IMC株式会社  池田医業経営研究所

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集患のための口コミを起こす工夫

ふだん医療機関にかかる際に、ほとんどの人は事前に情報を入手しており、情報の入手先は、外来、入院ともに「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く、外来で 70.6%、入院で 71.9%にも上っています。(厚生労働省「平成29年受療行動調査(概数)の概況」)

集患のために口コミが大切であることは間違いなさそうですが、ではどうすれば口コミを起こし拡げることができるのでしょうか? 口コミは英語では、WOM(Word of Mouth)になります。アメリカには2004年に設立されたWOMマーケティング協会*などがあり、口コミの研究が日本よりも進んでいます。

WOMマーケティング協会201811日にANAAssociation of National Advertisers)に買収されました。日本においてはWOMJ (The Word of Mouth Japan Marketing Association)2009年に発足し活動中です。

 

WOMマーケティングとは何か? シンプルに言えば、それは話題にする理由を人に与えること、話題にしやすくすることです。最近はSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)ユーザーの広がりで、自ら話題を求める人たちが増えています。広報の担当者は、その期待にどのようにしたら応えられるかを常に意識する必要があります。人が話題にするときは、表のように3つの理由があります。具体的には、「売り手が提供する理由」、「個人的な理由」、「仲間意識から来る理由」の3つです。

 

表 人が話題にするときの3つの理由

売り手が提供する理由

個人的な理由

仲間意識から来る理由

サービス:受けたサービスのことを話したい

自分の気持ち:良い気分を味わいたい

仲間意識:誰かとつながっていたい

l好感・反感を抱いている

l話題になる何かが提供されている

l話題にしやすい環境が整っている

l賢いと言われたい

l自分は特別と思いたい

l誰かの役に立ちたい

l自分を表現したい

lコミュニティに属している

lファンクラブに属している

出典:『WOMマーケティング入門』海と月社 筆者が一部修正

 

まず「売り手が提供する理由」ですが、誰もが日常生活の中で商品を購入したり、サービスを受けたりする機会があります。わざわざ話題にするのは、受けたサービスに対して特別な好感・反感などを抱くようなケースです。私事ですが、親族が急性期の某公的病院に入院し手術を受け、無事退院をしました。退院後に加入していた生命保険会社に対して入院給付金・手術給付金を請求するために、病院に証明書の作成を依頼しました。病院からは、「最低2週間は必要なため2週間後に電話をして出来上がっているかどうか確認の上で取りに来て下さい。」と言われ、説明に従い電話をして取りに行ったのですが、その場で証明内容を確認すると手術の記載漏れが見つかりました。証明書の費用が1万円と高額であり、医事課が診療報酬請求書を確認すれば漏れは防げたはずですので、あまりのいい加減さに多少の反感を抱きましたが、時間の余裕がなかったことから我慢しました。ただ事務窓口の担当者から「最低2週間は必要なため2週間後に電話をして出来上がっているかどうか確認の上で取りに来て下さい。」と言われた時は、その対応の酷さにさすがに呆れました。「できるだけ早急に再作成し、出来上がったら自宅に郵送するように」と強く要求をしましたら、「前例がないので上司と相談します」との回答でした。結局、5分後に私の要求を了承してくれましたが、私の心に残ったものは「この病院はダメ、二度と利用しない」という強い反感でした。親族は急性期後の療養で民間病院に転院をしていたため、同様の手続きをしました。その病院は出来上がり次第に私に電話を入れてくれ、郵送対応までしてくれたため、好感度は高まりました。両院の対応のギャップがあまりに大きかったため、私はその話を身近な知り合いたちに積極的にしています。

「話題になる何かが提供されている」場合は、口コミが発生する可能性は高まります。例えば”「国内△番目の○○導入」「県内初の○○導入」「△△地域(構想区域等)で初の○○導入」などのニュースを目にします。ここ数年では○○が、手術支援ロボットのダビンチ、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)、CYBERDYNEのロボットスーツ、待合室にPepper等々の記事がありましたが、パブリシティやその後の口コミを強く意識して、あえてアーリーアダプター(早期採用者)になっている医療機関はあるでしょう。2017年のユーキャン新語・流行語の年間大賞に選ばれた「インスタ映え」という言葉を耳にされたことはあると思います。例えば病院でも、インスタ映えするように、産科の病院食らしくない料理、おいしそうな糖尿病食などを投稿しているところはあります。

また話題にしやすい環境を整えているかどうかも重要な要素です。最近の企業の展示会では、原則会場内は撮影禁止にする一方で、一部エリアや商品の撮影を推奨しているようなことがあります。美術展などでも、複数の作品に限定して撮影可にしていることがあります。講演会に参加すると講師から、投影するプレゼンテーション内容を「どんどん撮影してもらって結構。(そしてSNSで拡散して下さい)」と依頼されることもあります。撮影してSNSで投稿し拡散するのは著作権や肖像権等のコンプライアンス違反という参加者の常識を取り払うための環境づくりは、意識して行う必要はあるでしょう。

 

次に個人的な理由で人が話題にするのは、「他人から賢いと言われたい」、「自分は特別と思いたい」、「誰かの役に立ちたい」などのような場合です。例えばファミリーレストランや喫茶店にいると、病気や医療機関の受診体験の話をしている隣のテーブルの人たちから、「(同級生に○○大学病院の優秀な)良い先生を知っているので、何かあったら紹介してあげるよ。」というような話が聞こえてきたりします。

私は『Choosing Wisely Japan』という、医療者と患者が対話を通じて科学的な裏づけ(エビデンス)があり、患者にとって真に必要でかつ副作用の少ない医療(検査、治療、処置)の 賢明な選択 をめざす国際的なキャンペーン活動をする日本の団体の会員になっています。例えば「風邪に抗菌薬は効かないので、処方するような医療機関にはかからないほうが良い」というような話は、「誰かの役に立ちたい」ので積極的にするようにしています。

最後に「仲間意識から来る理由」で人が話題にするのは、共通の関心をもっている誰かとつながっていたいという気持ちからです。医療関係者の間では、医師会や学会など多くのメーリングリストがあります。SNSの発達で新たな繋がりができやすくなり、グループのメンバー数が多いと拡散力も非常に大きくなります。

広報をルーティンワーク化している医療機関は、今後は受け手の側の視点で、話題にする理由を与えること、話題にしやすくすることを、意識して取り組まれると良いでしょう。