IMC株式会社  池田医業経営研究所

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医療を変える!-国民の受療機会格差縮小- 

約1年間取り組んでいました東京大学公共政策大学院 医療政策教育・研究ユニット 医療政策実践コミュニティー(HPAC) 「受療機会の格差を縮小するプロジェクトチーム」における成果報告(提言書要旨)です。ご参考まで。

 

各政党の厚生労働部会及び厚生労働大臣並びに一体改革担当相、

内閣府特命担当大臣(規制改革担当)宛(想定)

 

東京大学公共政策大学院 医療政策教育・研究ユニット

医療政策実践コミュニティー

                       「受療機会の格差を縮小するプロジェクトチーム」

 

国民の受療機会(アクセス)の格差を縮小するための要望書

 

私たちは、東京大学公共政策大学院における、医療政策に関心を有する医療提供者、患者支援者、政策立案者、メディアに属する者から構成される研究会であり、特に国民の生命・健康の維持に密接に関わる問題である、国民の受療機会(アクセス)の格差を縮小することを目的に活動しております。

全ての国民の生命は平等であり、救急医療などの医療へのアクセスについて、地域によって大きな格差はあってはなりません。さらに、公的医療保険制度のもと、被保険者である国民は、保険診療を受ける機会について大きな格差はあってはなりません。しかしながら、現状は、医師の偏在により地域ごとに受療機会の格差が存在します。

この度、国会議員へのアンケート調査等を踏まえ、以下のとおり要望いたしますので、何卒ご協力を賜りますようお願いいたします。

 

要 望 事 項

 

.都道府県の作成する医療計画において、更なる医師確保対策として、「医師需給計画」を策定することとし、二次医療圏で5事業(※)を実施するために必要な医師数の目安を設定する(※)5事業:救急医療,災害医療,へき地医療,周産期医療,小児医療

 

2.「医師需給計画」に基づき、医師過剰地域から医師不足地域への医師の移動を円滑に促進するために、補助金・診療報酬等によるインセンティブに加えて、医師の質やキャリア形成に配慮しつつ、以下の規制的手法により対応する。

医師過剰地域において参入規制を設けること(保険医指定の上限設定、臨床研修・専門医研修の定員の削減等)

医師不足地域に必要な医師が確実に派遣されること(地域枠等を対象とした都道府県の医師派遣機能の強化(地域医療支援センターの医療法上の明確化、研修・専門医研修の定員の増加等)

 

3.医師の派遣余力のある病院を作るため、各地域で急性期機能を有する公立・公的病院を中心に集約化を促進する。各地域での統合を進めやすくするため、まず、厚生労働省所管で病院運営をしている3つの独立行政法人から病院運営事業のみ切り離し1法人に集約する。

 

4.1から3に並行し、より短期的な対策として情報通信技術の遠隔医療への活用やドクターヘリ等の搬送手段の導入によるアクセス改善を促進する。


【要望の背景】

我が国の医療提供体制は、自由開業制を基本に医療機関の整備が全国で進められました。その後、昭和60年の医療法改正において、地域の体系的な医療提供体制の整備促進をする目的で医療計画が導入されましたが、医療費適正化のための病床規制に重きがおかれていたため、病床不足地域の整備対策は不充分で、医師の配置の均てん化までは考慮されていませんでした。

 

また医師数については、将来過剰になるとの予測に基づき昭和60年から医学部入学定員が削減されました。各大学の定員削減幅は、各地域の医療需給についてほとんど考慮されていなかったため[i]、人口10万人あたりの医師数は日本国内においては西高東低、同一都道府県内においては県庁所在地及び大学病院所在地が極端に多いという状態が放置されてきました。その後、平成16年4月の国立大学の独立行政法人化や、新医師臨床研修制度導入などの複合的な要因で、大学医局による医師派遣機能が脆弱化したことにより、医師の偏在の問題は一気に顕在化しました。

 

地域偏在の要因としては、大都市および各都道府県の県庁所在地に大学病院や公的病院が集中していること、医師が働き場所として、医療機関の立地場所がへき地でないことを希望していることがあげられます[ii]医師の地域偏在を解消するために、医師の絶対数を増加させる対策として医学部の本格的な入学定員増が平成214月から進められており、医師不足地域に医師を派遣する対策として都道府県に地域医療対策協議会が設置されております。

 

ただし定員増加時の入学生が研修医を修了するのは平成29年以降、地域医療対策協議会の成果は医師不足地域に配置する医師確保難のため限定的であり、受療機会の格差は長期間放置されたままになります。医師の地域偏在が改善されれば、地域住民は5疾病5事業の基本的な診療は、二次医療圏内で受けることができるようになります。通院に関わる時間や費用の負担が少なくなり、救命率が向上します。医療は国民の命に係わる生活インフラであり、短中期での解決を図るべく超党派で要望事項に取り組んでいただくことをお願いいたします。


[i] 文部科学省 (2009)  今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会 配付資料

[ii] 佐野洋史、石橋洋次郎(2008) 「医師の就業場所の選択要因に関する研究」

 

詳細につきましては、東京大学公共政策大学院 医療政策教育・研究ユニット 医療政策実践コミュニティー(HPAC) 「受療機会の格差を縮小するプロジェクトチーム」のホームページを是非ご覧ください。