IMC株式会社  池田医業経営研究所

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日本サービス大賞の受賞機関から学ぶ

 日本の優れたサービスを評価する「日本サービス大賞」。日本経済の高度成長時代は、製造業が基幹産業として国内雇用や貿易黒字で支えてきましたが、今やGDPと雇用の7割超をサービス産業が占めています。サービス化の流れは業界を超えて進んでおり、多岐にわたる業種の多種多様なサービスを共通の尺度で評価し、優れたサービスを表彰する制度として、2016年から隔年で優れた企業や団体が表彰を受けています。
 公益財団法人日本生産性本部が事務局を務めるサービス産業生産性協議会が運営しており、表彰対象は「優れたサービスをつくりとどけるしくみ」、具体的には、優れたサービスを生み出し、日々、改善していく“しくみ” 、“きらり” と光るサービスをつくりとどけるしくみを創り上げている企業や団体です。

医療法人では、2016年の第1回の表彰において、石川県七尾市の社会医療法人財団 董仙会 恵寿総合病院が“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービスで総務大臣賞を、愛媛県松山市の医療法人ゆうの森が在宅医療により地域を再生するへき地医療サービスで地方創生大臣賞を、埼玉県川越市の医療法人財団献心会 川越胃腸病院が人間尊重の医療サービスで優秀賞を受賞しています。
 『医療はサービス業』という表現には、違和感を覚える方はいらっしゃるでしょう。医療法の考え方では医療はあくまで非営利であり、「サービス業」という呼び名は相応しくないと感じるからかもしれません。ただ日本の公的統計における産業分類を定めた日本標準産業分類によれば、医療業は医師又は歯科医師などが患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所及びこれに直接関連するサービスを提供する事業所であり、病院や診療所はここに分類されています。医療機関は「医療」という専門サービスをお客様に提供する一種のサービス業という見方です。表彰された医療機関の優れた取り組みは基より、他のサービス業の取り組みも部分的に取り入れると良いでしょう。

医療機関で実施されるサービス向上の取り組みは、ご意見箱の設置による患者や家族等からの情報収集や患者満足度調査など、どちらかと言えば顧客の不満やクレームを集めて、その解消を図ることに終始しまいがちです。もちろんクレームが頻発している状況を放置しておくわけにはいきませんので、問題を解決する努力は欠かせません。優れたサービスの第一歩は、問題を無くす努力から始まるといえますが、問題の少ないサービスというだけでは、 顧客に喜んでいただくことはできません。問題が少ないことは、顧客にとっては当たり前のことです。顧客に選ばれ続けるためには、顧客からの評価をさらに高める必要があります。その考え方について生産性出版発行の「日本の優れたサービス」に解説されていますので、ポイントを紹介します。

優れたサービスを提供する際には、図表1のように6つの壁が障害になります。
 第一に顧客不在の壁です。「サービスをすれば、必ずお客さんに喜んでもらえるはずだ。」と思い込んで、顧客にサービスを押し付けてしまうことはあるでしょう。良かれと思ってやったことが、余計なお世話、迷惑になってしまいます。この壁を乗り越える解決策は、顧客の事前期待を中心に据えることです。顧客満足とは、顧客がサービスを受ける前に抱いている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られます。たとえ良いサービスをしても、事前期待よりも実績評価が小さいとがっかりされて、ネガティブな口コミをされたりする可能性があるわけです。「ホスピタリティ」の高さで有名なホテルのザ・リッツ・カールトンのインターネットの評判をみると、事前期待が高いだけに宿泊者からは、かなり辛辣な意見が出されています。顧客の高い事前期待を常に上回るサービスを続けるのは至難の業ですが、その壁を何度も乗り越えることで顧客からの強い信頼、ブランド力につながっているのでしょう。
 逆に3時間待ちの3分診療と揶揄されている大学病院などでは、30分待ちで済めば患者は満足してくれるのかもしれません。医療機関のサービスに対する事前期待は概して高くはないため、患者満足を向上させるのはそれほど難しくないのかもしれませんが、それに甘えていては改善が進まず、いずれ患者から見放されてしまいます。
 第二に情熱の壁です。サービス業を営んでいると様々な顧客に出会います。中にはクレーマーなどの理不尽な客もいるでしょう。そのような客への対応も含めてサービスの質を高く維持し続けるためには、従業員個々人に情熱が必要ですが、全員が情熱を持ち続けるのはとても難しいのではないでしょうか。この壁を乗り越える解決策は、従業員が信念をもち、それを原動力にすることです。表彰を受けた3法人のそれぞれの信念は図表2のように、“医療と介護の境目をなくす”、“「最期まで住み続けられるまち」の実現”、“医療は究極のサービス業”です。強い使命感に満ちており、職員から共感を得られる内容だと思います。
 そのほかに建前の壁に対しては進むべき道を示すシナリオを描くこと、闇雲の壁に対してはサービスプロセスを組み立てること、実行の壁に対しては共創型人材を育てること、継続の壁に対しては価値ある成果を実感することが、壁を乗り越える解決策です。紙面の関係で詳細の説明は割愛しましたが、日本サービス大賞のホームページ(
https://service-award.jp/)に受賞した法人の事例の詳細が掲載されていますので、ご覧になることをお薦めします。


 

図表1 顧客に選ばれ続けるサービスを阻む6つの壁と乗り越えるための考え方

 下図参照


図表2 受賞医療法人の6つの壁を乗り越えるポイントの内容

 

社会医療法人財団董仙会

恵寿総合病院

医療法人ゆうの森

医療法人財団献心会

川越胃腸病院

事前期待

医療・介護にまたがる利用の負担を減らしたい

この地域、この家で最期まで暮らしたい

患者の立場にたった心温かな医療サービス

信念

医療と介護の境目をなくす

「最期まで住み続けられるまち」の実現

医療は究極のサービス業

サービスシナリオ

ワンストップ・ワンファクトの地域包括ヘルスケア

持続可能で誰も犠牲にならないへき地医療

ESCSSSの好循環スパイラル

サービスプロセス

統合電子カルテとサービスセンターの連携

診療所と在宅医療の融合

患者と病院の間に立ち、患者の声をサービスに活かす

人材育成

サービスセンターを司令塔に関係者をつなぐ

都市部の医師の当番制モデル

「全員経営」の職員の自律意識

成果実感

サービス利用率向上

本来の「医師のありかた」を再認識できる場

人に紹介したい病院

 

出典:『日本の優れたサービス』松井拓己・樋口陽平著(2017年 生産性出版)