IMC株式会社  池田医業経営研究所

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医療に必要なマーケティングの考え方2 4C

 マーケティングの本をお読みになった方は、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という言葉をご覧になられたことはあるのではないでしょうか。「プロダクトアウト」とは技術力や製造能力といった売り手側の発想で商品開発・生産・販売といった活動を行うこと、「マーケットイン」とは買い手の立場や意向を考えて同様の活動を行うことを指します。

 例えば日本のガラケーことガラパゴス携帯電話は、最先端の独自技術を多く採用し、その性能や機能は世界最高水準でした。機能があり過ぎて、ほとんどの方は充分に使いこなせていなかったのではないでしょうか。携帯しやすくて電話さえできれば良いと考える海外の人には、不要な機能が付いた値段が高い日本の携帯電話はほとんど売れませんでした。プロダクトアウト志向が強過ぎ、マーケットに受け入れられなかったのでしょう。

 

前号では、マーケティングには4つの要素があり、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字を取って4Pと呼ばれていることについて説明しましたが、「より顧客の視点」で考える必要性があることから、表のように4Pというマーケティングのフレームワークを4Cに再定義する流れが出てきました。

 

表 4Pと4C

P

 

C

製品(Product

顧客にとっての価値(Customer Value

価格(Price

顧客にとっての負担(Cost

流通(Place

顧客の利便性(Convenience

販促(Promotion

顧客とのコミュニケーション(Communication

 

顧客にとっての価値(Customer Value):顧客は商品価格に基づいてお金を払っているのですが、実際にはその価値に対してお金を払っています。携帯電話には、「外出先でも電話で連絡ができる」という基本価値があり、「メールができる」「写真撮影ができる」「インターネットができる」などの付加価値がありますが、顧客毎にその評価、払ってもよいと考える金額が異なります。

顧客にとっての負担(Cost):商品・サービスを購入するにはお金が必要ですが、購入にかかる時間・手間なども顧客にとっては「コスト」と考えられます。ヨドバシカメラなどのインターネット通販は、顧客が買いにいくための時間・重い荷物を持ち帰る手間というコストを自社で負担することで、売上を伸ばしています。

顧客の利便性(Convenience):「どれだけ手軽に購入できるか?」も顧客にとって大切です。買いたい時に買えないと、購買そのものをあきらめてしまう場合もあり、機会損失にも繋がります。インターネット通販では限られたスペースしかない個別の実際の店舗よりも在庫を多くもてますし、送料無料や返品可能のサービス付きの場合、顧客は手軽に購入することができます。

顧客とのコミュニケーション(Communication):自社の商品やサービスを、顧客にどうやって知ってもらうか、伝えることがコミュニケーションです。広告のような形で一方的に伝える方法もあれば、説明会、対話会などで双方向の形式をとる方法もあります。

 

サービス業の場合は、4Pよりも4Cで考えたほうがわかりやすいように感じます。

北海道の旭川市が運営する旭山動物園について、耳にされたことはないでしょうか? 20051115日のNHK「プロジェクトX〜挑戦者たち〜・旭山動物園〜ペンギン翔ぶ〜」で取り上げられました。1996年に約26万人まで入園者数は落ち込んだのですが、存続の危機を打開すべく1997年より動物の自然な生態が見られる行動展示を実現する施設づくりに着手しました。入園者は増加し、年間入園者数はピークの2007年度には307万人を記録、その後はブームの沈静化に伴い減少に転じましたが、2011年度頃からは160万人台の入園者数となっており、地方都市でありながら、大都市圏の恩賜上野動物園、名古屋市東山動植物園に次ぐ日本第3位の入園者数を誇っています。

なぜ復活できたのか? マーケティングの4Cで整理してみます。

まず顧客にとっての価値(Customer Value)ですが、行動展示という形態で動物本来の凄さを身近に見れるようにしたことで、来園者の感動を生み出しました。またジャイアントパンダやコアラなどの集客力のあるスター動物はいないため、一頭一頭を大切にして展示に工夫を凝らすことで各々の動物のファンをつくり、ファン層を拡げました。

次に顧客にとっての負担(Cost)では、1997年に動物園としては日本で2番目に年間パスポートを発行しました。当時の価格設定は、当日入場券420円のところ年間パスポートが500円ですから、売上を増加させるというよりは、動物園離れをしていた市民を呼び戻す、リピーターになってもらうことに務めたのだと想像します。

第三に顧客の利便性(Convenience)ですが、動物園は旭川市郊外に立地しており、市民にとってあまり便利な場所にはありませんでした。ただ発想を変え、北海道外からみると旭川空港からは近く、富良野等の全国的に有名な観光資源が周辺にあることから、動物園自体がある程度有名になることで観光ルートに含まれるようになり、道外の観光客を取り込むことができるようになりました。

最後に顧客とのコミュニケーション(Communication)、お金が無くて始めた「手書きパネル」や「ワンポイントガイド」などが、親しみがありわかりやすいため、子供連れなどの市民のリピーターが増加しました。市民による自主的な会員組織(旭山動物園くらぶ)ができ、地元のコアなファンたちによる口コミ、そこに全国的にはTVの発信が加わり、どんどん拡がっていきました。

最初からマーケティング戦略があったわけではなく、4Cの基本をできることから行ったことが好循環のきっかけになり、最終的に大成功につながったのだと想像します。

医療機関で身近なお悩みとして、診療圏人口の減少、患者さんの高齢化などがあるのではないでしょうか。高齢の患者さんに来院してもらうためにどうすれば良いか、4Cで考えてみられることをお勧めします。

 

表 高齢の患者さんのニーズ例

C

ニーズの例

顧客にとっての価値

Customer Value

診察が流れ作業ではなく、一人一人に気を配ってくれる。医師の説明が一方的ではなくて、ゆっくりでわかりやすい。QOLを重視してくれる。等

顧客にとっての負担

Cost

支払金額が事前にある程度わかる。支払方法が選べる。通院回数が少なくて済む。等

顧客の利便性

Convenience

待ち時間が短い。交通の便が良い(他の用事も済ませられる)、バリアフリーである。機械の操作がわからないときにすぐに手助けしてくれる。等

顧客とのコミュニケーション

Communication

院内掲示や広報誌が、文字が細か過ぎず見やすい。院内案内は手書き文字などもあって、親しみがわく。地域の老人会などで講演会をしてくれる。等