めて婦人科の疾病に限定したり、整形外科で一般整形は対応せず特定部位に特化したりするなどです。

 

● ポジショニング

ポジショニングとはターゲットとするセグメントにおいて、他医療機関との違いを明らかにするために、想定する顧客からみた自院や提供しているサービスの位置づけを明確化することをいいます。

わかりやすい例をあげれば、高齢者をターゲットとするセグメントにおいて、認知症の領域に関して専門特化している医療機関と、専門性は高くはなくてもある程度は総合的に診ることができて医療から介護まで含めてサービス提供している医療機関は、患者から見て違いが明確で医療機関同士で競合はしないでしょう。重要なのは顧客から見て違いがわかるかどうかであり、患者から見ての場合や、紹介元の医療機関や介護事業者から見ての場合など、顧客ごとに意識をする必要があります。

 

● マーケティング・ミックスの策定

ターゲット市場を選択しポジショニングにより想定された顧客層に対して、さまざまなマーケティング活動を組み合わせ展開するのがマーケティング・ミックスです。4Pや4Cの考え方を以前の号で紹介していますが、復習のために簡単に説明しますと、4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)です。4Cとは4Pを「より顧客の視点」で定義しなおした考え方で対応する順に、顧客にとっての価値(Customer Value)、顧客にとっての負担(Cost)、顧客の利便性(Convenience)、顧客とのコミュニケーション(Communication)になります。

ターゲット層の患者が自院に求めている価値は何なのか、例えば高齢者をターゲット象にした場合に提供するサービスは「まあまあ医療」なのか「とことん医療」なのか、「まあまあ医療」を提供する場合は医療保険のサービスよりも介護保険サービスを充実させたほうがよいのではないか、利便性をよくするために徹底的にバリアフリーにしたり顧客情報は医療・介護サービスで共有化したり、コミュニケーションをとるために地域の老人会や社会福祉協議会、高齢者住宅施設に働きかけたりするなど、マーケティング活動内容は「とことん医療」とは全く異なることがわかります。

 

● マーケティング施策の実行・管理

最後に策定したマーケティング戦略の実行です。マーケティング活動は、組織全体が理解し各部門が協力して実施する必要があります。医療機関の場合は職種ごとに縦割りになりがちであるため、実行の体制を整えておくことが大切です。戦略を立案しておしまいにならないようにPDCAサイクルを意識し、評価指標を設定し、指標を定期的にチェック、必要に応じて計画の見直しをするなど、検証とフィードバックの仕組みを初めから組み込んでおくことが肝要です。