IMC株式会社  池田医業経営研究所

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コンテンツマーケティング

 

94日に公表された厚生労働省の「平成29年受療行動調査(概数)の概況」によると、ふだん医療機関にかかる時に「情報を入手している」人の割合は、外来が 77.7%、入院が 82.6%となっています。「情報を入手している」人について、情報の入手先別にみると、外来、入院ともに「家族・知人・友人の口コミ」が最も高く、外来で 70.6%、入院で 71.9%、次いで、外来では「医療機関が発信するインターネットの情報」が 21.1%、入院では「医療機関の相談窓口」が 23.9%となっています。

「医療機関が発信するインターネットの情報」は、今回調査では外来21.1%、入院15.8%ですが、平成23年実施の同調査では外来13.1%、入院9.8%であり、1.5倍超になっていることがわかります。また「SNS、電子掲示板、ブログの情報含む医療機関、行政機関以外が発信するインターネットの情報」を情報入手先にしている人は、外来12.0%、入院9.8%と1割前後います。最も割合の高い「家族・知人・友人の口コミ」の大元の情報源の一部にはインターネット情報も含まれている可能性もあるため、集患にあたりインターネットの活用は必要不可欠になってきています。

  

マーケティング4.0の時代になり、競争環境が厳しい地域の医療機関の場合、かかりつけの患者が増加し、良い評判の口コミが自然に拡がり、新たな患者が獲得できるような好循環になるまでは、ホームページ、ブログ、フェイスブックなどのオウンドメディア(自社が所有する(Owned)メディア)を地道に充実させることが、地域住民に選ばれるための重要な手段であることは間違いなさそうです。

 

インターネットを使用している人の大半は、探索する際にGoogleYahoo!などの検索エンジンを利用しています。マーケティング調査会社によると、20182月の日本における検索エンジンのシェアは、Googleが圧倒的に大きく、パソコンなどでは91.23%、スマートフォンなどのモバイルでは99.09%になっています。ちなみに日本で最も人気のあるポータルサイトの一つであるYahoo! JAPANは、検索エンジンとしてGoogleを使用しています。

 Google検索された際に上位に表示されるように、ホームページ運営者はSEO対策(=検索エンジン最適化(Search Engine Optimization))で凌ぎを削っています。競争が行き過ぎ、DeNAが運営していた医療情報サイト「WELQ」が、検索結果の上位表示を実現するために不確かな医療情報を大量生産していて問題になったことは、まだ記憶に新しいと思います。大量の掲載記事には、「肩こりの原因、幽霊のことも?」というような劣悪なものもあり、マスコミに大きく取り上げられ、201611月にサイト閉鎖に追い込まれました。

WELQ」ほどではないにしても根拠のない医療情報を掲載しているホームページが数多く存在していたことから、Googleは対策を講じました。201712月に「医療や健康に関連する検索結果の改善について」というブログ記事で、日本語検索におけるページの評価方法を変更したことを公表しました。医療・健康に関連する検索のおよそ 60% に影響するような大きな変更で、医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなりました。ブログ記事の中で、過去の検索の分析結果として、一般人は医療の専門用語ではなく、日常会話で使うような平易な言葉で情報を探している場合が大半であること、日本のホームページには信頼できる医療・健康に関するコンテンツが多数存在しているにも関わらず、一般人向けの情報は比較的限られていることから、ホームページ運営者に平易な言葉での情報提供を求めています。

また医療・健康分野の情報・サービスの信頼性確保に取り組んでいる特定非営利活動法人日本インターネット医療協議会は、患者、家族、市民が、医療や健康に関する情報を、どのように利用すべきかのポイントを、「医療情報の利用の手引き」(表)というかたちでまとめています。ホームページ運営者サイドからみて、客観的な裏付けがある科学的な情報を提供する、常に新しい情報を提供するなど、ホームページ作りに参考にすべきことが書かれています。

 

 

 表 インターネット上の医療情報の利用の手引き(抜粋)

 

<どんな情報を利用するか・・・質の高い情報を利用する>

 1 情報提供の主体が明確なサイトの情報を利用する

 2 営利性のない情報を利用する

 3 客観的な裏付けがある科学的な情報を利用する

 4 公共の医療機関、公的研究機関により提供される医療情報を主に利用する

 5 常に新しい情報を利用する

 6 複数の情報源を比較検討する

<どう利用するか・・・情報利用は自己責任で>

 7 情報の利用は自己責任が原則

 8 疑問があれば、専門家のアドバイスを求める

<情報利用の結果は・・・自ら検証する気持ちで、よりよい情報共有を>

 9 情報利用の結果を冷静に評価する

 10 トラブルに遭った時は、専門家に相談する

 

 

 

 スマートフォンなどのデジタルメディアの普及によって、誰もが自分の好きなときに、好きな情報を、好きなだけ入手し、発信・交換まで可能になったため、マーケティング活動を行う際、消費者がいつでも手軽に情報を入手できるような場としてオウンドメディアやコンテンツを用意しておくことが望ましい時代になりました。「コンテンツマーケティングの生みの親」とされるジョー・ピュリッジの著作『エピック・コンテンツマーケティング 顧客を呼び込む最強コンテンツの教科書』によれば、コンテンツマーケティングとは、「有益で説得力のあるコンテンツを制作・配信することによって、ターゲット・オーディエンスを引き寄せ、獲得し、エンゲージメントをつくり出すためのマーケティングおよびビジネス手法を指す。その目的は、収益につながる顧客の行動の促進である」と定義しています。

言い換えれば、お客さんに売りたいもの(サービス)の情報やお客さんにとって価値のある情報を、客観的な裏付けのある根拠に基づき、お客さんにわかりやすい言葉、表現で、こまめに説明し、お客さんを引き寄せ、お客さんと良好な関係、信頼関係をつくることで、繰り返し購入してもらったり、他のお客さんに薦めてもらったりできるようになるということです。

コンテンツマーケティングは、地道にコンテンツを作り込む作業を長期間継続し、徐々に成果が出てくるものです。地域に根差したサービスを永年に亘って提供する医療機関には適した手法だと思いますし、継続的に取り組んでいる医療機関も少ないことから、他院との差別化につながるのではないでしょうか。