IMC株式会社  池田医業経営研究所

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サブスクリプション方式の診療での応用

最近「サブスクリプション」という耳慣れない言葉を聞く機会が増えています。「サブスクリプション」(英語: subscription)の意味は、雑誌の「予約購読」や「定期購読」、「会費」といった意味があり、そこから転じて「有限期間の使用許可」「定額制」の意味で使用されているようです。サブスクリプション方式はビジネスモデルの一種で、定額制サービスとしては、“2時間飲み放題〇千円”や月極めの新聞購読などがあります。また小学生の頃、学研グループの『○年の科学』、『○年の学習』を定期購読されていた方は多いのではないでしょうか? 

 

普段から自然に利用しているサービスですがビジネスモデルとして捉えると、1回ごとの売り切りによる商品やサービスの提供ではなく、顧客と長期に継続した関係を築くことで、顧客ニーズに対応したサービスを柔軟に提供しLTV(lifetime value:顧客生涯価値)の最大化を目指す方法になります。LTVとは、1人1人の顧客がある商品や企業に対して付き合っている間に支払う金額合計から、その顧客を獲得・維持するための費用合計を差し引いた「累積利益額」です。個々の顧客が売り手と取引している間にどれだけの価値(利益)を売り手にもたらしてくれるかを測定する指標です。

 

当時の学研グループの場合ですと、小学1年生の次は2年生、・・・、小学生卒業後には中学生向けの販売、科学や学習以外に興味が拡がれば他の種類の雑誌の販売、弟・妹がいれば同様に販売と、追加の営業コストをほとんどかけずに売上・利益を累積することができていたのでしょう。

 

サブスクリプション方式は、利用する見込客にサービスを案内して動機づけをし、新規利用客を獲得します。顧客から見て充分に価値のあるサービスを提供し、併せて価格競争には陥らないようなプライシングにします。

顧客は一定期間利用することで、利用を止めるのが惜しくなり(絆が強まる)、一定割合で契約を継続します。サービスを気に入った一部の顧客は他人に推奨までしてくれます。また利用者が増加しサービス内容が世の中に広まることで、よくわからないがとりあえずサービスの申込をするというような冷やかし客は徐々に減っていきます。

 

 

サブスクリプション方式では、顧客の要望に合う内容・価格のプランが用意され、使用した分、使用した期間に応じて課金され商品・サービスが提供されます。代表的な例として、今や誰もが知っていると言っても過言ではないアマゾンがあります。昨年4月の株主宛て書簡にて、有料のプライム会員が世界で1億人を突破したと明らかにしました。会員は特定の映画・TV番組の見放題、100万曲以上の楽曲の聴き放題、無料のKindle本の読み放題、配送料無料で速達などが利用できます。多くの会員を占めるアメリカやヨーロッパでは年会費が約1万円ですので、会費収入だけで約1兆円を毎年確実に稼いでいます。

 

売り手がサブスクリプション方式を採用するメリットを3つ挙げます。

第一に、顧客を固定客化、ファンにすることによる安定収益の確保です。固定客数の増加、あるいは適正数の維持ができていれば、最低限の売上・利益の見込が立ちます。

第二に、新規顧客の開拓を比較的容易に行うことができます。月単位のお試しで利用すれば金銭的な負担が少なく、気に入らない場合は止めれば良いので試しやすくなります。例えば、電子版の販売に熱心に取り組んでいる新聞社は、申込月は無料扱いにしてお試しを推進しています。電子版の場合、紙代や印刷代、配達コストが不要のため、追加コストをかけずにお試しをしてもらうことができます。

第三に、契約後の顧客との関係を維持しやすいことです。利用中の顧客と適切なタイミングでコミュニケーションをとり、得られた情報を分析してサービスに反映して提供することが可能になります。個々の顧客の利用状況に合わせたプランの変更やキャンペーンの提案をすることで、お得感を定期的に打ち出し解約を予防したり、熱心な顧客にはグレードアッププランを提案したりすることで、LTVの維持・向上を図れます。また顧客満足度や紹介意向、新サービスの希望などを調査することも可能です。

 

医療機関が提供するサービスの大部分は保険診療のため診療報酬で価格が決められていますが、自由診療部分は個々の医療機関が価格設定をできます。健康診断・人間ドックや会員制の健康サポートサービス、分娩費用や不妊治療、美容整形治療などです。

 

歯科の分野では、予防中心の医療システムであるメディカルトリートメントモデルに積極的に取り組む診療所が徐々に増えてきているようです。メディカルトリートメントモデルとは、直訳すると「医科的治療計画」ですが、文字どおり医科領域と同様に診査・診断に基づきリスク評価を行い、治療法を提示し、治療結果のモニタリングを行い、その再発を予防、あるいは健康状態を維持するために個別のメインテナンス策を講ずるというものです。リスクアセスメントを多方面から行うことにより、患者個々の健康状態あるいは疾病状態(高血圧症、糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞、口腔がん)を客観的に理解して、それに応じた口腔衛生指導やメインテナンス管理を行います。このリスクアセスメントツール自体が患者教育、また動機付けのツールとして非常に有用で、患者の行動変容に直結するものとなっています。

 

ただこうした患者の健康を守るためのメインテナンス費用は保険適用ではないため、歯科医療機関は自由診療で実施しています。ある歯科診療所は、拡大鏡や位相差顕微鏡を導入した緻密な検査、プラーク(細菌の集合体)の除去、患者の虫歯リスクに合わせた高濃度のフッ素塗布やフッ素洗口剤の指導等のセルフケア指導などの定期的なメインテナンスを、サブスクリプション方式で行っています。更に熱心な歯科医療機関は、口腔がん検診、血圧測定、体脂肪測定、投薬情報の確認、食事指導、専門医療機関のご紹介(医科歯科医療連携)などサービス範囲の拡大を検討しています。

 

このように一部の歯科医療機関はコンビニエンスストアよりも多く競争が厳しいと言われている中で、保険診療に限定せずに一人ひとりの顧客の潜在ニーズに応える努力をしています。医師数増加、患者数減少が見込まれる医科医療機関についても、遠くない将来、他の医療機関との差別化を図るための取組を検討する必要性が出てくるのではないでしょうか。